タイトル: | 特許公報(B2)_分散媒置換方法および高純度テレフタル酸の製造方法 |
出願番号: | 2000203773 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 63/26,C07B 63/00,C07C 51/47,B01J 19/00,B01D 12/00,C07C 51/265 |
大越 二三夫 JP 4643801 特許公報(B2) 20101210 2000203773 20000705 分散媒置換方法および高純度テレフタル酸の製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 大谷 保 100078732 東洋紡績株式会社 000003160 水島アロマ株式会社 592162324 大越 二三夫 20110302 C07C 63/26 20060101AFI20110209BHJP C07B 63/00 20060101ALI20110209BHJP C07C 51/47 20060101ALI20110209BHJP B01J 19/00 20060101ALI20110209BHJP B01D 12/00 20060101ALI20110209BHJP C07C 51/265 20060101ALN20110209BHJP JPC07C63/26 JC07C63/26 CC07B63/00 DC07C51/47B01J19/00 321B01D12/00C07C51/265 B01J10/00-12/02,14/00-19/32 B01D11/00-12/00 C07B31/00-61/00,61/02-63/04 C07C1/00-409/44 B01F9/00-13/10 特開平09−286759(JP,A) 特開平07−149690(JP,A) 特開平08−231465(JP,A) 特開平01−160942(JP,A) 特開平09−122663(JP,A) 特開平01−022304(JP,A) 特開昭62−164639(JP,A) 2 2002018272 20020122 9 20070621 三崎 仁 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はスラリーの分散媒を置換する分散媒置換方法および該分散媒置換方法を用いた高純度テレフタル酸の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】固体粒子と原分散媒とからなる原スラリーの原分散媒を他の分散媒で置換する分散媒置換操作は、化学工業のプロセスで頻繁に要請される単位操作である。例えばテレフタル酸の製造装置において、通常、p−アルキルベンゼンの酸化反応では酢酸溶媒が用いられ、粗テレフタル酸を精製するための接触水素化処理では水溶媒が用いられることから、酸化反応液の分散媒を置換する操作が必要となる。【0003】すなわちテレフタル酸はp−キシレンを代表とするp−アルキルベンゼン等のp−フエニレン化合物の液相酸化反応によって製造されるが、通常は酢酸を溶媒(母液)としてコバルト、マンガン等の触媒を使用し、またはこれに臭素化合物、アセトアルデヒドのような促進剤を加えた触媒が用いられる。しかし、この反応生成物には4−カルボキシベンヅアルデヒド(4CBA)やパラトルイル酸や種々の着色性不純物を含むため、高純度のテレフタル酸を得るにはかなり高度な精製技術が必要である。【0004】液相酸化反応で得られた粗テレフタル酸を精製する方法としては、粗テレフタル酸を水溶媒で高温、高圧下で溶解し接触水素化処理、再結晶処理あるいはテレフタル酸結晶が一部溶解したスラリー状態での高温浸漬処理等の種々の方法が知られている。これらの粗テレフタル酸の精製方法の中、特に粗テレフタル酸を水に溶解して高温、高圧下、第8属貴金属触媒を用いて接触水素化処理を行なう方法は、高純度テレフタル酸製造の大規模商業的プロセスとして長年の歴史を有している。しかしながら、この接触水素化処理を行なう方法では、プロセスフローが長いことが大きな問題点のひとつに挙げられる。【0005】すなわち該プロセスでは、触媒回収や溶媒回収などの複雑なしかも煩わしいユニットを除いた主要なプロセスフローだけを列挙してみても、1段ないし2段以上の酸化反応器、要すれば1段以上の粗製系逐次的晶析器、粗製系分離機、粗製系ドライヤー、再溶解槽、接触水素化反応器、数個の精製系逐次的晶析器、精製系分離機、精製系ドライヤーと連なっている。このようにプロセスフローが長くなる大きな要因に、酸化によって粗テレフタル酸を製造する反応の溶媒が酢酸であり、接触水素化処理によって精製する反応の溶媒が水である点が挙げられる。【0006】このような溶媒置換を行なうには、酸化で生成した粗テレフタル酸をいったん酢酸溶媒から完全に分離し、次に水溶媒で再溶解しなければならない。もし粗テレフタル酸と酢酸の分離が不完全で、粗テレフタル酸に溶媒酢酸が付着したまま接触水素化処理工程に供給されると、酢酸は接触水素化処理によって化学的変化を殆ど受けないので、粗テレフタル酸に付着した酢酸溶媒は接触水素化処理の水溶媒に混入して系外へ排出されることになる。これは酢酸という有価物の損失であり、また排出される酢酸を環境に対して無害化しなければならないので、その経済的損失が大きい。【0007】これら経済的な損失を抑えるために、粗テレフタル酸結晶を含むスラリーから母液(=溶媒)を分離する粗製系分離機と粗製系ドライヤーを組み合わせ、接触水素化工程へ送る粗テレフタル酸に酢酸が付着して同伴することをほぼ完全に遮断することが必要である。現行の商業的規模の装置ではこのような分離機とドライヤーを組み合わせたフローを用いるのが一般的である。【0008】結晶を含むスラリーから母液を分離する方法としてもっとも一般的に用いられているのは、遠心分離機や回転式バキュームフィルターである。粗テレフタル酸結晶スラリーから母液を分離する場合もこの両者が広範に使用されている。遠心分離機は、高速回転をしているバスケット中に原料の酢酸スラリーを導入し、溶媒(母液)を上部からオーバーフローさせ、結晶は下部へ誘導する方法であり、高速回転させるという遠心分離機の構造上の制約から保全、保守が煩雑であるという欠点がある。また遠心分離機は、粗テレフタル酸結晶から酢酸溶媒を完全に除くことができず、そのために遠心分離機の下流に乾燥工程を設けて粗テレフタル酸結晶に付着残存している酢酸を除去する必要がある。回転式バキュームフィルターは濾材の回転と共にハウジングの底部に貯まっている粗テレフタル酸結晶が濾材に付着して上昇、回転し、一般的にはリンスポイントを通過後、結晶をケーキとして剥離するものである。下流にドライヤーを必要とするのは遠心分離機と同様である。【0009】遠心分離機や回転式バキュームフィルターに代わる結晶の分離、母液の除去法として、特公昭33−5410号には粗テレフタル酸を水で再結晶したスラリーを高温(165℃以上)で垂直管に通し、高温水の緩慢な上昇流に抗してテレフタル酸結晶を重力で沈降させ、付着母液を洗浄する方法が記載されている。この方法はテレフタル酸結晶の水再結晶後の分離を高温(加圧下)で行なっているが、基本的にはテレフタル酸スラリーの母液を新鮮な溶媒に置き換える母液置換法である。【0010】この母液置換法では重力を結晶の沈降に用いるので、特別の動力を要しない点で優れており、使用される装置自体がシンプルな点も魅力的である。しかし母液置換率が低いことと、実験結果をそのまま実装置にスケールアップするのが難しいという欠点をもっている。このような欠点を克服するために特開平8−231465号では、母液置換塔底部を可及的完全混合状態に撹拌する方法を提案している。該方法は実験結果をそのまま実装置にスケールアップできるという点で画期的な技術であるが、母液置換率は最高で98%である。【0011】【発明が解決しようとする課題】以上の如く分散媒置換方法を高純度テレフタル酸の製造装置に適用した場合、すなわち液相酸化反応によって得られた粗テレフタル酸酢酸溶媒スラリーの母液を母液置換塔を用いて水に置換し、得られた粗テレフタル酸の水スラリーを接触水素化処理装置に導けば、現行のプロセスフローで、酸化工程からのスラリーより母液を分離する分離機とドライヤーが不要になる。【0012】しかしながら、分散媒置換方法を適用した高純度テレフタル酸の製造装置では十分な母液置換率が得られておらず、酢酸溶媒の損失量が多く、排水負荷が大きくなる。ちなみに粗テレフタル酸酢酸溶媒スラリー溶液の母液を水で置換し、得られた粗テレフタル酸水溶媒スラリーをそのまま接触水素化処理装置に導いて高純度テレフタル酸を製造する一連のフローでは、酢酸溶媒の置換率(母液置換率)と酢酸損失量およびその排水処理負荷の関係はおおよそ次のようになる。【0013】【0014】なお、表1における数値は次の通りである。母液置換率%=(a−b)/a×100a:粗製系分離工程へ供給された母液酢酸量b:接触水素化工程へ混入した母液酢酸量酢酸損失量:テレフタル酸(TA)1t製造するのに伴う酢酸損失量(kg)排水負荷:テレフタル酸(TA)1t製造するのに伴う酢酸損失量と化学等量の酸素要求量(kg)【0015】以上の如く高純度テレフタル酸を製造する一連の商業的規模での母液置換法、言い替えれば、現行のプロセスフローにおいて粗テレフタル酸の母液分離機とドライヤーの機能を代替できる実際的な技術はまだ完成されていない。本発明の目的は、液相酸化反応によって得られた粗テレフタル酸酢酸溶媒スラリーの母液を水で置換し、得られた粗テレフタル酸水溶媒スラリーをそのまま接触水素化処理装置に用いる方法を完成させ、プロセスフローの短縮化、ひいては投資額の節減と運転にかかわる費用の低減化を実現することである【0016】酢酸損失量と排水処理負荷によって生じる経済的損失の境界線をどこに設定するかは、製造プラントのおかれている種々の経済的環境によって判断しなければならないので厳密な線引きは難しいが、一般的に言って母液置換率で99.5%以上を達成できれば実現の可能性があると判断される。従って本発明の目標は具体的に、母液置換法を用いた高純度テレフタル酸の製造装置において、従来に比し効率的な母液置換法、すなわち99.5%以上の母液置換率を達成することにある。【0017】【課題を解決するための手段】本発明者らは高純度テレフタル酸の製造装置での母液置換法における上記の如き課題を解決し、目標を達成するために鋭意検討した結果、抽出装置で一般に用いられている振動カラム型抽出機、すなわち縦型多段振動カラム型抽出機を用いることにより極めて高い母液置換率を達成することができ、高純度テレフタル酸の製造装置における酢酸溶媒の損失量を削減することができ、排水負荷が著しく軽減されることを見出し、本発明に到達した。【0018】すなわち本発明は、分散媒置換塔上部より原分散媒と固体粒子からなる原スラリー、同塔下部より置換用分散媒を導入し、固体粒子の原分散媒を置換して得られた置換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔下部より抜き出し、同塔上部より原分散媒を抜き出す分散媒置換方法において、該分散媒置換塔に縦型多段振動カラム型抽出機を用いることを特徴とする分散媒置換方法および、p−アルキルベンゼンの液相酸化によって得られたテレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーを水溶媒スラリーに母液置換した後、接触水素化処理を行なう高純度テレフタル酸の製造装置において、分散媒置換塔に縦型多段振動カラム型抽出機を用い、分散媒置換塔上部より酢酸溶媒スラリー、同塔下部より置換用水溶媒を導入し、テレフタル酸の酢酸溶媒を置換して得られた水溶媒とテレフタル酸粒子からなる置換スラリーを同塔下部より抜き出し、同塔上部より酢酸溶媒を抜き出すことを特徴とする高純度テレフタル酸の製造方法である。【0019】【発明の実施の形態】本発明において分散媒置換塔として用いる縦型多段振動カラム型抽出機は、縦型カラムの塔頂又は塔底に駆動機を装備しており、該駆動機に接続するシャフトが塔内の鉛直方向に配置され、該シャフトには複数枚の多孔板が塔内を横方向に区切る形で取り付けられている。該駆動機の作動によって該多孔板が塔内を上下方向に往復運動することによって原スラリーと置換用分散媒の接触が促進され、原スラリー中の原分散媒と置換用分散媒との高い置換効率が得られる。【0020】図面を用いて本発明を具体的に説明する。図1は本発明で使用する縦型多段振動カラム型抽出機の構造および分散媒置換方法のフローの一例を示す説明図である。本発明の縦型多段振動カラム型抽出機を用いた分散媒置換塔1 は分散媒置換部2 の上部に上部中空室3 、分散媒置換部2 の円筒形の下部中空室4 を有する。各中空室では液を静置させるために各中空室の内径を分散媒置換部2よりも大きくすることが好ましい。分散媒置換塔1 の塔頂部には駆動用モーター13を装備しており、塔内を鉛直方向に延びる該モーターのシャフト5 は上部中空室3 と分散媒置換部2を通り、下部中空室4 と分散媒置換部2 の境界付近まで達している。【0021】シャフト5 には開孔比が30〜80%の多孔板6 が、分散媒置換部2 を水平方向に仕切る形で複数枚取り付けられている。駆動用モーター13の駆動によってシャフト5 が上下方向に往復運動を繰り返すことによって、多孔板6が上下方向に往復運動を繰り返す。原分散媒と固体粒子からなる原スラリーは原スラリー槽7 から原スラリーポンプ14で抜き出して、原料スラリー供給口9 から上部中空室3へ供給する。また置換用溶媒は置換用溶媒槽8から置換用溶媒ポンプ15で抜き出して、置換用溶媒供給口11から下部中空室4 へ供給する。【0022】分散媒置換部2 において多孔板6 により振動されながら原分散媒と固体粒子からなる原スラリーと置換用溶媒が接触して各分散媒の置換が行われ、原分散媒が上部中空室3 の上部にある原分散媒排出口10から抜き出される。また、置換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを下部中空室4 の下部にある置換スラリー排出口12から置換スラリーポンプ16により抜き出す。【0023】高純度テレフタル酸の製造装置においては、原スラリー(酢酸溶媒)が原スラリー供給口9 から上部中空室4 内へ供給される。また水溶媒が置換用溶媒ポンプ15を通して置換用溶媒供給口11から下部中空室4 へ供給される。分散媒置換部2 において酢酸溶媒と水溶媒の置換が行われ、テレフタル酸結晶を含む水溶媒スラリーが置換スラリー排出口12から置換スラリーポンプ16により抜き出される。酢酸溶媒(母液)は上昇流となって少量のテレフタル酸微細結晶と共に原分散媒排出口10から溢流する。【0024】本発明の高純度テレフタル酸の製造法では、母液置換に供する粗テレフタル酸酢酸溶媒スラリーは、p−キシレンを代表とするp−アルキルベンゼン等のp−フェニレン化合物を酸化して製造し、通常はコバルト、マンガン等の重金属塩触媒、またはこれに臭素化合物、あるいはアセトアルデヒドのような促進剤を加えた触媒を用いる。溶媒には3〜20%程度の水分を含有した酢酸を用いる。通常、分子状酸素としては空気または酸素を用い、温度170〜230℃、圧力1〜3MPaで、酸化反応を1段ないしは2段以上で行なう。【0025】液相酸化工程を終えたスラリー状の反応流出物中にはテレフタル酸結晶以外に4CBA、パラトルイル酸、触媒その他種々の不純物を含有している。この反応流出物を、必要に応じて1段または2段以上の粗製系逐次的晶析器に導き、また新鮮な含水酢酸で置換する等の工程を経て逐次降温すると共に、溶解していたテレフタル酸を更に結晶化して所定の温度にする。【0026】次にテレフタル酸酢酸溶媒スラリーを前述の分散媒置換塔に供給し、塔内の水の上昇流中に導き、酸化反応母液は少量の微細テレフタル酸結晶と共に上昇液流として上方へ、大部分のテレフタル酸結晶は塔内を沈降し、塔底部から水スラリーとして抜き出す。【0027】これら一連の操作において、置換スラリー排出口12から排出する水の量(kg/h)を、置換用溶媒供給口11から供給した水の量(kg/h)よりも小さくなるよう制御することにより、分散媒置換部2 には、沈降するテレフタル酸結晶に抗して原分散媒 (酢酸) の上昇流が発生する。逆に、置換スラリー排出口12から排出する水の量を、置換用溶媒供給口11から供給した水の量よりも大きくなるよう制御すれば、分散媒置換部2 には、沈降するテレフタル酸結晶と同じ方向、つまり原分散媒 (酢酸) の下降流が発生することになる。【0028】上昇流の大きさまたは下降流の大きさは、前に定義した母液置換率と密接な関係がある。上昇流が大きくなるように2系統の水量を設定すれば、母液置換率がアップする。しかしながら、上昇流が大きくなるように設定するということは結果として、原分散媒排出口10から溢流する酢酸溶媒中に、上昇流に相当する水が混入することになる。この酢酸溶媒中に混入した水は蒸留等の手法で、系内から除去しなければならない。水の除去に要するコストは大きい。従って水の上昇流は可能な限り小さく抑えなければならない。【0029】分散媒置換塔において、テレフタル酸結晶の大部分は重力で沈降し、上下方向に往復運動をするプレート6 で区切られた複数個のセルを通過して下方へ移動する。このとき塔内を上昇する水と向流で接触し母液中の酢酸溶媒が新鮮な水で置換される。また水による結晶のリンス効果も同時に発生する。そして最終的には、下部中空室4に達したテレフタル酸結晶は水溶媒と共に置換スラリー排出口12から置換スラリーポンプ16で排出する。置換スラリーポンプ16から排出したスラリーは、そのまま公知の精製手法、一般的には水スラリーを高温、高圧下で溶解し、第8族貴金属触媒を使って接触水素化処理工程を経て高純度テレフタル酸が製造される。【0030】本発明の高純度テレフタル酸の製造方法において、分散媒置換塔に縦型多段振動カラム型抽出機を用いることにより、原スラリー (テレフタル酸酢酸溶媒スラリー) と置換用分散媒 (水溶媒) の接触が促進され、原スラリー中の酢酸溶媒と水溶媒との極めて高い置換効率が得られる。従って本発明の高純度テレフタル酸の製造方法では、複雑な工程を得ること無に酢酸溶媒と水溶媒と溶媒置換を容易に行うことができ、酢酸溶媒の損失や排水負荷の増大を最小限に抑えることができる。【0031】以上、本発明の内容をテレフタル酸スラリーの酢酸溶媒を水溶媒に置換する方法に即して説明をした。勿論、本発明は一つの独立した単位操作としての汎用性を備えている。スラリーの原分散媒を新しい分散媒で置換する必要性は多くの工業プラントで要請される単位操作であり、本発明を適用することができる。【0032】【実施例】次に高純度テレフタル酸の製造装置における実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により制限されるものではない。なお以下の実施例において、分散媒置換塔に住友重機械工業株式会社製の「住友カールカラム抽出装置」の「実験用抽出装置KC−1−6−XE−1」を用いた。該装置は図1に示した構造の縦型多段振動カラム型抽出機であり、その主要な仕様を以下に記す。【0033】実施例1図1において先ず、置換用溶媒ポンプ15を駆動して分散媒置換塔1 の系内に82℃の水を張り込んだ。原分散媒排出口10から水がオーバーフローし始めたら、置換スラリーポンプ16を駆動して置換スラリー排出口12から水を抜き出した。この状態で駆動用モーター13を駆動させ、多孔板6 の往復運動を開始した。往復運動のストローク長さは20mmとした。ストロークの速度は毎分120ストロークとした。【0034】次に原スラリーポンプ14を駆動して、原スラリー供給口9 から原スラリーを供給した。原スラリーには商業的規模で製造されたテレフタル酸の酢酸溶媒スラリーを用いた。すなわち該原スラリーはp−キシレンを、触媒としてコバルト、マンガン、臭素化合物を用い、反応温度195℃で含水酢酸溶媒中で空気を吹き込んで酸化した反応生成物である。該反応生成物を1段の晶析器を経由して室温まで冷却したスラリーとし、このスラリーを再び90℃に加温して分散媒置換塔1 へ供給した。該原スラリー中のテレフタル酸結晶濃度は30重量%、母液中の水分濃度は11重量%、コバルト濃度は430ppmであった。【0035】同時に置換スラリーポンプ16を稼働し、分散媒置換塔1 における各供給量および抜き出し量を以下のように調整した。原スラリー(酢酸溶媒)供給量 2.58kg/h置換用溶媒 (水) 供給量 2.50kg/h置換スラリー (水溶媒) 抜き出し量 2.53kg/h運転を数時間継続して、系内の液流れが充分に定常状態に達してから、置換スラリー排出口12からの置換スラリー中の液を採取した。液中のコバルト濃度を分析したところは2ppmであった。前述した定義による母液置換率は99.5%となる。【0036】【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、分散媒置換塔を用いた高純度テレフタル酸の製造装置において、本発明により分散媒置換塔に縦型多段振動カラム型抽出機を用いることにより極めて高い母液置換率を達成することができる。従って本発明の高純度テレフタル酸の製造方法では、複雑な工程を経ること無に酢酸溶媒と水溶媒と溶媒置換を容易に行うことができ、酢酸溶媒の損失量を削減することができ、排水負荷が著しく軽減される。また本発明の分散媒置換方法はスラリーの原分散媒を新しい分散媒で置換する多くの工業プラントに適用することができ、分散媒の置換を複雑な工程を経ること無に容易に行うことができ、該プラントの建設コストが削減されると共にユーテリティ使用量の節減と省力化を図ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明で使用する縦型多段振動カラム型抽出機の構造および分散媒置換方法のフローの一例を示す説明図である。【符号の説明】1:分散媒置換塔2:分散媒置換部3:上部中空室4:下部中空室5:駆動用モーターのシャフト6:多孔板7:原スラリー槽8:置換用溶媒槽9:原スラリー供給口10:原分散媒排出口11:置換用溶媒口12:置換スラリー排出口13:駆動用モーター14:原スラリーポンプ15:置換用溶媒ポンプ16:置換スラリーポンプ p−アルキルベンゼンの液相酸化によって得られたテレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーを水溶媒スラリーに母液置換した後、接触水素化処理を行なう高純度テレフタル酸の製造装置において、分散媒置換塔に縦型多段振動カラム型抽出機を用い、分散媒置換塔上部より酢酸溶媒スラリー、同塔下部より置換用水溶媒を導入し、前記抽出機の多孔板が上下方向に往復運動を繰り返すことにより酢酸溶媒スラリーと置換用水溶媒との接触を促進させ、テレフタル酸の酢酸溶媒を置換して得られた水溶媒とテレフタル酸結晶からなる置換スラリーを同塔下部より抜き出し、同塔上部より酢酸溶媒を抜き出すことを特徴とする高純度テレフタル酸の製造方法。 酢酸溶媒が3〜20%の水分を含有した酢酸である請求項1に記載の高純度テレフタル酸の製造方法。