タイトル: | 特許公報(B2)_原子吸光分光光度計 |
出願番号: | 2000185539 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 21/31 |
西垣 日出久 JP 4258102 特許公報(B2) 20090220 2000185539 20000621 原子吸光分光光度計 株式会社島津製作所 000001993 小林 良平 100095670 西垣 日出久 20090430 G01N 21/31 20060101AFI20090409BHJP JPG01N21/31 610B G01N 21/00-21/01 G01N 21/17-21/74 G01J 3/00- 3/52 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平03−031745(JP,A) 特開平02−051030(JP,A) 特開平09−089764(JP,A) 特開平10−010043(JP,A) 特開平10−325793(JP,A) 特開平11−125562(JP,A) 特開平10−038793(JP,A) 1 2002005825 20020109 8 20060906 横井 亜矢子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、原子吸光分光光度計に関する。【0002】【従来の技術】原子吸光分光分析では、試料中の測定対象成分が原子化され、その原子蒸気に、ホロカソードランプなどの光源から1乃至複数の輝線スペクトルを有する光が照射される。このとき、試料を構成する原子に特有の波長で吸収を受けるから、その透過光を分光器で波長分散させて、目的とする原子(又は元素)に特有の波長の光を選択して光検出器(主として光電子増倍管)に導入する。試料の有無による光の強度の差を測定することにより、原子化された測定対象成分による吸光度を得ることができる。【0003】原子吸光分光光度計では、通常、目的元素に応じた波長の輝線スペクトルを有する光源が用いられる。操作パネル上などから指示した波長と分光器で実際に選択される波長との間には誤差が生じている場合があるため、一般には、例えばラインサーチなどと呼ばれる調整方法により、目的とする輝線スペクトルのピークに合うように分光器が調整されるようになっている。より詳しく述べると、所定の波長範囲を波長走査するように分光器を制御しながら、光検出器からの信号強度が最大となる位置を見つけ、分光器をその位置に固定する。これにより波長が確定する。次いで、光検出器からの信号強度が予め決められた値となるように光検出器の感度を調整する。これにより、フレーム(炎)光などにより光強度が増加した場合でも増幅器などが飽和しないような範囲で、検出感度ができるだけ高くなるような最適感度に設定される。【0004】【発明が解決しようとする課題】上記のような調整は、目的元素を変えるために光源を変更した際には、測定に先立って必ず行われる。しかしながら、上記のような調整を行った後に複数の試料を順次測定する間にも、(1)光源の発光強度の変化(2)当該装置自体が発生する熱やフレームの熱などによる分光器の機械的な変動(各光学素子の位置ずれ)によって、始めの最適状態からのずれが生じるおそれがある。【0005】図6は輝線スペクトルの一例である。例えば図6に示すように、最適状態では、輝線スペクトルのピークトップに対応する波長が分光器により選択されるようになっていたとしても、光源の発光強度が変動するとピークトップの信号強度は縦軸方向に変動する。一方、分光器の機械的変動により選択波長にずれが生じると、光検出器に導入される単色光の波長はピークトップに対して横軸方向にずれてしまう。このような変動により、基準となるべき信号強度が変動してしまうから、測定の精度が劣化するというおそれがある。【0006】本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、光源の発光強度の変動や分光器の機械的なずれによる影響を解消して、高精度の測定が行える原子吸光分光光度計を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために成された本発明は、光源から発した光を原子化した試料中に通過させ、通過した光を分光器により波長分散させて、目的成分に応じた波長光を選択して光検出器に導入する原子吸光分光光度計において、a)繰返し測定の合間の測定休止時に、前記光検出器により得られる信号強度又はそれに対応した信号値の経時的変動を検知する変動検知手段と、b)該変動が検知された場合に、その時点での設定波長に対し所定の波長範囲で波長走査を行うべく前記分光器を制御する波長走査手段と、c)該波長走査時に前記光検出器により得られた信号強度に基づいて、前記分光器による選択波長のずれを修正すべく該分光器を再設定する波長修正手段と、を備えることを特徴としている。【0008】ここで、測定休止時とは、光源から発した光が原子試料の吸収を受けない状態であるとともに、例えばフレーム等の光源以外の発光の影響も受けない状態を意味する。【0009】【発明の実施の形態、及び効果】通常、繰返し測定の初期には、光源に含まれる所定の輝線スペクトルのピークトップの波長を有する光が光検出器に入射するように、分光器の選択波長が設定されている。したがって、分光器で選択波長にずれが生じると、測定休止時に光検出器により得られる信号強度は減少する。そこで、変動検知手段により、例えば初期値に対して所定値以上の変動が検知されると、波長走査手段は、所定の波長範囲で波長走査を行うべく分光器を制御する。このときの波長走査範囲は、想定される波長ずれ幅以上であればよい。この波長走査に対応して光検出器で得られる信号強度は変化し、信号強度が最大である点が元の輝線スペクトルのピークトップであると推定し得るから、波長修正手段は、それに合わせて分光器を制御する。これにより、分光器の選択波長のずれが修正され、所望の輝線スペクトルのピークトップの波長を有する光が光検出器に入射する。【0010】したがって、本発明に係る原子吸光分光光度計によれば、オペレータが意識することなく、自動的にほぼ最良の状態で測定が行われるように分光器が調整されるので、時間経過に伴う分光器の選択波長のずれの影響をなくし、常に精度の高い測定を行うことができる。【0011】更に好ましくは、上述したような波長ずれの修正に加えて、光源の発光強度の変動も修正する構成とすることができる。すなわち、たとえ波長ずれが生じていなくても光源の発光強度が変動すると、測定休止時に前記光検出器により得られる信号強度は減少又は増加する。そこで、変動検知手段により所定値以上の変動が検知されると、上述したような波長ずれの修正を試みた後、感度調整手段は、前記光検出器により得られた信号強度が所定値になるように光検出器の感度を調整する。これによれば、分光器の波長ずれのみならず、光源の発光強度の変動の影響も修正されるので、より精度の高い測定を行うことができる。【0012】また、他の方法として、上述したような波長ずれの修正を試みた後、その時点での前記光検出器により得られた信号強度に対応した値、又は信号強度のずれ量に対応した値を記憶しておき、この記憶された値に応じて吸光度を修正するような信号処理を行っても同様の目的を達成することができる。【0013】【実施例】以下、本発明の一実施例である原子吸光分光光度計について図面を参照して説明する。【0014】図1は、本実施例による原子吸光分光光度計の全体構成図である。本原子吸光分光光度計において、原子化部2では、バーナにより形成されるフレーム中に試料供給部3から送出される試料溶液が導入・噴霧され、これにより該試料溶液中の測定対象成分が原子化される。ホロカソードランプ等である光源1からの光は上記原子化部2に照射され、原子化された測定対象成分の原子蒸気中を通過する。原子蒸気を通過した光は分光器4で分光され、測定対象成分に対応する特定波長の光が取り出される。この特定波長の光は光検出器5に導入され、入射した光量に応じた検出信号が取り出されて信号処理部7に入力される。信号処理部7は電流増幅器、A/D変換器、CPU、メモリ等を含んでおり、検出信号をデジタル信号に変換したあと所定の演算処理を行うことによりスペクトルや吸光度の時間変化グラフを作成したり、このグラフを基に定量分析などを実行する。【0015】光検出器5は複数段のダイノードを含んで構成される光電子増倍管であって、入射した光電子をダイノードに接触させて二次電子を放出させ、その二次電子を次段のダイノードに導入するというように電子を次々に増倍させ、最終的に増倍させた電子を陽極で検出する。電圧印加部6からダイノードに印加される電圧に応じて電子の増倍率が変化するから、光検出器5の検出感度はこの印加電圧に依存したものとなる。【0016】制御部8はCPU、メモリ等から構成されており、メモリに記憶された所定のプログラムに基づいてCPUが動作し、光源1、原子化部2、試料供給部3、分光器4、電圧印加部6を制御する。また、制御部8に付設されている操作部9を通して、オペレータは分析に関する指示を行うことができ、更に、表示部10を通して分析条件や分析結果などを視認することができるようになっている。なお、信号処理部7の演算部と制御部8とは、例えば同一のパーソナルコンピュータを用いて具現化することができる。【0017】上記装置では、実際の測定に先立って、オペレータによる指示に応じてラインサーチが実行される。すなわち、オペレータが操作部9より目的元素の波長、光源1のランプ電流などの諸条件を入力し、ラインサーチの実行を指示すると、これに応じて、制御部8は光源1を点灯させ、上記波長の前後の所定範囲を走査するように分光器4を制御する。そのときの光検出器5からの検出信号を基に、信号処理部7は、図5に示したようなラインサーチ信号と呼ばれる一種の波長スペクトルを作成する。制御部8は、このラインサーチ信号上で最も高い信号強度を与える波長が選択されるように分光器4を設定する。これにより、分光器4は最適位置に設定され、ピークトップに対応する波長を有する光が光検出器5に導入される。更に、このあと、電圧印加部6を制御して、ピークトップの信号強度が所定値になるように光検出器5の検出感度を調整する。これにより、光検出器5も最適感度に設定される。【0018】以降の測定では、このピークトップの信号強度に対応する値を吸光度の時間変化グラフでの基準のゼロレベルとし、原子蒸気による吸光度を算出する。ここで、基準のゼロレベルとされる信号強度はバックグラウンド吸収などが補正されたものである。これにより、或る試料を測定すると、例えば図5(a)に示すような、横軸に時間経過、縦軸に吸光度をとったグラフが得られることになる。【0019】上記のような調整動作により、ほぼ最適状態で測定が行える。しかしながら、一旦、最適状態に設定しても、時間経過に伴って光源1の発光強度が変化すると、例えば図2(b)に示すようにピークトップの信号強度がS0→S2と変化する。また、温度の影響などにより分光器4に機械的変動が生じると、例えば図2(a)に示すように分光器4により選択される中心波長がλ0→λ1と変化してしまう。いずれの場合にも、最適状態からずれた状態である。そこで、この装置では、次のような手順で自動調整を行うようにしている。【0020】図3はこの手順を示すフローチャートである。まず制御部8はその時点で測定を実行中であるか否かを判断し(ステップS1)、測定中である場合にはそのまま処理を終了する。測定中でない場合、つまり原子蒸気による吸光がなく、しかもフレームが形成されていない場合には、制御部8は上記ゼロレベルが所定値以上変動しているか否かを判定する(ステップS2)。図2(a)に示したような場合、信号強度S1は始めの信号強度S0よりも下がっているため、見かけ上、光の吸収を受けているのと同等になり、図5(b)中に太実線で示すようにグラフ上でのゼロレベルは上昇する。逆に、図2(b)に示したような場合、信号強度S2は始めの信号強度S0よりも上がっているため、図5(b)中に太点線で示すようにゼロレベルは下降する、つまりマイナスになる。いずれにしても、このようなゼロレベルの変動が所定値以上であれば、再調整を実行する(ステップS3)。【0021】再調整では、まず制御部8は、そのときの波長設定位置に対して所定の波長範囲を設定して波長走査を行うべく分光器4を制御する(ステップS4)。例えば、図4に示すようにλ1を中心波長としてλ2〜λ3の範囲で走査を行う。通常、波長ずれはそれほど大きくないので、このときの波長範囲は始めのラインサーチ時の波長走査範囲よりも遙かに小さくすることができる。そのため、波長走査に要する時間は短くて済む。波長走査時に光検出器5から得られる検出信号を基に、信号処理部7では図4に示すようなラインサーチ信号に相当するカーブを作成する。制御部8は、このカーブ上で最も高い信号強度を与える波長が選択されるように分光器4を設定し直す(ステップS5)。これにより、分光器4は再び最適位置に設定され、ピークトップに対応する波長を有する光が光検出器5に導入される。更に制御部8は、電圧印加部6を制御して、ピークトップの信号強度が所定値になるように光検出器5の検出感度を再調整する(ステップS6)。これにより、光検出器5も再び最適感度に設定される。【0022】上記ステップS1〜S6の処理を常に繰り返し実行すれば、その直前に最適状態に調整された下で測定を行うことができる。また、このような再調整を指示するボタンを操作部9に用意し、そのボタンが操作されたときに上記ステップS2〜S6の処理を実行するようにしてもよい。【0023】次に、本発明の他の実施例について説明する。上記実施例では、ステップS5で分光器4の再設定を行ったあとに、ステップS6で光検出器5の検出感度の再設定も行っている。この一連の調整動作を行っている間は測定に取り掛かることはできないから、この調整時間により測定間隔が制限されることがあり得る。通常、波長走査に要する時間よりも検出感度の最適値を見つける動作に時間を要する。そこで、この実施例では、上述したような検出感度の再設定を行う代わりに、信号処理によって、基準となる信号強度の変動の影響を解消するようにしている。【0024】すなわち、上記ステップS5で分光器4の再設定を行ったあと、信号処理部7では、その時点でのゼロレベル、又はその時点でのゼロレベルと始めのラインサーチ時のゼロレベルとの差分をメモリに記憶する。例えば光源1の発光強度の増加により、図5(b)の太点線のようにゼロレベルがずれているとすると、t1の時点では、始めのラインサーチの時点からみるとゼロレベルはΔzだけずれている。そこで、この差分Δzをメモリに記憶し、以降の測定では、吸光度を算出する際にこの差分Δzだけ、吸光度にオフセットを与える。これにより、検出感度を設定し直さずとも、光源1の発光強度の変動の影響を吸光度の時間変化のグラフ上でなくすことができる。【0025】なお、上記実施例は単に一例であって、本発明の主旨の範囲で適宜変更や修正を行うことができるのは明らかである。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の一実施例である原子吸光分光光度計の全体構成図。【図2】 光源の発光強度の変動や分光器の波長ずれがある場合のスペクトルの一例を示す図。【図3】 本実施例による調整手順を示すフローチャート。【図4】 本実施例による調整における波長走査の際に得られるスペクトルの一例を示す図。【図5】 吸光度の時間変化の一例を示すグラフ。【図6】 測定前のラインサーチ時に得られるスペクトルの一例を示す図。【符号の説明】1…光源2…原子化部3…試料供給部4…分光器5…光検出器(光電子増倍管)6…電圧印加部7…信号処理部8…制御部9…操作部10…表示部 光源から発した光を原子化した試料中に通過させ、通過した光を分光器により波長分散させて、目的成分に応じた波長光を選択して光検出器に導入する原子吸光分光光度計において、a)繰返し測定の合間の測定休止時に、前記光検出器により得られる信号強度又はそれに対応した信号値の経時的変動を検知する変動検知手段と、b)該変動が検知された場合に、その時点での設定波長に対し所定の波長範囲で波長走査を行うべく前記分光器を制御する波長走査手段と、c)該波長走査時に前記光検出器により得られた信号強度に基づいて、前記分光器による選択波長のずれを修正すべく該分光器を再設定する波長修正手段と、を備えることを特徴とする原子吸光分光光度計。