タイトル: | 特許公報(B2)_トリメリット酸の製造法 |
出願番号: | 2000173925 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 51/265,B01J 31/04,C07C 63/307,C07B 61/00 |
田中 一夫 小川 博史 丸木 幾多郎 JP 4678081 特許公報(B2) 20110210 2000173925 20000609 トリメリット酸の製造法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 田中 一夫 小川 博史 丸木 幾多郎 20110427 C07C 51/265 20060101AFI20110407BHJP B01J 31/04 20060101ALI20110407BHJP C07C 63/307 20060101ALI20110407BHJP C07B 61/00 20060101ALN20110407BHJP JPC07C51/265B01J31/04 ZC07C63/307C07B61/00 300 C07C 27/00-71/00 特開平02−184652(JP,A) 特開平11−092416(JP,A) 特開平02−196751(JP,A) 特開昭50−018434(JP,A) 国際公開第98/055441(WO,A1) 6 2001354613 20011225 7 20070521 高橋 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はプソイドクメンを液相酸化してトリメリット酸を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】酢酸溶媒中における臭素―遷移金属触媒を用いたp−キシレンの空気酸化によるテレフタル酸製造は多くの国において工業的に実施されている。プソイドクメンは他のアルキル芳香族化合物と同様に重金属触媒存在下に空気酸化されてトリメリット酸が製造されるが、生成物のトリメリット酸の二つのカルボキシル基がオルト構造のため、重金属と錯体を形成して触媒の活性を低下させるので、このような構造を持たないアルキル芳香族化合物に比して収率が低いとされている。このため触媒系における種々の改良が行われており、米国特許3920735号には、Mn-BrおよびCo-Mn-Br触媒系はジルコニウムの添加により改善されることが示されている。また特許第2939346号にはさらにセリウムを加えて、コバルト/マンガン/ジルコニウム/セリウム/臭素触媒を段階的に加え、プソイドクメンを酸化する方法が記載されている。特開平5−221919号にはコバルト/マンガン/セリウム/チタン/臭素触媒を段階的に加え、プソイドクメンを酸化する方法が記載されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】トリメリット酸は、通常、脱水して無水トリメリット酸とし、樹脂、可塑剤を合成するための中間体としても使用される。この場合、得られる無水トリメリット酸および樹脂に着色しないことが望まれる。本発明者らは特許第2939346号および特開平5−221919号に記載の方法でプソイドクメンを酸化し、得られたトリメリット酸を脱水して無水トリメリット酸としたが、該無水トリメリット酸は若干着色した。(本願比較例2および3)本発明の目的は、プソイドクメンを酸化してトリメリット酸を製造するに際して、着色しない無水トリメリット酸を高収率で得ることができる方法を提供することである。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、原料であるプソイドクメンを酸化する際に、所定量以上のジメチルベンズアルデヒドを該原料に含有させることにより、目的とする着色しない高品質のトリメリット酸が得られることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、コバルト、マンガン、ジルコニウムおよび臭素の存在下、炭素数1〜5個の脂肪族モノカルボン酸を溶媒に用いて液相空気酸化して、トリメリット酸を製造する方法において、該酸化原料のプソイドクメン中にジメチルベンズアルデヒドを5重量%以上含有させることを特徴とするトリメリット酸の製造法である。【0005】【発明の実施の形態】本発明で用いる酸化原料のプソイドクメンは、接触改質油又は熱分解残油中のC9 留分に存在し、蒸留により分離された市販品を使用することができる。副酸化原料として用いられるジメチルベンズアルデヒドには、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒドがあり、これらの単品または混合物を使用することができる。なお本発明において酸化原料中にジメチル安息香酸 (3,4−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸) が含まれていても良い。【0006】本発明において酸化原料に少なくとも5重量%のジメチルベンズアルデヒドを含むプソイドクメンを用いる。該酸化原料には6重量%のジメチルベンズアルデヒドを含むことが好ましい。ジメチルベンズアルデヒドを含む場合、プソイドクメンの酸化が促進され、燃焼および副反応が減少し、酸化収率が向上する。そのため、その後の無水化反応においても製品の着色しなくなる。【0007】液相酸化に用いる溶媒は、炭素数1〜5個の脂肪族モノカルボン酸であり、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等あるいはこれらの混合物が使用されるが、酢酸、プロピオン酸が好ましく、特に酢酸が好ましい。溶媒中の水含有量は10重量%以下とすることが好ましい。溶媒と酸化原料との重量比は1:1〜4:1、好ましくは1.5:1〜3.0:1である。【0008】本発明において液相酸化に使用される触媒には、金属成分として、コバルト、マンガン、ジルコニウムを含有する。これらの金属は、有機酸塩、ハロゲン化物等の化合物として使用できるが、特に酢酸塩、臭化物として用いることが好ましい。【0009】また該触媒には臭素が含まれる。使用される臭素源としては反応系で溶解し、臭素イオンを発生するものであれば、如何なる物でも良く、例えば、臭化水素、臭化ナトリウムおよび臭化コバルト等の無機臭化物、テトラブロモエタン等の有機臭化物がある。特に臭化水素、臭化コバルト、臭化マンガンが好ましい。【0010】酸化原料に対する触媒金属の濃度は金属原子として0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.7重量%の範囲である。総金属に対する個々の金属の割合は、触媒総金属量に対し、コバルト含有量が40〜65重量%、マンガン含有量が30〜55重量%、ジニコニウム含有量が1〜5重量%であることが好ましい。【0011】酸化原料に対する臭素濃度は0.08〜0.8重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲である。また、触媒金属の臭素に対する原子比は0.1〜2、好ましくは0.2〜1.5の範囲である。【0012】本発明における液相酸化は触媒濃度および反応温度を変えて少なくとも2段階で行うことが好ましい。触媒添加方法としては、金属触媒および臭素化合物をそれぞれ分割して加えることができる。即ち、例えば第1段階で金属触媒および臭素化合物の初期添加を行って反応を開始した後、反応の進行に応じて、金属触媒および/または臭素化合物の残量を段階的に、または連続的に加えることができる。好ましい形態としては第1段階で全臭素の0〜55重量%を加え、残りを最終段階で加える方法である。【0013】反応温度は、第1段階が120〜170℃、好ましくは130〜160℃、最終段階が190〜240℃、好ましくは200〜230℃の範囲であり、反応圧力は、第1段階が0.3〜0.8MPa好ましくは0.4〜0.7MPa、最終段階が1.5〜3MPa、好ましくは1.6〜2.9MPaの範囲である。【0014】酸化反応には酸素含有ガスを用いる。これには酸素ガス、または酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスと混合したガスが挙げられるが、空気が最も一般的である。酸化反応器としては攪拌槽や気泡塔などを用いることができるが、攪拌槽が反応器内の攪拌を充分に行うことができ好ましい。反応の形式としては回分式でも連続式でもよいが、回分式がより好適である。【0015】反応器からの排ガス中の酸素濃度は0.1〜8容量%、好ましくは1〜5容量%である。反応器には還流冷却器を設け、排ガスに同伴される多量の溶媒および酸化反応で生成する水を凝縮させる。凝縮した溶媒および水は通常反応器に還流されるが、反応器内の水分濃度を調整するために、その一部を反応系外に抜き出すことも行われる。反応時間は一般的に30〜100分間である。【0016】酸化反応混合物は冷却して、10〜120℃、好ましくは20〜40℃の範囲にし、晶析した結晶を濾別する。その後、得られたトリメリット酸を特別な精製工程を行わず、210〜240℃で加熱脱水して、無水トリメリット酸とする。さらに減圧蒸留して精製することで無水トリメリット酸の製品が得られる。【0017】【実施例】次に実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。尚、実施例および比較例における品質試験は下記の方法によった。溶融色:50gの無水トリメリット酸を試験管に入れ、190℃で1時間加熱し、目視でAPHA標準色(JIS K 1557の6.2に記載された方法により調製)と比色した。Br化合物:蛍光X線により測定した。結果を示す表1におけるPQはプソイドクメン、DBALは2,4−ジメチルベンズアルデヒド、TMはトリメリット酸である。また、表1でBr化合物は液相酸化により得られたトリメリット酸中の無機Br化合物および有機Br化合物の合計のBr濃度(ppm) であり、製品溶融色は無水トリメリット酸の溶融色(APHA)である。【0018】実施例1反応器として、還流冷却器付きのガス排出管、ガス吹き込み管および攪拌機を有する2Lのチタン製オートクレーブを使用した。反応器に原料としてプソイドクメン168g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド20g、および溶媒として5重量%の含水酢酸375gを仕込んだ。触媒として酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン4水塩、酢酸ジルコニウム、臭化水素を、プソイドクメンに対し、コバルト濃度2300ppm、マンガン濃度2000ppm、ジルコニウム濃度60ppm、臭素濃度140ppmとなるように添加し、窒素雰囲気下で加熱し、165℃で0.5MPaで空気を導入し、20分間反応した。続いてポンプで触媒液を追加してマンガン(200ppm)、ジルコニウム(40ppm)、臭化水素(2660ppm)となるように追加し、圧力を2MPaとし、220℃で45分間反応を継続した。この時の総金属濃度はプソイドクメンに対して4600ppmである。また、臭素の総量はプソイドクメンに対して2800ppmである。反応後、反応混合物を50℃に冷却した後、得られたスラリーを濾過し、95%含水酢酸でリンスし、粗トリメリット酸結晶を得た。さらに230℃で窒素を送入して1時間無水化した。得られた無水物を15Torrで、理論段10段相当の蒸留塔で減圧蒸留した。酸化反応での原料のプソイドクメンおよび2,4−ジメチルベンズアルデヒドに対するトリメリット酸収率は86.8モル%、燃焼率は6.8モル%であり、トリメリット酸中のBr化合物は220ppmであった。無水トリメリット酸の溶融色はAPHAが60であった。結果を表1に示す。【0019】実施例2原料をプソイドクメン150g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド42gとした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す【0020】実施例3原料をプソイドクメン96g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド105gとした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。【0021】参考例1原料をプソイドクメン0g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド212gとした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。【0022】比較例1原料をプソイドクメン191g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド0gとした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。【0023】比較例2実施例1と同様な反応器に、原料としてプソイドクメン191g、溶媒として5重量%の含水酢酸375gを仕込んだ。触媒として酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン4水塩、酢酸ジルコニウム、臭化水素をプソイドクメンに対し、コバルト濃度2200ppm、マンガン濃度1000ppm、ジルコニウム濃度40ppm、臭素濃度600ppmとなるように添加し、窒素雰囲気下で加熱し、165℃で0.5MPaで空気を導入し、20分間反応した。続いて前述と同様な方法で触媒をセリウム(1000ppm)、ジルコニウム(20ppm)、臭化水素(2600ppm)となるように追加し、圧力を2MPaとし、220℃で45分反応を継続した。この時の総金属濃度はプソイドクメンに対して4260ppmであり、また、臭素の総量はプソイドクメンに対して3200ppmである。反応後、反応混合物を50℃に冷却した後、得られたスラリーを濾過し、95%含水酢酸でリンスし、粗トリメリット酸結晶を得た。さらに230℃で、窒素を送入して、1時間無水化した。得られた無水物を15Torrで、理論段10段相当の蒸留塔で減圧蒸留した。結果を表1に示す。【0024】比較例3実施例1と同様な反応器に、原料としてプソイドクメン191g、溶媒として5重量%の含水酢酸375gを仕込んだ。触媒として酢酸コバルト4水塩、酢酸マンガン4水塩、四塩化チタン、臭化水素をプソイドクメンに対し、コバルト濃度1700ppm、マンガン濃度1000ppm、チタン濃度70ppm、臭素濃度460ppmとなるように添加し、窒素雰囲気下で加熱し、165℃で0.5MPaで空気を導入し、20分間反応した。続いて前述と同様な方法で触媒をセリウム(640ppm)、チタン(70ppm)、臭化水素(1460ppm)となるように追加し、圧力を2MPaとし、220℃で45分、反応を継続した。この時の総金属濃度はプソイドクメンに対して3480ppmであり、また、臭素の総量はプソイドクメンに対して1920ppmである。反応後、反応混合物を50℃に冷却した後、得られたスラリーを濾過し、95%含水酢酸でリンスし、粗トリメリット酸結晶を得た。さらに230℃で、窒素を流して、1時間無水化した。得られた無水物を15Torrで、理論段10段相当の蒸留塔で減圧蒸留した。結果を表1に示す。【0025】表1【0026】実施例5原料をプソイドクメン150g、2,4−ジメチルベンズアルデヒド21g、2,4−ジメチル安息香酸21gとした以外は実施例1と同様に行った。酸化反応でのトリメリット酸収率は88.0モル%、燃焼率は5.0モル%であった。酸化反応でのトリメリット酸のBr化合物は35ppmであり、得られた無水トリメリット酸の溶融色はAPHAが45であった。【0027】【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、従来法と比較して、本発明により原料にジメチルベンズアルデヒドを含有させたプソイドクメンを用いて液相酸化を行うことにより、トリメリット酸の収率が向上し、Br含有量が低下する。また、該トリメリット酸から純度が高く、着色度しない無水トリメリット酸が得られる。 コバルト、マンガン、ジルコニウムおよび臭素の存在下、炭素数1〜5個の脂肪族モノカルボン酸を溶媒に用いてプソイドクメンを液相空気酸化して、トリメリット酸を製造する方法において、該酸化原料のプソイドクメン中にジメチルベンズアルデヒドを5重量%以上52重量%以下含有させることを特徴とするトリメリット酸の製造法。 臭素添加を少なくとも2段階に分けて行ない、第1段階で全臭素の0〜55重量%を加え、残りを最終段階で加え、第1段階の温度が120〜170℃、最終段階の温度が190〜240℃である請求項1に記載のトリメリット酸の製造法。 触媒中のコバルト、マンガン、ジルコニウムからなる総金属量がプソイドクメンに対して、0.1〜1重量%である請求項1に記載のトリメリット酸の製造法。 触媒総金属量に対し、コバルト含有量が40〜65重量%、マンガン含有量が30〜55重量%、ジニコニウム含有量が1〜5重量%である請求項1に記載のトリメリット酸の製造法。 プソイドクメンに対して、0.08〜0.8重量%の臭素を使用する請求項1に記載のトリメリット酸の製造法。 溶媒とプソイドクメンとの重量比が1:1〜4:1である請求項1に記載のトリメリット酸の製造法。