タイトル: | 特許公報(B2)_ミノサイクリン含有組成物 |
出願番号: | 2000150937 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/165,A61K 9/06,A61K 47/06,A61K 47/38,A61K 47/26,A61P 1/02,A61P 31/04 |
小野 一弘 坂口 英就 早川 生人 JP 4653282 特許公報(B2) 20101224 2000150937 20000523 ミノサイクリン含有組成物 昭和薬品化工株式会社 000187220 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 今村 正純 100096219 塩澤 寿夫 100092635 釜田 淳爾 100095843 小野 一弘 坂口 英就 早川 生人 20110316 A61K 31/165 20060101AFI20110224BHJP A61K 9/06 20060101ALI20110224BHJP A61K 47/06 20060101ALI20110224BHJP A61K 47/38 20060101ALI20110224BHJP A61K 47/26 20060101ALI20110224BHJP A61P 1/02 20060101ALI20110224BHJP A61P 31/04 20060101ALI20110224BHJP JPA61K31/165A61K9/06A61K47/06A61K47/38A61K47/26A61P1/02A61P31/04 A61K 31/165 A61K 9/06 A61K 47/06 A61K 47/26 A61K 47/38 A61P 1/02 A61P 31/04 CAplus/MEDLINE/EMBASE(STN) 特開平11−286448(JP,A) 特開平07−069851(JP,A) 特開平06−211650(JP,A) 特開平02−200624(JP,A) 特開平08−268854(JP,A) 国際公開第99/036098(WO,A1) 特開平07−033643(JP,A) 特開昭61−130228(JP,A) 特開昭62−123120(JP,A) 3 2001335477 20011204 7 20070312 小松 邦光 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含有し、歯周炎などの歯周疾患の治療や予防に有用な医薬組成物に関するものである。【0002】【従来の技術】歯周炎(辺縁性歯周炎)は歯肉のみならず他の歯周組織にも起こる慢性非特異性の炎症であり、その多くは単純性歯周炎から移行する。この疾患では、歯周ポケットの形成、歯の動揺、歯槽骨の吸収、及びポケットからの排膿が認められ、そのほとんどが無痛性に進行する。歯周炎には、特定の歯周溝内グラム陰性桿菌が関与していることが知られている。例えば、成人性歯周炎は Bacteroides gingivalis 、若年性歯周炎には Actinobacillus actinomycetemcomitans、急性壊死潰瘍性歯周炎には Bacteriodes intermediusが関与している(日本歯周病学会会誌、第29巻2号、第463-471 頁)。【0003】歯周炎の治療にミノサイクリンが有効であることが知られている。ミノサイクリンはテトラサイクリン系抗生物質の一種であり、上記の歯周病原性菌に対して強い抗菌作用を示し、歯周炎に対して優れた臨床効果を発揮する(日本歯周病学会会誌、第29巻2号、第472-483 頁)。例えば、塩酸ミノサイクリン3.0%、ヒドロキシエチルセルロース及びグリセリンを含む軟膏を歯周ポケットに直接投与する方法が提案されている。また、歯周炎治療薬として「ベリオクリン歯科用軟膏」(サンスター株式会社販売)が臨床で用いられている。【0004】しかしながら、ミノサイクリンは不安定な物質であることから、ミノサイクリンを有効成分として含む安定な組成物を提供するための技術が検討されている。例えば、特公平1−12728号公報には、マグネシウム化合物を含有する多価アルコールからなる基剤にミノサイクリンまたはその医薬上許容される塩を配合したことを特徴とする非水系の局所投与用組成物が開示されている。また、特公平2−34325号公報には、ミノサイクリン又はその医薬上許容される塩とマグネシウム化合物、水溶性高分子物質、多価アルコール、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーおよび可溶化剤とを配合した歯周疾患治療用組成物が開示されている。さらにまた、特開平11−286448号公報には、多価アルコール基剤中にミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩とアルミニウム化合物とを含む局所投与用の医薬組成物が開示されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ミノサイクリンを有効成分として含有する安定な局所投与用の医薬組成物を提供することにある。また、本発明の別な課題は、局所投与用の医薬組成物に配合されたミノサイクリンを安定化するための物質を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、従来より用いられていた多価アルコール基剤の代わりにゲル化炭化水素などの油性基剤を用いることにより、マグネシウム化合物やアルミニウム化合物などの安定化剤を使用しなくても、油性基剤中のミノサイクリンの安定化を達成化できることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。【0007】すなわち本発明によれば、油性基剤中にミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩を含む局所投与用医薬組成物が提供される。好ましくは、油性基剤はゲル化炭化水素である。さらに好ましくは、ゲル化炭化水素はプラスチベースである。本発明の医薬組成物は好ましくは、さらにセルロース、セルロース誘導体、水溶性高分子化合物及び水溶性でんぷんからなる群から選ばれる1又は2以上の粘着剤を含む。本発明の医薬組成物は好ましくは、さらに崩壊剤を含む。【0008】本発明の好ましい態様によれば、(a)0.01〜15重量%のミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩;(b)20〜97重量%の油性基剤;(c)1〜60重量%の粘着剤;および(d)1〜20重量%の崩壊剤;を含む、医薬組成物が提供される。本発明のさらに好ましい態様によれば、(a)0.01〜15重量%の塩酸ミノサイクリン;(b)20〜97重量%のゲル化炭化水素;(c)1〜60重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファー化デンプン、カルボキシビニルポリマー又はメチルセルロース;および(d)1〜20重量%のショ糖脂肪酸エステル;を含む、医薬組成物が提供される。【0009】本発明の医薬組成物は、好ましくは歯科の治療及び/又は予防、さらに好ましくは歯周疾患の治療及び/又は予防に用いる。本発明の別の側面によれば、ミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩の安定化剤として用いる油性基剤が提供される。【0010】【発明の実施の形態】本発明の医薬組成物は、油性基剤中にミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩を含むことを特徴としている。本発明の医薬組成物は、一般的には口腔内または歯周組織に対して局所投与するための医薬組成物として調製することができ、好ましくは歯科用の医薬組成物として提供される。本発明の医薬組成物は、好ましくは口腔内または歯周組織に対する局所投与に適するように、例えば、粘稠な液状またはペースト状の組成物として提供されることが望ましい。本発明の医薬組成物は、口腔内疾患または歯科領域の疾患、例えば、歯周炎、歯周病または歯槽膿漏などの歯周疾患の治療及び/又は予防に有用である。もっとも、本発明の医薬組成物の用途は上記の態様に限定されることはなく、例えば、皮膚や粘膜に対して外用の医薬組成物として用いることも可能である。【0011】ミノサイクリンの生理学的に許容される塩の種類は特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩を用いることができる。ミノサイクリンまたは生理学的に許容されるその塩は水和物又は溶媒和物であってもよい。溶媒和物を形成する溶媒は生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えばエタノールなどの溶媒和物を用いることができる。ミノサイクリンの塩として塩酸塩を用いることが好ましい。本発明の医薬組成物に含まれるミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩の含有量は、一般的には、組成物重量に対して0.01〜15重量%程度(遊離体換算量)であり、好ましくは0.1〜5重量%程度である。【0012】本発明の医薬組成物で用いる油性基剤の種類は、医薬品分野で一般的に使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ゲル化炭化水素、ワセリン、スクワラン、イソステアリン酸、ミツロウ、流動パラフィン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、綿実油などを1種類又は2種類以上組み合わせて使用することができ、好ましくはゲル化炭化水素を使用することができる。ゲル化炭化水素としては、プラスチベース(ブリストル・マイヤーズスクイブ社)又はポロイド(丸石製薬)などを使用することができる。本発明の医薬組成物に含まれる油性基剤の含有量は、一般的には、組成物重量に対して20〜97重量%、好ましくは60〜97重量%程度であり、より好ましくは70〜90重量%程度である。【0013】本発明の医薬組成物には、セルロース、セルロース誘導体、及び水溶性高分子化合物からなる群から選ばれる1又は2以上の物質を粘着剤として配合してもよい。セルロースとしては結晶セルロースなどを用いることができ、セルロース誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いることができる。これらのうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(マクロゴール等)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアゴム、キサンタンガム、トラガントガム、でんぷんなどを挙げることができる。本発明の医薬組成物に含まれる粘着剤の含有量は、一般的には、組成物重量に対して1〜60重量%程度であり、好ましくは1〜40重量%程度であり、より好ましくは5〜20重量%程度である。【0014】また、本発明の医薬組成物には、崩壊剤を配合してもよい。崩壊剤としては、医薬品分野で一般的に使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乳糖、炭酸水素ナトリウムなどを使用することができ、好ましくはショ糖脂肪酸エステルを使用することができる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合酸(オレイン酸、パルミチン酸及びステアリン酸の混合酸)エステルなどを使用することができる。【0015】本発明の医薬組成物に含まれる崩壊剤の含有量は、一般的には、組成物重量に対して1〜20重量%程度であり、好ましくは1〜10重量%程度である。また、本発明の医薬組成物には、従来公知の安定剤である、マグネシウム化合物(例えば、特公平1−12728号公報、特公平2−34325号公報に記載された化合物)やアルミニウム化合物(例えば、特開平11−286448号公報に記載された化合物)を配合してもよい。【0016】本発明の医薬組成物は常法に従って製造することができ、製造方法は特に限定されないが、例えば、実施例に具体例を示したように、ミノサイクリンまたは生理学的に許容されるその塩、ゲル化炭化水素などの油性基剤、崩壊剤、並びに粘着剤をそれぞれ所定の量だけ容器に添加・混合することによって容易に製造することができる。【0017】また、本発明の医薬組成物の製造にあたり、当業者に利用可能な製剤用添加物を適宜使用してもよい。例えば、緩衝剤;pH調節剤;界面活性剤;可塑剤;結合剤;分散剤;防腐剤;及び/又は着色剤などを本発明の医薬組成物に配合してもよい。これらの製剤用添加物の配合量は、口腔内用、歯科用、または皮膚若しくは粘膜などに適用する外用の医薬組成物に適するように、当業者に適宜選択可能である。本発明の医薬組成物は必要に応じて適宜の加温下に調製してもよいが、ミノサイクリンの安定性を高めるために、非水系で組成物を調製することが望ましい。【0018】上記のようにして製造した本発明の医薬組成物は、そのまま患部(例えば、歯周疾患領域など)に直接的に塗布することによって患者に投与することができ、好ましくは歯周ポケットに局所投与される。なお、塗布量は患部の大きさ、疾患の程度などに応じて適宜選択することができ、例えば、1歯当たり本発明の医薬組成物を約10〜100mgずつ投与することができる。また、投与回数や投与期間も適宜選択することができる。以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。【0019】【実施例】実施例1塩酸ミノサイクリン2g(力価)、ゲル化炭化水素(プラスチベース;ブリストル・マイヤーズスクイブ社)73g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース20g及びカルボキシメチルセルロースナトリウム5gを練合調製器に入れ、一時間練合して本発明の医薬組成物100gを得た。【0020】実施例2塩酸ミノサイクリン2g(力価)、ゲル化炭化水素(プラスチベース;ブリストル・マイヤーズスクイブ社)68g、ショ糖脂肪酸エステル10g、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース20gを練合調製器に入れ、一時間練合して本発明の医薬組成物100gを得た。【0021】実施例3塩酸ミノサイクリン2g、ゲル化炭化水素(プラスチベース;ブリストル・マイヤーズスクイブ社)79g、ショ糖脂肪酸エステル5g、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース14gを練合調製器に入れ、一時間練合して本発明の医薬組成物100gを得た。【0022】試験例1実施例1から3で製造した本発明の医薬組成物を30℃、70%相対湿度の条件下で4カ月間保存した。保存後のミノサイクリンの力価を日本抗生物質基準解説 (1993年版) の円筒平板法に準じて測定した。なお、試料液は以下の通り作製した。約10mg(力価)に対応する量を精密に量り、ジメチルホルムアミド10mlを加えて溶かした後、0.1Mリン酸塩緩衝液(pH4.5)を加えて正確に100mlとし、約0.1mg(力価)/mlの濃度の溶液を作製した。この液を適当量正確に量り、0.1Mリン酸塩緩衝液(pH4.5)で正確に希釈し、規定の濃度の試料液を作製した。測定の結果、実施例1から3の医薬組成物では何れも塩酸ミノサイクリンの力価の有意な低下は認められなかった。【0023】実施例4マクロゴール1500(30g)及びマクロゴール400(20g)をビーカー中に入れ、ホットスターラーにより加熱撹拌して均一とし、この混合物44gと、塩酸ミノサイクリン2g(力価)、ゲル化炭化水素30g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース13.9g、塩化カルシウム10g、硫酸亜鉛0.1gを錬合調製器に入れ、一時間錬合して本発明の医薬組成物100gを得た。【0024】実施例5白色ワセリン86g、コレステロール3g、ステアリルアルコール3g、サラシミツロウ8gをビーカー中に入れ、ホットスターラーにより加熱撹拌して均一とし、この混合物93gと、塩酸ミノサイクリン2g(力価)、カルボキシビニルポリマー5gを錬合調製器に入れ、一時間錬合して本発明の医薬組成物100gを得た。【0025】比較例1塩酸ミノサイクリン2g(力価)、濃グリセリン95g、カルボキシメチルセルロースナトリウム3gを錬合調製器に入れ、一時間錬合して医薬組成物100gを得た。【0026】試験例2実施例4及び5、並びに比較例1で製造した医薬組成物をシリンジに充填して密封し、50℃で15時間保存した。保存後の実施例4、5の各組成物と比較例1の組成物とを比較した結果、比較例では性状の変化が認められたが、実施例4及び5の医薬組成物では性状の変化は認められなかった。【0027】【発明の効果】本発明のミノサイクリン含有医薬組成物は安定であり、特に歯周炎、歯周病または歯槽膿漏などの歯科疾患の治療及び/又は予防に有用である。 油性基剤中にミノサイクリン又は生理学的に許容されるその塩を含む局所投与用医薬組成物であって、(a)0.01〜15重量%の塩酸ミノサイクリン;(b)20〜97重量%のゲル化炭化水素;(c)1〜60重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;および(d)1〜20重量%のショ糖脂肪酸エステル;を含む、上記の医薬組成物。 歯科の治療及び/又は予防に用いる請求項1に記載の医薬組成物。 歯周疾患の治療及び/又は予防に用いる請求項2に記載の医薬組成物。