タイトル: | 特許公報(B2)_免疫賦活剤 |
出願番号: | 2000141181 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/717,A61K 36/899,A61K 36/00,A61P 37/04,A61P 43/00 |
竹内 政保 中村 信之 JP 4698796 特許公報(B2) 20110311 2000141181 20000515 免疫賦活剤 日本食品化工株式会社 000231453 松井 茂 100086689 竹内 政保 中村 信之 20110608 A61K 31/717 20060101AFI20110519BHJP A61K 36/899 20060101ALI20110519BHJP A61K 36/00 20060101ALI20110519BHJP A61P 37/04 20060101ALI20110519BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110519BHJP JPA61K31/717A61K35/78 UA61K35/78 XA61K35/78 YA61P37/04A61P43/00 107 A61K 31/717 A61K 36/899 A61P 37/04 A61P 43/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平07−324036(JP,A) 特開平04−071466(JP,A) 特開平04−218501(JP,A) 特開昭62−201821(JP,A) 特開平05−017503(JP,A) 特開昭63−165325(JP,A) 特開平03−049662(JP,A) 前田浩明,米ぬかアラビノキシランの免疫賦活作用,FOOD Style 21,1999年12月,Vol. 3, No. 12,pp.56-58 Ghoneum, M.,Enhancement of human natural killer cell activity by modified arabinoxylane from rice bran (MGN-3),International Journal of Immunotherapy,1998年,Vol. 14, No. 2,pp. 89-99 Maeda, M. et al.,Physiological effects of arabinoxylan on human cell lines,Progress in Biotechnology,1992年,7(Xylans Xylanases),pp. 573-576 江頭祐嘉合,穀物由来のヘミセルロース画分を中心とする生理的機能性を有する食物繊維素材,Foods & Food Ingred J Jpn,1999年10月 1日,No. 183,pp. 34-40 菓子総合技術センター,飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズ 水溶性コーンファイバー(アラビノキシラン) 農林水産省食品流通局S,水溶性コーンファイバー 平成2年度 アラビノキシラン,1991年 3 2001322942 20011120 7 20070510 原口 美和 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、トウモロコシ外皮を原料とする免疫賦活剤に関する。【0002】【従来の技術】免疫系は、外来のウイルスや微生物などの侵入、癌細胞等の異物を排除し、生体の恒常性を維持するために重要な生体の防御機構の一つであり、加齢、ストレス、疲労や環境因子などの要因により、免疫機能が低下した場合、各種の疾病や感染症が引き起こされやすくなると考えられている。【0003】従って、生体の防御機能である免疫力を強化することは、生体の恒常性の維持に重要であり、免疫系を活性化する免疫賦活物質は、食品や薬品として広い用途がある。【0004】従来、免疫賦活物質やその製造方法として様々なものが提案されており、その一つに米糠のヘミセルロースの部分分解物が知られている。【0005】例えば、特許公報2532899号(特開平1−153701号公報)には、米糠からアルカリ抽出して得られるヘミセルロースを糸状菌で資化させて免疫賦活作用を有するヘミセルロースの製造方法が記載されており、特開平9−23895号公報には、植物組織水溶性多糖体を調製して糸状菌の菌体外酵素で反応させて免疫力増強物質を生成する方法が記載されている。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の製造方法により得られる米糠由来の免疫賦活作用を有するヘミセルロースや免疫力増強物質の免疫賦活効果は、in vitroでナチュラルキラー細胞(NK−細胞)の増加、活性効果を測定しているだけであり、実際に経口摂取した場合にも免疫賦活作用があるかどうかは定かではなかった。【0007】また、特に前者の製造方法では、一定の品質の反応生成物を得ることが難しく、さらに、糸状菌の培養に15日間もかかるため、工業的に製造する場合には好ましい方法とは言えなかった。【0008】そして、トウモロコシ外皮から調製されるヘミセルロース及びその部分分解物が免疫賦活作用を有するかどうかについてはこれまで知られていなかった。【0009】従って、本発明の目的は、経口摂取することにより生体の免疫力を活性化する作用を有するトウモロコシ外皮由来の免疫賦活剤を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、トウモロコシ外皮から調製されたヘミセルロースの部分分解物が免疫賦活作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。【0011】 すなわち、本発明の免疫賦活剤は、トウモロコシ外皮から澱粉質及び蛋白質を除去した残部をアルカリ抽出して得られたヘミセルロースを、さらにキシラナーゼで処理したヘミセルロースの部分分解物を有効成分とすることを特徴とする。【0012】本発明によれば、安全で、経口摂取することにより免疫力を活性化できる免疫賦活剤を提供できる。【0013】【発明の実施の形態】 本発明の免疫賦活剤の有効成分であるトウモロコシ外皮から得られるヘミセルロースの部分分解物の調製方法としては、ヘミセルロースをより高純度に得るために、トウモロコシ外皮から澱粉質、蛋白質、更に必要に応じて脂質、無機質等を除去した残部をアルカリ抽出してヘミセルロースを調製する。【0015】トウモロコシ外皮から澱粉質、蛋白質、更に必要に応じて脂質、無機質等を除去する方法としては、酵素処理、化学的処理、物理的処理のいずれを採用してもよく、あるいはこれらを適宜組み合わせてもよい。酵素処理は、例えばα−アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の澱粉分解酵素、プロテアーゼ等の蛋白分解酵素、リパーゼ等の脂質分解酵素、セルラーゼ等の繊維素分解酵素を、pH3〜9、温度30〜100℃の条件下に添加、作用させて処理することにより行われる。また、化学的処理は、例えばトウモロコシ外皮に鉱酸,有機酸の水溶液を添加し、pH2〜5の条件下で加熱するか、又は食品用界面活性剤を添加し、pH3〜8の条件下で熱処理することにより行われる。更に物理的処理は、例えばトウモロコシ外皮をホモゲナイザー、ハンマーミル等の粉砕機で粉砕した後、篩別することにより行われる。【0016】 また、ヘミセルロースを部分分解する方法としては、上記のようにして調製したヘミセルロースを、キシラナーゼで処理する方法が採用される。【0017】 上記ヘミセルロースは、例えば以下のようにして調製することができる。【0018】好ましくは上記前処理をしたトウモロコシ外皮5〜20質量部に、水80〜95質量部を添加し、アルカリ化合物を添加してpH10〜13に調整し、80〜140℃で0.5〜10時間撹拌混合して、ヘミセルロースを抽出する。アルカリ化合物としては、特に制限はなく、例えば水酸化カルシウムや水酸化ナトリウムが挙げられる。なお、アルカリ化合物は予め水溶液にして加えてもよい。【0019】次いで、この溶液を濾過して、濾液を回収し、この抽出液を酸で中和する。酸としては、特に制限はなく、有機酸や無機酸を用いることができる。【0020】この中和液は、脱色、脱塩してそのまま、あるいは濃縮して、又はさらに噴霧乾燥や凍結乾燥により粉末化することによりヘミセルロース粗精製物として用いることができる。【0021】またさらに、上記中和液から、中和によって沈殿した蛋白質を遠心分離などの手段で分離除去し、必要に応じてその上澄液を透析、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理、限外濾過膜処理、アルコール精製、濾剤処理等の単独又は適宜組み合わせで処理することにより、任意の純度のヘミセルロースを得ることができる。【0022】また、本発明で用いられるヘミセルロースの部分分解物は、例えば以下のようにして調製することができる。【0023】上記のようにトウモロコシ外皮をアルカリ抽出して得られた抽出液を、清澄濾過した後、pH調整し、50〜60℃の温度下にキシラナーゼを添加して反応させる。キシラナーゼの添加量は、抽出物の固形分1g当たりに対して、0.0001〜10単位程度が好ましく、反応時間は3〜96時間程度が好ましい。【0024】なお、キシラナーゼの力価の測定は、トウモロコシ外皮からアルカリ抽出して得たヘミセルロースを基質として、pH7、60℃の反応条件下で、1分間に1μmolのキシロースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位とすることにより行った。【0025】また、キシラナーゼとしては、糖化型のものより、液化型のものが好ましく、カビ起源のものでも、バクテリア起源のものでも使用できるが、バクテリア起源のキシラナーゼの方が純度が高いので好ましい。特に好ましい例としては、特公昭50−13357号公報に記載されたアルカリ側に至適pHを有するアルカリキシラナーゼが挙げられる。【0026】次いで、加熱等により酵素を失活させた後、反応液を、脱色、脱塩処理し、濃縮、あるいはさらに乾燥することにより、ヘミセルロースの部分分解物を得ることができる。【0027】また、前記のようにして精製したヘミセルロースを3〜30質量%含有する溶液を調製して、必要に応じてpH調整し、上記と同様にして酵素反応を行ない、酵素を失活させた後、遠心分離等により固液分離し、上澄液を濃縮、乾燥してもよい。【0028】なお、上記のような方法でトウモロコシ外皮から調製されたヘミセルロースの部分分解物は、「セルエース」(商品名、日本食品化工株式会社製)として市販されている。【0029】本発明において、トウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物は、その平均分子量が2万〜20万であることが好ましい。このような平均分子量を有するヘミセルロースの部分分解物は、その5質量%水溶液の粘度が3〜20cps(B型粘度計、60rpm、25℃)と低粘度であり、飲食品等の原料に添加したときに、飲食品等の食感や風味を良好に保つことができる。ヘミセルロースの部分分解物の平均分子量が20万を超えると、粘度が高くなりすぎて、飲食品の原料等に添加しにくくなり、2万未満であると、食物繊維としての生理活性効果が失われる虞があるため好ましくない。【0030】 本発明の免疫賦活剤は上記ヘミセルロースの部分分解物を主成分として含有し、例えば上記ヘミセルロースの部分分解物を含む水溶液、濃縮液あるいは乾燥粉末などとして製品化することができる。なお、上記ヘミセルロースの部分分解物の他に、除去しきれなかった澱粉質、蛋白質や、若干のリグニン、セルロース、灰分等が含有されていてもよい。【0031】本発明の免疫賦活剤は、乾燥粉末とした場合でも容易に水に溶けるので、そのまま健康飲食品、医薬品として利用可能である。また、飲食品に少量添加することにより、飲食品の風味、食感を害することなく免疫賦活効果を付与することができる。【0032】本発明の免疫賦活剤を飲食品に添加する場合、飲食品の食感を害することなく免疫賦活効果を期待できる添加量としては、0.1〜10質量%が好ましい。また、本発明の免疫賦活剤の摂取量は、免疫賦活作用を発現するためには1〜10g/日が好ましく、3〜5g/日が特に好ましい。【0033】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例トウモロコシ外皮100質量部に、水1000質量部、水酸化カルシウム1質量部を加え、85℃で3時間加熱した。この反応液を60℃まで冷却した後、硫酸を添加してpH7に調整した。【0034】そして、特公昭50−13357号公報に記載された方法で調製したアルカリキシラナーゼ(商品名「セルザイム」、日本食品化工株式会社製)を、この反応液の固形分1g当たり0.01単位添加して、60℃で48時間反応させた。酵素反応終了後、90℃で30分間加熱して酵素を失活させた後、濾過して濾液を回収し、さらに清澄濾過、脱色、脱塩を行ない精製した後、スプレードライヤーで噴霧乾燥してトウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物の粉末を得た。【0035】試験例14週齢の雌マウス(C3H/Hej)12匹を、7日間の予備飼育を行なった後、2群(1群6匹)に分けて、試験群には上記実施例1で製造したトウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物を蒸留水で溶解したものを、胃ゾンデを用いて28日間連続経口投与(1回当たり50mg/kg)した。また、対照群には蒸留水を同様にして投与した。なお、試験期間中の摂餌及び摂水は自由とした。【0036】そして、毎日9:00〜10:00に症状観察及び体重等を測定した。試験期間中の体重推移、摂餌及び摂水量についての結果を表1、2に示す。【0037】【表1】【0038】【表2】【0039】表1、2の結果から、トウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物の摂取による体重等への影響はないことが分かる。なお、試験期間中の動物の一般症状は良好であり、途中、死亡又は切迫屠殺状況の動物は認められなかった。【0040】そして、28日間の試験終了後、供試されたマウスをネンブタール麻酔下において開腹し、腹部大静脈より採血を行ない、脾臓を摘出した。なお、解剖時の剖検において、トウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物の投与に起因するような変化は確認されなかった。【0041】摘出した脾臓から、常法により脾臓細胞を調製し、10(v/v)%FCS添加RPMI−1640培地で脾臓細胞の細胞数を調整して、24穴プレートに2×106/ml/ウェルになるように分注した。【0042】そして、ConA(50μg/ml)を100μl加え、最終濃度5μg/mlとし、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。【0043】培養後、各ウェルの細胞浮遊液を0.45μmシリンジフィルターで濾過し、その濾過液を、IL−2、INF−γ及びIL−4活性測定用サンプルとした。【0044】各種サイトカインの濃度の測定は、BIOSOURCE社Cytoscreeenキットを使用し、プレートリーダーシステムにて行なった。【0045】各測定値は、平均値±標準偏差で表し、有意差検定はstudent’st-testにより、p<0.05、p<0.01の危険率で有意差の有無を判定した。その結果を表3に示す。【0046】【表3】【0047】表3から分かるように、トウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物の投与群において、脾臓細胞のConA刺激に対するサイトカイン(IL−2及びIFN−γ及びIL−4)産生能の明らかな上昇促進作用が示され、IL−2及びIFN−γについては対照群に対して有意差(p<0.01)が認められた。【0048】これらの結果から、トウモロコシ外皮由来のヘミセルロースの部分分解物の摂取は、通常の生活においては生体に抗原性等の反応を引き起こすことなく、また、感染やストレスを受けた際には免疫機能を充分に促進させる作用があることが確認された。【0049】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、トウモロコシ外皮由来の安全で、経口摂取することにより免疫力を活性化できる免疫賦活剤を提供できる。【0050】本発明の免疫賦活剤を摂取することにより、免疫力が低下し、種々の疾患に罹病し易くなった人の免疫力の強化をすることができる。【0051】また、本発明の免疫賦活剤は、医薬品、飲食品、あるいはそれらへの添加物として、安心して長期にわたり継続して摂取することができ、さらに、ヘミセルロースの部分分解物は低粘度であるため、飲食品等の原料に添加したとき飲食品等の食感や風味を良好に保つことができる。 トウモロコシ外皮から澱粉質及び蛋白質を除去した残部をアルカリ抽出して得られたヘミセルロースを、さらにキシラナーゼで処理したヘミセルロースの部分分解物を有効成分とすることを特徴とする免疫賦活剤。 前記ヘミセルロースの部分分解物の平均分子量が2万〜20万である請求項1記載の免疫賦活剤。 経口投与によりサイトカイン産生促進作用を有する請求項1又は2記載の免疫賦活剤。