タイトル: | 特許公報(B2)_皮膚改善剤 |
出願番号: | 2000136888 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/20,A61K 31/201,A61K 8/36,A61P 17/00,A61P 31/04 |
龍 敦子 松本 元伸 小林 泰信 清水 満章 盛田 直毅 JP 4776058 特許公報(B2) 20110708 2000136888 20000510 皮膚改善剤 サンスター株式会社 000106324 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 小原 健志 100086427 中川 博司 100090066 舘 泰光 100094101 斎藤 健治 100099988 藤井 淳 100105821 関 仁士 100099911 中野 睦子 100108084 龍 敦子 松本 元伸 小林 泰信 清水 満章 盛田 直毅 JP 1999285671 19991006 20110921 A61K 31/20 20060101AFI20110901BHJP A61K 31/201 20060101ALI20110901BHJP A61K 8/36 20060101ALI20110901BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 31/04 20060101ALI20110901BHJP JPA61K31/20A61K31/201A61K8/36A61P17/00A61P31/04 A61K 31/20 A61K 8/36 A61K 31/201 A61P 17/00 A61P 31/04 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平08−040824(JP,A) 特開平10−175843(JP,A) 特開平04−504562(JP,A) 英国特許第01372837(GB,B) Journal of General Microbiology,1981年,Vol.124 No.1,pp.173-179 Biosci. Biotech. Biochem.,1993年,Vol.57 No.12,pp.2194-2195 Chemical Abstracts,AN 1961:78254 Chemical Abstracts,AN 1971:40070 1 2001172176 20010626 12 20070416 鈴木 理文 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、黄色ブドウ球菌の増殖を阻害し、且つ表皮ブドウ球菌を増殖させることによる皮膚改善剤に関する。【0002】【従来の技術】従来より、健常な皮膚表面に存在する主要な菌として表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が知られている。この表皮ブドウ球菌を主体とする皮膚常在菌は、紫外線を吸収することによって紫外線による障害から皮膚を保護したり、活性酸素消去能を有する酵素を産生する。また、皮脂を代謝して、その代謝産物によって皮膚を乾燥や炎症から保護する役割がある(特開平9-77653号公報)。さらに、常在菌が形成する菌叢は病原性細菌の増殖から競争的阻害により皮膚を防御していると考えられている。【0003】黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は通常の皮膚にも存在しているが、皮膚が乾燥したり、肌荒れの状態となっている場合には、表皮ブドウ球菌が減少して病原性細菌である黄色ブドウ球菌が増加し、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌の数のバランスが崩れていることが知られている。特に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚上や創傷などによる炎症部位では、黄色ブドウ球菌が多く存在し、黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌のバランスが大きく崩れており、黄色ブドウ球菌の産生する毒素や抗原などによってアトピー性皮膚炎及び炎症反応が悪化する事が知られている。また、黄色ブドウ球菌の産生する毒素は表皮細胞の増殖を促進し、皮膚の乾燥、肌荒れ等の形成および悪化を引き起こす事が知られている。従って、これら症状の予防乃至改善のためには、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌のバランスの崩れを健常な皮膚の状態まで回復、又は近づけることが必要であると考えられている。【0004】従来は、これら症状に対して、抗菌性物質等の薬剤が用いられてきた。これら薬剤は、刺激やカブレの原因になったり、MRSAなどの耐性菌を生じるなどの問題がある。また、これらは有害な菌のみならず、皮膚常在菌叢を形成し有害菌の定着を防いでいると考えられている表皮ブドウ球菌等に対しても抗菌作用を示してしまうという欠点があった。【0005】ある種の脂肪酸に抗菌作用があり、その中にはPropionibacterium acnesに対して特異的に抗菌作用を示すものがあることが知られている(特開平8-92058号公報)。また、特定の脂肪酸がPropionibacterium acnes、Staphylococcus epidermidisなどの増殖促進剤として用いられることや、それ以外の特定の脂肪酸がStaphylococcus aureusの生育阻害因子として用いられることが知られている(特開平9-77653号公報)。【0006】しかし、単独の脂肪酸により、同じStaphylococcus属の菌である表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌に対して異なる作用が得られること、すなわち黄色ブドウ球菌の増殖を阻害し、且つ表皮ブドウ球菌を増殖させる作用が得られることは知られていなかった。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の増殖を阻害し、且つ表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を増殖させることによる皮膚改善剤を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌は同じStaphylococcus属の菌であるため、単独の物質により一方の菌の増殖を阻害し、もう一方の菌を増殖させることは困難であると考えられていた。しかしながら、本発明者は、特定の脂肪酸が、意外にも、黄色ブドウ球菌の増殖を阻害し、且つ表皮ブドウ球菌を増殖させる作用を有していることを見出した。【0009】即ち、本発明は下記の各項に係る発明を提供するものである。【0010】項1 黄色ブドウ球菌の増殖を阻害し、且つ表皮ブドウ球菌を増殖させる有効成分として、主鎖の炭素数が10〜18の分岐飽和脂肪酸、6−ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、リノール酸メチルエステル、α−リノレン酸メチルエステル及びアラキドン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する皮膚改善剤。【0011】項2 黄色ブドウ球菌の増殖を阻害し、且つ表皮ブドウ球菌を増殖させる有効成分として、12−メチルテトラデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、6−ヘキサデセン酸、α−リノレン酸、リノール酸メチルエステル、α−リノレン酸メチルエステル及びアラキドン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する皮膚改善剤。【0012】項3 乾燥皮膚の改善作用を有する項1又は2に記載の皮膚改善剤。【0013】項4 アトピー性皮膚炎の改善作用を有する項1又は2に記載の皮膚改善剤。【0014】本発明において、「皮膚改善」とは、皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌を増殖し、且つ黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することによるものである。【0015】【発明の実施の形態】本発明の皮膚改善剤の有効成分である脂肪酸は、主鎖の炭素数が10〜18である分岐飽和脂肪酸(例えば、12−メチルテトラデカン酸や13−メチルテトラデカン酸)、6−ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、リノール酸メチルエステル、α−リノレン酸メチルエステル及びアラキドン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である。【0016】本発明の皮膚改善剤においては、12−メチルテトラデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、6−ヘキサデセン酸、α−リノレン酸、リノール酸メチルエステル、α−リノレン酸メチルエステル及びアラキドン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として用いることが好ましく、12−メチルテトラデカン酸、13-メチルテトラデカン酸及びα−リノレン酸が最も優れた作用を示すのでより好ましい。【0017】本発明の皮膚改善剤において、有効成分である脂肪酸は、トリグリセリドの状態で配合されていてもよい。【0018】本発明皮膚改善剤の有効成分は、化学的に合成されたものであってもよいし、植物又は動物由来のものであってもよい。【0019】本発明の有効成分を多く含む植物としては、サフラワー、マカデミアナッツ、ツバキ、シソ、ゴマ、アマニ、エノ、エゴマ、ナタネ、ボラージ、月見草、ヤバネカズラ、大豆等が好ましく例示される。これら植物を公知の方法で抽出、精製等の処理をして本発明の有効成分、又は本発明の有効成分を含有する植物性油脂を得ることができる。【0020】また、本発明の有効成分を多く含む動物性油脂としては、ラノリン、卵黄油、タートル油、魚油、ミンク油などが挙げられる。【0021】ラノリンの脂肪酸画分には、本発明の有効成分である12−メチルテトラデカン酸及び13−メチルテトラデカン酸が含まれており、本発明では、ラノリンを精製して得られる、12−メチルテトラデカン酸及び/又は13−メチルテトラデカン酸を含有する脂肪酸画分を用いるのが好ましい。より具体的には、12-メチルテトラデカン酸を10%(「%」は「重量%」を意味する。以下同様とする。)以上、好ましくは30%以上含有するラノリンの脂肪酸画分、又は13-メチルテトラデカン酸を10%以上、好ましくは30%以上含有するラノリンの脂肪酸画分を用いることができる。或いは、12-メチルテトラデカン酸及び13-メチルテトラデカン酸を含有し、これら脂肪酸を、合わせて10%以上、特に、合わせて30%以上含有するラノリンの脂肪酸画分を好ましく用いることができる。【0022】なお、本発明で用いる動植物性油脂は、常温での性状は問われず、液状、半固体状又は固体状のいずれであってもよい。【0023】本発明の皮膚改善剤は、上記したような特定の脂肪酸そのもの、或いは上記したような動植物性油脂そのものであってもよい。或いは医薬又は化粧品基剤に本発明の有効成分を混合し、当該形態における常法に従って調製したものであってもよい。また、経日安定性を改善するために、上記脂肪酸類を、常法に従ってリポソームなどのマイクロカプセル形態のものに担持させることもできる。【0024】本発明の皮膚改善剤の形態としては、特に限定されるものではなく、通常の医薬又は化粧料(頭髪用化粧料も含む)の基剤と共に常法に従って調製されたものであればよい。かかる形態としては、例えば、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、パック剤、パップ剤、液剤、スプレー剤、入浴剤等;化粧水、乳液、リップクリーム、マッサージクリーム、マッサージオイル、パック、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、洗顔剤、ボディシャンプー、浴用化粧品、クレイパック等;シャンプー、ヘアクリーム、ヘアトニック、育毛剤、泡状整髪料、ヘアワックス等が挙げられる。【0025】本発明の皮膚改善剤には通常医薬又は化粧品に用いられる成分を添加剤として配合することができる。添加剤としては、例えば油性成分、界面活性剤、保湿剤、アルコール、増粘剤、紫外線吸収剤、着色剤、香料、酸化防止剤等が挙げられる。また、グリチルリチン酸やアラントインなどの抗炎症剤;ヨモギエキス、スギ抽出物、柿葉エキスなどの植物抽出物からなる抗炎症剤;ルイボスエキス、茶エキス、シラカバエキスなどの天然抗酸化物質;塩化亜鉛、塩化マンガンなどの二価の金属塩を使用することもできる。【0026】本発明皮膚改善剤における有効成分の配合量は、本発明所期の効果が得られる限り特に制限されず、医薬又は化粧品の形態などに応じて広い範囲から適宜選択することができるが、組成物全重量に基づいて0.001〜5%程度が好ましく、0.001〜2%程度がより好ましく、0.0025〜1%程度がさらに好ましい。0.001%以上であるとより優れた皮膚改善効果が得られ、5%以内であると、製剤の安定性が確保し易いので好ましい。【0027】本発明の皮膚改善剤の使用量は、皮膚の状態乃至症状や皮膚改善剤の形態に応じた適量を、1日1回又は数回に分けてその形態に応じた方法で皮膚(肌)に塗布乃至適用することができる。本発明の皮膚改善剤は、入浴、洗顔、水仕事の後などに使用するのが好ましい。【0028】本発明の皮膚改善剤によれば、皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌を増殖し、且つ黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することにより、皮膚の乾燥の防止又は改善、アトピー性皮膚炎による皮膚症状の改善、肌荒れ防止又は改善等の作用が得られる。【0029】【実施例】本発明を以下の実験例及び処方例により説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものでない。【0030】実験例1:脂肪酸の皮膚細菌増殖抑制または増殖促進作用表1〜表4に示す脂肪酸を所定の濃度[200μg/ml,100μg/ml又は50μg/ml]となるように添加したTSB(培地組成[g/l];トリプチケースペプトン15、ファイトンペプトン5、塩化ナトリウム5、寒天15)に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を1×107個/mlとなるように接種し、37℃で18時間好気培養した。表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)についても同様にして培養した。【0031】目視による菌の増殖が確認できなかったものから一白金耳をとり、TSA(培地組成[g/l];トリプチケースペプトン17、ファイトンペプトン3、塩化ナトリウム5、リン酸2カリウム2.5、ブドウ糖2.5)に塗抹し、37℃で18時間培養して生菌の有無を確認した。【0032】結果を表1〜表4に示す。【0033】【表1】【0034】【表2】【0035】【表3】【0036】【表4】【0037】表1〜表4において、C14:0=ミリスチン酸、C14:1=ミリストレイン酸、C15:0 a=12−メチルテトラデカン酸、C15:0 i=13−メチルテトラデカン酸、C16:0=パルミチン酸、C16:1−6=6−ヘキサデセン酸、C16:1−9=パルミトレイン酸(9−ヘキサデセン酸)、C18:0=ステアリン酸、C18:2=リノール酸、C18:3α=α−リノレン酸、C18:3γ=γ−リノレン酸、C18:2m=リノール酸メチルエステル、C18:3m=リノレン酸メチルエステル、C20:4=アラキドン酸をそれぞれ意味する。【0038】また、表1〜表4において、++:著しく増殖, +:増殖あり, ±:やや増殖, −:増殖確認できず,−*:殺菌作用あり、をそれぞれ意味する。【0039】菌の増殖については、目視にて確認した結果を示した。なお、“−”については、目視では菌の増殖を確認できなかったが、TSAでの培養にて菌が死滅していないことが確認できた。“−*”については、TSAでも菌が死滅していることが確認できた。【0040】表1及び表2に示された結果より、飽和脂肪酸の中でも、直鎖飽和脂肪酸であるミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)及びステアリン酸(C18:0)は、表皮ブドウ球菌及び黄色ブドウ球菌のいずれの増殖作用も有しているが、分岐飽和脂肪酸である12−メチルテトラデカン酸(C15:0a)及び13−メチルテトラデカン酸(C15:0i)は、表皮ブドウ球菌を増殖し、且つ黄色ブドウ球菌の増殖を阻害していることがわかる。【0041】また、不飽和脂肪酸であっても、ミリストレイン酸(C14:1)は表皮ブドウ球菌及び黄色ブドウ球菌のいずれをも増殖させる作用を有しているが、本発明の特定の脂肪酸である6−ヘキサデセン酸(C16:1-6)、パルミトレイン酸(C16:1-9)、リノール酸(C18:2)、α−リノレン酸(C18:3α)及びアラキドン酸(C20:4)は、いずれも、表皮ブドウ球菌を増殖し、且つ黄色ブドウ球菌の増殖を阻害していることがわかる。【0042】α−リノレン酸とγ−リノレン酸を比較すると、α−リノレン酸は表皮ブドウ球菌を増殖させる作用を有しているが、γ−リノレン酸は表皮ブドウ球菌を増殖させる作用がほとんどなく、リノレン酸であっても、二重結合の位置の違いにより異なる作用を示すことがわかる。【0043】表3及び表4に示された結果からは、リノール酸メチルエステル(C18:2m)及びリノレン酸メチルエステル(C18:3m)は、表皮ブドウ球菌を増殖させる作用に非常に優れており、かつ黄色ブドウ球菌をほとんど増殖させなかったことがわかる。【0044】以下に本発明皮膚改善剤の処方例を示す。これらは、その形態における常法に従って製造できる。【0045】【0046】【0047】【0048】【0049】【0050】【0051】【0052】【発明の効果】本発明の特定の脂肪酸によれば、皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌を増殖し、且つ黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することができ、これら菌のバランスの崩れを健常な皮膚の状態まで回復乃至近づけることが可能となる。従って、本発明特定の脂肪酸を含有する医薬又は化粧品は、皮膚の乾燥防止又は改善、肌荒れ改善、アトピー性皮膚炎の症状改善等の皮膚の状態を改善するために用いることができる。 12−メチルテトラデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、及び6−ヘキサデセン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するアトピー性皮膚炎の改善用皮膚改善剤。