生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_水酸基含有オキセタン化合物
出願番号:2000132880
年次:2011
IPC分類:C07D 305/06


特許情報キャッシュ

松谷 寛 佐藤 和也 加藤木 茂樹 西山 信乃 JP 4655172 特許公報(B2) 20110107 2000132880 20000427 水酸基含有オキセタン化合物 日立化成工業株式会社 000004455 松谷 寛 佐藤 和也 加藤木 茂樹 西山 信乃 20110323 C07D 305/06 20060101AFI20110303BHJP JPC07D305/06 C07D 305/00-305/14 C08G 65/18 REGISTRY (STN) CAplus (STN) MARPAT (STN) 特開平10−158385(JP,A) 特開昭62−273936(JP,A) FREDRIKSEN,S.B. et al,The Synthesis of 12-Crown-3 Ligands Carrying Ligating Side-arms,Acta Chemica Scandinavica,1992年,Vol.46, No.6,p.574-588 KLEINFELLER,H.,Abspaltung der Nitrogruppe aus tertiaren Nitroverbindungen, I.: Uber Derivate des "Nitro-isobutylglycerins",Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft (A and B Series),1929年,Vol.62, No.6,p.1582-1590 2 2001302651 20011031 13 20070309 中西 聡 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、開環重合および付加反応などに有用な、オキセタニル基を有する低粘性の化合物に関するものであり、該オキセタニルを有する化合物を用いた硬化物は、優れた機械的性質(引張強さなど)、電気的性質(電気絶縁性、低誘電率など)、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを示すものであり、エポキシ樹脂の代替品として、例えば、接着剤組成物、塗料組成物、加熱により硬化する熱硬化型組成物、または紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型組成物などへの応用が期待できる。【0002】【従来の技術】 4員環の環状エーテル化合物であるオキセタンは、炭素−酸素間の結合が分極していることから高い反応性を示し、ルイス酸などを反応開始剤に用いたオキセタンの開環重合(S.Inoue and T.Aida,“Ring Opening Polymerization,” K.J.Ivin and T.Saegusa,Eds.,Elsevier,London,1984,Vol.1,pp.185〜298など参照)や、トリアルキルアルミニウム−水反応生成物を触媒として用いたオキシメチルオキセタンのトリメチルシリルエーテルの開環重合(特開平2−29429号公報参照)などが報告されている。【0003】 また、カチオン重合におけるオキセタンの高い反応性を利用し、光酸発生剤存在下での光カチオン重合が報告されている。例えば、下記一般式(3)に示すオキセタン化合物を用いた活性エネルギー線硬化型組成物は、短時間の光照射により、重合度が高くかつ密着性に優れた硬化物を与える(特開平11−130766号公報参照)。【化7】(式中、R4はメチル基またはエチル基を示し、R5、R6は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、フェニル基又はトリハロゲノメチル基を示す。)【0004】 一般式(3)に示す化合物を用いた樹脂硬化物は、分子中に水酸基が存在するため密着性に優れている。【0005】 また、最近、光酸発生剤存在下でのオキシランの光カチオン重合において、アルコール類を添加すると、光硬化反応がより高速に進行する結果が相次いで報告されている(例えば、J.V.Crivello他,J.Radiat.Curing,13,3(1986)、特開平11−228610号公報参照)。アルコール類の水酸基が連鎖移動反応に関与しているため、このような現象が起こると説明されている(Chemistry&Technology of UV&EB Formulation for Coatings,Inks&Pigments,Ed.by K.Dietliker,SITA Technology Ltd,London,1991,pp.352−358参照)。一般式(3)に示す化合物は分子中に水酸基を有しているため、光酸発生剤存在下でオキセタン化合物の光カチオン重合が同様に高速で進行すると期待できる。【0006】 しかしながら、一般式(3)に示す化合物は分子中に剛直な芳香環を有しているため、粘度が高く取り扱いが困難であるという問題がある。また、近年環境への配慮から無溶媒プロセスが盛んに取り上げられており、一般式(3)に示す化合物では、ベースポリマーとの相溶性の悪さからこの要求を満足することはできないという問題点があった。【0007】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、速い硬化性と密着性に優れ、低粘度の樹脂組成物を与えることのできる分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系または脂環系化合物を提供するものである。【0008】【課題を解決するための手段】 本発明者らは鋭意検討した結果、分子中にオキセタニル基を2個以上、水酸基を1個以上有する脂肪族化合物は常温で液体であり、また、水酸基による連鎖移動反応を伴いながら光硬化反応がより高速に進行することを見出した。さらに、分子中の水酸基により、密着性に優れた硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。【0009】 すなわち、本発明は、分子中にオキセタニル基を2個以上、水酸基を1個以上有する脂肪族系化合物に関する。【0010】 本発明は、[1]下記一般式(a)のいずれかで表される分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系化合物に関する。【化4】 また、本発明は、[2]前記脂肪族系化合物が、以下に記載のいずれかの化合物である、分子中にオキセタニル基と水酸基を有する、上記[1]に記載の脂肪族系化合物。【化5】【0011】【発明の実施の形態】 本発明の分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系または脂環系化合物は、分子中にオキセタニル基と水酸基を有しているならば、いかなる脂肪族系あるいは脂環系化合物でもかまわない。そのなかで、1分子中にオキセタニル基を2〜6個有し、かつ水酸基を1〜6個有するものは、硬化性に優れており好ましい。オキセタニル基を1分子中に1個有するものは硬化物の強度が低いので好ましくない。1分子中のオキセタニル基が6個を超えると重合物の架橋密度が高すぎるため取り扱いにくく、また分子内反応も併発するため好ましくない。また、1分子中の水酸基が6個を超えると、硬化物の親水性が強くなり、吸湿性の問題が出てくるので好ましくない。本発明の分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系または脂環系化合物として以下の化合物が好ましい例として挙げられる。【0012】【化14】【0013】 また、本発明の分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系または脂環系化合物のうち、下記一般式(1)で表される化合物は、合成が容易であるため好ましい。【化15】【0014】 一般式(1)中Qは酸素または硫黄原子を示すが、合成の容易さから酸素原子が好ましい。また、式中pは0〜6までの整数を示すが、入手の容易さからp=1が好ましい。【0015】 一般式(1)中R1としては水素原子、未置換または脂肪族系または脂環系有機基で置換されたメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素数1から6までのアルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、パーフルオロヘキシル基などの炭素数1から6までのパーフルオロアルキル基などが挙げられる。これらの中で、R1として水素原子、メチル基、エチル基のものはオキセタン含有率が高く、好ましい。【0016】 一般式(1)中R2は2〜4の整数nの値に対応する2〜4価の脂肪族系または脂環系有機基であれば、特に制限はない。具体的にはn=2の場合、R2としては二価の脂肪族系または脂環系有機基である。そのような分子中にオキセタニル基と水酸基を有するn=2の脂肪族系または脂環系化合物として、例えば以下の化合物などが挙げられる。【化16】【0017】 n=3の場合、R2としては三価の脂肪族系または脂環系有機基である。そのような分子中にオキセタニル基と水酸基を有する化合物として、以下の化合物が挙げられる。【化17】【0018】 n=4の場合、R2としては四価の脂肪族系または脂環系有機基である。そのような分子中にオキセタニル基と水酸基を有する化合物として、以下の化合物が挙げられる。【化18】【0019】【0020】【0021】【0022】【0023】 本発明の分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系または脂環系化合物は、多価アルコールに反応後水酸基が残るように等量を調整した(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル トシラートを塩基の存在中で作用させることにより製造できる。【0024】 または、多価アルコールの水酸基の一部を保護し、残りの水酸基と(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル トシラートを塩基の存在中で反応させた後、脱保護することにより製造できる。【0025】 また、本発明の一般式(1)に示す分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系または脂環系化合物については、塩基の存在下、ヒドロキシメチルオキセタンを脂肪族系または脂環系オキシラン化合物に作用させることによっても製造することができる。【0026】 本発明の化合物の合成で用いられるヒドロキシメチルオキセタンは、文献記載の方法により容易に合成できる(J.Am.Chem.Soc.,79,3455−3456(1957参照)。また、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル トシラートはヒドロキシメチルオキセタンの水酸基を既知の方法でトシル化することによって容易に得られる。【0027】 本発明の化合物の合成で用いられる塩基としては、塩基として働く化合物であればいかなる化合物も用いることができる。本発明の化合物の合成で用いられる塩基の具体例は、ピリジン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、アンモニア水、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド等のアミン系塩基、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物、苛性カリ、苛性ソーダ等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルコキシド、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物、臭化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム等のグリニアル反応剤等が挙げられる。反応性が優れている点や副生成物が反応不活性である金属水素化物、有機リチウム化合物、リチウムジイソプロピルアミド、グリニアル反応剤がより好ましく、副生成物が水素ガスとして容易に反応系外へ放出される点で、金属水素化物がさらに好ましい。【0028】 本発明に属する個々の具体的な化合物は、赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量スペクトル(MS)などの手段により確認することができる。【0029】 本発明のオキセタン化合物は、熱硬化性組成物あるいは光硬化性組成物を構成する反応性化合物として応用することができる。また、塗料、接着剤、電気・電子材料、半導体材料、光学材料、光ファイバー、光導波路、単層および多層配線板材料、レジスト、ドライフィルムレジスト等、多種多様な用途に応用することができる。【0030】【実施例】 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。【0031】(実施例1) 1,8−ビス{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}−2,7−ジヒドロキシオクタンの合成)【0032】【化19】【0033】 500ml反応容器を乾燥窒素で置換し、水素化ナトリウム(60%油性)0.8g(20mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、この懸濁液を0℃に冷却した。そこへ、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン2.3g(20mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液をゆっくりと加えた後、反応混合物を0℃で30分間かく拌した。その後、1,2,7,8−ジエポキシオクタン1.4g(10mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液を滴下し、反応液を30℃に昇温しながら乾燥窒素気流下6時間撹拌した。反応液を水中に投じ、クロロホルムで抽出した。抽出液は無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、1,8−ビス{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}−2,7−ジヒドロキシオクタン2.3gを得た(収率60%)。【0034】 得られた1,8−ビス{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}−2,7−ジヒドロキシオクタンは室温で液体であり、ベースポリマー(たとえばメタクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合物)との相溶性にも優れている。【0035】(実施例2) (3,3,18,18−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,14−ジヒドロキシ−5,9,12,16−テトラオキサイコサン(I)の合成)【0036】【化20】【0037】 500ml反応容器を乾燥窒素で置換し、水素化ナトリウム(60%油性)0.88g(22mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、この懸濁液を0℃に冷却した。そこへ、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン2.6g(22mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液をゆっくりと加えた後、反応混合物を0℃で30分間攪拌した。その後、エチレングリコールジグリシジルエーテル1.7g(10mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液を滴下し、反応液を40℃に昇温しながら乾燥窒素気流下6時間撹拌した。反応液を水中に投じ、クロロホルムで抽出した。抽出液は無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、3,3,18,18−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,14−ジヒドロキシ−5,9,12,16−テトラオキサイコサン(I)2.8gを得た(収率70%)。【0038】 得られた3,3,18,18−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,14−ジヒドロキシ−5,9,12,16−テトラオキサイコサン(I)は室温で液体であり、ベースポリマー(たとえばメタクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合物)との相溶性にも優れている。得られた化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に、NMRスペクトルを図2に、13CNMRスペクトルを図3にそれぞれ示した。図1の(a)で示す部分にOH伸縮振動に基づく吸収、(b)で示す部分にオキセタン環のC−O−C変角振動に基づく吸収が観察された。また、図2、3に示したNMRスペクトルにおいて、図中に示す化合物の位置に対応した位置にスペクトルが見られ、上記の化合物であると同定される。【0039】【発明の効果】 本発明の水酸基含有オキセタン化合物である分子中にオキセタニル基を2個以上、水酸基を1個以上有する脂肪族化合物は常温で液体であり、また、水酸基による連鎖移動反応を伴いながら光硬化反応がより高速に進行し、速い硬化性と密着性に優れ、低粘度の樹脂組成物を与えることができる。さらに、分子中の水酸基により、密着性に優れた硬化物を与える。【図面の簡単な説明】【図1】 実施例2で得られた化合物の赤外線吸収スペクトル。【図2】 実施例2で得られた化合物のNMRスペクトル。【図3】 実施例2で得られた化合物の13CNMRスペクトル。 下記一般式(a)のいずれかで表される分子中にオキセタニル基と水酸基を有する脂肪族系化合物。 前記脂肪族系化合物が、以下に記載のいずれかの化合物である、分子中にオキセタニル基と水酸基を有する、請求項1に記載の脂肪族系化合物。


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