タイトル: | 特許公報(B2)_ジシクロペンタジエンを気相熱分解する方法および装置 |
出願番号: | 2000128759 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 4/04,C07B 37/06,C07C 13/15 |
田原 伸一郎 菊地 孝幸 JP 4470276 特許公報(B2) 20100312 2000128759 20000428 ジシクロペンタジエンを気相熱分解する方法および装置 日本ゼオン株式会社 000229117 内田 幸男 100070792 田原 伸一郎 菊地 孝幸 20100602 C07C 4/04 20060101AFI20100513BHJP C07B 37/06 20060101ALI20100513BHJP C07C 13/15 20060101ALI20100513BHJP JPC07C4/04C07B37/06C07C13/15 C07C 4/22 C07C 13/15 特開昭55−153727(JP,A) 特公昭51−029145(JP,B1) 2 2001302559 20011031 7 20060307 品川 陽子 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、粗ジシクロペンタジエン留分を気相熱分解してシクロペンタジエンを得る方法および装置に関する。【0002】【従来の技術】ナフサ、ガスオイル、その他の炭化水素留分の熱分解生成物から粗ジシクロペンタジエン留分を得、該留分の液相または気相での熱分解によってシクロペンタジエンを得る方法が実用に供されている。ジシクロペンタジエンの熱分解法として多くの方法が提案されている。例えば、英国特許第612,893号には、沸点190〜250℃の炭化水素留分中で液相でジシクロペンタジエンを加熱解重合する方法が記載され、また、米国特許第2,831,904号および英国特許第769,813号には、沸点250〜350℃の炭化水素留分中で液相でジシクロペンタジエンを加熱解重合する方法が記載されている。また、水蒸気や窒素などの希釈ガス存在下にジシクロペンタジエンを気相で熱分解する方法も提案されている(米国特許第2,582,920号)。しかしながら、ジシクロペンタジエンを炭化水素油中で加熱解重合する方法、および気相で熱分解する方法のいずれにおいても、解重合ないし熱分解装置内にジシクロペンタジエンなどの重合物およびタールが蓄積して、装置・配管を閉塞することが問題となっている。【0003】この重合物およびタールによる配管の閉塞を防止するための提案もされている。例えば、特公昭51−29145号には、粗ジシクロペンタジエン留分をフラッシュドラム中で過熱蒸気と接触させて、該フラッシュドラム内にて、ワイヤメッシュからなるデミスターによって重合物およびタールを取除き、次いで、気化されたジシクロペンタジエンを分解炉に導く方法が提案されている。特開昭51−63151号には、気化帯域内でジシクロペンタジエンに過熱水蒸気を混合して加熱し、次いで、分解帯域へ導く方法が記載されている。しかしながら、過熱水蒸気の使用は設備費がかかり経済的でない。また、特公昭51−29145号の方法においては、デミスターの飛沫分離帯にて重合物およびタールを除くのであるが、そのデミスターを具えたフラッシュドラムによる処理は複雑である。【0004】特開平5−78263号には、粗ジシクロペンタジエン留分と水蒸気(または水)との混合物が分解管内で下降する流れを形成するように装置を構成し、分解管内壁に付着する重合物を系外に速やかに排出せしめるジシクロペンタジエンの熱分解方法が提案されている。しかしながら、この提案では、重合物およびタールの除去が十分でなく、また、気化されたジシクロペンタジエン留分の流れが分解管に至る配管中に重合物の付着を生じるという問題がある。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ジシクロペンタジエンを気相で熱分解してシクロペンタジエンを製造する方法において、気化されたジシクロペンタジエン留分から重合物およびタールを簡易な操作によって、容易かつ効率的に除去することができる方法を提供するにある。【0006】さらに、他の目的は、ジシクロペンタジエン留分を気化せしめる気化器と、気化されたジシクロペンタジエンを熱分解せしめる分解炉とを具えたジシクロペンタジエンの気相熱分解装置において、気化されたジシクロペンタジエン留分から重合物およびタールを簡易な操作によって、容易かつ効率的に除去することができる装置を提供するにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、粗ジシクロペンタジエンを気相で熱分解してシクロペンタジエンを製造するプロセスについて鋭意検討の結果、重合物やタール分は主に気化器において生成し、気化器出口から分解炉入口配管においてその重合物やタール分が液化せずに滞留し、長時間にわたる堆積により配管を閉塞させることを突き止めた。この知見に基づいて、ジシクロペンタジエンの気化器とジシクロペンタジエンの熱分解炉との間にトラップ容器を設け、かつ、ジシクロペンタジエンの気化器の排出部を下方に指向する排出管で構成し、その下端を該トラップ容器中に開口せしめることによって、上記の目的が達成できることを見出した。【0008】 かくして、本発明によれば、ジシクロペンタジエン留分を気化器内を下降させながら気化してトラップ容器内に導き、気化されたジシクロペンタジエン留分の流れとともに該気化器内を落下する重合物およびタール分を該トラップ容器内に捕捉し、次いで、気化されたジシクロペンタジエン留分を分解炉へ導くことを特徴とするジシクロペンタジエンの気相熱分解方法が提供される。【0009】 さらに、本発明によれば、ジシクロペンタジエン留分を気化せしめる気化器と、該気化器から排出される気化されたジシクロペンタジエン留分を受入れて、ジシクロペンタジエンを熱分解せしめる分解炉とを具えたジシクロペンタジエンの気相熱分解装置において、該気化器と該熱分解炉との間に重合物捕捉用トラップ容器が配置され、かつ、該気化器は、気化されたジシクロペンタジエン留分が下方に流れる管で構成され、該管の排出下端がトラップ容器内に開口していることを特徴とするジシクロペンタジエンの気相熱分解装置が提供される。【0010】【発明の実施の形態】本発明において、原料として用いる粗ジシクロペンタジエンは、ナフサなどの石油類の熱分解の際副生するC5留分を二量化処理してジシクロペンタジエン含有量を高めた生成物、およびC5留分からイソプレンを抽出した残りのスペント−C5留分である。C5留分は、蒸留によってジシクロペンタジエン濃度を通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上に高めたうえ、気化器へ供給する。蒸留によって得られる粗ジシクロペンタジエンの残余成分は、ビニルノルボルネン、イソプロペニルノルボルネン、プロペニルノルボルネン、トリシクロペンタジエンなどである。【0011】粗ジシクロペンタジエンは、そのまま、または希釈剤と混合した後に気化器へ供給されるが、希釈剤と混合することが好ましい。希釈剤を加えることによって、供給原料中の高沸点物質を実質的に気化することなくジシクロペンタジエンを気化することができ、また、ジシクロペンタジエンより低い沸点を有する希釈剤を用いれば、より低い温度でジシクロペンタジエンを蒸発させることができるので、重合物の生成を抑制することができる。希釈剤としては、分解工程において不活性で、かつジシクロペンタジエンより沸点が低いものの中から選ぶことが好ましい。希釈剤の具体例としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの飽和脂環式炭化水素;ペンテン、ヘキセンなどの不飽和脂肪族炭化水素;シクロペンテン、シクロヘキセンなどの不飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。イソプレン、ブタジエンなどの共役ジエンは重合成分となるため好ましくない。希釈剤の添加量は、粗ジシクロペンタジエン供給原料に基づき5〜50重量%程度であることが好ましい。希釈剤を用いない場合および希釈剤量が過少な場合は、重合物の生成が顕著となり、ジシクロペンタジエン蒸気流からの分離効果が低下し、逆に、希釈剤量が過多の場合は過剰の熱供給量が必要となるため経済的でない。【0012】 気化器は充填塔および散布塔のいずれであってもよい。粗ジシクロペンタジエンと希釈剤との混合物は気化器中140〜240℃に加温されて、気化器の下端からトラップ容器内に導かれる。図1に示すように、気化器1は、気化されたジシクロペンタジエン留分が下方に流れる管で構成される。管の排出部2の下端はトラップ容器3内に開口する。気化されたジシクロペンタジエン留分は急速な流れとして管の排出部2中を落下するので管壁に重合物およびタールが付着することはない。重合物およびタールはトラップ容器の底部に捕捉される。【0013】 気化器1の排出端(管の排出部2の下端)の位置は、特に限定されるものではないが、トラップの中央より下であることが好ましい。トラップの中央より上であるとトラップ効果が低減する。トラップ容器の容量は格別限定されることはなく、気化器容量に見合う大きさに選定すればよい。形状も特に限定されることはなく、例えば円筒状とすることができる。材質も限定されないが、例えばSUS304、SUS316などの耐腐食性のよいステンレススチールが好ましい。【0014】トラップ容器3内の上部にはワイヤメッシュなどからなる層4が配設されて、重合物およびタールの分離効率を高めるとともに、重合物およびタールが次の熱分解工程へ導かれるのを阻止する。ワイヤメッシュのサイズは、特に限定されないが、通常、80〜100メッシュ程度のものが好ましく用いられる。その材質も格別限定されないが、腐食などの支障を生じないものが好ましく、例えばSUS304、SUS316などのステンレススチールが用いられる。【0015】重合物およびタールはトラップ容器の壁部から排出管6を経て排出される。重合物およびタールが除去されたジシクロペンタジエン留分と希釈剤との混合物は、次いで、熱分解炉5へ導かれる。熱分解炉5ではジシクロペンタジエンを熱分解してシクロペンタジエンとするに十分な温度、通常は250〜450℃程度に保持される。熱分解炉5から導出されるガスはシクロペンタジエンを主成分とする軽質分と未分解ジシクロペンタジエンおよび希釈剤からなる混合ガスである。混合ガスは常法に従ってシクロペンタジエンの分離工程へ導かれる。分離されたジシクロペンタジエンおよび希釈剤は、本発明の気化・分解工程で再利用される。【0016】【実施例】以下、実施例について本発明を具体的に説明する。粗ジシクロペンタジエンをトルエンに希釈し下記表1に示す組成を有する混合物を調製した。この混合物を毎分9gにて、約115℃に予熱し、気化器へ供給した。気化器は、内径3mm、長さ1,000mmのSUS304ステンレス管に、内径2mmのSUS304ステンレス管を挿入したものを鉛直に配置し、その隙間に原料混合物を流せるようにしたもので構成した。気化器内は電気加熱して170℃に保持した。トラップ容器として内径約40mm、深さ約100mm、容量約70mlの円筒状オートクレーブ(SUS304製)を用い、気化器ステンレス管の下端をトラップ容器内の底面から5cmの位置に開口せしめた。トラップ容器内の温度は200℃であった。トラップ容器内に導入された混合物は、ワイヤメッシュ(SUS304製、メッシュサイズ:約90メッシュ)層を透過して熱分解炉へ導いた。熱分解炉は、電気加熱によって340℃に保持した。オートクレーブ底部からは、随次、重合物、タールおよび希釈剤の混合物を引出した。熱分解炉から導出されるガスの組成は表1に示すとおりであった。90時間運転を続けたが、気化器、トラップ容器から熱分解炉へ至る配管、熱分解炉/内壁に重合物などの付着物は実質的に認められなかった。【0017】なお、比較のために、トラップ容器を外して、すなわち、気化器ステンレス管の下端と分解炉への配管とを直結して上記と同じ条件下に運転したところ、運転開始から数時間後には気化器から分解炉へ至る配管の閉塞を生じた。【0018】【発明の効果】本発明によれば、簡易な操作によって気化されたジシクロペンタジエン留分から重合物およびタールが容易かつ効率的に除去され、長時間連続運転することができる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明に係るジシクロペンタジエンの気相熱分解工程を示す図である。【符号の説明】1 気化器2 気化器の排出部3 トラップ容器4 ワイヤメッシュ層5 熱分解炉6 重合物およびタールの排出管 ジシクロペンタジエン留分を気化器内を下降させながら気化してトラップ容器内に導き、気化されたジシクロペンタジエン留分の流れとともに該気化器内を落下する重合物およびタール分を該トラップ容器内に捕捉し、次いで、気化されたジシクロペンタジエン留分を分解炉へ導くことを特徴とするジシクロペンタジエンの気相熱分解方法。 ジシクロペンタジエン留分を気化せしめる気化器と、該気化器から排出される気化されたジシクロペンタジエン留分を受入れて、ジシクロペンタジエンを熱分解せしめる分解炉とを具えたジシクロペンタジエンの気相熱分解装置において、該気化器と該熱分解炉との間に重合物捕捉用トラップ容器が配置され、かつ、該気化器は、気化されたジシクロペンタジエン留分が下方に流れる管で構成され、該管の排出下端がトラップ容器内に開口していることを特徴とするジシクロペンタジエンの気相熱分解装置。