生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_光学活性γ−ラクトンの製造法
出願番号:2000124617
年次:2011
IPC分類:C07D 307/33,C07B 57/00


特許情報キャッシュ

和田 繁 伊藤 信彦 山上 康寿 長谷部 昭雄 JP 4780536 特許公報(B2) 20110715 2000124617 20000425 光学活性γ−ラクトンの製造法 曽田香料株式会社 000201733 岩見 知典 100104950 和田 繁 伊藤 信彦 山上 康寿 長谷部 昭雄 JP 1999124056 19990430 20110928 C07D 307/33 20060101AFI20110908BHJP C07B 57/00 20060101ALI20110908BHJP JPC07D307/32 FC07B57/00 340 C07D307/00-307/94 C07B 57/00 CAplus/REGISTRY(STN) 特開昭55−043053(JP,A) 特開平07−242589(JP,A) 特開平08−182498(JP,A) 特開平06−319589(JP,A) 野平博之 他,1C110 ジャスミンラクトンの光学分割とその香気特性,日本化学会講演予稿集II,1994年,p.728 日本化学会(編),有機合成IV−酸・アミノ酸・ペプチド−,丸善株式会社,1992年,実験化学講座第4版第22巻,pp.86-87 2 2001011063 20010116 6 20070406 三上 晶子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸を用いる光学活性γ-ラクトンの製造法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、光学活性γ-ラクトンを取得する方法として、(±)γ-ヒドロキシウンデカン酸に光学活性α-フェニルエチルアミンを作用させジアステレオマー塩を調製し、分離精製して難溶性のジアステレオマー塩を得た後、複分解、脱水環化処理する方法が知られている(特開昭55-43053号公報)。【0003】【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、上記の方法で使用される(±)-γ-ヒドロキシウンデカン酸は不安定であり、そのもの自身酸触媒としての作用で(±)-γ-ウンデカラクトンが副生してしまいジアステレオマー塩の収率が低下するという問題を有していた。また、この方法では(±)-γ-ヒドロキシウンデカン酸に対して等モルの光学活性α-フェニルエチルアミンを作用させており、純粋な難溶性塩を得るためには3〜5回の再結晶を繰り返すという煩雑な操作を必要とし、未だ十分な方法であるとは言えない。また、γ-ヒドロキシウンデカン酸以外の炭素数の異なるラクトンについては何等言及されていない。【0004】本発明の目的は、(±)-γ-ラクトンを出発原料に用い、副反応を抑制し反応収率を向上させるとともに、製造工程を短縮し、効率よく簡便に光学活性γ-ラクトンを製造する方法を提供することにある。【0005】 本発明によれば、上記目的は、(±)-γ-ラクトンを水または水に可溶な溶媒との混合溶媒中でラクトンに対して0.7当量以上の無機アルカリを用いて加水分解し、(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩を生成せしめた後、反応液に0.3〜0.7当量の光学活性α-フェニルエチルアミンを添加し、続いて好ましくは0.3〜1.0当量の無機酸を加えて難溶性の光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸α-フェニルエチルアミン塩を結晶として分離する工程、得られた結晶を酸で複分解反応して光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸とするか、アルカリ-酸処理すなわちアルカリを用いて複分解反応し光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩とした後酸で光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸とする工程、および光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸を脱水環化反応して光学活性γ-ラクトンに変換する工程からなる光学活性γ-ラクトンの製造法により達成される。【0006】すなわち、本発明においては、水または水に可溶な溶媒との混合溶媒に対して溶解性の(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩または(±)-γ-ヒドロキアルカン酸を共存させることにより、γ-ヒドロキシアルカン酸の一方の鏡像体が光学活性α-フェニルエチルアミンと難溶性塩を形成し、光学純度の高い難溶性塩をより高い収率で取得することができる。この方法は、溶媒が安価であり、不安定な(±)-γ-ヒドロキアルカン酸の単離が不要であること、しかも分割剤である光学活性α-フェニルエチルアミンが従来法のほぼ半量で目的が達せられるという利点が生ずる。そして得られた難溶性塩を分離後、得られた結晶を酸処理またはアルカリ-酸処理して得られた光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸を脱水環化反応させることにより、収率良く高い光学純度で光学活性γ-ラクトンを製造することができる。【0009】【発明の実施の形態】本発明の光学活性γ-ラクトンの製造法で用いられる光学分割法においては、(±)-γ-ラクトンは光学異性体の混合物であれば特にその純度の制限はなく、どちらかの異性体が多く含まれたものであっても使用することが可能である。また、光学分割の後に濾過濾液から回収されるγ-ラクトン、γ-ヒドロキシアルカン酸、γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩、γ-ヒドロキシウンデカン酸α-フェニルエチルアミン塩あるいはこれらの混合物は再度本発明の光学活性γ-ラクトンの製造に利用することもできる。すなわち、濾液を酸で中和後溶媒抽出によりγ-ラクトン、γ-ヒドロキシアルカン酸あるいはこれらの混合物として回収し、これを溶媒回収した残渣あるいは抽出液そのものを本発明の製造法の原料とするものである。この際、γ-ラクトン、γ-ヒドロキシアルカン酸あるいはこれらの混合物は光学純度的にはどちらかの異性体が多く含まれており有効な原料となりうる。【0010】また、原料の(±)-γ-ラクトンは、本発明で使用される溶媒であらかじめ希釈して溶液としてアルカリ加水分解に使用することも可能である。【0011】本発明の光学活性γ-ラクトンの製造法で用いられる光学分割法においては、(±)-γ-ラクトンをアルカリ加水分解して得られる(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩を調製するために用いられる無機アルカリは、ラクトンを加水分解できるものであれば特に限定されることはないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が好ましく用いられ、これらの二種以上を併用してもよい。【0012】 無機アルカリの使用量は、ラクトンに対して0.7当量以上であり、好ましくは1〜10当量更に好ましくは1〜3当量の範囲で用いられる。【0013】また、本発明で用いられる加水分解に使用される溶媒は、水または水に可溶な溶媒との混合溶媒であれば特に限定されることはなく、水に可溶な溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルおよび1,4-ジオキサン等があげられ、これらの一種または二種以上の任意の割合からなる混合溶媒が用いられる。【0014】また、本発明で用いられる無機酸の種類は、(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩を中和するものであれば特に限定されることはないが、塩酸、硫酸、リン酸、および硝酸のごとき鉱酸の一種または二種以上が好ましく用いられる。その使用量は(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩に対して好ましくは0.3〜1当量に(±)-γ-ラクトンのアルカリ加水分解に使用される理論量以外の残存するアルカリを中和するのに必要な量を加えた量が望ましく、過剰の(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩または過剰の(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸を用いた溶媒に対して大きな溶解性を有するような形で溶液に留めておくように設定することが好ましい。【0016】 また、本発明で用いられる(±)-γ-ラクトンに対する光学活性α-フェニルエチルアミンの使用量は、0.3〜0.7当量であり、好ましくは0.4〜0.6当量である。0.3当量より少ない量で光学活性α-フェニルエチルアミンを使用すると、母液にγ-ヒドロキシアルカン酸が多量に存在する結果となり、また、0.7当量を超えて使用した場合は、本発明の意義が薄れる傾向を示す。【0017】本発明においては、このような分割剤を作用させることにより、(+)-γ-ヒドロキシアルカン酸と(−)-γ-ヒドロキシアルカン酸に、それぞれ対応するジアステレオマー塩が形成される。例えば、分割剤として(−)-α-フェニルエチルアミンを用いた場合には(+)-γ-ヒドロキシアルカン酸・(−)-α-フェニルエチルアミン塩および(−)-γ-ヒドロキシアルカン酸・(−)-α-フェニルエチルアミン塩が生成する。【0018】また、本発明で使用される溶媒としては、(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸と光学活性α-フェニルエチルアミンの難溶性塩を晶析しやすく、かつ光学活性α-フェニルエチルアミンと塩を形成していないγ-ヒドロキシアルカン酸またはγ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩をよく溶かす溶媒であれば特に限定されることはないが、水または水に可溶な溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン等との任意の割合からなる混合溶媒が好ましい。【0019】得られた難溶性塩は必要に応じて再結晶を行ない光学純度をあげることができる。得られた塩は酸またはアルカリを用いた複分解反応で光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸または光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩に誘導する。そして、光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩に関しては、無機酸で酸性化して光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸に誘導する。得られた光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸を脱水環化反応させることにより光学活性γ-ラクトンを短工程で効率よく取得することができる。【0020】脱水環化反応には、ヒドロキシ酸のラクトン化に用いられる通常の条件が好ましい。すなわち、硫酸などの無機酸あるいはパラトルエンスルホン酸などの有機酸を一種あるいは二種以上の混合物として添加し反応するもので、この際に生成する水をトルエンなどの溶媒を使用して共沸除去することもできるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、減圧蒸留などの加熱減圧条件では酸を添加しなくとも目的のラクトンが留出物として得られることもある。【0021】【実施例】[光学純度の分析方法]得られた光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸α-フェニルエチルアミン塩および光学活性γ-ラクトンについては、以下のようにその光学純度を確認した。光学活性ラクトンは、ガスクロマトグラフィーを用いてカラムChiraldex G-TA0.25mm×20m(astec社製)により分析した。炭素数9から11については、注入口温度170度、検出器温度170度、オーブン温度130度恒温、スプリット比1:100、サンプル注入量5%ヘキサン溶液として数マイクロリットル、炭素数12については注入口温度170度、検出器温度170度、オーブン温度120度から140度へ1度/分昇温、スプリット比1:100、サンプル注入量5%ヘキサン溶液として数マイクロリットル、という分析条件で実施した。光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸α-フェニルエチルアミン塩は硫酸水で酸性化して複分解し、得られた光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸をトルエン抽出し、溶媒回収後減圧蒸留により脱水環化反応をして光学活性γ-ラクトンにし、その後同様にしてガスクロマトグラフィー分析を行なった。【0022】[参考例1]光学活性(R)-(+)-γ-ドデカラクトンの製造水酸化ナトリウム15.1g(0.378mol)を水451gの溶液を60℃に加熱し、その水溶液に(±)-γ-ドデカラクトン50.0g(0.252mol)を滴下、1時間撹拌した。34℃にて(-)-α-フェニルエチルアミン30.6g(0.252mol)を添加後、引き続いて20wt%硫酸98.8g(0.202mol)を添加し、20℃に冷却した。析出した結晶を濾別し乾燥して、光学活性(S)-(-)-α-フェニルエチルアンモニウムγ-ヒドロキシドデカノエート73.4gを得た。光学純度は14%e.e.(R体)、収率はγ-ドデカラクトンのラセミ体の半量に対して158%であった。【0023】実施例1光学活性(R)-(+)-γ-ウンデカラクトンの製造水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を水124.8gの溶液を60℃に加熱し、その水溶液に(±)-γ-ウンデカラクトン18.4g(0.1mol)を滴下、1時間撹拌した。同温度にて(-)-α-フェニルエチルアミン6.1g(0.05mol)を添加後、引き続いて8.7wt%塩酸22.6g(0.05mol)を添加し、20℃に冷却した。20℃にて結晶種を加え、5℃に冷却した。析出した結晶を濾別し乾燥して光学活性(S)-(-)-α-フェニルエチルアンモニウムγ-ヒドロキシウンデカノエート7.7gを得た。光学純度は75%e.e.(R体)、収率はγ-ウンデカラクトンのラセミ体の半量に対して48%であった。【0024】さらに上記のジアステレオマー塩に水40.3gを加えて80℃に加熱し完全に溶解した後、20℃に冷却した。析出した結晶を濾別し、得られたこの塩を硫酸水で複分解させた後、減圧蒸留してラクトン化して、(R)-(+)-γ-ウンデカラクトン3.5gを得た。光学純度は87%e.e.、収率はγ-ウンデカラクトンのラセミ体の半量に対して38%であった。【0025】実施例2光学活性(R)-(+)-γ-ウンデカラクトンの製造水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を水83.2gの溶液を60℃に加熱し、その水溶液に(±)-γ-ウンデカラクトン18.4g(0.1mol)を滴下、1時間撹拌した。同温度にて(-)-α-フェニルエチルアミン6.1g(0.05mol)添加後、引き続いて20wt%硫酸12.8g(0.025mol)を添加し、20℃に冷却した。析出した結晶を濾別し、光学活性(S)-(-)-α-フェニルエチルアンモニウムγ-ヒドロキシウンデカノエート6.2gを得た。この塩を硫酸で複分解させた後、減圧蒸留してラクトン化して、(R)-(+)-γ-ウンデカラクトン3.56gを得た。光学純度は68%e.e.、収率はγ-ウンデカラクトンのラセミ体半量に対して39%であった。【0028】実施例3光学活性(R)-(+)-γ-デカラクトンの製造水酸化ナトリウム17.6g(0.441mol)と水225gの溶液を60℃に加熱し、その水溶液に(±)-γ-デカラクトン50.0g(0.294mol)を滴下し、1時間撹拌した。内温45℃に冷却後、(-)-α-フェニルエチルアミン17.8g(0.147mol)を添加して、引き続いて20wt%硫酸72.0g(0.147mol)を添加し、5℃に冷却した。析出した結晶を濾別し、光学活性(S)-(-)-α-フェニルエチルアンモニウムγ-ヒドロキシデカノエート 29.9 gを得た。この塩を硫酸で複分解させた後、減圧蒸留してラクトン化して、(R)-(+)-γ-デカラクトン15.4gを得た。光学純度は64%e.e.、収率はγ-デカラクトンのラセミ体半量に対して62%であった。【0029】【発明の効果】本発明によれば、光学活性なγ-ラクトンを、副反応を抑制し反応収率を向上させるとともに、製造工程を短縮し、効率よく簡便に光学分割することによって得ることができる。 (±)-γ-ラクトンを水または水に可溶な溶媒との混合溶媒中で無機アルカリを用いて加水分解し、(±)-γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩を生成せしめた後、反応液に光学活性α-フェニルエチルアミンを添加し、続いて無機酸を加えて中和して難溶性の光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸α-フェニルエチルアミン塩を結晶として分離する工程、得られた結晶を酸で複分解反応して光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸とするか、アルカリを用いて複分解反応し光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸アルカリ塩とした後酸で光学活性γ-ヒドロキシアルカン酸とする工程、脱水環化反応して光学活性γ-ラクトンに変換する工程からなる光学活性γ-ラクトンの製造法であって、無機アルカリと光学活性α-フェニルエチルアミンの使用量が、(±)-γ-ラクトンに対して、それぞれ0.7当量以上、0.3〜0.7当量である光学活性γ-ラクトンの製造法。 前記無機アルカリの使用量が(±)-γ-ラクトンに対して0.7〜1.0当量の場合は前記中和用の無機酸の使用量が(±)-γ-ラクトンに対して0.3〜1.0当量であり、前記無機アルカリの使用量が(±)-γ-ラクトンに対して1.0当量を超える場合は前記中和用の無機酸の使用量が(±)-γ-ラクトンに対して0.3〜1.0当量に(±)-γ-ラクトンに対して過剰な無機アルカリに対して1.0当量を足した量である請求項1に記載の光学活性γ-ラクトンの製造法。


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