タイトル: | 特許公報(B2)_酵素濃度の測定方法および酵素濃度の測定装置 |
出願番号: | 2000120681 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12Q 1/25,G01N 21/77,C12M 1/34 |
宗林 孝明 JP 4904611 特許公報(B2) 20120120 2000120681 20000421 酵素濃度の測定方法および酵素濃度の測定装置 三菱化学メディエンス株式会社 591122956 宗林 孝明 20120328 C12Q 1/25 20060101AFI20120308BHJP G01N 21/77 20060101ALI20120308BHJP C12M 1/34 20060101ALI20120308BHJP JPC12Q1/25G01N21/77 ZC12M1/34 F C12Q 1/00-3/00 C12M 1/00-3/10 C12N 15/00-15/90 PubMed JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特表平06−508217(JP,A) 特開昭62−209363(JP,A) 特開2000−055919(JP,A) 特開平11−160316(JP,A) 特表平09−506629(JP,A) 特開平09−173097(JP,A) 特開平10−177026(JP,A) J. Biolumin. Chemilumin. ,1989年,Vol. 4,pp.59-78 生化学事典,1998年,pp.372,「共役活性測定」 固定化生体触媒,1986年 8月10日,pp.263 11 2001299386 20011030 24 20070404 高山 敏充 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、酵素濃度を測定する方法及び酵素濃度測定装置に関する。より詳しくは、血液、尿などの体液中の酵素濃度を測定する方法および測定装置に関する。【0002】【従来の技術】従来、酵素の濃度を酵素活性を用いて測定する方法は知られている。具体的には、測定試料中の「遊離状態」の酵素の活性を測定する方法であり、酵素活性の測定には、吸光度変化、電極反応などを利用する方法が挙げられる。この方法においては、反応液中で均一な反応が行われることが重要である。しかし、従来の酵素濃度の測定においては、ひとつの反応容器内では一種の酵素しか測定できないという欠点がある。【0003】その理由として、以下のことが挙げられる。通常、酵素活性の測定には、吸光度変化や電極反応を用いるが、異なる酵素であっても、最終測定物質は同じものであることが多い。例えば、酸化還元反応に関与する酵素であれば、基質が異なっても、検出には、NAD/NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の酸化還元反応に伴う340nmにおける吸光度変化を計測する。別の例では、共役酵素により過酸化水素を生成させる測定系を利用するものも多くあり、この場合も過酸化水素生成量を電極で測定したり、ペルオキシダーゼなどの酵素を用いて、吸光度・蛍光強度の変化を測定したりする。従って、溶液内均一反応における酵素活性測定に同じ検出反応を利用する場合は、2種以上の酵素濃度の同時測定は不可能である。【0004】従来の溶液内均一反応において、複数項目を同時計測しようとする場合、最終生成物が異なるもので、且つ同時分別測定できるような組み合わせなら、同時測定は可能であるが、適用対象は非常に限定されたものになる。例えば、吸光度測定の場合、吸収極大を示す波長が異なっていても、ブロードな吸収スペクトルを示す場合(通常、吸収スペクトルはブロード)、互いに測定値に影響を与えるため正確な計測は困難である。【0005】一方、遊離状態の酵素を1種ずつ測定する方法は報告されている。例えば、特定のアイソエンザイムを測定する際に、他のアイソエンザイムに対する抗体を添加し、他のアイソエンザイムの酵素活性を阻害し、残存する酵素活性から特定のアイソエンザイムの活性を測定する方法が挙げられる。しかしこの方法では、抗酵素抗体は測定対象でない酵素の活性を阻害するために用いるものであり、2種以上の酵素の活性を同時に測定する方法ではない。【0006】また、ドライケミストリー試薬などを用いて、担体上で酵素反応を行わせる測定法もあるが、溶液反応をろ紙、グラスファイバーなどの担体内で行わせるだけであり、均一反応であるため、多項目同時測定はできない。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、酵素濃度を測定する方法を提供すること、特に2種以上の酵素濃度を同時に測定する方法を提供することを課題とする。また、本発明は酵素濃度測定装置を提供することを課題とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、測定すべき目的酵素を一旦抗酵素抗体により特定の位置に捕捉し、その後その場所で酵素活性を発現させ各酵素の酵素活性を測定することにより、同一系内で複数の酵素濃度を測定可能とすることを見出し、本発明を完成するに至った。【0009】即ち、本発明は以下の通りである。(1)測定試料液の1または2種以上の測定対象の酵素濃度を測定する方法であって、各酵素に対する抗酵素抗体を担体の特定部位に担持させ、担持された該抗体に測定試料液を接触させ、各抗酵素抗体に対応する測定試料液中の酵素を各々捕捉させ、次いで各酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を、抗酵素抗体に捕捉された酵素に接触させ、各々の酵素反応産物を生成させ、該酵素反応産物を分析することにより各酵素の濃度を測定することを特徴とする酵素濃度の測定方法。(2)前記測定試料液の測定対象の酵素は、2種またはそれ以上であることを特徴とする(1)の酵素濃度の測定方法。(3)前記酵素反応液と酵素を接触させる際に、測定対象の酵素の共役酵素を反応系中に存在させ、前記酵素反応産物は、共役酵素による反応を経て生成することを特徴とする(1)または(2)の酵素濃度の測定方法。(4)前記酵素反応産物は色素であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。(5)前記酵素反応産物の分析は、前記色素の量を吸光度で測定することを特徴とする(4)の方法。(6)前記酵素反応産物の分析は、抗酵素抗体の固定化位置に電極を配し、該酵素反応産物を電極上に接触させ、電極に一定電圧を付与した電極に流れる電流値の変化を測定することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの酵素濃度の測定方法。(7)前記担体は、水溶液を吸収、拡散する材質からなる展開層を有し、担体の前記抗酵素抗体を担持させた部位とは異なる部位に測定試料液をスポットし、測定試料液を展開層を通して抗酵素抗体を担持させた部位方向に展開させて測定試料液中の酵素を抗酵素抗体に捕捉させ、次いで、酵素反応液を該担持部位と異なる部位にスポットし、展開層中で酵素反応液を展開させることを特徴とする(4)の酵素活性の測定方法。(8)測定試料液中の1または2種以上の測定対象の酵素濃度を測定するための試験片であって、担体と、該担体の特定部位に担持された各々の測定対象の酵素に対する抗酵素抗体と含み、前記抗体に測定試料液を接触させ、各抗酵素抗体に対応する測定試料液中の酵素を各々捕捉させ、次いで各酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を、抗酵素抗体に捕捉された酵素に接触させ、各々の酵素反応産物を生成させ、該酵素反応産物を分析することにより各酵素の濃度を測定する試験片。(9)水溶液を吸収、拡散する材質からなる展開層が設けられ、担体の前記抗酵素抗体を担持させた部位とは異なる部位に測定試料液をスポットしたときに、測定試料液が展開層を通して抗酵素抗体を担持させた部位方向に展開することを特徴とする(8)の試験片。(10)各々の抗酵素抗体が、互いに分離して担体に担持された(9)の試験片。(11)上記(8)〜(10)のいずれかの試験片を用いて酵素反応産物を測定することにより測定試料液中の酵素濃度を測定する酵素反応装置であって、測定試料液を試験片に供給する測定試料液供給手段と、前記酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を試験片に供給する酵素反応液供給手段とを備えた酵素反応装置。(12)上記(8)〜(10)のいずれかの試験片を用いて、酵素反応産物を測定することによる酵素濃度の測定装置であって、酵素反応産物の濃度を測定する酵素反応産物測定手段と、該酵素反応産物測定手段により測定された測定値をデータ処理するデータ処理手段と、該データ処理手段による処理結果を表示する表示手段とを備えた酵素濃度の測定装置。(13)前記試験片を(11)の酵素反応装置と共に装着可能とした(12)の酵素濃度の測定装置。【0010】【発明の実施の形態】本発明の酵素濃度測定方法は、測定試料液の1または2種以上の酵素濃度を測定する方法であって、各酵素に対する抗酵素抗体を担体の特定部位に担持させ、担持された該抗体に測定試料液を接触させ、各抗酵素抗体に対応する測定試料液中の酵素を各々捕捉させ、次いで各酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を、抗酵素抗体に捕捉された酵素に接触させ、各々の酵素反応産物を生成させ、該酵素反応産物を分析することにより各酵素の濃度を測定することを特徴とする。【0011】本発明の酵素濃度測定法を図1を用いて具体的に説明すると、以下の通りである。例えば、a酵素とb酵素の2種の濃度を測定する場合、(1)担体1上に抗a酵素抗体、抗b酵素抗体を各々異なる部位に担持させる。(2)担体に測定試料液2(a酵素、及びb酵素含有)を添加して、抗酵素抗体に測定試料液を接触させる。(3)各抗酵素抗体が各々の酵素を捕捉する。(4)続いて基質を少なくとも含む酵素反応液3を添加して、抗酵素抗体に捕捉された各酵素に酵素反応液を接触させる。(5)酵素濃度に比例して各々の酵素反応産物4aおよび4bが生成する。【0012】本発明において測定される酵素としては特に制限されないが、例えば、GOT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、GPT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、α−アミラーゼ、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチンキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、リパーゼ等が挙げられる。また、抗酵素抗体の特異性を選択することにより、アイソエンザイムを別々に測定することも可能であり、例えば、α−アミラーゼは膵臓アミラーゼと唾液アミラーゼがある。アルカリホスファターゼでは、肝臓、胎盤、骨等由来の異なるものがある。その他、GOT、GPT、クレアチンキナーゼ等多くの酵素にアイソエンザイムが存在する。【0013】本発明における測定試料としては、上述した酵素が存在する可能性のあるものであれば特に問題はないが、例えば、血清、血漿等の血液;髄液;唾液等の体液、組織片、尿、便等が挙げられる。【0014】本発明において抗酵素抗体が酵素を捕捉する際、酵素活性に影響を与えないことが重要である。即ち、抗体が酵素の活性発現部位と直接結合するような場合、酵素活性は阻害されることになるため、抗体の酵素に対する認識部位(以下、「エピトープ」ともいう)が酵素活性発現部位と離れていることが必要である。抗体が、酵素活性発現部位の近傍をエピトープとした場合、抗体分子も分子量16万と結構大きな分子なので、ある程度の阻害は生じる傾向がある。【0015】上述より、本発明における抗酵素抗体としては、ポリクローナル抗体を用いることも出来るが、ポリクローナル抗体よりもモノクローナル抗体が好ましい。ウサギやヤギなどで作ったポリクローナル抗体は、これらの多くのエピトープに対する抗体の混合物であるため、ポリクローナル抗体を使った場合、酵素のどの部位を捕捉するか非特異的である。従って、ある確率で酵素の活性発現を阻害する抗体を使用する可能性があるため、モノクローナル抗体を用いることが好ましい。モノクローナル抗体は、ひとつのクローンだけを大量に取ったものであり、認識部位はすべて同じである。従って、クローンを選択する際に、酵素活性を阻害しないもの使用することが好ましい。【0016】モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを用いた通常のモノクローナル抗体の作製法(Kohler and Milstein, Nature,495-492, 1975)にしたがって、調製することができる。具体的には、酵素で免疫したマウス、ラット、ヒツジなどの実験動物から脾細胞等の抗体産生細胞を採取し、同細胞とマウス骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製し、得られたハイブリドーマから抗原として用いた酵素に対するモノクローナル抗体を産生する株を選択し、クローニングする。得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを適当な培地で培養し、培養液からモノクローナル抗体を精製する。【0017】また、市販のモノクローナル抗体を用いてもよい。用いる酵素によっても適宜選択する必要があるが、具体的に、例えば、GOTには抗GOT抗体(ヒツジIgG、Biogenesis社)、GPTには抗GPT抗体(ヒツジIgG、BioPur社)、α−アミラーゼには抗ヒト唾液アミラーゼ抗体(ヒツジIgG、BioPur社)、抗ヒト膵アミラーゼ抗体(ヒツジIgG、BioPur社)、抗ヒトアミラーゼモノクローナル抗体(マウスIgG、International Reagent社)または抗ヒト膵アミラーゼ抗体(ウサギIgG、カルビオケム社)、アルカリホスファターゼには、抗アルカリホスファターゼ抗体(ヤギIgG、ロックランド社)、乳酸デヒドロゲナーゼには、抗LDH抗体(ヤギIgG、ケミコン社)、抗ヒトLDH−5抗体(ヒツジIgG、Biogenesis社)、リパーゼには、抗リパーゼ抗体(ヒツジIgG、コスモバイオ社)等が挙げられる。【0018】さらに、酵素標識されたモノクローナル抗体も市販されており、共役酵素として使用できるものを適宜選択して使用することができる。例えば、ペルオキシダーゼ標識抗GOT抗体(ヒツジIgG、ロックランド社)、ペルオキシダーゼ標識抗LDH抗体(ヤギIgG、ロックランド社)等が挙げられる。【0019】本発明においては、上記酵素に対する抗酵素抗体を担体に固定化し、次いで各酵素に対応する基質を加え、該抗酵素抗体の近傍に生成した各酵素反応産物を分析することにより、測定対象の酵素濃度を測定するが、該酵素反応産物が分析しにくい場合は、上記の酵素で得られる酵素反応産物に代わって、共役酵素によって生成される酵素反応産物を測定するのが好ましい。その酵素反応産物が数種の共役酵素による数段反応が組合わさって生成された酵素反応産物であっても構わない(以下、酵素濃度測定のために分析される酵素反応産物を「最終酵素反応産物」ともいう。)。【0020】担体に各酵素に対する抗酵素抗体を固定化する方法としては、免疫測定法で使用される種々の方法が挙げられる。具体的には、担体表面に抗体を物理吸着法で吸着固定する方法、または担体表面に存在する官能基を用い、抗酵素抗体分子の官能基と化学的結合を行わせて固定化する方法が挙げられる。化学的結合としては、例えば、担体のカルボキシル基と抗体のアミノ基、または担体のアミノ基と抗体のカルボキシル基の官能基を、カルボジイミドなどの縮合剤を用いて結合させる方法により行う。また、担体のアミノ基と抗体のアミノ基の官能基を結合するためのグルタルアルデヒドや、担体と抗体のチオール基同士を結合するためのマレイミド等の二価反応性試薬を用いて結合させても良い。【0021】また、複数の抗酵素抗体を担体に固定化する方法は、免疫分析法やDNA分析法で通常用いられている方法により可能であり、例えば、「R.Ekins,F.Chu,J.Micalef,J.Biolumi.Chemilumi.,vol.4,59-78(1989)」や「M.Eggers,et al.,BioThechniques,vol.17,516-524(1994)」に報告されている方法により行うことが出来る。【0022】担体の大きさ、固定化抗酵素抗体の担体における占有面積などにより集積化は決まるが、前記文献記載の方法では数万種類の抗酵素抗体の固定化が可能である。ただし、本発明においては、酵素活性の測定が必要であり、かつ最終反応生成物が本発明で検出可能なものということを考えると、酵素の測定数は1〜30項目が好ましい。【0023】また、抗酵素抗体を捕捉する抗(抗酵素抗体)抗体を担体に担持させておいて、抗酵素抗体を該抗体により捕捉することで、抗酵素抗体を担体に固定化しても良い。そのような抗(抗酵素抗体)としては、例えば、抗酵素抗体がウサギIgGであれば、抗ウサギIgG抗体(ヤギIgG)等を用いる。また、共役酵素で標識した抗(抗酵素抗体)抗体を用いることもでき、例えば、市販の抗体として、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体(ヤギIgG、ICNファーマシューティカルス社)、グルコースオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ヤギIgG、アメリカンコーレックス社)等が挙げられる。【0024】本発明において用いられる担体は、抗体を固定化することが出来るものであれば特に制限はないが、紙(セルロース)、ニトロセルロース、ガラス、アクリル、ポリメチレンアクリレート、ポリメチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンなどのプラスチック、金、カーボン、グラスファイバー等が挙げられる。その形状としては、反応液を収容可能な容器、あるいはマイクロタイタープレート、ビーズ、磁性ビーズ、ディスク、メンブレンなどのあらゆる形が可能である。【0025】担体として、水溶液を吸収、拡散する材質からなる展開層を有する担体を用いることも好ましい。水溶液を吸収、拡散する材質からなる展開層として、セルロース、ニトロセルロース、グラスファイバー等が挙げられる。そのような展開層を有する担体を用いた場合の測定方法を図3に示す。具体的には、セルロース13b上にニトロセルロースメンブレン13aを設けた、展開層も兼ねたプレート状の担体13を用いることが出来る。【0026】前記ニトロセルロースメンブレン13aの特定部位に抗酵素抗体(10,11,12)を担持させた後(a)、その担持部位と異なる部位に測定試料液14をスポットし(b)、測定試料液をニトロセルロースメンブレン13aを通して抗酵素抗体担持部位方向に展開させて、測定試料液中の酵素(15,16,17)を各抗酵素抗体(10,11,12)に捕捉させた後(c,e)、さらに酵素反応液18をスポットし(f)、展開層中で酵素反応液を展開させることにより、担体の上部や内部を反応液が浸み通りながら(g)、徐々に拡散しながら抗酵素抗体に捕捉された酵素と反応していき、抗酵素抗体の担持部位に最終酵素反応産物(19,20,21)が生成する(h)。測定試料液中の非反応物は反応部位から離れていき、結果として反応部位では非反応物が除去されることになることから好ましい。【0027】本発明の酵素濃度測定方法においては、担体に担持させた抗酵素抗体において、測定試料中の測定対象の酵素をいったん捕捉させ、その後、基質を少なくとも含む酵素反応液を加え、抗酵素抗体の近傍で酵素活性を発現させる。【0028】本発明において目的の酵素濃度を測定するには、酵素反応の結果生じる最終酵素反応産物を分析することにより行われるが、最終酵素反応産物が酵素反応液全体に拡散しないで、特定の位置にだけ生成するような系が必要である。最終酵素反応産物が拡散しないで特定の位置にだけ生成するような系とは、ある項目の最終酵素反応産物が、多項目測定時に、他の項目の妨害をしない範囲で生成するようにすれば良い。【0029】最終酵素反応産物を抗酵素抗体の近傍で、各酵素ごとの濃度を正確に分析するために、最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素を抗酵素抗体の近傍に固定化する。当然ながら、最終酵素反応産物に係わる共役酵素のみでなく、それに係わる共役系の他の共役酵素全てが前記抗酵素抗体の近傍に固定化していることは、さらに望ましいことである。【0030】測定対象の酵素による酵素反応産物を共役酵素により別の最終酵素反応産物とする場合、中間段階の酵素反応産物の水溶性が高いときに、該酵素反応に係わる酵素同士が離れていると、定量的に最終酵素反応産物(沈着色素等の検出物)に変換できないため、定量性が低下することから好ましくない。従って、中間段階の酵素反応産物を拡散させないためには、それに係わる共役酵素を反応系中において抗酵素抗体の近傍に固定することが好ましい。しかし、測定酵素の項目によっては、中間段階の酵素は、最終段階の酵素よりも影響度は低いことから、中間段階の共役酵素の固定化は必ずしも必要ではない。【0031】本発明で用いられる酵素反応液は、測定対象の酵素の基質を少なくとも含むものであり、最終酵素反応産物の生成に係わる共役酵素、およびそれらの基質等を必要により含有するものである。該酵素反応液は、濃度測定を測定対象とする酵素により、適宜選択する。【0032】最終酵素反応産物としては色素が好ましい。最終酵素反応産物が色素である場合、測定対象の酵素濃度の測定方法として、酵素反応で最終的に色素の発色を起こさせ、これを吸光光度計や目視で測定する方法が挙げられる。この方法においても、抗酵素抗体の近傍に、発色を起こさせる酵素(以下、「発色酵素」ともいう)を固定化させることが好ましい。発色酵素を抗酵素抗体の近傍に固定化する方法として、以下の方法が挙げられる。(A)抗酵素抗体と発色酵素との混合物を固定化する方法、(B)発色酵素で標識した抗酵素抗体を固定化する方法、(C)発色酵素で標識した抗(抗酵素抗体)抗体や発色酵素で標識したプロテインAを固定化し、さらにそこに抗酵素抗体を反応させて捕捉させる方法などがある。【0033】共役系のその他の反応に関与する酵素類を反応系中に存在させるには、抗酵素抗体の近傍に固定する場合も、上記と同様に抗体に固定化することができるし、また、測定対象の酵素を捕捉した後、その酵素活性を測定する際に用いる酵素反応液に基質と共に含有させておくこともできる。【0034】前記の発色酵素を抗酵素抗体の近傍に固定化する方法の一つである(c)方法において、発色酵素で抗体、プロテインAなどを標識するには、カルボジイミド、マレイミド、グルタルアルデヒド、過ヨウ素酸等を用いる多くの方法が知られている。【0035】具体的には例えば、以下の文献(“酵素免疫測定法”蛋白質 核酸 酵素 別冊No.31,1987、“超高感度酵素免疫測定法”石川栄治、学会出版センター、1993)の記載の方法により行うことが出来る。【0036】カルボジイミドは、カルボキシル基とアミノ基を結合させることができる。抗体や酵素のような蛋白質には、アミノ酸由来のカルボキシル基とアミノ基が存在するため、これらをカルボジイミドを用いて結合させることができる。試薬は水溶性カルボジイミドである1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドがよく使われる。詳しくは、リン酸緩衝液、Good's緩衝液などの緩衝液(pH5〜8)中に、抗体1分子あたり、0.1〜100倍当量のカルボジイミド試薬、1〜20倍当量の酵素を加えて反応させる。抗体1分子に対して酵素分子の結合量は、0.1〜10が好ましい。【0037】マレイミドは、チオール基を結合させることができる。例えば、BMDB試薬(1,4-Bis-Maleimidy-2,3-dihydroxybutane,Pierce社)のようなマレイミド基を2個有する試薬を使うと、抗体のチオール基と酵素のチオール基とを結合させることができる。抗体、酵素などの蛋白質は、分子内にS−S結合を有することがあるため、ジチオスレイトール、メルカプトエタノールなどの還元剤を用いることにより、チオール基を形成させることができる。これらの還元処理により導入したチオール基を結合に利用する。【0038】また、Sulfo−GMBS試薬(N-(γ-Maleimidobutyryloxy)sulfosuccinimido ester,Pierce社)のような、マレイミド基とN−ヒドロキシこはく酸イミド基の2種類の官能基を持つ試薬の場合、マレイミド基は、蛋白質のチオール基、N−ヒドロキシこはく酸イミド基は蛋白質のアミノ基と結合させることができる。通常、抗体を還元処理して導入されるチオール基は、抗体の抗原結合部位から離れた場所に導入されるため、抗体活性に影響を与えることなく標識が可能となり有利である。【0039】マレイミド基とチオール基の結合は、pH6〜8程度の中性付近の緩衝液中で行う。N−ヒドロキシこはく酸イミド基とアミノ基の結合も同様にpH6〜8程度の中性付近の緩衝液中で行う。アミノ基、チオール基を持たない緩衝液が良いため、リン酸、炭酸、Good's緩衝液がよく使われる。【0040】グルタルアルデヒドは、アミノ基とアミノ基を結合させることができる。グルタルアルデヒドの重合体が反応に寄与している。温和な条件下で反応するため、抗体と酵素の混合液にグルタルアルデヒドを添加して、中性、室温で数時間放置すれば標識できる。【0041】過ヨウ素酸は、糖タンパクの糖の水酸基を酸化し、アルデヒド基を形成させることができる。該アルデヒド基がアミノ基と結合する。発色反応で検出する際に用いられるペルオキシダーゼは糖タンパクであり、糖の酸化が酵素活性に影響しにくいのでペルオキシダーゼの標識法として良く使われる。【0042】いずれの結合法でも、抗体、酵素の官能基との反応はランダムにおこるため、抗体間、酵素間の結合による重合体形成も生じる。抗体活性、酵素活性への影響を少なくするためには、抗体1分子あたり、酵素0.1〜10分子程度の結合が好ましい。【0043】また、本発明において最終酵素反応産物を色素とする場合の酵素反応は、1段でなくても、数段組み合わせたものでも良い。最終酵素反応産物が色素である場合の具体的をいくつか例示する。<1>ペルオキシダーゼにより発色を行う例(例1)GOT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の酵素活性測定方法具体例の一つとして、担体であるニトロセルロースメンブレン上で、ペルオキシダーゼによる反応生成物の発色を計測することにより、GOTの濃度測定を行うことが出来る。反応機構を下記に示す。【0044】【化1】<操作手順>ペルオキシダーゼ標識抗GOT抗体を固定化したニトロセルロースメンブレン上に、血清検体などGOTを含有する測定試料液を、反応緩衝液と共に添加し抗酵素抗体でGOTを捕捉させる。次いで、洗浄液(界面活性剤を含有したトリス緩衝液など)で、未結合成分を除去した後、GOTの基質、共役酵素及び発色試薬を含む酵素反応液を加える。【0045】ここで酵素反応液としては、(i)GOTの基質として、α−ケトグルタル酸とアスパラギン酸、(ii)生成したオキサロ酢酸を基質とするオキサロ酢酸脱炭酸酵素、(iii)前記反応で生成したピルビン酸を基質とするピルビン酸オキシダーゼ、(iv)前記反応で生成した過酸化水素により、メンブレン上に固定化されているペルオキシダーゼ活性を測定するための発色試薬(4−クロロナフトール)、との混合液が用いられ、該酵素反応液をHEPES緩衝液(pH7)と共に添加する。反応により生じた色素は、不溶性なので、メンブレン上に沈着する。一定時間後、メンブレン上の色素濃度を計測する。計測には、反射式の吸光度検出器や目視計測が利用できる。【0046】洗浄は、洗浄液の注入、吸引除去を繰り返したり、洗浄液をメンブレンを透過させることで行う。前記酵素反応液は、混合液を同時に添加しても良いし、ステップ毎に添加しても良い。(例2)GPT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の酵素活性測定方法具体例の一つとして、担体であるニトロセルロースメンブレン上で、ペルオキシダーゼによる反応生成物の発色を計測することにより、GPTの濃度測定を行うことが出来る。反応機構を下記に示す。【0047】【化2】<操作手順>ペルオキシダーゼ標識抗GPT抗体を固定化したニトロセルロースメンブレン上に、血清検体などGPTを含有する測定試料液を、反応緩衝液と共に添加し抗酵素抗体でGPTを捕捉する。次いで、洗浄液(界面活性剤を含有したトリス緩衝液など)で、未結合成分を除去した後、GPTの基質、共役酵素及び発色試薬を含む酵素反応液を加える。ここで酵素反応液としては、(i)GPTの基質として、α−ケトグルタル酸とアラニン、(ii)生成したピルビン酸を基質とするピルビン酸オキシダーゼ、(iii)前記反応で生成した過酸化水素により、メンブレン上に固定化されているペルオキシダーゼ活性を測定するための発色試薬(4−クロロナフトール)、との混合液が用いられ、該酵素反応液をHEPES緩衝液(pH7)と共に添加する。反応により生じた色素は、不溶性なので、メンブレン上に沈着する。一定時間後、メンブレン上の色素濃度を計測する。計測には、反射式の吸光度検出器や目視計測が利用できる。【0048】洗浄は、洗浄液の注入、吸引除去を繰り返したり、洗浄液をメンブレンを透過させることで行う。前記酵素反応液は、混合液を同時に添加しても良いし、ステップ毎に添加しても良い。(例3)アミラーゼの酵素活性測定方法具体例の一つとして、担体であるニトロセルロースメンブレン上で、ペルオキシダーゼによる反応生成物の発色を計測することにより、アミラーゼの濃度測定を行うことが出来る。反応機構を下記に示す。【0049】【化3】<操作手順>ペルオキシダーゼ標識抗アミラーゼ抗体を固定化したニトロセルロースメンブレン上に、血清検体などアミラーゼを含有する測定試料液を、反応緩衝液と共に添加し抗酵素抗体でアミラーゼを捕捉する。次いで、洗浄液(界面活性剤を含有したトリス緩衝液など)で、未結合成分を除去した後、アミラーゼの基質、共役酵素及び発色試薬を含む酵素反応液を加える。ここで酵素反応液としては、(i)アミラーゼの基質として、マルトペンタオース、(ii)生成したマルトトリオースとマルトースを基質とするα−グルコシダーゼ、(iii)生成したグルコースを基質とするグルコースオキシダーゼ、(iv)前記反応で生成した過酸化水素により、メンブレン上に固定化されているペルオキシダーゼ活性を測定するための発色試薬(4−クロロナフトール)、との混合液が用いられ、該酵素反応液をHEPES緩衝液(pH7)と共に添加する。反応により生じた色素は、不溶性なので、メンブレン上に沈着する。一定時間後、メンブレン上の色素濃度を計測する。計測には、反射式の吸光度検出器や目視計測が利用できる。【0050】洗浄は、洗浄液の注入、吸引除去を繰り返したり、洗浄液をメンブレンを透過させることで行う。前記酵素反応液は、混合液を同時に添加しても良いし、ステップ毎に添加しても良い。<ペルオキシターゼの抗酵素抗体近傍への固定化方法>ペルオキシダーゼの酵素反応産物(色素)が、抗酵素抗体固定化位置の近傍に局所的に発現するためには、ペルオキシダーゼが抗酵素抗体の近傍に固定化されていることが好ましい。【0051】本発明においては、ペルオキシダーゼの酵素反応産物である色素として不溶性のものを選択し、ペルオキシダーゼ存在位置近傍に沈着するようにする。抗酵素抗体固定化位置における沈着量が、求める酵素活性量を表すものであり、抗酵素抗体固定化位置に沈着させるには、その位置にペルオキシダーゼが必要である。【0052】上記例1〜3のように、異なる酵素でも共役酵素を工夫して、最終的にペルオキシダーゼの反応に持っていくものが数多くある。例えば、前記GOT、GPTの測定法では、GOTの第3反応以降と、GPTの第2反応以降はまったく同じである。つまり、複数項目を同時測定する場合、それぞれの項目用のペルオキシダーゼが必要である。【0053】測定対象の酵素の捕捉位置よりも離れたところにペルオキシダーゼがあると、他の項目の酵素反応由来の過酸化水素に反応してしまう可能性があるため、ある酵素の活性検出に必要なペルオキシダーゼは、その酵素(すなわち酵素を捕捉する抗酵素抗体)の近傍にいて、その酵素由来の過酸化水素だけに反応し、また、その酵素由来の過酸化水素はすべて捉える位置にあることが好ましい。中間酵素反応産物であり中間基質でもある過酸化水素の拡散を防止するために、カタラーゼを系内に分散させるか、または、抗酵素抗体と別の抗酵素抗体との間にカタラーゼを固定化しても良い。【0054】また、抗酵素抗体を固定化する際に、(a)抗体とペルオキシダーゼの混合物を固定化する方法、(b)ペルオキシダーゼ標識した抗酵素抗体を固定化する方法、(c)ペルオキシダーゼ標識した抗(抗酵素抗体)抗体やペルオキシダーゼ標識プロテインAを固定化し、さらにそこに抗酵素抗体を反応させて捕捉させる方法などがある。【0055】その他の反応に関与する酵素類(ペルオキシターゼ以外)も、同様に抗体に固定化することもできるし、測定対象の酵素を捕捉した後、その酵素活性を測定する際に用いる反応液に含有させておくこともできる。【0056】例えば、前記GPT濃度測定を例にすると、上記の固定化方法(c)でペルオキシダーゼを抗酵素抗体の近傍に存在させる場合、以下の通りに行うことが出来る。(1)ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgGを担体表面上に固定化する。固定化には、物理吸着法を用い、さらに、固定化位置、面積などは、例えばインクジェットプリンターなどを利用し、線状、図形状にできる。または、スタンプ方式で固定化も可能である。(2)担体表面を牛血清アルブミンなどの蛋白質でコートし、非特異的吸着をブロックする。(3)ピルビン酸オキシダーゼ標識抗GPT(ウサギIgG抗体)を前記抗ウサギIgGに捕捉させることにより、担体上に固定化する。抗ウサギIgGの代わりに、プロテインAも使用できる。抗ウサギIgGを抗ウサギFcとするとさらに良い。【0057】同様の操作を繰り返すことにより、数種類の酵素を抗酵素抗体近傍に固定化できる。また共役酵素系の導入方法をGOTの濃度を色素を分析することにより測定する方法(図2の(a))を例にして、図2(b)を参考に以下に具体的に示す。▲1▼ペルオキシダーゼ標識抗GOT抗体を担体表面上に固定化し、オキサロ酢酸脱炭酸酵素とピルビン酸オキシダーゼを酵素反応液中に存在させる方法。▲2▼ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体(ヤギIgG)を担体表面に固定化し、これにピルビン酸オキシダーゼ標識抗GOT抗体(ウサギIgG)を捕捉させ、オキサロ酢酸脱炭酸酵素を酵素反応液中に存在させる方法。▲3▼ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ヤギIgG)を担体表面に固定化し、これにピルビン酸オキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体(マウスIgG)を捕捉させ、さらにオキサロ酢酸脱炭酸酵素標識抗GOT(ウサギIgG)を捕捉させる方法。▲4▼ペルオキシダーゼ標識抗GOTを担体表面上に固定化し、オキサロ酢酸脱炭酸酵素、ピルビン酸オキシダーゼ及び過酸化水素拡散防止のためのカタラーゼを酵素反応液中に存在させる方法。▲5▼ペルオキシダーゼと抗GOTを担体表面上に固定化し、ピルビン酸オキシダーゼ、オキサロ酢酸脱炭酸酵素を酵素反応液中に存在させる方法。▲6▼ピルビン酸オキシダーゼとペルオキシダーゼ標識抗GOTを担体表面上に固定化し、オキサロ酢酸脱炭酸酵素を酵素反応液中に存在させる方法。▲7▼オキサロ酢酸脱炭酸酵素、ピルビン酸オキシダーゼとペルオキシダーゼ標識抗GOTを担体表面上に固定化する方法。▲8▼過酸化水素拡散防止のためのカタラーゼをペルオキシダーゼ標識抗GOTを担体表面上に固定化し、オキサロ酢酸脱炭酸酵素とピルビン酸オキシダーゼを酵素反応液中に存在させる方法。【0058】最終酵素反応産物が色素である場合の一例として、共役酵素である発色酵素にペルオキシダーゼを用いた測定方法を具体例として上述したが、ペルオキシダーゼ以外にも最終酵素反応産物が発色等により検出できるものであれば良く、例えば、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。【0059】また、これらの発色酵素の反応産物としての色素は、沈着性を有することが好ましい。沈着性の程度は、抗酵素抗体が酵素を捕捉した位置(測定対象の酵素活性が発現する位置)に、最終酵素反応産物を沈着させるが、最終の酵素反応をいかに定量的に検出用の生成物に変換することができるかによって、定量性の精度が決まる。従って、生成物は、溶解性がほとんど無く、生成すると同時に直ちに全量沈着することが望ましい。しかし、ある程度の溶解性は避けられないため最終酵素反応における最終酵素反応産物の50%以上、好ましくは90%以上が不溶物として検出可能になることが望ましい。【0060】本発明において、生成後、拡散してから不溶化した場合、抗酵素抗体により局地的に酵素を捕捉することが活かされないことになる。1項目のみの測定である場合は、最終酵素反応産物が反応容器等の担体全体に広がっても、全体を計測すれば良いため問題はないが、2項目以上を同時測定する場合は、他の項目を測定する位置にまで影響しない範囲が広がって良い上限であり、この範囲以上に拡散しない内に、不溶化することが好ましい。【0061】最終酵素反応産物の拡散と計測技術とを考慮すると、1項目当たりの抗体固体化領域は通常1〜5mmである。また、ペルオキシダーゼの基質となる発色試薬として4-クロロナフトールを上記に例示したが、これ以外にも生成する色素が沈着性を有するものならば良く、例えば、免疫試薬において、イムノブロッティング法、免疫組織染色法などに使用される不溶性色素を生成する基質が挙げられる。【0062】具体的には、以下のものが例示できる。吸光度で検出可能な色素を生成する発色試薬のうち、ペルオキシダーゼに対して使用できるものとして、3,3-Diaminobenzidine(シグマ社)、3-Amino-9-Ethylcarbazole(シグマ社)、4-Chloro-1-Naphthol(シグマ社)、Vector VIP(Vector社)、Vector SG(Vector社);アルカリホスファターゼに対して使用できるものとして、5-Bromo-4-Chloro-3-Indolyl Phosphate/Nitoro Blue Tetrazolium(シグマ社)、Fast Red/Naphthol AS-TR Phosphate(シグマ社)、Vector Red(Vector社)、Vector Black(Vector社);等が挙げられる。【0063】蛍光光度計等を用いて検出する蛍光性のある色素を生成する発色試薬のうち、アルカリホスファターゼ用に対して使用できるものとして、ELF-97(Molecular Probes社)等が挙げられる。【0064】また、光電子増倍管やCCDカメラ等を用いて検出する、不溶性ではないが酵素の存在位置で発光する化学発光性の色素を生成する発色試薬のうち、ペルオキシダーゼに対して使用できるものとして、LumiGLO(Kirkegaard & Perry Laboratories社);アルカリホスファターゼに対して使用できるものとして、LuciGLO(Kirkegaad & Perry Laboratories社);等が挙げられる。【0065】また、測定対象の酵素として血液等の体液中のアルカリホスファターゼ自体の濃度を測定する場合は、共役酵素を必要とせずに1ステップで測定可能の酵素反応産物が生成される。即ち、アルカリホスファターゼの基質として用いられる上述の発色試薬を含む酵素反応液を使用することにより色素が生成されるため、測定が簡単である。【0066】色素を最終酵素反応産物として分析する酵素濃度測定方法において、上記以外の発色試薬を用いても良い。最終検出時の発色試薬を変えることにより、蛍光検出、発光検出が利用できる。【0067】また、最終酵素反応産物を表面プラズモン共鳴や、エバネッセント波の計測により測定することができる。これらの検出系は、最終酵素反応産物が色素でなくとも検出できるので有効である。【0068】酵素濃度の定量方法として、測定対象の各酵素に対し検量線を作製し、これにより測定サンプルの濃度を定量する。具体的には例えば、以下の工程で測定可能である。(1)既知濃度の酵素の標準サンプルを抗体に捕捉させた後、基質を添加し、一定時間反応させ、生成する色素を吸光度により測定する。(2)各標準サンプルの中の酵素濃度と、その吸光度の測定結果とで、検量線を作製する。(3)測定サンプルを、標準サンプルと同一条件で測定し、先の検量線を用いて標準サンプル中の酵素濃度を計算する。【0069】さらに、本発明の酵素濃度測定方法において、抗酵素抗体の固定化位置に電極を配し、最終酵素反応産物を電極上に接触させ、接触した物質による誘導率の変化を測定したり、電極に一定電圧を付与した電極に流れる電流値の変化を測定する方法で測定対象の酵素濃度を測定しても良い。例えば、最終酵素反応産物が過酸化水素である場合にこの方法で測定できる。この方法では一項目につき1つの電極を使用する。【0070】また、本発明は、測定試料液中の1または2種以上の測定対象の酵素濃度を測定するための試験片であって、担体と、該担体の特定部位に担持された各々の測定対象の酵素に対する抗酵素抗体と含む、上記の酵素濃度の測定方法に用いられる試験片である。本発明の試験片に用いられる抗体および抗酵素抗体は、上述のものが用いられる。複数の酵素を測定対象とする場合、各々の酵素に対する抗酵素抗体は、上述したように互いに分離して担体に担持されている。具体的には、図3(a)に示すものである。【0071】さらに、本発明は、前記試験片を用いて酵素反応産物を測定することにより測定試料液中の目的酵素を検出する酵素反応装置であって、測定試料液を試験片に供給する測定試料液供給手段と、前記酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を試験片に供給する酵素反応液供給手段とを備えた酵素反応装置である。【0072】最終酵素反応産物が色素である場合、酵素反応液供給手段で用いられる酵素反応液は、少なくとも発色試薬と必要により共役酵素を含む。その場合の酵素反応装置の一例として、図4に示されるものが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。具体的には、測定試料液手段は測定試料液押し出し用空気槽23と測定試料液供給槽26から構成され、酵素反応液供給手段は酵素発色試薬押し出し用空気槽22と酵素発色試薬供給槽25から構成される。【0073】該測定試料液押し出し用空気槽23によって、抗酵素抗体が担持された担体を含む試験片27に測定試料液供給槽26から測定試料液が供給され、試験片27の該抗酵素抗体に酵素が捕捉される。次いで、酵素発色試薬押し出し用空気槽22によって、酵素発色試薬供給槽25中の酵素発色試薬が、試験片27上に添加され、試験片27の該抗酵素抗体に捕捉された酵素に接触させる。余分な測定試料液および酵素発色試薬は廃液槽24に運ばれる。【0074】生成した最終酵素反応産物が、例えばそれが色素である場合には、試験片に酵素反応産物を生成させ、目視で発色強度を分析することもできるが、最終酵素反応産物が目視で確認できない場合や分析の精度を向上させたい場合は、試験片(図3)または酵素反応装置(図4)を酵素濃度の測定装置(図5の29)に挿入し、試験片に生成された最終酵素反応産物の濃度を分析することにより、目的とする酵素濃度を測定することが好ましい。【0075】試験片に予め酵素反応産物を生成させてから、試験片(図3(h))または酵素反応装置(図4)を酵素濃度の測定装置(図5の29)に挿入して酵素濃度を測定しても良いが、酵素反応産物を生成させていない試験片(図3(a))または酵素反応装置(図4)を酵素濃度の測定装置に挿入し、酵素濃度の測定装置内で試験片に測定試料液と酵素反応液を自動で供給することにより、酵素反応産物を生成させ酵素濃度を測定する方が、酵素反応の反応時間、反応温度が一定となることから精度が向上し、より好ましい。【0076】酵素濃度の測定装置は、酵素反応産物測定手段を有する。前記酵素反応産物測定手段は、挿入される試験片の担体上に担持された2種以上の抗酵素抗体に対応して設けられていることが好ましい。例えば、最終酵素反応産物が色素である場合は、色素の発色強度を測定する吸光度検出器等の光学装置を酵素反応産物測定手段とする。【0077】酵素濃度の測定装置には、上記酵素反応産物測定手段の他に、該酵素反応産物測定手段により測定された測定値をデータ処理するデータ処理手段と、該データ処理手段による処理結果を表示する表示手段とを備えている。これらの各手段は、各々が装置として独立しそれらが連結する形態でも良いが、好ましくは3つの手段が1つの装置に備えられている形態(図5の29)である方が、装置自体がコンパクトとなることから良い。【0078】酵素反応産物を生成させていない試験片(図3(a))を酵素濃度の測定装置(図5の29)に挿入し測定装置内で酵素反応産物を生成させる場合には、本発明の酵素濃度の測定装置は、酵素反応装置が有するのと同様の測定試料液供給手段と酵素反応液供給手段を有する。【0079】また、試験片に酵素反応産物を生成させていない酵素反応装置(図4)を酵素濃度の測定装置に挿入し測定装置内で酵素反応産物を生成させる場合には、本発明の酵素濃度の測定装置は、酵素反応装置の測定液供給手段と酵素反応液供給手段を適当に作動させる手段を有する。該手段により、例えば、図4の測定試料液押し出し用空気槽23と発色試薬押し出し用空気槽22を順次圧縮して、試験片27に測定試料液と発色試薬を順次供給させることができる。【0080】具体的な酵素濃度の測定装置の一つの形態を図5により説明する。図3(a)の試験片に予め酵素反応産物を生成させてから酵素濃度の測定装置(図5の29)に挿入して測定する場合は、先ず、試験片に測定試料液と酵素反応液を順に添加して、最終酵素反応産物(例えば色素)を生成させる。次いで、該試験片28を酵素反応産物測定手段である吸光度検出器に挿入する。本発明の酵素濃度の測定装置は、上記酵素反応産物測定手段以外に、その内部にデータ処理手段、および該データ処理手段による処理結果を表示する表示手段とを有しており、吸光度検出器等の酵素反応産物測定手段で酵素反応産物の濃度を測定した後、その測定値をデータ処理手段により目的の酵素濃度に換算し、得られたデータ処理結果である酵素濃度は、表示手段である結果表示画面30に表示される。【0081】さらに、従来広く利用されている免疫測定法を、本発明と組み合わせて使用することも可能である。即ち、抗酵素抗体と抗(抗原)抗体を別々の位置に固定化し、抗酵素抗体の位置では本発明による酵素濃度の測定を行い、抗(抗原)抗体の位置では、例えば、アルカリホスファターゼ標識した第2抗体によりサンドイッチアッセイを行い、抗原の捕捉によるアルカリホスファターゼ濃度を同様の発色法により測定し、酵素濃度と抗原濃度を同時に計測できる試験片とすることができる。なお、第2抗体の標識材として、既に多くのものが知られており、色素、蛍光色素、着色粒子などが使用可能である。【0082】【実施例】以下、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。【0083】【実施例1】ニトロセルロースメンブレン(約10mm×10mm)に、ペルオキシダーゼ標識抗グルコースオキシダーゼ抗体(ヤギIgG、ロックランド社)0.3mg/mLを2μL滴下し、固定化したものを8枚用意した。乾燥後、5%スキムミルク、0.05%Tween20を含有するトリス緩衝液(20mMトリス、0.5M NaCl、pH7.5)により、ブロッキングした。【0084】ブロッキング液を吸引後、各々に0, 0.1, 1, 10, 100, 1000 10000, 100000ng/mLの濃度のグルコースオキシダーゼ(シグマ社)を1mL添加し、37℃、1時間反応させた。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のグルコースオキシダーゼを除いた。【0085】3.4mMの4−クロロナフトール発色液(4−クロロナフトール30mgをメタノール10mLに溶解し、トリス緩衝液40mLを添加したもの)0.5mLと、5%グルコース含有トリス緩衝液0.5mLを添加した。メンブレン上に、グルコースオキシダーゼ濃度に従って濃くなる濃紺色の着色を確認した。抗酵素抗体により捕捉した酵素の活性を、メンブレン上に沈着する色素で観察することができた。【0086】【実施例2】ニトロセルロースメンブレン(約10mm×10mm)に、ペルオキシダーゼ標識抗ヒツジIgG抗体(ウサギIgG、ロックランド社)1mg/mLを4μL滴下し、固定化したものを3枚用意した。乾燥後、5%スキムミルク、0.05% Tween20を含有するトリス緩衝液(20mMトリス、0.5M NaCl、pH7.5)により、ブロッキングした。【0087】ブロッキング液を吸引後、各々に抗ヒト唾液アミラーゼ抗体(ヒツジIgG、BioPur社)0.01mg/mLを1mLずつ添加し、37℃、2時間反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応の抗アミラーゼ抗体を除く。【0088】洗浄液を除去し、各々に0, 1000, 100000mU/mLの濃度のα−アミラーゼ(ヒト唾液由来、Lee Scientific社)を1mL添加し、37℃、1時間反応させた。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のα−アミラーゼを除く。【0089】洗浄液を除去し、各々に4.2mMマルトペンタオース1mLを添加し、37℃、10分間反応させる。反応後、60U/mLのα−グルコシダーゼ(和光純薬社)0.1mLを添加して、37℃、10分間反応させる。【0090】3.4mMの4−クロロナフトール発色液1.2mLと、0.5mg/mLのグルコースオキシダーゼ含有トリス緩衝液0.1mLを各々に添加し、37℃、1時間反応させた。メンブレン上に、α−アミラーゼ濃度に従って濃くなる濃紺色の着色を確認した。抗酵素抗体により捕捉した酵素の活性を、共役酵素系を介して、メンブレン上に沈着する色素で観察することができた。【0091】【実施例3】ニトロセルロースメンブレン(約10mm×10mm)に、ペルオキシダーゼ標識抗ヒツジIgG抗体(ウサギIgG、ロックランド社)1mg/mLを4μL滴下し、固定化したものを9枚用意した。乾燥後、5%スキムミルク、0.05% Tween20を含有するトリス緩衝液(20mMトリス、0.5M NaCl、pH7.5)により、ブロッキングする。【0092】ブロッキング液を吸引後、各々に抗GOT抗体(ヒツジIgG、Biogenesis社)0.01mg/mL 1mLずつを添加し、4℃、一夜反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応の抗GOT抗体を除く。【0093】洗浄液を除去し、各々に0, 1, 2, 5, 10, 20, 50, 100, 200mU/mLの濃度のGOT(ブタ心臓由来、Biogenesis社)を1mL添加し、37℃、2時間反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のGOTを除く。【0094】洗浄液を除去し、20mM HEPES緩衝液(pH7.0)0.4mL、35mMα−ケトグルタル酸0.2mL、GOT用酵素剤(トランスアミナーゼCIIテストワコー、和光純薬社)(成分:ピルビン酸オキシダーゼ5.4U/mL、オキザロ酢酸脱炭酸酵素14U/mL、4−アミノアンチピリン1mM、アスコルビン酸オキシダーゼ0.90U/mL、カタラーゼ270U/mL)0.2mL、3.4mMの4−クロロナフトール発色液0.4mLを添加し、37℃、1時間反応させた。メンブレン上に、GOT濃度に従って濃くなる赤色の着色を確認した。抗酵素抗体により捕捉した酵素の活性を、共役酵素系を介して、メンブレン上に沈着する色素で観察することができた。【0095】【実施例4】セルロース上にニトロセルロースメンブレンを設けた担体(約10mm×10mm、ワットマン社)に、ペルオキシダーゼ標識抗ヒツジIgG抗体(ウサギIgG、ロックランド社)2mg/mLとグルコースオキシダーゼ(Sigma社)2mg/mLの混合液を2μL滴下し、固定化したものを2枚用意した。乾燥後、カタラーゼ(Sigma社)1000U/mLの溶液で各々の担体をブロッキングし、さらに5%スキムミルク、0.05% Tween20を含有するトリス緩衝液(20mMトリス、0.5M NaCl、pH7.5)により、ブロッキングする。【0096】ブロッキング液を吸引後、各々に抗ヒト唾液アミラーゼ抗体(ヒツジIgG、BioPur社)0.01mg/mL 1mLずつ添加し、室温、1時間反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応の抗アミラーゼ抗体を除く。【0097】洗浄液を除去し、各々に0, 100mU/mLの濃度のα−アミラーゼ(ヒト唾液由来、Lee Scientific社)を1mL添加し、37℃、1時間反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のα−アミラーゼを除く。【0098】洗浄液を除去し、4.2mMマルトペンタオース、20U/mLのα−グルコシダーゼ(和光純薬社)と3.4mMの4−クロロナフトール発色液の混合液(2:1:2)0.5mLずつを添加し、室温、1時間反応させた。メンブレン上に、α−アミラーゼ濃度に従って濃くなる濃紺色の着色を確認した。抗酵素抗体により捕捉した酵素の活性を、共役酵素系を介して、メンブレン上に沈着する色素で観察することができた。【0099】【実施例5】セルロース上にニトロセルロースメンブレンを設けた担体(約10mm×10mm、ワットマン社)に、ペルオキシダーゼ標識抗ヤギIgG抗体(ウサギIgG、ICN社)と、α−グルコシダーゼ(Sigma社)200U/mLの混合液を2μL滴下し、固定化したものを2枚用意した。5%スキムミルク、0.05% Tween20を含有するトリス緩衝液(20mMトリス、0.5M NaCl、pH7.5)により、ブロッキングする。【0100】ブロッキング液を吸引後、グルコースオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ヤギIgG、ICN社)1mg/mL 0.3mLを室温、30分間反応させる。洗浄後、抗ヒトアミラーゼモノクローナル抗体(マウスIgG、International Reagent社)0.1mg/mL 1mL添加し、室温、30分間反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応の抗アミラーゼ抗体を除く。【0101】洗浄液を除去し、各々に0,10U/mLの濃度のα−アミラーゼ(ヒト唾液由来、Lee Scientific社)を0.3mL添加し、室温、30分間反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のα−アミラーゼを除く。【0102】洗浄液を除去し、4.2mMマルトペンタオースと3.4mM4−クロロナフトール発色液の混合液0.3mL(混合比1:1)を添加し、室温、1時間反応させた。メンブレン上に、α−アミラーゼ濃度に従って濃くなる濃紺色の着色を確認した。抗酵素抗体により捕捉した酵素の活性を、すべてメンブレン上に固定化した酵素による共役酵素反応を介して、メンブレン上に沈着する色素で観察することができた。【0103】【実施例6】セルロース上にニトロセルロースメンブレンを設けた担体(約5mm×30mm、ワットマン社)に、抗GOT抗体(ヒツジIgG、ロックランド社)1mg/mLとピルビン酸オキシダーゼ(旭化成社)200U/mL、西洋ワサビペルオキシダーゼ(東洋紡)30U/mLの混合液を2μL滴下し、固定化する。さらに、メンブレン上の別の位置に、抗アミラーゼ抗体(カルビオケム社)1mg/mLとグルコースオキシダーゼ(Sigma社)1mg/mL、西洋ワサビペルオキシダーゼ(東洋紡)30U/mLの混合液を2μL滴下し、固定化したものを4枚用意した。37℃で2時間乾燥後、カタラーゼ(Sigma社)300U/mLの溶液で担体をブロッキングし、さらに5%スキムミルクを含有するリン酸緩衝液(20mMリン酸、pH7.4)により、ブロッキングする。【0104】ブロッキング液を吸引後、GOT(ブタ心臓由来、Biogenesis社)とα−アミラーゼ(ヒト唾液由来、Lee Scientific社)の濃度がそれぞれ、(0U/mL,0U/mL),(10U/mL,0U/mL),(0U/mL,10U/mL),(10U/mL,10U/mL)の混合液を0.3mLずつ各々のメンブレンに添加し、4℃、1夜反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のGOT、α−アミラーゼを除く。【0105】洗浄液を除去した後、3通りの酵素活性の発色法を行った。(1)GOT反応液(リン酸緩衝液pH6.7、0.02mM FAD、0.38mMチアミンピロリン酸、0.19mM MnCl2、2.4U/mLオキサロ酢酸脱炭酸酵素(旭化成社)、6mMα−ケトグルタル酸、0.12Mアスパラギン酸、3.6U/mLカタラーゼ+0.64mM4−クロロナフトール発色液)を0.3mL加えて室温、2時間反応後、洗浄し、アミラーゼ反応液(2.1mMマルトペンタオース、5U/mLα−グルコシダーゼ(和光純薬社)、30U/mLカタラーゼ、0.85mM4−クロロナフトール発色液) 0.3mLを添加し、室温、2時間反応させた。GOT、アミラーゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。(2)上記アミラーゼ反応液0.3mLを添加し、室温、2時間反応後、洗浄し、上記GOT反応液0.3mLを加え、室温、2時間反応させた。GOT、アミラーゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。(3)上記GOT反応液と上記アミラーゼ反応液を0.15mLづつ等量混合し、室温、2時間反応させた。GOT、アミラーゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。【0106】いずれの反応でも、所定の位置に酵素による発色が確認され、2項目の酵素の同時測定ができた。発色の強度を定性的に判定した結果を表1に示した。【0107】【表1】【0108】【実施例7】セルロース上にニトロセルロースメンブレンを設けた担体(約5mm×30mm、ワットマン社)に、抗GOT抗体(ヒツジIgG、ロックランド社)1mg/mLとピルビン酸オキシダーゼ(旭化成社)200U/mL、西洋ワサビペルオキシダーゼ(東洋紡)30U/mLの混合液を2μL滴下し、固定化する。さらに、メンブレン上の別の位置に、抗アルカリホスファターゼ抗体(ロックランド社)1mg/mLを2μL滴下し、固定化したものを4枚用意した。4℃で一夜乾燥後、カタラーゼ(Sigma社)300U/mLの溶液で担体をブロッキングし、さらに5%スキムミルクを含有するリン酸緩衝液(20mMリン酸、pH7.4)により、ブロッキングする。【0109】ブロッキング液を吸引後、GOT(ブタ心臓由来、Biogenesis社)とアルカリホスファターゼ(ALP)(ウシ腸由来、シグマ社)の濃度がそれぞれ、(0U/mL,0U/mL),(10U/mL,0U/mL),(0U/mL,2U/mL),(10U/mL,2U/mL)の混合液を約1mL添加し、4℃、1夜反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のGOT、アルカリホスファターゼを除く。洗浄液を除去した後、2通りの酵素活性の発色法を行った。(1)GOT反応液(リン酸緩衝液 pH6.7、0.02mM FAD、0.38mMチアミンピロリン酸、0.19mM MnCl2、2.4U/mLオキサロ酢酸脱炭酸酵素(旭化成社)、6mMα−ケトグルタル酸、0.12Mアスパラギン酸、30U/mLカタラーゼ+0.64mM4−クロロナフトール発色液)0.3mLを加えて室温、2時間反応後、洗浄し、アルカリホスファターゼ発色液(1mM MgCl2を含有した0.1M炭酸緩衝液(pH9.8)10mLに対して、30mg/mL-70%DMFのNBT(p-Nitro Blue Tetrazolium Chloride、バイオラッド社)100μLと15mg/mL-DMFのBCIP(5-Bromo-4-chloro-3-indoyl phosphate p-toluidine salt、バイオラッド社)100μLを加えたもの)0.3mLを添加し、室温、15分間反応させた。GOT、アルカリホスファターゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。(2)前記アルカリホスファターゼ発色液0.3mLを添加し、室温、15分間反応後、洗浄し、前記GOT反応液0.3mLを加え、室温、2時間反応させた。GOT、アルカリホスファターゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。【0110】いずれの反応でも、所定の位置に酵素による発色が確認され、2項目の酵素の同時測定ができた。発色の強度を定性的に判定した結果を表2に示した。【0111】【表2】【0112】【実施例8】セルロース上にニトロセルロースメンブレンを設けた担体(約5mm×30mm、ワットマン社)に、抗アミラーゼ抗体(カルビオケム社)1mg/mLとグルコースオキシダーゼ(Sigma社)1mg/mL、西洋ワサビペルオキシダーゼ(東洋紡)30U/mLの混合液を2μL滴下し、固定化する。さらに、メンブレン上の別の位置に、抗アルカリホスファターゼ抗体(ロックランド社)1mg/mLを2μL滴下し、固定化したものを4枚用意した。4℃で一夜乾燥後、カタラーゼ(Sigma社)300U/mLの溶液で担体をブロッキングし、さらに5%スキムミルクを含有するリン酸緩衝液(20mMリン酸,pH7.4)により、ブロッキングする。【0113】ブロッキング液を吸引後、α−アミラーゼ(ヒト唾液由来、Lee Scientific社)とアルカリホスファターゼ(ALP)(ウシ腸由来、シグマ社)の濃度がそれぞれ、(0U/mL,0U/mL),(20U/mL,0U/mL),(0U/mL,2U/mL),(20U/mL,2U/mL)の混合液を約1mL添加し、4℃、1夜反応させる。反応後、反応液を吸引除去し、洗浄液(0.05% Tween20含有トリス緩衝液)で洗浄し、未反応のアミラーゼ、アルカリホスファターゼを除く。【0114】洗浄液を除去した後、2通りの酵素活性の発色法を行った。(1)アミラーゼ反応液(2.1Mマルトペンタオース、5U/mLα−グルコシダーゼ(和光純薬社)、30U/mLカタラーゼ、0.85mM4−クロロナフトール)を加えて室温、2時間反応後、洗浄し、アルカリホスファターゼ発色液(1mM MgCl2を含有した0.1M炭酸緩衝液(pH9.8)10mLに対して、30mg/mL-70%DMFのNBT(p-Nitro Blue Tetrazolium Chloride,バイオラッド社)100μLと15mg/mL-DMFのBCIP(5-Bromo-4-chloro-3-indoyl phosphate p-toluidine salt、バイオラッド社)100μLを加えたもの)0.3mLを添加し、室温、15分間反応させた。アミラーゼ、アルカリホスファターゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。(2)前記アルカリホスファターゼ発色液0.3mLを添加し、室温、15分間反応後、洗浄し、前記アミラーゼ反応液0.3mLを加え、室温、2時間反応させた。アミラーゼ、アルカリホスファターゼを添加したメンブレンでは、所定の位置に酵素による濃紺色の着色を確認した。【0115】いずれの反応でも、所定の位置に酵素による発色が確認され、2項目の酵素の同時測定ができた。発色の強度を定性的に判定した結果を表3に示した。【0116】【表3】本発明は、複数の酵素活性を同時に測定することを主目的とするが、1種の酵素活性の測定にも使用できる。【0117】また、体内より採取したサンプルの酵素濃度を測定することにより、病気の診断に利用できる。【0118】【発明の効果】本発明によれば、酵素反応を局地的に発現させることができるため、1種の酵素濃度の測定の場合、正確な濃度測定を行うことが出来る。【0119】また、本発明によれば、酵素反応を局地的に発現させることができるため、同一容器内で複数の酵素の濃度を同時に測定することができる。それにより、検体量、測定時間の削減を図ることが出来る。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の酵素濃度測定方法の工程を説明する図を示す。【図2】 本発明の酵素濃度測定方法における共役酵素の導入方法を説明する図を示す。【図3】 本発明の酵素濃度測定方法において、担体が展開層を有する場合の工程を説明する図を示す。【図4】 本発明の酵素反応装置の一例を示す。【図5】 本発明の酵素濃度の測定装置の一例を示す。【符号の説明】1:担体2:測定試料液3:酵素反応液4a、4b:最終酵素反応産物10,11,12:抗酵素抗体13:担体14:測定試料液15,16,17:酵素18:酵素反応液19,20,21:酵素反応産物22:発色試薬押し出し用空気槽23:測定試料液押し出し用空気槽24:廃液槽25:発色試薬供給槽26:測定試料液供給槽27:担体28:色素を発色した担体29:酵素濃度の測定装置30:結果表示画面 測定試料液の1または2種以上の測定対象の酵素濃度を測定する方法であって、各測定対象の酵素の酵素活性発現部位と離れた部位をエピトープとする抗酵素抗体を担体の特定部位に担持させ、担持された前記抗酵素抗体に測定試料液を接触させ、各抗酵素抗体に対応する測定試料液中の測定対象の酵素を各々捕捉させ、次いで各測定対象の酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を、抗酵素抗体に捕捉された測定対象の酵素に接触させ、各々の酵素反応産物を生成させ、最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素による反応を含むさらなる酵素反応で前記酵素反応産物から生じる最終酵素反応産物を分析することにより各酵素の濃度を測定することを特徴とし、前記最終酵素反応産物は不溶性色素であり、さらに前記抗酵素抗体は、 (1)前記最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素で標識されていること、または、 (2)前記担体に固定された、前記最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素で標識されている抗(前記抗酵素抗体)抗体で、捕捉されることにより前記担体に担持されていることを特徴とする酵素濃度の測定方法。 前記測定試料液の測定対象の酵素は、2種またはそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の酵素濃度の測定方法。 前記酵素反応液を測定対象の酵素に接触させる際に、測定対象の酵素の共役酵素を反応系中に存在させ、前記最終酵素反応産物は、共役酵素による反応を経て生成することを特徴とする請求項1または2に記載の酵素濃度の測定方法。 前記最終酵素反応産物の分析は、前記不溶性色素の量を吸光度で測定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。 前記担体は、水溶液を吸収、拡散する材質からなる展開層を有し、担体の前記抗酵素抗体を担持させた部位とは異なる部位に測定試料液をスポットし、測定試料液を展開層を通して抗酵素抗体を担持させた部位方向に展開させて測定試料液中の酵素を抗酵素抗体に捕捉させ、次いで、酵素反応液を該担持部位と異なる部位にスポットし、展開層中で酵素反応液を展開させることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の酵素活性の測定方法。 測定試料液中の1または2種以上の測定対象の酵素濃度を測定するための試験片であって、担体と、該担体の特定部位に担持された各々の測定対象の酵素の酵素活性発現部位と離れた部位をエピトープとする抗酵素抗体とを含み、前記抗酵素抗体は、(1)最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素で標識されているか、または(2)前記担体に固定された、最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素で標識されている抗(前記抗酵素抗体)抗体で、捕捉されることにより前記担体に担持されており、前記最終酵素反応産物は不溶性色素であり、前記抗体に測定試料液を接触させ、各抗酵素抗体に対応する測定試料液中の測定対象の酵素を各々捕捉させ、次いで各測定対象の酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を、抗酵素抗体に捕捉された測定対象の酵素に接触させ、各々の酵素反応産物を生成させ、前記最終酵素反応産物を生産するのに係わる酵素による反応を含むさらなる酵素反応で前記酵素反応産物から生じる最終酵素反応産物を分析することにより各測定対象の酵素の濃度を測定する試験片。 水溶液を吸収、拡散する材質からなる展開層が設けられ、担体の前記抗酵素抗体を担持させた部位とは異なる部位に測定試料液をスポットしたときに、測定試料液が展開層を通して抗酵素抗体を担持させた部位方向に展開することを特徴とする請求項6記載の試験片。 各々の抗酵素抗体が、互いに分離して担体に担持された請求項7記載の試験片。 請求項6〜8のいずれか一項に記載の試験片を用いて最終酵素反応産物を分析することにより測定試料液中の酵素濃度を測定する酵素反応装置であって、測定試料液を試験片に供給する測定試料液供給手段と、前記酵素に対応する基質を少なくとも含む酵素反応液を試験片に供給する酵素反応液供給手段とを備えた酵素反応装置。 請求項6〜8のいずれか一項に記載の試験片を用いて、最終酵素反応産物を分析することによる酵素濃度の測定装置であって、最終酵素反応産物の濃度を測定する最終酵素反応産物測定手段と、該最終酵素反応産物測定手段により測定された測定値をデータ処理するデータ処理手段と、該データ処理手段による処理結果を表示する表示手段とを備えた酵素濃度の測定装置。 前記試験片を請求項9の酵素反応装置と共に装着可能とした請求項10に記載の酵素濃度の測定装置。