タイトル: | 特許公報(B2)_ルテニウム−スズ系担持触媒の製造方法。 |
出願番号: | 2000116123 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | B01J 23/46,C07C 29/149,C07C 31/125,C07C 31/20,C07B 61/00 |
原 善則 遠藤 浩悦 高橋 裕子 JP 3911955 特許公報(B2) 20070209 2000116123 20000418 ルテニウム−スズ系担持触媒の製造方法。 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 原 善則 遠藤 浩悦 高橋 裕子 JP 1999121968 19990428 20070509 B01J 23/46 20060101AFI20070412BHJP C07C 29/149 20060101ALI20070412BHJP C07C 31/125 20060101ALI20070412BHJP C07C 31/20 20060101ALI20070412BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070412BHJP JPB01J23/46 301ZC07C29/149C07C31/125C07C31/20 ZC07B61/00 300 B01J 21/00 - 38/74 C07C 29/149,31/125,31/20 C07B 61/00 特開平10−015388(JP,A) 特表平11−501575(JP,A) 特開平10−309477(JP,A) 特開平11−033412(JP,A) 7 2001009277 20010116 7 20030908 後藤 政博 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明はカルボン酸又はカルボン酸エステルの水素化により相当するアルコールを製造する際の触媒として高い活性を示すルテニウム−スズ系担持触媒の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】ルテニウム、スズ及び白金を含む触媒は、カルボン酸の水素化反応に高い活性を示すことが報告されている(特開平7−165644号公報、及び特開平10−306047号公報参照)。触媒調製に用いるルテニウムやスズの化合物として最も一般的なものの一つはハロゲン化物、特に塩化物であるが、これらを用いて触媒を調製すると、水素ガスを用いて高温で気相還元をする過程で塩化水素ガス等が発生するので、製造装置の腐蝕に対する対策をとる必要がある。また特開平6−228028号公報には、触媒の調製に用いられるルテニウム化合物及びスズ化合物の少なくとも一方が塩素を含有する化合物である場合には、塩素の除去工程として、焼成、洗浄、予備還元等の工程を採用して触媒を調製するのがよいことが記載されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、ルテニウム及びスズを含む担持触媒を製造するに際し、ルテニウム及びスズの少なくとも一方の原料としてハロゲン化物を用いるにもかかわらず、気相還元時における塩化水素ガスの発生が少なく、かつカルボン酸又はカルボン酸エステルの水素化反応に対して高い活性を示す触媒の製造法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】 本発明に係るルテニウム及びスズを含む担持触媒の製造法においては、ルテニウム及びスズの少なくとも一方がハロゲン化物である触媒成分を担体に担持し、次いでアルカリ性溶液により処理し、更に還元処理することを特徴とする。このようにして得られる触媒は、驚くべきことに、アルカリ性溶液による処理を適切に行うことにより、アルカリ性溶液による処理を行わない以外は同様にして調製した触媒に比して、カルボン酸又はカルボン酸エステルの水素化反応によるアルコールの製造に際し、有意に優れた触媒活性を示す。【0005】【発明の実施の形態】 本発明に係るルテニウム−スズ系担持触媒の製造法においては、ルテニウム及びスズの少なくとも一方の成分がハロゲン化物、特に塩化物である触媒成分を担体に担持し、次いでアルカリ性溶液と接触させ、更に、還元剤で還元する。触媒中には更に白金を含有させるのが好ましい。【0006】触媒に含有させる各金属成分の原料化合物としては、通常はハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩が用いられる。また、これら以外にも酢酸塩などの有機酸塩、水酸化物、酸化物、更には有機金属化合物や錯塩なども用いることができるが、中でも塩化物を用いるのが特に好ましい。ルテニウム及びスズの担持量は、担体に対してそれぞれ金属として、0.5〜50重量%、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。スズはルテニウムに対して、原子比で通常は0.3〜10倍存在させるが、0.5〜8倍、特に0.5〜5倍存在させるのが好ましい。また、白金を含む場合は、白金はルテニウムに対して原子比で通常は0.05〜2.5倍存在させるが、0.1〜1.5倍、特に0.1〜0.4倍存在させるのが好ましい。【0007】これらの触媒成分はこれを溶解し得る任意の溶媒に溶解して担体に担持させることができる。通常は水溶液として担持させるが、メタノール、アセトン等の有機溶媒溶液として担持させることもできる。また溶液中での触媒成分の安定化のため、溶液に塩酸や硝酸などを添加してもよい。【0008】担体としては、例えば、炭素質担体、アルミナ、シリカ、ケイソウ土、ジルコニア等の多孔質担体を用いることができるが、中でも活性炭等の炭素質担体を用いるのが特に好ましい。担体の形状は反応形式により適宜選択すればよいが、数μmの粉末状から数mmないし数十mmの粒状、ペレット状など任意の形状のものを用いることができる。通常は粒状、ペレット状のものが用いられる。担体への触媒成分の担持は、浸漬法、イオン交換法、含浸法、スプレー法など担持触媒の調製に常用されている任意の方法で行うことができる。【0009】担体に各触媒成分を担持させる順序については特に制限はなく、全ての触媒成分を同時に担持しても、各成分を個別に担持してもよい。また所望ならば各成分を複数回に分けて担持してもよい。触媒成分を担持させた担体は、通常は引き続いて溶媒を除去するために乾燥させる。乾燥は通常は300℃以下、好ましくは250℃以下で行われる。好ましくは50〜200℃、特に50〜180℃の温度で減圧下に保持するか、又は窒素や空気などの乾燥ガスを流通させればよい。【0010】触媒成分を担持した担体は、次いでアルカリ性溶液で処理する。処理は操作の容易な室温〜50℃で行うのが好ましいが、この範囲外で行うことも勿論可能である。その場合でも操作上の便宜からして通常は5〜100℃、特に10〜90℃で行われる。この処理によりハロゲン化物として担持されている触媒成分からハロゲンが除去され、触媒成分はハロゲンを含まない形で担体に固定される。アルカリ性溶液としてはpH7.5〜13.0、特に8.0〜12.5のものを用いるのが好ましい。例えばアルカリ金属の炭酸塩や重炭酸塩などが用いられる。好ましくはアンモニア又は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムなどのような弱酸のアンモニウム塩を用いる。一般にアンモニアやアンモニウム塩などの弱塩基の溶液を用いた方が、強塩基の溶液を用いるよりも活性の高い触媒が得られる。【0011】アルカリは担体に含有されているハロゲンイオンに対し通常は1〜50当量用いればよい。好ましくは1〜20当量、特に1〜10当量用いる。アルカリは通常は水溶液として用いるが、所望ならばメタノール、エタノール、アセトン、更にはエチレングリコールジメチルエーテル等を含む水性溶液として用いてもよい。アルカリ性溶液は、触媒成分を担持している担体の細孔を完全に充満するに足る量、すなわち担体の細孔容積と等量以上用いるのが好ましい。アルカリ性溶液の使用量の上限は任意であるが、最大でも担体の細孔容積の50倍も用いれば十分であり、通常は30倍、特に10倍も用いれば十分である。廃水処理等を考慮すると、アルカリ性溶液の最も好ましい使用量は担体の細孔容積の1〜2倍である。【0012】アルカリ性溶液による処理を経た担体は、次いで水洗して過剰のアルカリや生成したアルカリハロゲン化物を除去する。洗浄は操作上の便宜からして通常は10〜100℃で行うが、温水を用いるのが洗浄効率がよいので50〜100℃、特に70〜90℃で行うのが好ましい。洗浄後は所望により乾燥したのち還元処理することにより、目的とする触媒が得られる。還元は液相及び気相のいずれで行うこともできる。通常は水素やメタノールなどを還元ガスとして用いて、100〜600℃で気相還元する。200〜500℃、特に250〜500℃で気相還元するのが好ましい。【0013】 本発明方法で得られた触媒を用いて水素化反応を行うに際し、対象とするカルボン酸又はカルボン酸エステルとしては、工業的に入手し得る任意のものを用いることができる。例えばカルボン酸としては、一般式(1)又は(2)【0014】【化1】R1 −COOH (1)HOOC−R2 −COOH (2)【0015】(式中、R1、R2は置換基を有していてもよく、置換基以外の炭素数が1〜30である飽和、不飽和の脂肪族もしくは脂環族の炭化水素基又は芳香族の炭化水素基を表す)で表されるものが用いられる。また、これらのカルボン酸のエステルを用いる場合には、そのアルコール成分としてメタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノールの低級アルコールが挙げられるが、水素化反応で生成するアルコールを用いることもできる。【0016】 直接又はエステルとして反応に供するカルボン酸のいくつかを例示すると、シクロヘキサンカルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸等の脂環系カルボン酸類;ギ酸、酢酸、酪酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の直鎖もしくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸類;グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸等の飽和脂肪族もしくは脂環式ポリカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸類が挙げられる。上述したカルボン酸の中でも、式(2)で表されるジカルボン酸を用いるのが好ましい。反応は無溶媒で行うこともできるが、通常は溶媒の存在下で行われる。 溶媒としては、通常、水、メタノールやエタノールなどの低級アルコール類、反応生成物のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンやエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、デカリンなどの炭化水素類など、常用の溶媒を単独あるいは必要であれば混合溶媒として用いることができる。特にカルボン酸を水素化する際には溶解性等の理由から水を含む水性溶媒を用いるのが好ましい。溶媒の使用量は、通常、原料に対して0.1〜20重量倍程度であるが0.5〜10重量倍、特に1〜10重量倍程度用いるのが好ましい。【0017】水素化反応は通常、水素ガス加圧下で行われる。反応は通常50〜350℃で行われるが100〜300℃で行うのが好ましい。一般的に好ましい反応温度は100〜250℃であるが、高い反応速度を望む場合には150〜280℃で行うのが好ましい。また反応圧力は通常0.1〜30MPaであるが、1〜25MPa、特に5〜20MPaが好ましい。反応は通常は液相で行うが、気相で行うこともできる。【0018】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものでない。実施例1触媒調製;活性炭(MORIT製 RX1.5 EXTRA、直径1.5mmの柱状活性炭)を30%硝酸水溶液で、95℃、3時間加熱処理した後ろ過した。水で洗浄後、2mmHgの減圧下、80℃で5時間乾燥した。塩化ルテニウム水和物1.86g、塩化白金酸(IV)6水和物0.955g、塩化スズ(II)2水和物1.59gを水12.1gに溶解した。この溶液に上記の活性炭を10.1g加えた。エバポレーターにて60℃、25mmHgの減圧下で溶媒を留去した後、アルゴン流通下に150℃で2時間乾燥し、触媒Aを得た。【0019】28重量%アンモニア水6.3mlに水7.9mlを加えた溶液(pH=12.1)に上記の触媒Aを加え、室温で30分間保持した。触媒をろ別し、室温のイオン交換水2Lで充分洗浄した。これを再度エバポレーターにて60℃、25mmHgの減圧下で溶媒を留去した後、アルゴン流通下に150℃で2時間乾燥した。次いで水素気流下、450℃で2時間還元し、6%Ru−3%Pt−7%Sn/活性炭触媒Bを得た。水素還元前の触媒中の残存塩素量を蛍光X線分析で求め表1に示した。【0020】反応;200ml誘導撹拌式オートクレーブに、アジピン酸20g、水30g及び上記の触媒B4gをアルゴン雰囲気下で仕込んだ。水素圧1MPa下で230℃まで昇温し、230℃に達した時点で8.5MPaになるように水素を圧入して反応を開始した。8.5MPaの圧力下で3時間反応させた後冷却した。アルカリ滴定及びガスクロマトグラフィーにより反応液の分析を行った。結果を表1に示した。【0021】比較例1触媒調製;実施例と1同様の方法で調製した触媒Aを、水素気流下、450℃で2時間還元し6%Ru−3%Pt−7%Sn/活性炭触媒Cを得た。水素還元前の触媒中の残存塩素量を蛍光X線分析で求め表1に示した。反応;触媒Cを用いた以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表1に示した。【0022】実施例2 実施例1において、アンモニア水で処理した後の触媒を80℃のイオン交換水2Lで洗浄した以外は実施例1と同様にして触媒Dを得た。水素還元前の触媒中の残存塩素量を蛍光X線分析で求めたところ、0.52%であった。【0023】【表1】【0024】実施例3触媒調製;実施例1において触媒Aを得るまでの過程を40倍のスケールで行い、触媒Eを得た。アンモニア水の代わりに炭酸アンモニウムの20重量%水溶液(pH=8.4)を、触媒Eの塩素に対しアンモニウムイオンが2当量となるように用いた以外は、実施例1と同様にして後続する処理を行った。得られた還元済触媒に、5容量%の酸素を含む窒素ガスを室温で接触させて触媒の安定化を行い、触媒Fを得た。水素還元前の触媒中の残存塩素量を蛍光X線分析で求め表2に示した。反応;触媒Fを用い、かつ触媒の仕込みを大気中で行った以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示した。【0025】実施例4触媒調製;実施例3において炭酸アンモニウム水溶液の代わりに重炭酸アンモニウムの20重量%水溶液(pH=8.5)を用いた以外は、実施例3と同様にして触媒Gを得た。水素還元前の触媒中の残存塩素量を蛍光X線分析で求め表2に示した。反応;触媒Gを用いた以外は実施例3と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示した。【0026】比較例2触媒調製;触媒Eを炭酸アンモニウム水溶液で処理しなかった以外は実施例3と同様に処理して触媒Hを得た。反応;触媒Hを用いた以外は実施例3と同様の方法で反応を行った。結果を表2に示した。【0027】【表2】 カルボン酸又はカルボン酸エステルを水素で還元してアルコールを製造するためのルテニウム及びスズを含む担持触媒の製造方法であって、ルテニウム及びスズの少なくとも一方がハロゲン化物である触媒成分を担体に担持し、次いで担体をアルカリ性溶液により処理し、更に還元処理することを特徴とする方法。 カルボン酸又はカルボン酸エステルを水素で還元してアルコールを製造するためのルテニウム、スズ及び白金を含む担持触媒の製造方法であって、触媒成分であるルテニウム、スズ及び白金を、ルテニウム及びスズの少なくとも一方をハロゲン化物として、担体に担持し、次いで担体をアルカリ性溶液により処理し、更に還元処理することを特徴とする方法。 担体が炭素質担体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。 カルボン酸又はカルボン酸エステルを水素で還元してアルコールを製造するための、炭素質担体にルテニウム、スズ及び白金を担持してなる触媒の製造方法であって、触媒成分であるルテニウム、スズ及び白金を、原子比でルテニウムに対してスズが0.3〜10倍、白金が0.05〜2.5倍となるように、かつルテニウム及びスズの少なくとも一方をハロゲン化物として、担体に担持し、次いで担体をアルカリ性溶液で処理し、更に還元処理することを特徴とする方法。 ハロゲン化物が塩化物であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。 アルカリ性溶液がpH7.5〜13.0の溶液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。 アルカリ性溶液がアンモニア溶液又は弱酸のアンモニウム塩溶液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。