タイトル: | 特許公報(B2)_造粒粉体及びその製造方法及び圧縮成形固形物 |
出願番号: | 2000099801 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | B01J 2/00,A61K 9/50,B01J 2/28,B01J 2/30,C11D 1/66,C11D 3/10,C11D 3/20,C11D 3/37,C11D 17/06 |
三角 学 JP 5026630 特許公報(B2) 20120629 2000099801 20000331 造粒粉体及びその製造方法及び圧縮成形固形物 小林製薬株式会社 000186588 大島 泰甫 100077780 稗苗 秀三 100106024 小原 順子 100135574 小羽根 孝康 100167841 三角 学 20120912 B01J 2/00 20060101AFI20120823BHJP A61K 9/50 20060101ALI20120823BHJP B01J 2/28 20060101ALI20120823BHJP B01J 2/30 20060101ALI20120823BHJP C11D 1/66 20060101ALI20120823BHJP C11D 3/10 20060101ALI20120823BHJP C11D 3/20 20060101ALI20120823BHJP C11D 3/37 20060101ALI20120823BHJP C11D 17/06 20060101ALI20120823BHJP JPB01J2/00 BA61K9/50B01J2/28B01J2/30C11D1/66C11D3/10C11D3/20C11D3/37C11D17/06 B01J2/00 A61K8/00-9/72 A61K47/00-47/48 A61Q1/00-99/00 C11D1/00-19/00 特開平6−116126(JP,A) 特開昭61−176519(JP,A) 特開平4−211334(JP,A) 特開平6−210152(JP,A) 特開平1−238520(JP,A) 10 2001276597 20011009 15 20070306 2010023528 20101019 鈴木 正紀 井上 茂夫 川端 修 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、粉体の粒子表面にコーティング剤による被膜を形成した造粒粉体及びその製造方法に関するものであり、また、造粒粉体を原料として使用した圧縮成形固形物に関するものである。特に、ポリエチレングリコ−ル(以下、PEGという。)などの非イオン系界面活性剤をコーティングした有機酸粒子の製造において、生成収率及び再現性よく目的物が得られる造粒粉体の製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来より、有機酸の粒子表面にPEGを被覆し、このPEGを有機酸と炭酸ナトリウムや重炭酸ナトリウムとの結合剤として圧縮成形した洗浄剤や入浴剤等が知られている。これら洗浄剤や入浴剤等は、有機酸と重炭酸ナトリウム等との接触を防ぎそれらの共存下における保存を可能にする一方、使用に際して水に投入すると、その成分が反応して炭酸ガスを発生しつつ速やかに溶解するので、洗浄効果を向上させ、消費者に快適な使用感を与えることができるという効果を有している。【0003】上記発泡性の洗浄剤等を製造する方法としては、有機酸からなる粉体とPEGとを60℃〜100℃で加熱溶融混合後、冷却、粉末化してPEG被覆有機酸粒子を得て、これに重炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウム等を添加し、圧縮成形して製造する方法(特公平2−10126号公報)が知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、上記製造方法においては、有機酸とPEGとを、PEGの融点以上の温度(60〜100℃)に加熱して混合容器内で混合するために、PEGは完全に溶融して容器内壁に有機酸等を含む粘性の高い状態(ベットリした状態)で多量付着する。【0005】その結果、有機酸の粒子表面へのPEG被膜形成効率が悪く、生成収率の再現性にも乏しく、さらに、混合温度が高いため消費熱量が大きく、冷却のために時間やエネルギ−を要する等の難点があった。【0006】また、処理後の有機酸粒子は、溶融したPEGによって互いに結合して塊状の凝集体を形成するため、圧縮成形固形物の原料として使用する際には、凝集体を粉末化する工程が必要となる上に、凝集体を粉末化する工程において有機酸粒子の表面が一部露出してしまい、結果的に圧縮成形固形物としての長期安定性に影響を及ぼすという難点が生じていた。【0007】そこで、本発明においては、クエン酸等からなる粉体の粒子表面にPEG等のコーティング剤膜が形成され、長期安定性に優れた造粒粉体及びその製造方法を提供するとともに、その造粒粉体を使用した優れた特性を有する圧縮成形固形物を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため鋭意研究した結果、従来、PEGは融点以上に加熱して溶融させなければコーティングされないと考えられていたにもかかわらず、PEGと、有機酸又はその塩(以下、「有機酸等」という。)からなる粒体とを十分に混合すれば、加熱温度がPEGの融点未満であっても、有機酸等の粒子表面にPEG被膜が形成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0009】 すなわち、本発明にかかる造粒粉体は、有機酸又はその塩からなる粉体と、該粉体よりも低い融点を有する固形コーティング剤とを、コーティング剤の融点よりも5%〜50%低い加熱温度で加熱混合し、粉体の粒子表面にコーティング剤膜を形成したことを特徴とするものである。【0010】以上のように構成すると、加熱温度がコーティング剤の融点未満の温度であるにもかかわらず、粉体の粒子表面にコーティング剤被膜が形成された造粒粉体が得られる。実際に粉体としてクエン酸などの有機酸等を使用し、PEGをコーティング剤として使用した場合、皮膜形成時の様子を観察すると、加熱温度がPEGの融点未満の条件下では、クエン酸の粒子と接触した部分のみ選択的にPEGが溶融して粒子表面にPEG被膜が形成されるが、粒子と接触していない部分ではPEGの溶融は生じない。【0011】また、いったんPEG被膜が形成された粒子同士は、互いに接触しても、融点未満の温度であるためにPEGの粘性が低く容易に凝集体を形成することがないということが明らかとなった。【0012】上記メカニズムは不明であるが、融点以上に加熱してPEGが全体的に溶融した状態とはまったく異なるものであり、この状態と区別するために、粉体の粒子と接触した部分のコーティング剤のみが溶融する状態を本明細書では「選択的に溶融」した状態と称する。【0013】上記「選択的に溶融した」状態は、粉体として安定性(熱的安定性及び結晶構造的な安定性等)に優れたものを使用したときに発現すると考えられ、例えば、熱安定性に劣る重炭酸ナトリウムや、乾燥条件下では構造的に脆い硫酸ナトリウムなどを粉体として使用した場合には、PEGの溶融は生じない。【0014】また、粉体として有機酸等を使用し、そこへ重炭酸ナトリウムあるいは硫酸ナトリウムを混合した場合には、有機酸等の粒子表面ではPEGの選択的な溶融が生じるが、重炭酸ナトリウムあるいは硫酸ナトリウムの粒子表面ではPEGの溶融は生じない。そのまま混合を続けると、最終的に有機酸等の粒子表面にPEGの被膜が形成され、さらにその被膜上に重炭酸ナトリウムあるいは硫酸ナトリウムが付着した構造の粒子となる。すなわち、有機酸等と、重炭酸ナトリウムあるいは硫酸ナトリウムとは直接的に接触せず、長期保存性に優れた造粒粉体を得ることが可能となる。【0015】以上説明したように、本発明によれば、従来のように融点以上の高温でコーティングする場合に比べてコーティング剤の粘性が小さく、内容物(粉体及びコーティング剤)が混合容器内壁に付着する量は激減し、ほとんど付着しないか付着物のない状態となる。【0016】そのため、コーティング剤の被覆効率及び製造物の収率が高くなり、再現性もよく、容器内壁に付着物がほとんどないことから、温度コントロ−ルも容易となって連続生産が可能となる。さらに、混合温度が低いため消費熱量が小さく、被膜を安定化させるための冷却に要する時間やエネルギ−が少ないか若しくは必要でなくなり、安価に被膜形成することができる。【0017】ここで、「加熱温度がコーティング剤の融点未満」における温度とは、混合装置内に投入した内容物に温度センサ−を直接接触させて測定した温度をいう。すなわち、混合装置の温度がコーティング剤の融点以下の温度というだけでなく、混合によって発生する摩擦熱を加味しても内容物の温度がコーティング剤の融点未満であることが必要とされる。内容物を加熱する温度は、コーティング剤の融点よりも5%〜50%低い温度であるのが好ましい。【0018】粉体とは、粉状乃至粒状の粒子の集合物を意味し、前述のごとく、安定性に優れたクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸等の有機酸又はその塩を好適に使用することができる。粉体粒子の形状は、特に限定されず、不定形粒子は勿論のこと、球状やフレーク状であってもよい。【0019】また、本明細書において「造粒粉体」とは、粉体を構成する各粒子表面にコーティング剤による被膜が形成され、かつ、圧縮成形時に問題となるような凝集体を実質的に含まない粉体を意味するものであり、有機酸とPEGとを、PEGの融点以上に加熱して混合するために塊状の凝集体が必然的に生じる従来法による表面被覆粉体とは異なるものである。【0020】粉体粒子の大きさとしては、粉状物から粒状物まで含むものであるが、通常、1〜1000μmのものが使用される。そのうち100〜700μmのものを使用するのが好ましく、さらに、300〜500μmのものを使用するのがより好ましい。粒径が1μm未満では、PEG被覆粒子が凝集する傾向にあり、1000μmを超えると混合による剪断力によって粒子が粉砕されて目的とする粒径の収率が低下したり、剪断により1μm未満の微粉が生じやすくなり、それにより一部凝集するからである。なお、粉体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用することも可能である。【0021】コーティング剤としては、常温固形であって、加熱することにより溶融するものであれば、その種類について特に制限されるものではなく、例えば、固形ワックス等を使用することも可能である。【0022】前述のように、洗浄剤や入浴剤等のように水に溶解させる薬剤の原料として使用する場合には、例えば、PEG、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーに代表される非イオン系界面活性剤のような水溶性のものをコーティング剤として使用すればよい。【0023】中でも、PEGは、グレードが豊富で、水に対する溶解性に優れている点で好ましく、特に平均分子量2000〜20000のものは、35℃〜55℃の好ましい温度範囲で被膜形成できるので、高い被膜形成効率、収率の再現性、連続生産が可能、コスト安等の前記効果を、より確実に、より効果的に達成できる。なお、コーティング剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上併用することも可能である。【0024】コーティング剤の形状については、特に限定されるものではなく、粒状、ブロック状、フレーク状等の種々の形状のものを使用することができる。また、コーティング剤の使用量は、粉体の比表面積等によって変化するため、実際に使用する粉体に合わせて適宜調整すればよいが、通常、粉体100重量部に対し、コーティング剤を1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部、より好ましくは5〜20重量部を配合すれば、粉体の粒子表面にほぼ均一なコーティング剤の被膜を形成することができる。【0025】粉体とコーティング剤とを混合する場合、あらかじめ粉体を混合装置内に入れておき、粉体を混合しつつ、または混合を中断してPEGを配合してもよいし、混合装置内に粉体とPEGとを同時に投入して混合することも可能であるが、後者の方が最初から所定量のPEGがクエン酸粒子と共に存在するため、混合速度を調整することにより被膜の厚みがより均一になる傾向にある。【0026】粉体と、コーティング剤とを混合するための手段については、特に限定なく使用することが可能であり、例えば、バーチカルグラニュレーターやヘンシェルミキサー等の撹拌混合機又はニーダー等の混練機などを使用することができる。【0027】以上のようにして被膜形成された造粒粉体は、混合装置内あるいは流動層乾燥機等で混合しながら冷却され、その後取り出される。得られた造粒粉体は、粒子同士の凝集がほとんど見られず、その表面全体がコーティング剤により均一に被覆された状態となっていることから、成形薬剤などの圧縮成形固形物用原料として好適に使用することができる。【0028】すなわち、圧縮成形固形物として十分な強度および機能を発揮するためには固形物中の成分が均一化されていることが必要とされるが、従来の製造方法によって得られた粉体は、塊状の凝集体を形成するため、凝集体を粉末化する工程が必要となる上に、粉末化工程によって粉体が一部露出して圧縮成形固形物としての保存性が問題となっていた。これに対して、本発明に係る表面被覆粉体は、圧縮成形用原料として問題となる凝集体が実質的に発生せず、粒子表面全体がコーティング剤により均一に被覆されているため、圧縮成形用の原料として好適に使用することが可能となる。【0029】造粒粉体は、単独、或いは、必要に応じて他の配合剤と混合して圧縮成形される。例えば、前述のように発泡性の洗浄剤、入浴剤、風呂水清浄剤またはプ−ル用殺菌剤等として用いる場合は、配合剤として、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、重炭酸ナトリウム等の重炭酸塩やそのほかにも、香料、色素、界面活性剤、芒硝、セスキ炭酸ナトリウム、各種の結合リン酸塩、食塩等の無機塩等、過硼酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩の如き過酸化水素付加体、殺菌剤、消炎剤、製薬エキス、セルロ−ス誘導体や澱粉等の糖質等を使用することができる。【0030】なお、これらの配合剤は、粉体とともに被膜形成工程にかけてもよいし、被膜形成工程後に配合することも可能である。いずれの場合においても、前述のごとく、コーティング剤は粉体の粒子表面上で選択的に溶融して被膜を形成するために、最終的に、粒子表面に形成された被膜上にさらに配合剤が付着した粒子構造を有する粉体が得られる。【0031】さらに、コーティング剤量や、加熱混合条件(混合時間、加熱温度等)を適宜調整すれば、配合剤までもがコーティング剤により被覆された粒子構造の粉体を得ることが可能となる。したがって、配合剤として、香料、殺菌剤、消臭剤、防腐剤、防虫剤、忌避剤などの揮発性が高いものや、空気中での安定性に乏しいもの、具体的にはメントール、メントール誘導体又は乳酸メンチル等の長期保存が可能となる。【0032】また、配合剤の少なくとも一部を冷却用物質として被膜形成工程終了後に配合すれば、粉体の品温を低下させることにより、形成された被膜を安定化させることができ、被膜形成後の粒子の凝集を効果的に防止することが可能となる。【0033】冷却用物質としては、添加することにより粉体の粒子表面に形成された被膜の温度を低下させるものであれば特に限定されないが、冷却効果を高める意味で比熱の大きな物質を使用するのが好ましく、さらに、全体的に均等な冷却効果を得るために、粉状乃至粒状のものを用いるのが好ましい。このような冷却用物質としては上記配合剤の中でも特に炭酸塩、芒硝等の無機塩が好適に使用される。【0034】さらに、粉状あるいは粒状の冷却用物質は、製麺時の打粉と同じように作用するため、被膜形成後に混合装置から取出した段階で、表面被覆された粒子同士が自重により再付着するのを防止することが可能となり、混合装置内での冷却時間を短縮することが可能となる。【0035】本発明においては、他の配合剤を配合する場合にも多くのメリットがある。例えば、香料を配合する場合、混合温度が低いので、揮発による損失を抑制することができる。従来の混合温度と、本発明における混合温度との差は大きいので、この様な揮発性配合剤の損失抑制効果は高い。【0036】以上説明したように、本発明により得られた造粒粉体は、圧縮成形用の原料として問題となる凝集体が実質的に発生せず、粒子表面全体がコーティング剤により均一に被覆されているため、これを原料として圧縮成形して得られた圧縮成形固形物は、強度が高く、かつ長期保存性に優れるという効果を奏する。【0037】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこの実施の形態に示す被膜形成方法及びこの方法により製造された粒子を用いた圧縮成形固形物の製造方法に限定されるものではない。【0038】本実施形態においては、粉体として、粒径が100〜700μmのクエン酸を使用し、クエン酸100重量部に対してコーティング剤として平均分子量4000〜10000のPEG(融点;55〜60℃)3〜50重量部を撹拌混合装置の混合容器に入れ、PEGの融点未満の温度(35〜55℃)で混合することによって、クエン酸粉体の粒子表面にPEGによる被膜が形成された造粒粉体が得られる。【0039】この場合、混合は、クエン酸粒子とPEGの全量を混合容器に投入後行ってもよいし、まずクエン酸粒子を投入後混合し、その後に混合しつつ又は混合を中断してPEGを投入し、更に混合を続けてもよい。次に、目的に応じ、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等を添加すると、これらがPEG被膜を介してクエン酸粒子に付着した構造の造粒粉体が得られる。【0040】また、加熱温度がPEGの融点未満であって、しかも35℃〜55℃の低温で撹拌混合するので、被膜形成後のPEGのベトツキが小さく、炭酸ナトリウム等添加前でも容器内壁に内容物がほとんど付着しない。従って、内容物のほとんど全てが凝集することなく粒子化し、効率よく造粒粉体が製造できるとともに、製造した造粒粉体を容器から排出し、続けて原料を投入すれば、連続生産が可能となる。【0041】また、最後に添加する冷却用物質としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、造粒粉体を冷却する作用を持つので、これらを添加することにより、容器から排出後も再付着のない形状の安定した造粒粉体が製造できる。なお、この造粒粉体は、水中に投入すると、クエン酸と重炭酸ナトリウム等が反応して炭酸ガスを発生しつつ速やかに溶解するので発泡性の洗浄剤、入浴剤等に用いることができる。【0042】上記造粒粉体(PEG膜のみが被覆されたクエン酸粒子又はこれに炭酸ナトリウム等が付着したもの)を、打錠機を用いて打錠成形すれば、所定形状の圧縮成形固形物が簡単に製造できる。【0043】【実施例】以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0044】[実施例1]図2は、本実施例で使用した撹拌混合装置(株式会社パウレック社製FM−VG−25型)の内部構造を示す図である。この撹拌混合装置は、筒状の混合容器1の底部に水平回転するメインブレード2と、容器側壁の上部に垂直方向に高速回転するクロススクリュー3とを備えており、容器1内に投入された粉体は、メインブレード2により遠心力と回転力が与えられ、容器1の壁面に沿って上昇し、中心部に向かって落下することにより、転動・圧密運動を繰り返しながら容器1内を旋回し、この転動途中でクロススクリュー3によって縦に剪断するように局所的に剪断力が加えられる構造となっている。【0045】この混合容器1(内容積;25リットル)に、第1段階としてクエン酸(平均粒子径;500μm)4kgを投入し、メインブレード2、クロススクリュー3にて混合すると、表1に示すように内容物は次第に昇温し、投入後5.5分後には内容物の温度がジャケット温度に接近するので、この時点で混合を止める。【0046】ここで、第2段階として、PEG(平均分子量;6000、融点;58〜60℃)0.6kgを投入して混合を再開するとPEGが選択的に溶融し始め、PEGの全てが選択的に溶融した後(混合を再開後1分)、温度が上昇してほぼジャケット温度と等しくなった時点(混合を再開後4.5分)で混合を止め、製品の一部を取り出す。ここで第3段階として前記重炭酸ナトリウム4kgを投入して混合を再開し降下温度がほぼ一定となった時点(混合を再開後1.5分)で、排出孔5を開け、得られた造粒粉体を取り出す。【0047】なお、装置の運転条件は、次の通りである。ジャケット設定温度 ; 50℃、メインブレード2の回転速度 ; 180rpm、クロススクリュー3の回転速度; 1800rpm、内容物の温度測定;温度センサ−を内容物に接触させて測定。【0048】本実施例の場合、融点が58〜60℃のPEGを用いているにも拘らず、約45℃の温度でPEGはすべて選択的に溶融してクエン酸粒子を被覆する。図1は走査型電子顕微鏡写真の模写図であり、(A)はクエン酸粒子の、(B)は第2段階終了後のPEG膜被覆クエン酸粒子を、(C)は第3段階終了後の重炭酸ナトリウム付着PEG膜被覆クエン酸粒子を示す。(A)の段階ではクエン酸粒子表面に多くの凹凸が観察されるが、(B)の段階では表面が滑らかになり、クエン酸粒子がPEG膜で被覆されていることがわかる。更に(C)の段階では多くの付着物の粒子が観察されるが、これは、PEG膜を介して重炭酸ナトリウムの細かい粒子がクエン酸粒子に付着していることを示している。なお、本実施例において、混合容器内壁への内容物の付着はほとんど観察されず、高収率(99%以上)で造粒粉体が得られた。【0049】第2段階終了後のPEG膜被覆クエン酸粒子を加熱状態で取出して、放置すると粒子同士が付着して一部凝集する場合もあるので、例えば、図3に示すような流動層乾燥機を用い、粒子12を空気流11で吹き上げてそれぞれを分離しながら冷却すると粒子表面のPEG膜が固化し、実質的に問題となるような凝集のない、形状の安定した造粒粉体が得られる。【0050】[実施例2]図2に示す装置(株式会社パウレック社製FM−VG−25型)の混合容器1(内容積;40リットル)に、第1段階としてクエン酸(平均粒子径;500μm)5kgと重炭酸ナトリウム(平均粒子径;100μm)4kgとを投入し、メインブレード2、クロススクリュー3にて混合すると、表2に示すように、内容物はしだいに昇温し、投入後7分後には内容物の温度とジャケット温度がほぼ等しくなる。【0051】この時点で混合を止めるとともに、第2段階として、PEG(平均分子量;6000、融点;58〜60℃)0.75kgを投入して混合を再開するとPEGが選択的に溶融し始め、PEGの全てが溶融した時点(混合を再開後1.25分)で降下温度がほぼ一定になるので、この時点で混合を止め、ここで第3段階として前記重炭酸ナトリウム1.5kgを投入して混合を再開し、降下温度がほぼ一定となった時点(混合を再開後1.25分)で、排出孔5を開け、得られた造粒粉体を取り出した。【0052】なお、装置の運転条件は、次の通りである。ジャケット設定温度 ; 48℃、メインブレード2の回転速度 ; 180rpm、クロススクリュー3の回転速度; 1800rpm、内容物の温度測定;温度センサ−を内容物に接触させて測定。【0053】本実施例で得られた第3段階終了後の粒子は、図1(C)に示す表面状態になっており、PEG膜を介して重炭酸ナトリウムの細かい粒子がクエン酸粒子に付着している。本実施例においても、混合容器内壁への内容物の付着はほとんど観察されず、高収率(99%以上)で造粒粉体が得られた。【0054】[実施例3]実施例1、2とは容量の異なる装置(株式会社パウレック社製FM−VG−100P型)の混合容器(内容積;100リットル)に、第1段階としてクエン酸(平均粒子径;500μm)25kgと重炭酸ナトリウム(平均粒子径;100μm)20kgとを投入し、メインブレード2、クロススクリュー3にて混合すると、表3に示すように、内容物は次第に昇温し、内容物の温度がジャケット温度を超えた時点(投入後5.66分)で混合を止める。【0055】第2段階として、PEG(平均分子量;6000、融点;58〜60℃)3.75kgを投入して混合を再開すると、PEGが選択的に溶融し始めて内容物の温度は降下し、PEGの全てが選択的に溶融した時点(混合を再開後1分)で降下温度がほぼ一定になるので、この時点で混合を止め、ここで第3段階として前記重炭酸ナトリウム7.5kgを投入して混合を再開始し降下温度がほぼ一定となった時点(混合を再開後0.75分)で、排出孔5を開け、得られた造粒粉体を取り出した。【0056】なお、装置の運転条件は、次の通りである。ジャケット設定温度 ; 43℃、メインブレード2の回転速度 ; 140rpm、クロススクリュー3の回転速度; 1800rpm、内容物の温度測定;温度センサ−を内容物に接触させて測定。【0057】本実施例は実施例2の4倍のスケ−ルにすると共に、ジャケットの設定温度を下げ、またメインブレード2の回転速度を下げてブレ−ドの混合羽根の周先端速度を実施例2のものと同じにしたものである。【0058】この場合、ジャケットの設定温度を実施例2より5℃下げた状態において、混合開始から約5分経過後には、内容物の温度がジャケットの温度を上回る結果となり、次にPEGを投入すると、実施例2より内容物の温度が低い状態でPEGが選択的に溶融し、第3段階終了後に得られた粒子は、図1(C)に示す表面状態になっていた。【0059】このことは、本発明によれば、スケ−ルを相当大きくしても、また混合温度を融点より相当低く設定しても、クエン酸粒子表面に形成されたPEG被膜上に重炭酸ナトリウムが付着した構造の造粒粉体が再現性よく得られることを示している。なお、実施例3においても混合容器内壁への内容物の付着はほとんど観察されず、高収率(99%以上)で造粒粉体が得られた。【0060】[実施例4]本実施例においては、粉体として、各種有機酸又はその塩、芒硝、重曹の夫々を使用し、粒子表面へのPEGの被覆状態を調べた。具体的には、先ず、実施例1とは容量の異なる装置(株式会社パウレック社製FM−VG−05型)の混合容器(内容積;5リットル)をあらかじめ各設定温度に加熱しておき、そこへ、粉体1.0kgを投入して内容物の温度が設定温度と等しい温度になるまで混合を続ける。【0061】なお、装置に運転条件は以下の通りである。設定温度 ;30〜55℃まで5℃間隔で試験実施メインブレード2の回転速度 ;500rpmクロススクリュー3の回転速度;1800rpm【0062】次に、第2段階として、一旦混合を停止し、PEG(平均分子量;6000、融点;58〜60℃)を、表4に記載した量を投入して混合を再開し、PEGが粉体の粒子表面で選択的に溶融するか否かを観察し、以下に示す判定基準で評価した。(判定基準)○…すぐに溶融する(1分以内に溶融するもの)△…溶融に時間がかかる(溶融に1分以上かかるもの)×…溶融しない(3分間混合して溶融しないもの)【0063】表4に示すように、粉体として有機酸及び有機酸塩を使用した場合は、全て40℃の加熱条件でPEGは速やかに選択的に溶融し、粒子表面への被覆が可能であったのに対し、粉体として芒硝及び重曹を使用した場合は、55℃の加熱条件においてもPEGは溶融せず、被覆されないことが確認された。【0064】[実施例5]本実施例においては、コーティング剤としてプルロニック型非イオン系界面活性剤(融点60〜65℃)を使用した場合の粉体の粒子表面への被覆状態を調べた。具体的には、粉体としてクエン酸1.0kgを使用し、コーティング剤として上記プルロニック型非イオン系界面活性剤を使用した以外は、実施例4と同様の試験条件で試験を実施した。【0065】その結果、表5に示すように、プルロニック型非イオン系界面活性剤は、45℃の加熱条件でクエン酸粒子表面で選択的に溶融し、粒子表面への被覆が可能であることが確認された。【0066】[比較例]ジャケットの設定温度を70℃とした以外は実施例1と同じ運転条件で試験を実施した。具体的には、第1段階として、混合容器にクエン酸4kgを投入し、内容物の温度が70℃に近接した時点で一旦混合を停止する。【0067】第2段階として、0.6kgのPEGを投入して混合を再開し、再開から4.5分で混合を停止し、第3段階として重炭酸ナトリウム4kgを投入して1.5分間混合した後、排出孔5を開け、内容物を取出した。【0068】本比較例においては、混合容器内壁には、多量の内容物が付着しており、収率は70%と低いものであった。また、取出した内容物は粉体同士が凝集して塊状となっていたため、回転式整粒機によって粉末化した。得られた粉体を電子顕微鏡によって観察したところ、クエン酸が露出した部分が散在しているのが確認された。【0069】【表1】【0070】【表2】【0071】【表3】【0072】【表4】【0073】【表5】【0074】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、粉体と、コーティング剤とをコーティング剤の融点未満の温度で加熱混合することにより、実質的に問題となるような凝集体を形成することなく、粉体の各粒子表面がコーティング剤による被膜で被覆された造粒粉体を得ることができる。その結果、被膜形成効率及び収率が高くなり、再現性もよく、また、温度コントロ−ルも容易となって、連続生産が可能となる。【0075】さらに、混合温度が低いため、消費熱量が小さく、また粒子固化のための冷却に要する時間やエネルギ−が少ないか若しくは必要でなくなり、安価に被膜形成できる。【0076】また、得られた造粒粉体は、粒子同士の凝集がほとんど見られず、粒子表面全体がコーティング剤により均一に被覆された状態となっていることから、圧縮成形用として好適な原料となる。【0077】また、上記造粒粉体を原料として圧縮成形して得られた圧縮成形固形物は、強度が高く、かつ長期保存性に優れるという効果を奏する。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は、走査型電子顕微鏡写真の模写図であり、(A)はクエン酸粒子を、(B)はPEG膜被覆クエン酸粒子を、(C)は重炭酸ナトリウムが付着したPEG膜被覆クエン酸粒子をそれぞれ示す。【図2】 図2は、本発明の被膜形成方法の実施に用いる混合装置の内部構造を示す。【図3】 図3は、PEG膜被覆粒子を固化するための流動層乾燥装置の概略を示す。【符号の説明】1・・・ 混合容器、2・・・ メインブレ−ド、3・・・ クロススクリュ−、4・・・ 混合容器蓋部、5・・・ 排出孔、6・・・ 点検窓、7・・・ 排気部、11・・・ 空気流、12・・・ 粒子 有機酸又はその塩からなる粉体と、該粉体よりも低い融点を有する固形コーティング剤とを、該コーティング剤の融点よりも5%〜50%低い加熱温度で加熱混合し、前記粉体の粒子表面に前記コーティング剤による被膜を形成したことを特徴とする造粒粉体。 コーティング剤が、非イオン系界面活性剤である請求項1記載の造粒粉体。 コーティング剤が、ポリエチレングリコールである請求項2記載の造粒粉体。 前記ポリエチレングリコールは、平均分子量2000〜20000であることを特徴とする請求項3記載の造粒粉体。 粉体100重量部に対し、ポリエチレングリコ−ルを1〜100重量部を配合することを特徴とする請求項3又は4記載の造粒粉体。 請求項1〜5のいずれかに記載の造粒粉体と、必要に応じて他の配合剤とを混合して圧縮成形したことを特徴とする圧縮成形固形物。 有機酸又はその塩からなる粉体と、該粉体よりも低い融点を有する固形コーティング剤とを、該コーティング剤の融点よりも5%〜50%低い加熱温度で加熱混合し、前記粉体の粒子表面にコーティング剤による被膜を形成することを特徴とする造粒粉体の製造方法。 有機酸又はその塩からなる粉体と、該粉体よりも低い融点を有する固形コーティング剤と、他の配合剤とを、前記コーティング剤の融点よりも5%〜50%低い加熱温度で加熱混合し、前記粉体の粒子表面にコーティング剤による被膜を形成することを特徴とする造粒粉体の製造方法。 配合剤として、メントール、メントール誘導体及び乳酸メンチルのうち少なくとも1種類を使用したことを特徴とする請求項8記載の造粒粉体の製造方法。 粉体の粒子表面にコーティング剤による被膜を形成後、配合剤として前記コーティング剤膜の温度を低下させるための冷却用物質を添加混合することを特徴とする請求項7、8又は9記載の造粒粉体の製造方法。