タイトル: | 特許公報(B2)_アラントインを配合した安定な液剤 |
出願番号: | 2000094489 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/4166,A61K 9/08,A61K 47/04,A61K 47/10,A61K 47/26,A61K 47/32,A61K 47/38,A61P 27/14 |
横田 和義 畠山 勇生 櫻井 英知 高橋 洋明 内野 泰秀 JP 4848575 特許公報(B2) 20111028 2000094489 20000330 アラントインを配合した安定な液剤 ゼリア新薬工業株式会社 000108339 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 横田 和義 畠山 勇生 櫻井 英知 高橋 洋明 内野 泰秀 20111228 A61K 31/4166 20060101AFI20111208BHJP A61K 9/08 20060101ALI20111208BHJP A61K 47/04 20060101ALI20111208BHJP A61K 47/10 20060101ALI20111208BHJP A61K 47/26 20060101ALI20111208BHJP A61K 47/32 20060101ALI20111208BHJP A61K 47/38 20060101ALI20111208BHJP A61P 27/14 20060101ALI20111208BHJP JPA61K31/4166A61K9/08A61K47/04A61K47/10A61K47/26A61K47/32A61K47/38A61P27/14 A61K 31/00-33/44 A61K 9/00- 9/72 A61K 47/00-47/48 特開平11−060505(JP,A) 特開昭63−159317(JP,A) 特開平01−096128(JP,A) 国際公開第98/043643(WO,A1) 国際公開第99/063968(WO,A1) 国際公開第99/025354(WO,A1) 特開2001−302518(JP,A) 化学大辞典,1989年,p.94 日本薬局方外医薬品規格1997,1997年,p.245-246 2 2001278788 20011010 7 20070328 小堀 麻子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、アラントインを配合する液剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール並びにホウ酸及び/又はその塩を配合することにより、低温においてアラントインの結晶の析出を防止する液剤に関する。【0002】【従来の技術】 アラントインは、細胞の増殖力の強化、創傷の修復促進、結膜の鎮炎及び抗アレルギー作用等多くの有用な効果を有するため、各種の医薬品、化粧品に汎用されている。医薬品では特に点眼剤や外用液剤に配合されている。【0003】 ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールは、産業上のあらゆる分野で利用されている化合物群である。薬剤の分野では医薬品添加物として幅広く使用されており、その使用用途は結合剤をはじめとして基剤、溶解補助剤など様々である。【0004】 一方、ホウ酸及びその塩は古くは洗眼剤として用いられていたが、現在ではpH調節剤や緩衝剤といった添加物として繁用されているものである。【0005】【発明が解決しようとする課題】 アラントインは水に対する溶解度が極めて低いため、アラントインを配合する液剤が気温1℃未満、例えば−5℃、−10℃等の低温環境で保存された場合、アラントインの結晶が析出し、商品価値を損ねるという問題が生じていた。加えて一度低温環境で析出したアラントインの結晶を室温で再度溶解させることは極めて困難であるということもアラントインを配合する液剤の品質を著しく損ねる重大な要因であった。それゆえ、アラントインを高濃度に配合した液剤には、アラントインの結晶の析出を回避するため、結晶が析出しない様な温度に調節しながら保存するといった慎重な保管が必要とされていた。従って、アラントインの持つ薬効を十分発揮させるため、アラントインを高濃度に配合し、1℃未満の低温において発生するアラントインの結晶の析出を防止する液剤の開発が望まれていた。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アラントインを配合する液剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール並びにホウ酸及び/又はその塩を同時に配合することにより、低温においてアラントインの結晶の析出を防止する液剤の開発に成功した。【0007】 即ち、本発明は、アラントインを配合する液剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール並びにホウ酸及び/又はその塩を同時に配合することにより、低温においてアラントインの結晶の析出を防止する液剤を提供するものである。【0008】 本発明で言うところの「低温」とは、具体的には1℃未満であることを示す。また、「低温」の下限については、本発明の目的を達成することができる温度であればよく、特に限定されるものではない。【0009】 本発明の液剤にはヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールを使用するが、この中でもポリビニルアルコールが特に好ましい。ポリビニルアルコールはケン化度75モル%以上が好ましく、ケン化度85モル%以上がより好ましい。ポリビニルアルコールの例としては、部分ケン化ポリビニルアルコールUP−050G(ケン化度87〜89モル%、ユニチカ株式会社製)、部分ケン化ポリビニルアルコールUP−200G(ケン化度87〜89モル%、ユニチカ株式会社製)、完全ケン化ポリビニルアルコールPVA−105(ケン化度98〜99モル%、クラレ株式会社製)、部分ケン化ポリビニルアルコールPVA−205(ケン化度86.5〜89.5モル%、クラレ株式会社製)等が挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールは1種を単独で配合するのみならず、上記、特性の異なるポリビニルアルコール等を2種以上混合したものも配合することができる。上記化合物の1種又は2種以上の配合量は0.01〜5W/V%が好ましく、特に0.05〜3.5W/V%が好ましい。【0010】 本発明の液剤に使用される「ホウ酸及び/又はその塩」としては、ホウ酸、メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム、更には、含水ホウ酸塩であるホウ砂等が挙げられるが、中でもホウ酸、ホウ砂が好ましい。「ホウ酸及び/又はその塩」は一般に添加物として使用できるものであればよく、ホウ酸、ホウ酸塩を単独で使用するほか、ホウ酸とホウ酸塩との混合物、更には、2種以上のホウ酸塩の混合物、ホウ酸と2種以上のホウ酸塩との混合物も使用できる。「ホウ酸及び/又はその塩」の配合量は、本発明の目的を達成することができる量であればよく、通常0.01〜5W/V%の範囲で配合することができる。【0011】 本発明の液剤に使用されるアラントインの配合量は、本発明の目的を達成し、かつ薬効を充分に発揮しうる量であればよく、0.1W/V%以上であることが好ましく、0.2W/V%以上であることがより好ましい。また、アラントインの配合量の上限については、本発明の目的を達成することができる量であればよく、特に限定されるものではない。【0012】 本発明の液剤には、必要に応じて、メチル硫酸ネオスチグミン、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン等の充血除去成分;イプシロンアミノカプロン酸、塩化ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、塩化リゾチーム等の消炎・収斂成分;塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン成分;フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロール、レチノール、パルミチン酸レチノール、パンテノール等のビタミン類;L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のアミノ酸類;スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム等のサルファ剤;塩酸ジブカイン等の局所麻酔成分;ポビドンヨード、グルコン酸クロルヘキシジン等の抗菌成分;リン酸水素ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−グルタミン酸等の緩衝剤;エデト酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の安定化剤;エリソルビン酸等の抗酸化剤;安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等の保存剤;塩化カリウム、塩化ナトリウム、ブドウ糖等の等張化剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸アルキル等の防腐剤;ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の可溶化剤;塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調節剤;エタノール等の溶剤;l-メントール、カンフル、ボルネオールなどの清涼化剤;ベルガモット油、ローズ油、オレンジ油等の香料を適宜添加することができる。【0013】 本発明の液剤は、点眼剤、ローション剤又はリニメント剤等の医薬品、更に化粧品としてのローション剤などであり、特に点眼剤が好ましい。【0014】【発明の実施の形態】 本発明の液剤は、アラントイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール並びにホウ酸及び/又はその塩を精製水に加え、加温溶解することによって得られる。なお、これらの成分を精製水に加えて加温溶解する順序は問わず、2成分以上を同時に加えてもよい。【0015】 本発明の液剤は、後述するように、アラントインを高濃度に配合した場合に低温で保存しても、従来のアラントイン含有液剤よりもアラントインの結晶を析出しないので、商品品質のうえで極めて好ましい液剤と言える。【0016】【実施例】 以下に実施例及び比較例を持って本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0017】 実施例5 精製水にアラントイン0.3g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学株式会社製メトローズ60SH)0.3g、ホウ酸1.5g、塩化ベルベリン0.005g、パラオキシ安息香酸メチル0.013g、パラオキシ安息香酸プロピル0.007gを加え、加温しながら攪拌する。溶解確認後、マレイン酸クロルフェニラミン0.03g、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム0.01g、エデト酸ナトリウム0.005gを加え攪拌する。溶解確認後、0.1モル/l水酸化ナトリウムによりpH6に調整し、精製水を加えて全量100mlとした。これをポアサイズ0.22μmのメンブランフィルタ−でろ過し、ろ液を10ml点眼容器に無菌的に充填し、施栓して点眼剤とした。【0018】 実施例6 精製水にアラントイン0.3g、ポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製UP−050G)0.25g、ホウ砂0.2g、L−グルタミン酸0.25g、パラオキシ安息香酸メチル0.02g、コンドロイチン硫酸ナトリウム0.5gを加え、加温しながら攪拌する。溶解確認後、塩酸テトラヒドロゾリン0.025g、メチル硫酸ネオスチグミン0.005g、マレイン酸クロルフェニラミン0.02g、塩酸ピリドキシン0.1g、塩化ナトリウム0.4gを加え攪拌する。溶解確認後、0.1モル/l水酸化ナトリウムによりpH5.6に調整し、精製水を加えて全量100mlとした。これをポアサイズ0.22μmのメンブランフィルタ−でろ過し、ろ液を10ml点眼容器に無菌的に充填し、施栓して点眼剤とした。【0019】 実施例7 実施例6のポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製UP−050G)0.25gを0.5gに代えた以外は実施例6と同じ。【0020】 実施例8 実施例6のポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製UP−050G)0.25gを1gに代えた以外は実施例6と同じ。【0021】 実施例9 精製水にアラントイン0.3g、ポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製UP−050G)1g、ホウ酸1.5g、パラオキシ安息香酸メチル0.02gを加え、加温しながら攪拌する。溶解確認後、マレイン酸クロルフェニラミン0.02g、塩酸ピリドキシン0.1g、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム0.02gを加え攪拌する。溶解確認後、予め0.2mlの95%エタノールに溶解したl−メントール0.004gを加え、更にこれを予め調製した5W/V%ホウ砂水溶液によりpH6に調整し、精製水を加えて全量100mlとした。これをポアサイズ0.22μmのメンブランフィルタ−でろ過し、ろ液を10ml点眼容器に無菌的に充填し、施栓して点眼剤とした。【0022】 実施例10 精製水にアラントイン0.4g、ホウ酸0.2g、ポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製UP−050G)0.5gを加え、加温しながら攪拌する。溶解確認後、塩酸ジフェンヒドラミン0.2g、塩酸ジブカイン0.1g、塩酸ナファゾリン0.1gを加え攪拌する。溶解確認後、グルコン酸クロルヘキシジン液1mlを加え攪拌する。混和確認後、5W/V%ホウ砂水溶液によりpH7に調整し、精製水を加えて全量100mlとした。これをろ紙ろ過し、ろ液を100ml容器に充填し、蓋を施して外皮用薬とした。【0023】 実施例11 精製水にポリビニルアルコール(ユニチカ株式会社製UP−200G)1g、ホウ酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.02gを加え、加温しながら攪拌する。溶解確認後、アラントイン0.3gを加え、加温しながら攪拌する。溶解確認後、マレイン酸クロルフェニラミン0.02g、スルファメトキサゾールナトリウム4gを加え攪拌する。溶解確認後、予め調製した5W/V%ホウ砂水溶液によりpH8に調整し、精製水を加えて全量100mlとした。これをポアサイズ0.22μmのメンブランフィルタ−でろ過し、ろ液を10ml点眼容器に無菌的に充填し、施栓して点眼剤とした。【0024】 比較例7 実施例5からヒドロキシプロピルメチルセルロース0.3gを除いた以外は実施例5と同じ。【0025】 比較例8 実施例5のホウ酸1.5gをL−グルタミン酸0.25gに代えた以外は実施例5と同じ。【0026】 比較例9 実施例6からポリビニルアルコール0.25gを除いた以外は実施例6と同じ。【0027】 比較例10 実施例8からホウ砂0.2gを除いた以外は実施例8と同じ。【0028】 比較例11 実施例9からポリビニルアルコール1gを除いた以外は実施例9と同じ。【0029】 比較例12 実施例10からポリビニルアルコール0.5gを除いた以外は実施例10と同じ。【0030】 比較例13 実施例11からポリビニルアルコール1gを除いた以外は実施例11と同じ。【0031】 比較例14 実施例11からホウ酸0.2gを除き、5W/V%ホウ砂水溶液の代わりに0.1モル/l水酸化ナトリウムによりpH8に調整した。それ以外は実施例11と同じ。【0032】 実施例5〜11および比較例7〜14の液剤を−5±1℃で12箇月静置保管した後、室温で10日静置保管した場合、及び−10±1℃で1日静置保管した後、室温で10日静置保管した場合につき、それぞれ析出したアラントインの結晶の有無を約3000ルクスの白色蛍光燈下で、肉眼で評価した。【0033】 結果を表1に示した。【0034】【表1】【0035】 表1から明らかなように、本発明の液剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール並びにホウ酸及び/又はその塩を同時に配合しない従来の液剤に比べ、低温環境下の保存においてアラントインの結晶の析出を著しく防止した。【0036】【発明の効果】 本発明の液剤は、アラントイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール並びにホウ酸及び/又はその塩を同時に配合することにより、低温においてアラントインの結晶の析出を防止するため、極めて有用である。 (A)アラントイン0.2〜0.4W/V%、(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール0.05〜3.5W/V%、並びに(C)ホウ酸及び/又はその塩0.01〜5W/V%を配合し、pH5.6〜8である点眼剤。 さらに、キシリトール、グリセリン、マンニトール及びプロピレングリコールから選ばれる多価アルコールを0.01〜5W/V%含有する請求項1記載の点眼剤。