| タイトル: | 特許公報(B2)_テアニンの製造方法 |
| 出願番号: | 2000088975 |
| 年次: | 2009 |
| IPC分類: | C07C 231/02,C07C 237/06,A23L 1/305 |
安東 勢津子 角田 隆巳 JP 4290844 特許公報(B2) 20090410 2000088975 20000328 テアニンの製造方法 株式会社 伊藤園 591014972 竹内 三郎 100072084 橋本 清 100103399 市澤 道夫 100110962 安東 勢津子 角田 隆巳 20090708 C07C 231/02 20060101AFI20090618BHJP C07C 237/06 20060101ALI20090618BHJP A23L 1/305 20060101ALN20090618BHJP JPC07C231/02C07C237/06A23L1/305 C07C 231/02 C07C 237/06 A23L 1/305 特開2000−026383(JP,A) 特開平05−070419(JP,A) 特開平11−116542(JP,A) 特開平09−263573(JP,A) 特公昭45−032420(JP,B1) 特公昭32−008411(JP,B1) 特開昭54−132538(JP,A) 特開昭63−165352(JP,A) 特開昭59−227847(JP,A) 4 2001278848 20011010 7 20050819 山田 泰之 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ペプチド合成によりL−グルタミン酸−γ−エチルアミド(L−テアニン)を製造する方法であって、特に食品添加剤として安全に使用できるテアニンの製造方法に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】お茶のうま昧成分として知られているテアニンは、カフェイン興奮抑制作用、血圧降下作用、リラックス作用、脳機能改善作用などの有用性が知られている。しかし、茶葉中に含まれるテアニン量はわずかに0.5〜2重量%で、茶ポリフェノールが10〜15重量%含まれているのに比べると非常に少ない。よって、茶葉から抽出したテアニンを産業的に利用することは量的にもコスト的にも実用的でなく、従来から食品添加物や医薬品原料として安価で安全なテアニン製造方法が求められてきた。【0003】従来のテアニンの化学合成法としては、実験室的製法として、グルタミン酸を塩酸存在下で無水エタノールと振り混ぜた後、低温下で過剰の塩酸とエタノールとを除き、析出した塩酸塩をメタノールに溶かし、この溶液に計算量のアンモニアを加えて冷却してLグルタミン酸−γ−エチルエステルを得、これをクロロカルボキシル酸ベンジルエステルと反応させてNカルボキシベンジル−Lグルタミン酸−γ−エチルエステルとし、次にこれをエチルアミンと反応させてN保護カルボキシベンジル−L−グルタミン酸−γ−エチルアミドとし、次いで白金触媒下で水秦添加してL−グルタミン酸−γ−エチルアミド(L−テアニン)を得る方法が開示されている(酒戸弥二郎ら:日農化誌23,269(1950))。工業的製法としては、例えば特開平5−70419号公報等において、L−グルタミン酸のγ−カルボキシル基をベンジル化して保護すると共に、アミノ基をトリチル化して保護し、これをペプチド合成の出発原料とするテアニンの製造方法等が開示されている。【0004】しかしながら、従来の製法の多くは、高純度のテアニンを得られたとしても工程数が多く煩雑でしかも収率が低く、得られるテアニンは高価なものとなってしまうのが現実であった。例えば、グルタミン酸をペプチド合成の出発原料に使用する場合、γ−カルボキシル基をベンジルエステルで保護するのが一般的であったが、ベンジル基の脱離が困難であるため、工程数が多くなるか、工程時間が長くなるか、或いは反応の条件が過酷となるなどの問題があった。一方、得られたテアニンを食品添加物や医薬品原料として使用することを考慮すると、純度を高くすることは勿論、人体に有害な縮合剤や金属をできるだけ使用しない製法が望まれる。【0005】そこで本発明者らは、より少ない工程で高純度のテアニンを高収率で得ることができ、しかも人体に有害な有機溶媒や金属をできるだけ使用しないテアニンの製造方法を提供すべく、特開2000−26383号において、グルタミン酸のα位のアミノ基をターシャルブチルオキシカルボニル基(Boc基)で保護し、かつカルボキシル基をターシャルブチルエステル基(OtBu基)で保護してなるグルタミン酸誘導体(Boc−Glu−OtBu)をペプチド合成の出発原料とし、これを溶媒に溶解し、この溶液に縮合剤と水溶性活性エステル試薬とを加えて尿素誘導体を析出させ、更にエチルアミン塩酸塩とpH調整剤との混液を加えてターシャルブチルオキシカルボニル−γ−エチルアミドグルタミン酸ターシャルブチルエステル(Boc−Glu(NHC2 H5 )−OtBu)を得、これを酸処理してα位のアミノ基及びカルボキシル基のOtBu基を脱離させるテアニンの製造方法を開示した。【0006】本発明は、上記開示方法とは異なる方法、具体的にはグルタミン酸無水物を出発物質とする方法によって、より一層少ない工程で安価かつ高純度のテアニンを高収率で得ることができ、しかも人体に有害な縮合剤や金属をできるだけ使用しないテアニンの製造方法を提供せんとするものである。【0007】【課題を解決するための手段】かかる目的のための本発明は、グルタミン酸のアミノ基を保護したN保護グルタミン酸無水物を、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と略す。)を用いて当該無水物のγ位を選択的にエチルアミド化させてN保護テアニンとし、当該N保護基を脱離させてテアニンとするものである。【0008】この製造方法の特徴は、グルタミン酸無水物をペプチド合成の出発原料とした点と、DMSOを用いて当該無水物のγ位を選択的にエチルアミド化した点にある。グルタミン酸無水物を出発原料とすれば、保護基は1個だけで済むから、アミノ基とカルボキシル基の両方を保護した出発物質に比べて、保護基の除去工程を軽減することができる。更に、このグルタミン酸無水物は、DMSOを用いることで、縮合剤を用いることなく開環及びアミノリシスをなさしめることができるから、その分製造コストを安価にすることができるばかりか、人体に対する安全性も高めることができる。また更に、DMSOを用いることでγ位を選択的にすなわちα位よりもγ位をより有利にエチルアミド化させることができ、テアニンの純度及び収率を飛躍的に高めることができる。【0009】本発明において、ペプチド合成の出発原料として用いる「グルタミン酸のアミノ基を保護したグルタミン酸無水物」としては、グルタミン酸のα位のアミノ基をベンジルオキシカルボニル基(Z基)で保護したZ−グルタミン酸無水物(Z−Glu−O)を用いるのが好ましい。このようにZ基をアミノ保護基とすれば、保護基の導入や除去が容易であるばかりか、ラセミ化を抑制することもでき、Z−グルタミン酸の結晶性もよい。しかも、接触還元のような温和で無害かつクリーンな方法で保護基を除去することもできる。但し、本発明で用いるアミノ保護基は、Z基のみに限定されるものではない。そのほか、通常のペプチド合成にアミノ保護基として用いられるもの、例えばターシャルブチルオキシカルボニル(Boc)基や、その他のウレタン型保護基、ホルミル基やトシル基のようなアシル型保護基、トリチル基のようなアルキル型保護基なども用いることは可能である。Boc基は、エステル化の心配がない点で有利である。【0010】また、本発明において、グルタミン酸無水物のγ位を選択的にエチルアミド化させる具体的方法としては、例えば、Z−グルタミン酸無水物(Z−Glu−O)を、エチルアミン塩酸塩とトリエチルアミン又は炭酸水素ナトリウムの混液とともにDMSO中に加える方法を好ましく例示することができる。DMSO中で無水物は開環し、エチルアミンによりアミノリシスを受ける。この際、α位よりもγ位により優位にエチルアミンが導入される。実際、γ体:α体=3:1以上の割合でγ体を有利に得ることができることが実験で確かめられている。もっとも、α体とγ体は、シリカゲルクロマトグラフィーを使用すれば分離可能であることも本発明者は見出している。さらに、無水エチルアミンではなくエチルアミンの塩酸塩を用いることにより、通常のペプチド合成を行うときのように非常に穏和な条件下で反応を進めることができるメリットもある。なお、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウムのいずれも使用することができるが、副生成物の生成が少ない点及び人体に対する安全性の点からすれば炭酸水素ナトリウムが優れている。【0011】【発明の実施の形態】ここでは、Z−グルタミン酸無水物をペプチド合成の出発原料とし、以下の4工程を経て行うテアニン製造方法について説明する。1)Z−グルタミン酸の合成2)Z−グルタミン酸無水物の合成3)Z−γ−エチルアミドグルタミン酸の合成4)保護基の脱離及び精製【0012】1)Z−グルタミン酸の合成:グルタミン酸のZ化グルタミン酸のZ化は、現在公知のあらゆる方法を採用することができる。例えば、塩化ベンジルオキシカルボニル(Z−Cl)を用いるSchotten-Baumann法のほか、p−ニトロフェニルエステル(Z−ONp)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Z−ONSu)その他の活性エステルを用いた方法などを挙げることができる。なお、市販のZ−グルタミン酸を用いることもできる。【0013】具体的合成例を挙げれば、グルタミン酸(H−Glu−OH)、トリメチルアミン(NEt3)及び水(H2O)を混ぜ合わせた溶液Aに、ベンジルオキシカルボニルスクシンイミド(Z−OSu)、アセトニトリル及びトリエチルアミン(NEt3)を混ぜ合わせた溶液Bを、攪拌させながら約20分かけて加え、反応終了後、当該反応溶液に塩酸を加えてpH2に調整し、これを水/酢酸エチルで分液抽出し、必要に応じて塩酸を加えて再び分液抽出し、得られた酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、これを濾過し、減圧濃縮してオイルを得、氷冷下でエーテルを加えて結晶化させ、結晶を濾取することにより得ることができる。【0014】2)Z−グルタミン酸無水物の合成無水酢酸中に、Z−グルタミン酸(Z−Glu−OH)を加え、加温し、得られた溶液を濃縮することによりZ−グルタミン酸無水物(Z−Glu−O)を得ることができる。具体的には、無水酢酸(例えば75ml)中に攪拌しながらZ−グルタミン酸(10.4g)を加えて攪拌する(この際、溶液は懸濁する。)。この懸濁溶液の温度を非常にゆっくり(10分〜40分、好ましくは25分〜35分、中でも好ましいのは略30分かけて)、約50℃〜60℃、好ましくは約55℃付近まで上昇させ、この温度で約10〜30分、好ましくは15分〜25分、中でも好ましいのは約20分間程度攪拌し続ける(溶液は透明になる)。反応終了を薄層クロマトグラフィー(以下「TLC」と略す。)で確認した後、溶媒を濃縮し、得られたオイル状の物質を結晶化させることによりZ−グルタミン酸無水物を得ることができる。【0015】3)Z−γ−エチルアミドグルタミン酸の合成Z−グルタミン酸無水物をDMSOに溶かす一方、エチルアミン塩酸塩とトリエチルアミン又は炭酸水素ナトリウムの混液をDMSOに溶かし、両方の溶液を加えて室温で20分間攪拌し、その後抽出・精製を行えば、目的のZ−γ−エチルアミドグルタミン酸を得ることができる。なお、この際使用するDMSOは、モレキュラーシーブ等で充分に乾燥させておく必要がある。抽出・精製方法としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(飽和10ml)と水10mlとを加え、水層をジクロロメタルで数度(例えば2度)抽出し、水層がPH1になるように酸性にする。その後、酢酸エチルで数度(例えば3度)抽出し、酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を除去し、残渣のオイルを得た。そしてこのオイルを少量の酢酸エチルに溶解し、シリカゲルカラムで分離精製すれば、白色結晶のZ−γ−エチルアミドグルタミン酸を得ることができる。この際、酢酸エチルと酢酸(100:1)とで、早く溶出する方がα体(α位がエチルアミド化)で、遅く溶出する方がγ体(γ位がエチルアミド化)となるが、上記の方法によれば、γ体:α体=3:1以上の割合でγ位がエチルアミド化したγ体をより有利に得ることができる。なお、溶出方法としては、溶離液を酢酸エチルのみで溶出させた後、その後5%メタノール酢酸エチル溶液、更にメタノール溶液で溶出させ、それぞれの分画溶液をTLCで確認後、溶離液を濃縮するという方法も挙げることができる。【0016】4)保護基の脱離及び精製Z基の除去は、接触還元(水素添加)が温和で無害かつクリーンな方法である点で好ましい。具体的には、Z−γ-エチルアミドグルタミン酸を、塩酸を含むジオキサン溶液中でパラジウム等により接触還元すればよい。なお、Z基の除去は、上記接触還元のほか、液体HFやスルホン酸類またはHBr/AcOHなどの酸処理によっても行うことができる。【0017】Z基を脱離した後は、パラジウム等を濾過し、溶媒を濃縮した後、エーテルで結晶化し、その後イオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂:アンバーライトIR−124,Dowex50w−x12)で精製すればよい。【0018】(試験)本試験では、Z-Glu anhyderide(無水物)の合成における反応時間と収率との関係について検討した。【0019】15mlの無水酢酸にZ−グルタミン酸(Z−Glu−OH)1.969mgを激しくかき混ぜながら加えて懸濁液を作成し、この懸濁液の温度をウォーターバスで室温〜55℃まで所定時間(10分、30分、60分)かけて上昇させた。そして、固体が全部溶解した後、20分〜60分間その温度を保って攪拌した。その後、溶媒を減圧濃縮し、オイルを減圧デシケーター内の蒸発皿にて水酸化ナトリウムを入れたものと一緒に乾燥させた。結晶化は、冷却しながらイソプロピルエーテル/石油エーテル(1/1,v/v)を少量ずつ加え、攪拌し続けた後、1時間で室温まで戻して結晶化させ、得られた結晶を冷却した石油エーテルで洗浄した。下記表1には、昇温時間、反応時間及び収率の関係を示した。なお、表中の−は結晶として得ることができなかった結果を示している。【0020】【表1】【0021】この結果、Z−グルタミン酸無水物を得るためには、懸濁溶液の温度を非常にゆっくり(約30分間かけて)55℃まで上昇させ、この温度で20分間程度攪拌し続けるのがよいことが判明した。【0022】【発明の効果】本発明の製造は、ペプチド結合の出発物質として無水物を用いることで、カルボキシル保護基の導入・脱離工程を省くことができ、より一層少ない工程で高純度のテアニンを得ることができる。しかも、エチルアミンの導入は、無水物のアミノリシスによる開環反応で行うから、縮合剤を必要とせず、人体に対して安全であるばかりか、製造コストを非常に安価にすることができる。また、アミノ基の保護基がZ基1個だけで済み、しかもZ基の脱離反応も接触還元(水素添加)で簡単に行うことができるメリットがある。更に、人体に有害な有機溶媒や金属をほとんど使用してないから、食品添加物や医薬品原料として好適に利用することができる。 グルタミン酸のアミノ基を保護したN保護グルタミン酸無水物を、ジメチルスルホキシドを用いて当該無水物のγ位を選択的にエチルアミド化させてN保護テアニンとし、次いでN保護基を脱離させる工程を有するテアニンの製造方法。 グルタミン酸のアミノ基をベンジルオキシカルボニル基(Z基)で保護したZ−グルタミン酸無水物を、ジメチルスルホキシドを用いて当該無水物のγ位を選択的にエチルアミド化させてZ−γ−エチルアミドグルタミン酸とし、次いでベンジルオキシカルボニル基(Z基)を脱離させてテアニンとする工程を有するテアニンの製造方法。 次の1)〜2)の工程を有するテアニンの製造方法。1) グルタミン酸のアミノ基をベンジルオキシカルボニル基(Z基)で保護したZ−グルタミン酸無水物を、エチルアミン塩酸塩とトリエチルアミン又は炭酸水素ナトリウムの混液とともに、ジメチルスルホキシド中に加えてZ−γ−エチルアミドグルタミン酸を合成する工程、2) 得られたZ−γ−エチルアミドグルタミン酸のZ基を脱離させる工程。 上記のZ−グルタミン酸無水物は、無水酢酸中にZ-グルタミン酸を加え、この溶液を10分〜40分かけて50℃〜60℃まで加温するとともに、その温度を保持しつつ10分〜30分攪拌し、この反応溶液を濃縮して得ることを特徴とする請求項2又は3に記載のテアニンの製造方法。