タイトル: | 特許公報(B2)_ダイマー酸の製造方法 |
出願番号: | 2000087183 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 51/373,B01J 21/16,C07C 57/13,C07B 61/00 |
石原 宏一 長谷川 伸介 宮本 道夫 JP 4378025 特許公報(B2) 20090918 2000087183 20000327 ダイマー酸の製造方法 ハリマ化成株式会社 000233860 深井 敏和 100104318 石原 宏一 長谷川 伸介 宮本 道夫 20091202 C07C 51/373 20060101AFI20091112BHJP B01J 21/16 20060101ALI20091112BHJP C07C 57/13 20060101ALI20091112BHJP C07B 61/00 20060101ALN20091112BHJP JPC07C51/373B01J21/16 XC07C57/13C07B61/00 300 C07C 51/373 C07C 57/13 C07C 55/02 特公昭40−008427(JP,B1) 特公昭42−007477(JP,B1) 特開昭49−027503(JP,A) 特開昭62−022742(JP,A) 特開昭62−022741(JP,A) 米国特許第03632822(US,A) 特開昭61−221150(JP,A) 特開平08−113549(JP,A) 3 2001278837 20011010 6 20061026 水島 英一郎 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は不飽和脂肪酸を重合させてダイマー酸を製造する方法に関し、より詳しくはリチウム含有量が低減され着色の少ない高品質なダイマー酸の製造方法に関する。【従来の技術】【0002】ダイマー酸は不飽和脂肪酸の2個ないしはそれ以上の分子間重合反応により得られる化合物であり、ポリアミド、ポリエステル、ウレタン樹脂などの原料として工業的に広く使用されている。【0003】ダイマー酸の製造方法としては、特公昭40-8427 号公報や同42-7477 号公報に記載されているように、モンモリロナイト等の結晶性粘土鉱物を触媒とし、これにリチウム塩を加えて、所定温度で不飽和脂肪酸を重合し、蒸留により単量体成分を除去する方法が知られている。この方法では、重合反応後、リン酸を加えて、粘土中に含有されている金属やリチウムをリン酸塩として除去する処理が実施される。【0004】【発明が解決しようとする課題】ダイマー酸の主要用途の一つであるウレタン樹脂の製造においては、リチウム等のアルカリ金属の存在は、たとえごく微量であってもゲル化の原因となり、反応速度の制御が不安定になるため、ダイマー酸から出来る限りアルカリ金属を除去することが求められる。【0005】しかしながら、上記のようにリン酸でリチウムやその他の金属を除去する方法では、得られたダイマー酸からリチウムを完全に除去することは困難であり、不可避的に2〜5ppmのリチウムがダイマー酸に残留する。【0006】一方、リチウム塩を使わないダイマー酸の製造方法としては、特開昭49-27503号公報に記載のように、粘土とアルカリ土類金属とを併用する方法が知られているが、得られた反応物には未反応の単量体成分が多く含まれ、ダイマー酸の収率が悪いという問題がある。また、得られるダイマー酸は着色しており、品質の劣るものである。【0007】従って、本発明は、収率を低下させることなく、リチウム含有量が低く着色のの少ない高品質なダイマー酸を製造することができるダイマー酸の製造方法を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、重合触媒の結晶性粘土鉱物とともに助触媒としてリチウム塩とアルカリ土類金属の塩とを併用することにより、極めてリチウム含有量の少ないダイマー酸が高収率で得られるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。【0009】すなわち、本発明は、不飽和脂肪酸を、この不飽和脂肪酸100重量部に対して1〜20重量部の結晶性粘土鉱物、0.1〜1重量部のリチウム塩および0.1〜1重量部のアルカリ土類金属塩の存在下で反応させることを特徴とするダイマー酸の製造方法を提供するものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明において出発原料となる不飽和脂肪酸としては、例えば3−オクテン酸、10−ウンデセン酸、オレイン酸、リノール酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸などの炭素数8〜22の分岐した又は直鎖の不飽和脂肪酸またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。また、工業的に供給されている脂肪酸混合物も使用可能であり、このような脂肪酸混合物としては、例えばトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、米糠油脂肪酸、アマニ油脂肪酸などが挙げられる。【0011】不飽和脂肪酸の重合触媒である結晶性粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトなどとして知られる活性白土や酸性白土などが挙げられる。結晶性粘土鉱物は、原料脂肪酸100重量部に対して2〜20重量部、好ましくは3〜10重量部の割合で添加される。結晶性粘土鉱物の添加量が2重量部より少ない場合は重合触媒として効果が充分でなく、逆に20重量部を越える場合はそれに見合う効果がなく、操作上の問題が生じる。【0012】本発明では、結晶性粘土鉱物の助触媒としてリチウム塩とアルカリ土類金属の塩とが併用される。使用可能なリチウム塩としては、例えば水酸化リチウム;炭酸リチウム;塩化リチウムなどのハロゲン化リチウム;酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、カプロン酸リチウム、ステアリン酸リチウムなどの有機酸リチウムが挙げられる。【0013】また、アルカリ土類金属の塩としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウムの中性塩または酸性塩が挙げられ、具体例としては水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。【0014】これらリチウム塩およびアルカリ土類金属塩は、原料脂肪酸100重量部に対してそれぞれ0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.2重量部の割合で添加される。リチウム塩の添加量が0.01重量部未満の場合には、たとえアルカリ土類金属塩の添加量が上記範囲内であったとしても、結晶性粘土鉱物の有する触媒活性が早期に低下し収率の悪化を招来する。一方、リチウム塩の添加量が1重量部を越える場合には、それに見合う効果がないばかりか、生成したダイマー酸のリチウム含有量が多くなり、好ましくない。【0015】また、アルカリ土類金属塩の添加量が0.01重量部未満の場合には、生成したダイマー酸のリチウム含有量を低減させることができない。一方、アルカリ土類金属塩の添加量が1重量部を越える場合には、生成したダイマー酸が着色するため、好ましくない。【0016】リチウム塩およびアルカリ土類金属塩は、あらかじめ結晶性粘土鉱物に含浸させておいてもよく、あるいは結晶性粘土鉱物と共に反応容器内に投入してもよい。これら重合触媒、助触媒のほかに、必要に応じて、揮発成分、好ましくは水が添加される。この揮発成分は、反応時に蒸発することによって反応系内の圧力を高める作用を有する。原料脂肪酸や重合触媒等が、反応に必要な圧力を発生するのに充分な量の揮発成分(通常は水)を系内に含有している場合には、揮発成分を添加する必要はない。【0017】重合反応は、加圧下、好ましくは0.1〜10MPaの圧力(通常は水蒸気過剰圧)のもとで、180〜280℃の温度で1〜10時間行われる。温度が180℃未満の場合には重合反応の進行が遅くなり、逆に温度が280℃を越えると脂肪酸の分解を招来するおそれがある。【0018】重合反応後、反応混合物に100〜200℃の温度でリン酸水溶液を加え、粘土鉱物中やリチウム塩およびアルカリ土類金属塩中の金属をリン酸塩に変換する。加えるリン酸量は含まれる金属量により決定される。これらのリン酸塩は濾過操作により、粘土鉱物とともに除去される。濾過後の粗生成物には10〜60重量%の単量体酸が含まれる。この単量体酸を減圧下で蒸留して除去し、二量体と三量体の混合物であるダイマー酸を得る。こうして得られたダイマー酸はリチウム含有量が1ppm以下に低減されており、かつ着色も殆ど認められず、きわめて高品質である。【0019】本発明において、リチウム塩とアルカリ土類金属塩とを併用することによりリチウムの除去が容易になる理由は必ずしも明らかではないが、リチウムのリン酸塩の水に対する溶解度は高いのに対して、アルカリ土類金属のリン酸塩の水に対する溶解度は低いことから(ちなみにCaHPO4 およびMgHPO4 の溶解度はそれぞれ0.02g/100g水(24.5℃)および0.025g/100g水である)、両方の塩を併用すると、陽イオンである2価のアルカリ土類金属イオンと、同じく陽イオンである1価のリチウムイオンと、負イオンである3価のリン酸イオンとの間で複雑な塩構造をつくり、水に溶解しにくくなるためと推測される。【0020】【実施例】以下、実施例および比較例を挙げて、本発明の方法を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」とあるのは重量部である。【0021】実施例1オートクレーブにトール油脂肪酸( 酸価193、ヨウ素価135)100部、モンモリロナイトクレー6部、水酸化リチウム0.1部、水酸化カルシウム0.1部および水1部を投入した。内部の空気を窒素に置換した後、密閉し、撹拌下、圧力を0.4MPaに保持しながら230℃で3時間加熱した。その後、反応物を130℃に冷却し、75%リン酸1部を加えて1時間処理した。ついで、加圧濾過により固形物を取り除き、粗生成物を得た。この粗生成物を流下膜式蒸留機に導き、圧力0.1kPa、温度200℃の条件で単量体酸を除いた。得られたダイマー酸について、密閉型マイクロ波分解装置を用いて200℃、50MPaの条件で硝酸による湿式分解を行い、得られた試料をICP発光分光分析装置で分析した。その結果、得られたダイマー酸のリチウム含有量は0.3ppmであった。また、生成物中の単量体、二量体、三量体の組成分布をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。その結果を表1に示す。【0022】実施例2実施例1 のトール油脂肪酸に代えて大豆油脂肪酸(酸価198、ヨウ素価127)を用い、かつ水酸化カルシウムに代えて炭酸マグネシウムを使用した他は、実施例1と同様にしてダイマー酸を得た。【0023】比較例1水酸化リチウムの添加量を0.2部に変更し、かつ水酸化カルシウムを添加しなかった他は、実施例1と同様にしてダイマー酸を得た。【0024】比較例2水酸化リチウムを添加せず、かつ水酸化カルシウムの添加量を0.2部に変更し、さらに反応条件を235℃で4時間に変更した他は、実施例1と同様にしてダイマー酸を得た。これらの各実施例および比較例における原料の配合組成、反応条件および生成物中のダイマー酸の組成分布を表1に示す。【0025】【表1】【0026】表1から明らかなように、比較例1で得られたダイマー酸は、収率や品質に優れているもののリチウム含有量が高かった。これに対して、実施例1,2で得られたダイマー酸は、比較例1とほぼ同等の収率や品質を維持しながら、リチウム含有量が極めて低減されていた。また、比較例2で得られたダイマー酸はリチウムを含まないものの、収率が悪く、かつ着色度合いも大きかった。【0027】【発明の効果】本発明によれば、リチウム含有量が低く着色の少ない高品質なダイマー酸を高収率で製造することができるという効果がある。 炭素数8〜22の分岐した又は直鎖の不飽和脂肪酸またはこれらの2種以上の混合物を、この不飽和脂肪酸またはこれらの2種以上の混合物100重量部に対して2〜20重量部の結晶性粘土鉱物、0.1〜1重量部のリチウム塩および0.1〜1重量部のアルカリ土類金属塩の存在下で反応させることを特徴とするダイマー酸の製造方法。 トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、米糠油脂肪酸、アマニ油脂肪酸からなる群より選ばれる脂肪酸混合物を、この脂肪酸混合物100重量部に対して2〜20重量部の結晶性粘土鉱物、0.1〜1重量部のリチウム塩および0.1〜1重量部のアルカリ土類金属塩の存在下で反応させることを特徴とするダイマー酸の製造方法。 180〜280℃で1〜10時間反応させる請求項1または2記載のダイマー酸の製造方法。