タイトル: | 特許公報(B2)_ライラックアルデヒドの製造方法 |
出願番号: | 2000081402 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 307/12,B01J 29/70,B01J 31/12,C07B 61/00 |
伊藤 信彦 東 素夫 和田 繁 今野 裕樹 長谷部 昭雄 JP 4264917 特許公報(B2) 20090227 2000081402 20000323 ライラックアルデヒドの製造方法 曽田香料株式会社 000201733 岩見 知典 100104950 伊藤 信彦 東 素夫 和田 繁 今野 裕樹 長谷部 昭雄 JP 1999077785 19990323 20090520 C07D 307/12 20060101AFI20090423BHJP B01J 29/70 20060101ALI20090423BHJP B01J 31/12 20060101ALI20090423BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090423BHJP JPC07D307/12B01J29/70 XB01J31/12 ZC07B61/00 300 C07D 307/00-307/12 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平5−339252(JP,A) 特開昭57−8382(JP,A) WAKAYAMA, S., et al.,Bull. Chem. Soc. Jpn.,46(10),pp.3183-3187 (1973) THOMAS, A.F., et al.,Helv. Chim. Acta,57(7),pp.2066-2075 (1974) 2 2000336083 20001205 7 20050915 荒木 英則 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、香料として食品および香粧品などの分野に幅広く活用することが期待できるライラックアルデヒドの製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】リラの花精油から検出されたライラックアルデヒドは、花弁的な青苦さと甘さのあるダマスコン的な清涼感を合わせ持つ香気を発し、各種調合香料素材には欠かすことのできない貴重な成分の一つである。【0003】このライラックアルデヒドの製造方法については、従来よりいくつかの方法が提案されている。例えば、4−メチル−4−アセトキシ−5−ヘキセナールとプロパナールアルキルイミン類を反応させ、次いで反応生成物を酸の存在下に加水分解する方法、並びにライラックアルコールを酸化剤と接触させてライラックアルデヒドを合成する方法(特開平5-339252号公報)が提案されている。また、リナリルアセテートを原料として、3工程を経てライラックアルデヒドを合成する方法(Bull. Chem. Soc. Jap.1973, 46(10),3183)が提案されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平5-339252号公報に記載の方法では、原料となる4−メチル−4−アセトキシ−5−ヘキセナールを得るためには、リナリルアセテートをオゾン酸化し、次いで金属亜鉛で還元しなければならず、特にオゾン酸化工程は特殊な反応装置を用いなくてはならず、十分な製造量を確保する為には高額な設備投資が必要であるという欠点を有していた。【0005】また、Bull. Chem. Soc. Jap. 1973, 46(10), 3183に記載されている合成方法では、1工程目で酸化セレンを用いなければならず、毒性の高い廃液の処理の問題など工業的に有利な方法とは言えなかった。【0006】上記の課題を解決するために本発明者等が鋭意研究を行なった結果、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンを転位することによりライラックアルデヒドが工業的に有利な方法で製造できることを見出し、本発明に至った。【0007】本発明の目的は、簡単な工程、手段で、収率良く大量にライラックアルデヒドを製造する方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明のライラックアルデヒドの製造方法は、式[1]【0009】【化3】で表される3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンを固体酸触媒、ルイス酸触媒、またはリチウムハライド等のエポキサイド転移剤と反応させることにより、式[2]【0010】【化4】で表されるライラックアルデヒドを合成することに特徴があり、本発明では、エポキサイド転移剤として、固体酸触媒、ルイス酸触媒、またはリチウムハライドが好ましく用いられる。【0011】【発明の実施の形態】本発明で原料として用いられる3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンは、例えば以下のような公知の方法で合成することができる。すなわち、式[3]【0012】【化5】で表される5−イソプロペニル−2−メチル−2−ビニルテトラヒドロフランを適当な溶媒、例えばジクロロメタンの存在下、過酢酸などの過酸を用いてエポキシ化することにより簡単に合成することができる。【0013】本発明では、固体酸触媒、ルイス酸触媒、またはリチウムハライド等の塩類を用いて3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンを転位させる。【0014】ここで固体酸触媒とは、すなわち固体でありながら酸性を有し、それに基づく触媒作用を示す物質を指す。例えば、HSZ-320HOA、HSZ-350KUA、HSZ-360HUA、HSZ-360HUD3C、HSZ-620HOA、HSZ-720HOA(いずれも東ソー製)の如き合成ゼオライト系触媒、モンモリロナイトK 10(Aldrich社製)、ベントナイト(和光純薬製)、カオリン(和光純薬製)、バーミキュライト(Aldrich社製)の如き粘土層間化合物系触媒、Silica-Alumina N 633 L、Alumina-N 611 N(いずれも日揮化学製)酸化物系触媒等が挙げられるが、本発明ではこれに限定するものではない。【0015】また、これら固体酸触媒は、例えば、n−ブチルアミンの如き有機塩基で処理して酸点の一部を処理したものを用いても良い。これら固体酸触媒はそのままでも使用できるが、焼成することにより触媒活性を調整して反応を行なうこともできる。【0016】また、本発明で用いられるルイス酸とは、水素イオンを放出しないで電子を受け入れることのできる酸のことを指し、これに該当する物質であれば本質的にいずれの使用も可能である。すなわち具体的には、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化第二錫、四塩化チタン、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、ホウフッ化銅、塩化第二銅、臭化第二銅、塩化マグネシウム、塩化ガリウム、五塩化アンチモン、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化第三スカンジウム、過塩素酸スカンジウム、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム、塩化第二マンガン、塩化第二鉄、塩化カルシウム、塩化第二クロム、過塩素酸マンガン、過塩素酸鉄、塩化第二コバルト、過塩素酸コバルト、塩化第二ニッケル、過塩素酸ニッケル、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸銅、過塩素酸亜鉛、塩化イットリウム、過塩素酸イットリウム、塩化ルテニウム、塩化鉛、塩化銀、過塩素酸銀、塩化カドミウム、過塩素酸カドミウム、塩化インジウム、過塩素酸インジウム、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、トリフルオロメタンスルホン酸セレン、トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジウム、トリフルオロメタンスルホン酸ネオジム、トリフルオロメタンスルホン酸サマリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム、トリフルオロメタンスルホン酸ガドリニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テルビウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジスプロシウム、トリフルオロメタンスルホン酸ホルミウム、トリフルオロメタンスルホン酸エルビウム、トリフルオロメタンスルホン酸ツリウム、塩化イットリビウム、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム、過塩素酸イットリビウム、トリフルオロメタンスルホン酸ルテチウム、塩化イリジウム、塩化白金、塩化金、塩化第二水銀、塩化水銀、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−ブロモフェニルオキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルオキシ)メチルアルミニウム、パークロロ−5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナト鉄、パークロロフタロシアニン鉄、パークロロ−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチルポルフィナト鉄、パークロロ鉄サレン、トリフルオロメタンスルホニル−5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナト鉄、トリフルオロメタンスルホニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチルポルフィナト鉄、トリフルオロメタンスルホニル鉄サレン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが挙げられるが、本発明ではこれに限定するものではない。【0017】また本発明で使用できる塩類としては、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のリチウムハライドが挙げられ、中でも臭化リチウムが特に好ましく用いられる。このリチウムハライドは、アルミナによって坦持されていても良いし、リチウムハライド/ヘキサメチルリン酸トリアミド系で反応させても良い。【0018】上記の触媒の使用量は、固体酸触媒を選択した場合は、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンの重量に対して好ましくは0.05〜50倍量、より好ましくは0.1〜5倍量使用する。またルイス酸系の触媒を選択した場合は、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンの0.000001〜1倍モル(0.0001〜100mol%)が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.1倍モル(0.01〜10mol%)使用する。臭化リチウム等のリチウムハライドを選択した場合は、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンの重量に対して0.1〜1倍量使用することが好ましい。【0019】本発明では、これらのエポキサイド転移剤を1種または2種以上併用して用いることができる。【0020】本発明の反応では、溶媒を用いなくとも構わないが、溶媒を用いた方が有利である。この場合用いられる反応溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエンの如き炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソブチルエーテル、ジオキサン、モノもしくはジエチレングリコールジメチルエーテル、モノもしくはジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロピランの如きエーテル系溶媒、モノクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンの如きハロゲン系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロブタンの如きニトロ系溶媒、またはこれらの任意の組合せからなる混合溶媒が挙げられる。【0021】これらの溶媒を使用する場合は、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンの重量に対して、好ましくは1〜50倍量、より好ましくは5〜20倍量使用する。【0022】また、反応温度は、−40℃〜200℃、特に15℃〜120℃で行なうことが好ましい。【0023】反応終了後は、常法により処理することができる。例えば、触媒としてルイス酸系触媒またはリチウムハライドを用いた場合は、例えば反応液を大過剰の炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液あるいは炭酸ナトリウム水溶液の如き塩基性溶液に注ぎ反応系を塩基性にした後、適当な抽出溶媒を用いて抽出して溶媒層を採取した後、飽和食塩水で洗浄中和し、例えば無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸留回収し、これをカラムクロマトグラフィもしくは減圧蒸留することによりライラックアルデヒドを得ることができる。【0024】また、触媒として固体酸触媒を用いた場合は、反応液を濾過することにより固体酸触媒を取り除き、得られた溶媒を蒸留回収し、これをカラムクロマトグラフィもしくは減圧蒸留することによりライラックアルデヒドを得ることができる。【0025】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0026】[実施例1]撹拌機、ジムロートを取り付けた四つ口フラスコに、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エン500mg(2.97mmol)、ジオキサン7.5g、およびトリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム36.9mg(0.059mmol)を入れ、窒素雰囲気下にて90℃に加熱しつつ30分撹拌した。反応液を炭酸水素ナトリウムに注ぎ、ヘキサンにて抽出し、このヘキサン層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を蒸留回収し、粗ライラックアルデヒドを得た。これを減圧蒸留し、ライラックアルデヒド255mg(収率:51%)を得た。【0027】[実施例2]撹拌機、ジムロートを取り付けた四つ口フラスコに、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エン500mg(2.97mmol)、ジオキサン5.0gを入れ、100℃まで昇温した。次いで、予め500℃で5時間焼成しておいた合成ゼオライトHSZ-360HUA(東ソー製)500mgを投入し、100℃を保ったまま30分撹拌を続けた。その後室温まで冷却し、反応液を濾過して合成ゼオライトを除去し、有機層中の溶媒を蒸留回収し、粗ライラックアルデヒドを得た。これを減圧蒸留し、ライラックアルデヒド305mg(収率:61%)を得た。【0028】[実施例3]撹拌機、ジムロートを取り付けた四つ口フラスコに、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エン500mg(2.97mmol)、ジオキサン7.5g、およびパークロロ−5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナト鉄18.26mg(0.024mmol)を入れ、窒素雰囲気下にて90℃に加熱しつつ30分撹拌した。反応液を炭酸水素ナトリウムに注ぎ、ヘキサンにて抽出し、このヘキサン層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を蒸留回収して粗ライラックアルデヒドを得た。これを減圧蒸留してライラックアルデヒド286mg(収率:57%)を得た。【0029】[実施例4]撹拌機、ジムロートを取り付けた四つ口フラスコに、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エン500mg(2.97mmol)、トルエン2.6g、およびトリフルオロメタンスルホニル−5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナト鉄2.4mg(0.00293mmol)を入れ、窒素雰囲気下にて110℃に加熱しつつ4.5時間撹拌した。反応液を炭酸水素ナトリウムに注ぎ、ヘキサンにて抽出し、このヘキサン層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を蒸留回収して粗ライラックアルデヒドを得た。これを減圧蒸留してライラックアルデヒド300mg(収率:60%)を得た。【0030】[実施例5]撹拌機、ジムロートを取り付けた四つ口フラスコに、3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エン500mg(2.97mmol)、ジオキサン3.1g、およびトリフルオロメタンスルホニル−5,10,15,20−テトラフェニルポルフィナト鉄24mg(0.0293mmol)を入れ、窒素雰囲気下にて100℃に加熱しつつ1時間撹拌した。反応液を炭酸水素ナトリウムに注ぎ、ヘキサンにて抽出し、このヘキサン層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を蒸留回収して粗ライラックアルデヒドを得た。これを減圧蒸留してライラックアルデヒド325mg(収率:65%)を得た。【0031】【発明の効果】本発明によれば、食品、香粧品などの分野の香料の調合素材として有効なライラックアルデヒドを簡便な方法で、収率良く大量に製造することができる。 式[1]で表される3,7−ジメチル−3,6:7,8−ジエポキシオクタ−1−エンをエポキサイド転移剤と反応させることを特徴とする、式[2]で表されるライラックアルデヒドの製造方法。 エポキサイド転移剤が、固体酸触媒、ルイス酸触媒、またはリチウムハライドであることを特徴とする請求項1記載のライラックアルデヒドの製造方法。