生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_エキソポリガラクツロナーゼ
出願番号:2000073580
年次:2009
IPC分類:C12N 9/26,C12N 1/20,C12R 1/07


特許情報キャッシュ

桧垣 紀彦 海藤 洋子 谷島 則幸 凉松 淳 小林 徹 川合 修次 JP 4382952 特許公報(B2) 20091002 2000073580 20000316 エキソポリガラクツロナーゼ 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 山本 博人 100111028 桧垣 紀彦 海藤 洋子 谷島 則幸 凉松 淳 小林 徹 川合 修次 20091216 C12N 9/26 20060101AFI20091126BHJP C12N 1/20 20060101ALI20091126BHJP C12R 1/07 20060101ALN20091126BHJP JPC12N9/26 ZC12N1/20 AC12N1/20 AC12R1:07 C12N 1/00 - 7/08 C12N 15/00 - 15/90 C12N 9/00 - 9/99 C12P 1/00 - 41/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特開2001−178454(JP,A) 特開2001−258552(JP,A) 特開昭56−131376(JP,A) 特開昭56−068393(JP,A) 国際公開第98/006809(WO,A1) 国際公開第99/027083(WO,A1) 特開2001−258553(JP,A) Archives of Biochemistry and Biophysics,1961年,Vol.94,p.328-332 Agri. Biol. Chem.,1972年,Vol.36, No.2,p.285-293 Enzyme and Microbial Technology,1999年,Vol.25,p.420-425 3 FERM P-17561 2001258554 20010925 11 20060803 ▲高▼ 美葉子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ガラクツロン酸の調製、洗浄剤等に有用なエキソポリガラクツロナーゼに関する。【0002】【従来の技術】ペクチン質を分解する酵素にはポリガラクツロナーゼ(ペクチナーゼ)、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ等が知られている。食品工業分野ではこれらの酵素を有効に利用し、果汁、ワイン等の清澄化、柑橘類ジュースの搾汁率の向上、果物残渣から可溶性成分の回収、みかん果皮の剥皮等に応用している。特に食品工業分野においては一般的に作用pHの低い領域で効率良く働くポリガラクツロナーゼが使用されるが、事実、従来公知のポリガラクツロナーゼの最適反応pHは殆どが酸性側に存在している。【0003】一方、ジャム、ケチャップ、ジュースなどのペクチン質含量の高い食物の衣服についた食べこぼしや染み汚れの除去にポリガラクツロナーゼを衣料洗剤用酵素として利用しようとする試みもあり、例えば、特開昭60−226599号公報、特公平6−39596号公報、WO98/06809号等が開示されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】衣料用洗剤や他の洗浄剤等にポリガラクツロナーゼを用いる場合には、酵素が中性からアルカリ性領域で作用すること、洗浄剤の成分である界面活性剤等に対し安定であることが必要である。また、ペクチン酸からガラクツロン酸やジガラクツロン酸を効率的に得るためエキソタイプのガラクツロナーゼの利用が考えられるが、この際ペクチン酸の溶解性を考慮すると中性付近で最も良好に作用するエキソポリガラクツロナーゼが望まれる。【0005】しかしながら、従来公知のエキソポリガラクツロナーゼは、ほとんどその最適反応pHが6以下である。このような状況下、高い最適反応pHを示すエキソポリガラクツロナーゼが2種類知られている。このうち、セレノモナス ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来の酵素は、最適反応pHを7付近に示すが、作用pHならびに安定pH範囲が非常に狭いことが特徴であり、最適反応温度は40℃付近で、反応産物はジガラクツロン酸である(Heinrichova et al.,J. Appl. Bacteriol., 66, 169-174, 1989)。一方、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)株由来の酵素はポリガラクツロン酸を基質にした場合の最適反応pHは5付近に存在する。反応生成物はモノガラクツロン酸であるが、SDSにより著しく阻害されること、カルシウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛等の金属イオンによって阻害されることなど(Maceira et al., FEMS Microbiol. Lett., 154, 37-43, 1997)洗浄剤用酵素としては適さない。【0006】従って本発明の目的は、中性付近に最適反応pHを有し、キレート剤、界面活性剤に耐性を示すエキソポリガラクツロナーゼを提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、土壌中の微生物が産生する酵素の中から、pH7に最適反応pHを有し、キレート剤、界面活性剤耐性のエキソポリガラクツロナーゼを生産する微生物を見出し本発明を完成した。【0008】すなわち本発明は、下記の酵素学的性質を有するエキソポリガラクツロナーゼ、それを生産する微生物及びその製造法を提供するものである。(1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)及びペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、モノガラクツロン酸を生成する。(2)最適反応pH:pH7(MOPS緩衝液、トリス−塩酸緩衝液)(3)最適反応温度:約60℃(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0)(4)pH安定性:pH7〜12(40℃、60分間処理)(5)耐熱性:約55℃まで安定(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理)(6)分子量:約45000(SDS電気泳動法)(7)等電点:pH5.8付近(等電点電気泳動法)(8)キレート剤:EDTA(10mM)により阻害されない。(9)界面活性剤耐性:界面活性剤(0.1%)に対し安定である。【0009】【発明の実施の形態】本発明のエキソポリガラクツロナーゼは、例えばエキソポリガラクツロナーゼ生産菌を培養し、その培養液から採取することにより製造できる。かかる生産菌としては、バチルス属に属する細菌、例えば下記の菌学的性質を有するKSM−P443株が挙げられる。【0010】A 形態学的性質(a)細胞の形、大きさ:桿菌(0.6〜0.8×2.4〜3.2μm)(b)多形性:無し(c)運動性:有り(d)胞子(大きさ、形、位置、膨潤の有無):楕円形、0.6〜0.8×0.8〜1.0μm、準端、膨潤無し)(e)グラム染色:不定(CVT寒天培地には生育せず、水酸化カリウム法で粘性を示さず)(f)抗酸性:陰性(g)肉汁寒天培地上での生育(培地1):乳白色、葉状のコロニーを形成【0011】B 生理学的性質(a)硝酸塩の還元(培地2):+(b)脱窒反応(培地2):−(c)MRテスト(培地3):−(d)VPテスト(培地3):+(e)インドール生成(培地4):−(f)硫化水素の生成(培地5):−(g)デンプン加水分解(培地6):+(h)ゼラチン加水分解(培地7):+(i)カゼイン加水分解(培地8):+(j)クエン酸の利用(培地9):+(k)無機窒素の利用(培地10):+(l)ウレアーゼ(培地11):−(m)オキシダーゼ(培地12):+(n)カタラーゼ:+(o)リトマスミルク(培地13):酸を産生し、ペプトン化する(p)生育温度範囲(培地14):12〜59℃(q)生育pH範囲(培地15):pH4〜10(r)嫌気条件下での生育(培地16):生育する(s)OFテスト(培地17):−(t)グルコースからのガス産生(培地18):−(u)塩化ナトリウムに対する耐性(培地19):10%で生育(v)糖からの酸生成(培地20):以下の糖類から酸生成を認めた。ガラクトース、リボース、キシロース、アラビノース、シュークロース、グルコース、マンニトール、マンノース、イノシトール、ソルビトール、トレハロース、ラクトース、グリセリン、マルトース、フラクトース、ラフィノース、サリシン、可溶性デンプン、メリビオース、ラムノース【0012】培地1:ニュートリエントアガー(ディフコ)培地2:ニュートリエントブロス(ディフコ)、硝酸カリウム0.1重量%培地3:バクトペプトン(ディフコ)0.7重量%、リン酸1水素カリウム0.5重量%、グルコース(別滅菌)0.5重量%培地4:SIM培地(日水製薬)、コバック試薬培地5:TSI寒天培地(栄研化学)培地6:ニュートリエントアガー、可溶性デンプン1.0重量%培地7:ニュートリエントアガー、ゼラチン1.0重量%培地8:ニュートリエントアガー、カゼイン1.0重量%培地9:Simmons培地(栄研化学)培地10:酵母エキス0.05重量%、硫酸ナトリウム0.1重量%、リン酸2水素カリウム0.1重量%、グルコース(別滅菌)1.0重量%、硝酸ナトリウム0.25重量%又は塩化アンモニウム0.16重量%培地11:尿素培地(栄研化学)培地12:チトクロムオキシダーゼ試験濾紙(日水製薬)培地13:バクトリトマスミルク(ディフコ)培地14:SCD培地(日本製薬)培地15:ニュートリエントブロスに炭酸ナトリウム、塩酸を別滅菌後に添加し、pHを調整培地16:アナエロビックアガー(ディフコ)培地17:OF基礎培地(ディフコ)培地18:ニュートリエントブロス、グルコース(別滅菌)1.0重量%培地19:SCD培地、塩化ナトリウム2〜10重量%培地20:リン酸1水素アンモニウム0.1重量%、塩化カリウム0.02重量%、硫酸マグネシウム7水塩0.02重量%、酵母エキス0.02重量%、寒天1.5重量%、ブロモクレゾールパープル0.0006重量%、糖類(別滅菌)1.0重量%【0013】以上、KSM−P443株の形態学、生理学的性質について「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins社、1984年)の記載に準じ比較検討した結果、本菌株はバチルス リケニホルミスに近縁な菌種であると考えられた。しかし、その性質は既知のバチルス リケニホルミスとは一致せず、他のバチルス属細菌の諸性質とも一致しないため、新規なバチルス属細菌として本菌株を工業技術院生命工学研究所へバチルス エスピー KSM−P443株(FERM−P17561)として寄託した。【0014】KSM−P443株等のエキソポリガラクツロナーゼ生産菌を用いて本発明のエキソポリガラクツロナーゼを生産するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い振盪培養あるいは通気攪拌培養すれば良い。使用する炭素源、窒素源には特に制限は無く資化しうる炭素源、例えばペクチン、ペクチン酸、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコース、シュークロース、マルトース等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー等が挙げられる。その他リン酸塩、金属塩、有機無機微量栄養源を適宜添加することができる。培地のpHは、本発明の酵素生産に適したpHに炭酸ナトリウム等を用いて調整すれば良い。【0015】かくして得られた培養液中からのエキソポリガラクツロナーゼの採取及び精製は、一般の方法に準じて行うことができる。すなわち、培養液から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段、例えば塩析法、溶剤沈殿法、限外濃縮等により目的酵素を濃縮することができる。塩析法の例として硫酸アンモニウム(30〜90%飽和画分)、溶剤沈殿の例として冷アセトン(50%以上)等の条件下において酵素を沈殿させた後、遠心分離、脱塩処理を行い凍結乾燥粉末や噴霧乾燥粉末を得ることができる。脱塩方法としては透析、セファデックスG−10等を用いるゲル濾過、限外濾過等が用いられる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。【0016】本発明のエキソポリガラクツロナーゼの一例であるバチルス エスピー KSM−P443株由来のエキソポリガラクツロナーゼは、以下のような性質を有する。尚、酵素活性の測定は以下のように行った。【0017】[標準酵素活性測定法]試験管に0.2mLの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)、0.2mLの1%(w/v)ポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot14482、水酸化ナトリウム溶液にてpH6.8に調整)、0.5mLの脱イオン水を添加し、30℃で5分間恒温した。これに0.1mLの適当に希釈した酵素液[希釈は10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)で行った]を加え20分間反応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬を添加し、沸水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷し、4mLの脱イオン水を加え535nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのガラクツロン酸相当の還元糖を生成する量とした。【0018】(1)基質特異性ポリガラクツロン酸の代わりにエステル化度の異なるペクチン(28、67、93%)を基質とし、標準活性測定法により反応速度を調べた。本酵素は、ポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot14482)に対し最も反応性が高く、同じポリガラクツロン酸(シグマ;lot112H3780、フルカ;lot53998)を用いた場合、その反応速度は最大活性のそれぞれ82%、70%程度であった。エステル化度28%のペクチン(シグマ;lot74H1092)では約40%、エステル化度67%のペクチン(シグマ;lot74H1093)に対して約4%の分解活性を示したが、エステル化度93%のペクチン(シグマ;lot125H0123)に対しては、殆ど分解活性を示さなかった。【0019】(2)基質の分解様式50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)、0.2%ポリガラクツロン酸、0.2mM塩化カルシウムからなる反応液に0.05Uの本酵素を添加し、全量を0.25mLとした。30℃、30分間反応させた液を薄層クロマトプレート(kiesel gel 60:メルク)に約10μLスポットし、n−ブタノール:酢酸:水=5:2:3(v/v)の展開液を用い展開を行った。反応物の検出にはアニスアルデヒド−硫酸溶液を用い、プレート噴霧後、100℃、10分間乾燥器中で発色させた。その結果、反応生成物としてモノガラクツロン酸のみが検出され、本酵素はエキソ型のポリガラクツロナーゼと判断された。【0020】(3)最適反応pH酢酸緩衝液(pH4〜6)、MOPS緩衝液(pH6〜8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9.5)の各緩衝液(100mM)を用いて最適反応pHを調べた結果、本酵素はpH7のトリス−塩酸緩衝液中で最も高い反応速度を示した。また、pH6から8の間で最大活性の50%以上の活性を示した(図1)。【0021】(4)最適反応温度100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中、30℃〜90℃の各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた。その結果、本酵素は60℃付近に最適反応温度を示した(図2)。また、1mMの塩化カルシウムを添加した場合においても最適反応温度及び反応速度は全く変わらなかった。【0022】(5)安定pH範囲酢酸緩衝液(pH4〜6)、MOPS緩衝液(pH6〜8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、グリシン−水酸化ナトリウム酸緩衝液(pH8〜11)及び塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜12.7)の各緩衝液(50mM)酵素を加え、40℃、60分間恒温した後の残存活性を測定した。処理前の活性を100%とした場合、本酵素はpH7〜12の範囲で80%以上の残存活性を示した(図3)。尚、1mMの塩化カルシウムを添加した場合、酵素の安定性には何ら影響を与えなかった。【0023】(6)耐熱性50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中に本酵素を添加し、30℃〜70℃の各温度で15分間恒温した後の残存活性を測定した。本酵素は、この条件下において55℃まで安定であった(図4)。また、塩化カルシウム(1mM)を添加した場合も同じ安定性を示した。【0024】(7)分子量(SDS電気泳動法)酵素にSDS処理液を加え100℃、2分間の熱処理を行った後、12.5%アクリルアミドゲルにてSDS電気泳動を行った。標準タンパク質としてホスホリラーゼb(97400)、血清アルブミン(67000)、卵白アルブミン(43000)、カルボニックアンヒドロラーゼ(30000)、トリプシンインヒビター(21500)、α−ラクトアルブミン(14500)を用い、それぞれの移動度と分子量から検量線を作製し、本酵素の分子量を求めたところ約45000と推定された。【0025】(8)等電点PAG−Plate(ファルマシア;pH3.5〜9.5)を用いて本酵素の等電点電気泳動を行った。泳動後、クマーシーブリリアントブルーG250によりタンパク質を染色した。標準タンパク質(バイオラッド)の等電点と移動度から得た検量線より本酵素の等電点は、pH5.8付近であると決定された。【0026】(9)界面活性剤の影響各種界面活性剤を0.1%(w/v)になるように添加した反応系において、酵素活性を測定した。その結果、0.1%という高濃度の各界面活性剤の存在下においても本酵素は、対照に比べ約60%以上の活性を発現しうることが判った(表1)。【0027】【表1】【0028】(10)キレート剤の影響本酵素を10mM EDTAを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中で30℃、30分間恒温した後、10倍に希釈し残存活性を測定した。標準活性測定法において塩化カルシウムを添加した場合と無添加の場合においての残存活性を比較すると双方ともに活性が90%以上残存することから本酵素は反応、安定性にカルシウムイオンを要求しないことが判った。【0029】このように本発明のエキソポリガラクツロナーゼは、最適反応pHを7付近に、最適反応温度を60℃付近に有するモノガラクツロン酸生成型の新規な酵素である。【0030】【実施例】実施例1 エキソポリガラクツロナーゼ生産菌のスクリーニング日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを80℃、20分間熱処理し、下記の組成を有する寒天平板培地に塗布した。30℃の培養器で3〜7日間静置培養し、菌の生育後、0.2%(w/v)ポリガラクツロン酸、0.1%リン酸1水素カリウム、1%塩化ナトリウム、0.2Mクエン酸3ナトリウム、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)、0.8%寒天から成る軟寒天を重層し、37℃で1時間恒温した。コロニー周辺にポリガラクツロン酸の分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選抜し、シングルコロニー化を繰り返し、ポリガラクツロン酸分解酵素の生産能を検定した。このようにして得られた多くの菌株は、主にペクチン酸リアーゼを生産したが、その中でポリガラクツロナーゼ生産菌としてバチルス エスピー KSM−P443株を得た。【0031】【表2】【0032】実施例2 バチルス エスピー KSM−P443株によるエキソポリガラクツロナーゼの生産上述のスクリーニングにより得られたバチルス エスピー KSM−P443株の培養は、500mL容坂口フラスコに50mLの培地を加え、30℃、2日間好気的に行った。培地組成は、0.5%(w/v)ペクチン酸、2.0%ポリペプトンS、0.5%酵母エキス、1.0%魚肉エキス、0.15%リン酸1水素カリウム、0.005%硫酸マンガン、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8)であった。本培養条件においてエキソポリガラクツロナーゼの生産性は約230U/Lであった。【0033】実施例3 エキソポリガラクツロナーゼの精製バチルス エスピー KSM−P443株の培養液を遠心分離(9000×g、20分間、4℃)し上清液(2.8L)を得た。これを限外濾過用モジュール(ACP13000:旭化成)により濃縮、脱塩を行った(490mL)。得られた濃縮液は2mMβ−メルカプトエタノール、0.5mM塩化カルシウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.0)にて平衡化しておいたCMトヨパール650Mカラム(2.5×50cm:東ソー)に添着した。約750mLの平衡化緩衝液を用いて非吸着タンパク質を洗浄溶出させたところ、エキソポリガラクツロナーゼ活性はこの部分に溶出された。活性画分を集め(600mL)限外濾過(PM10メンブレン:アミコン)により濃縮、脱塩を行った(100mL)。この濃縮液を予め2mMβ−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む25mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたSuperQトヨパールカラム(2.5×30cm:東ソー)に添着した。約450mLの平衡化緩衝液を用いて非吸着タンパク質を洗浄溶出させたところ、エキソポリガラクツロナーゼ活性はこの部分に溶出された。活性画分を集め(100mL)、限外濾過(PM10メンブレン)により濃縮、脱塩を行った(10mL)。この濃縮液を脱イオン水にて10倍に希釈し、予め2mMβ−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)にて平衡化しておいたDEAE−バイオゲルAカラム(2.5×12cm:バイオラッド)へ添着した。平衡化緩衝液にて洗浄した後、0から0.1M塩化カリウムを含む同緩衝液(300mLずつ)を用い吸着タンパク質を濃度勾配法にて溶出させた。エキソポリガラクツロナーゼ活性は約75mMの塩化カリウム濃度付近で溶出され、その画分を集め、限外濾過により濃縮、希釈を繰り返した。これを予め2mMβ−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6.0)にて平衡化しておいたDEAE−バイオゲルAカラム(2.5×10.5cm:バイオラッド)へ添着した。平衡化緩衝液にて洗浄した後、0から0.2M塩化カリウムを含む同緩衝液(200mLずつ)を用い吸着タンパク質を濃度勾配法にて溶出させた。エキソポリガラクツロナーゼ活性は約80mMの塩化カリウム濃度付近で溶出され、その画分を集め、限外濾過により濃縮した(1.75mL)。この濃縮液を予め0.1M塩化カリウム、2mMβ−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたバイオゲルA05mカラム(1.5×73cm:バイオラッド)へ載せゲル濾過を行った。得られた活性画分を集め限外濾過により濃縮した(1.5mL、33.9U、1.01mgタンパク質)。以上の操作により電気泳動的に均一なエキソポリガラクツロナーゼを活性収率約6%、比活性約165倍までに精製した。上記精製操作により得られたエキソポリガラクツロナーゼ画分は、前述の酵素学的性質を示した。【0034】【発明の効果】本発明のエキソポリガラクツロナーゼは、pH7付近に最適反応pHを有し、界面活性剤耐性、キレート剤耐性を有する新規酵素であり、ガラクツロン酸の調製あるいは衣料用他、洗浄剤用酵素として有用である。【図面の簡単な説明】【図1】本発明のエキソポリガラクツロナーゼ活性に及ぼすpHの影響を示す図である。【図2】本発明のエキソポリガラクツロナーゼ活性に及ぼす温度の影響を示す図である。【図3】本発明のエキソポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。【図4】本発明のエキソポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。 次の酵素学的性質を有するバチルス エスピー KSM−P443(FERM P−17561)由来のエキソポリガラクツロナーゼ。(1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)及びペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、モノガラクツロン酸を生成する。(2)最適反応pH:pH7(MOPS緩衝液、トリス−塩酸緩衝液)(3)最適反応温度:約60℃(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0)(4)pH安定性:pH7〜12(40℃、60分間処理)(5)耐熱性:約55℃まで安定(トリス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理)(6)分子量:約45000(SDS電気泳動法)(7)等電点:pH5.8付近(等電点電気泳動法)(8)キレート剤:EDTA(10mM)により阻害されない。(9)界面活性剤耐性:界面活性剤(0.1%)に対し安定である。 請求項1記載のエキソポリガラクツロナーゼを生産するバチルス エスピー KSM−P443(FERM P−17561)。 請求項2記載の微生物を培養し、培養物から請求項1記載の酵素を採取するエキソポリガラクツロナーゼの製造法。


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