タイトル: | 特許公報(B2)_ヘパリン解重合法、解重合ヘパリン、その誘導体および医薬組成物 |
出願番号: | 2000053475 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C08B 37/10,A61K 31/727,A61P 7/02,A61P 13/12,A61P 39/06 |
荒木 宏昌 河合 健蔵 田中 修一 西村 幸容 大谷 裕也 西川 裕之 武田 誠一 島田 千明 北川 知津子 安部 智之 JP 4585072 特許公報(B2) 20100910 2000053475 20000229 ヘパリン解重合法、解重合ヘパリン、その誘導体および医薬組成物 扶桑薬品工業株式会社 000238201 田村 恭生 100068526 鮫島 睦 100100158 品川 永敏 100126778 森本 靖 100150500 山中 伸一郎 100156111 大角 美佐子 100096079 荒木 宏昌 河合 健蔵 田中 修一 西村 幸容 大谷 裕也 西川 裕之 武田 誠一 島田 千明 北川 知津子 安部 智之 20101124 C08B 37/10 20060101AFI20101104BHJP A61K 31/727 20060101ALN20101104BHJP A61P 7/02 20060101ALN20101104BHJP A61P 13/12 20060101ALN20101104BHJP A61P 39/06 20060101ALN20101104BHJP JPC08B37/10A61K31/727A61P7/02A61P13/12A61P39/06 C08B 37/ A61K 31/ CA/REGISTRY(STN) 特開平09−286803(JP,A) 特開昭63−500184(JP,A) 特開平11−130801(JP,A) 特開昭59−187002(JP,A) 特公昭63−044764(JP,B1) 特公平02−031081(JP,B2) 特公平04−042401(JP,B2) 特公平02−031721(JP,B2) 2 2001240607 20010904 36 20070208 井上 典之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ヘパリン解重合法、この解重合法によって得られる新規な解重合ヘパリンおよびそのアミド化誘導体に関する。また、本発明は、解重合ヘパリンおよびそのアミド化誘導体を有効成分とする医薬組成物に関する。【0002】【従来の技術および発明が解決しようとする課題】ヘパリン(HE)は主として肥満細胞内の顆粒中に存在する平均分子量15000〜20000の酸性ムコ多糖類の硫酸エステルである。ヘパリンは血漿中のアンチトロンビンIII(以下、ATIIIと称す)と結合することにより、Xa因子との結合能が増強し、Xa因子を阻害する。また、プロトロンビンからトロンビンへの変換を抑制するために強い抗凝固活性を有している。【0003】ゆえに、現在臨床においては汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)の治療、種々の血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、術中・術後の血栓塞栓症など)の治療および予防のほか、血液透析・人工心肺などの体外循環装置使用時や血管カテーテル挿入時または輸血および血液検査の際などにおける血液凝固の防止に用いられている。【0004】しかし、ヘパリンは出血誘発作用(抗IIa作用)も併せ持つことから、血液凝固時間の延長に伴い出血傾向も顕著となることが危惧される。そのため、出血性病変を有する症例や、術直後の透析患者に対しては局所ヘパリン化法あるいは減ヘパリン化法などの手段により、これを防ぐ工夫が試みられているが、安全性、簡便性等に問題がある。【0005】また、近年、透析療法の発達・透析対象患者の増大・透析療法の長期化等に伴い、血小板機能の活性化、血小板減少症、血管壁のリポ蛋白リパーゼの遊離促進による中性脂質分解作用、カルシウムとの親和性に基づく骨粗鬆化等の副作用が報告されている。さらに、ヘパリンの血中半減期は約60分であるため、体外循環装置使用時の血液凝固防止剤として投与する場合には、過量のヘパリンが血中に残存するという問題点がある。また、血液透析は通常4〜5時間を要することから、適正な血中ヘパリン濃度の維持に注意を払う必要があり、血中からヘパリンが消失するのを防ぐために、透析中にヘパリンを補給ないしは持続投与しなければならないという煩雑さがあった。【0006】血液体外循環時の灌流血液の凝固防止やDICの治療には、メシル酸ガベキサートやメシル酸ナファモスタットなどの蛋白分解酵素阻害剤も用いられているが、これらの薬剤は、代謝産物であるグアニジン化合物によって消化器障害が発現する。さらに、分子量が小さくダイアライザーから透析除去されるため、回路内凝血、特にダイアライザー後の静脈側ドリップチャンバー内で凝血が発生する。【0007】以上のように、上記のヘパリンおよびメシル酸ナファモスタットをはじめとする薬剤は、出血傾向の増大という重篤な副作用が発現する恐れがある。しかしながら、特に血液透析・人工心肺などの体外循環装置使用時の血液凝固防止には欠かせない薬剤であり、また代替すべき適当な他の薬物もないことから、ある程度の危険性を承知の上で使用せざるを得ないのが現状であった。【0008】ヘパリンには前述の抗凝固活性の他に、リポ蛋白リパーゼ活性化作用、抗血小板凝集作用、血圧低下作用、抗補体作用および癌転移抑制作用などの多くの生理活性を有することが知られている。しかしながら、抗凝固活性に伴う出血傾向があまりに強いため、抗凝固目的以外に用いることはできなかった。【0009】ヘパリンのもつ生物活性は、下記のヘパリンの基本となる5つの糖(化1)に左右されており、特にヘパリンの基本5糖構造中の硫酸基と様々な生物活性は、よく調べられている。例えば、下記の3−O−硫酸はATIII結合性の5糖のみに存在し、3および5のN−硫酸、1の6−O−硫酸とともにATIIIに結合するために必須である。また、4の2−O−硫酸、5の6−O−硫酸は、ATIIIとの結合に絶対必要とは言えないが、最大活性発現には重要である。また、Ca2+結合活性はO−硫酸の存在にかかわらず、N−硫酸基に依存し、抗細胞増殖活性は、分子サイズと電荷(SO42-)に依存している。さらにヘパリンコファクターIIにおけるトロンビン阻害活性の強さは、結合硫酸の置換位置に関係なく、結合硫酸の総量に依存するものと考えられる。【0010】【化1】【0011】ヘパリンは、グリコサミノグリカンの一種であり、アミノ糖(ヘキソサミン)であるD-グルコサミンおよびウロン酸であるD-グルクロン酸またはL-イズロン酸から成っている。多くのグルコサミン残基は、N−アセチル化ではなくN−硫酸化されている割合が多い。しかも単一のヘパリン鎖中でも硫酸基の割合にかなりの変動がある。ヘパリンの繰り返し単位はβ(1→4)結合であり、D-グルコサミンにD-グルクロン酸(あるいはL-イズロン酸)が、結合したものからなる。【0012】上記に示した硫酸基、ウロン酸あるいはヘキソサミンはヘパリンが有する様々な生物活性に影響を与える因子として重要であり、中でも硫酸基の割合、残存硫酸基の位置は、抗凝血活性や癌転移抑制作用に関与しているものとして報告がある(J. Riesenfeld, et al. ; J. Biol. Chem., 256, 2389, 1981、U. Lindahl, et al. ; J. Biol. Chem., 258, 9826, 1983、T. Irimura, et al. ; Biochemistry, 25, 5322, 1986)。【0013】近年、ヘパリンの解重合により得られる平均分子量約5,000ダルトンの低分子量分画である低分子ヘパリンに、血液凝固第Xa因子に対する阻害活性と活性化部分トロンボプラスチン時間に対する延長作用の比(抗Xa活性/APTT)の増大が確認され、出血傾向が比較的少ない薬剤として使用されつつある。現在までにヘパリンを亜硝酸分解して得られた低分子ヘパリンのナトリウム塩であるダルテパリンナトリウム、および過酸化水素による解重合で得られた低分子ヘパリンのナトリウム塩であるパルナパリンナトリウムが上市されている。【0014】低分子量ヘパリンの一般的特徴としては、1)抗血栓作用(抗Xa活性)/出血誘発作用(抗IIa活性)の比率が高く、出血の危険性が少ない。2)血中半減期が長い(持続投与をせずに単回投与でよい)。3)脂質代謝・血小板に対する影響が少ない。4)血漿蛋白により中和される程度が低い。5)皮下注射時のバイオアベイラビリティーが高い等、その他様々な生理活性を有している。【0015】本発明者らは、ヘパリンや低分子ヘパリンが有する優れた薬理作用を損なうことなく、該ヘパリン類特有の副作用を克服すべく鋭意研究した結果、平均分子量8,500〜9,500を有する中分子ヘパリン画分およびそのアミノ酸誘導体が、その目的に沿った性質を備えていることを見い出した(特願平8−36693号)。【0016】上記のような低分子ヘパリンや中分子ヘパリンなどの分画ヘパリン類を得るには、1)ヘパリンからの抽出、2)化学的合成、3)ヘパリンの解重合(分解)などの方法が知られている。しかしながら、1)の抽出法は生産効率が悪く、特に低分子ヘパリン画分はヘパリン全体の僅か数%しか存在しないため実用的ではない。2)の化学的合成法も収率は低く、製造コストが高い。ゆえに、現在では、3)のヘパリンの解重合によって分画ヘパリンを取得する方法が主流となっている。【0017】ヘパリンの解重合方法にはこれまでに、亜硝酸分解法、過酸化物分解法、酵素(ヘパリナーゼ)分解法が知られており(E. Holmer, ed. by D. A. Lane, U. Lindahl, Arnold London, 1989, 575、C. P. Dietrichet al. ; Academic Press, New York, 1980, 317)、これらの方法でヘパリンを解重合した後、濾過クロマトグラフィーなどの手段を用いて目的の分子量を有する分画ヘパリンを調製するのが一般的である。【0018】このように、分画ヘパリンは、ヘパリンの解重合(分解)によって得ることができ、分画ヘパリンの薬理活性は、低分子ヘパリンとヘパリンとの間には、硫酸含量や基本構造には、あまり差が見られないものの(J. I. Nielsen, et al. ; Ostergaard, Acta chir. Scand. Suppl., 543, 52, 1988)、分子量、解重合方法の違いや解重合により得られたヘパリンの末端化学構造の違いによって異なり、数種の低分子ヘパリンが上市されている。【0019】解重合方法には上記のような種々の手段があり、その反応機構も様々である。そのため、ヘパリンを解重合して分画ヘパリンを取得するという目的は同一であっても、使用する試薬や反応条件如何によってその分画ヘパリンの分子量や開裂した部位の末端構造は影響を受けて異なり、薬理活性(アンチトロンビンIII親和性等)や臨床使用時の抗凝固能等にも大きな差となって現れることになる。【0020】今までに知られているヘパリンの解重合反応は、いずれの手段も何らかの不都合が存在するのが実状である。すなわち、亜硝酸を使用した解重合方法においては(特公昭63−44764、特公平2−31081)、温度、pH等が正確に制御されなければならず、酢酸ナトリウム等のアルカリ性薬品で反応を停止させることが必要である。また、多数の汚染物、特に未反応の亜硝酸により生じた亜硝酸塩および硝酸塩を含有する解重合混合物が生成する。従って、治療に使用する前に補助段階を付加し、精製しなければならない。過酸化水素等の過酸化物を使用した解重合方法においては(特公平4−42401)、オートクレーブを用いて約1〜2気圧の圧力下で加熱しなければならず操作が極めて危険かつ煩雑である。【0021】ヘパリナーゼ等の酵素を使用した解重合方法においては(特公平2−31721)、酵素の安定性、基質の分解温度のコントロール等の問題がある。これらの改良法も散見されるが、いずれも操作がさらに煩雑となり、大量生産には適していない。また、いずれの方法においても、反応終了を自在にコントロールするのが困難であり、結果的に幅広い分子量分布となることから、目的の分子量を有する分画ヘパリンを選択的に製造することができなかった。【0022】ゆえに、操作が簡便であり、常温・常圧で反応し、かつ反応を任意に停止させることができる解重合方法が望まれており、さらに、生成した分画ヘパリンがヘパリンよりも優れた活性を有する物質であることが必要であった。【0023】本発明者らは、出血傾向等の副作用の少ない抗凝固剤およびそれを得るための方法について検討した結果、ヘパリンが有する副作用を減少させ、かつヘパリンと同等あるいはそれ以上の生物活性を有する、中分子ヘパリンおよび中分子ヘパリン誘導体を得るために、新規合成方法を開発した。本発明の方法によれば、ヘパリンの低分子化の割合を反応時間あるいは試薬の量によって制御できる。【0024】【課題を解決するための手段】本発明の第1は還元性金属および金属酸化物を用いることを特徴とするヘパリンの解重合方法である。【0025】より具体的には、ヘパリンをリン酸緩衝液に溶解し、これに還元性金属および金属酸化物を加え、激しく攪拌した後、脱塩することにより時間依存的に効率よく特定の平均分子量を有する分画ヘパリンを得ることができる。この反応によれば、反応時間により効率よく目的の分子量を有する解重合ヘパリンを高い収率で得ることができる。【0026】本発明のヘパリン解重合方法は、(1)ヘパリンを約pH6〜8の緩衝液に溶解し、ついで、(2)該溶解液に還元性金属および金属酸化物を添加した後、反応液を処理する工程を含む。試薬の量にかかわらず、経時的的に低分子化されるが、強いていえばヘパリン、還元性金属および金属酸化物の重量比は、ヘパリン:還元性金属:金属酸化物=1:0.01〜1:0.005〜5である。【0027】さらに、上記工程(2)の後に、反応液を(a)約pH3〜5.5に調製し、(b)臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを添加する工程、および(c)ヨウ化ナトリウムのエタノール溶液を添加する工程を含むことができる。【0028】本発明の第2は、本発明の方法によって得られ、紫外吸収スペクトルにて250nm〜330nmの間に吸収を示す解重合ヘパリンである。【0029】得られた解重合ヘパリンは平均分子量が約2,000〜13,000ダルトンの範囲にあり、大部分は約5,000〜10,000ダルトンの解重合中分子ヘパリンである。【0030】本発明の第3は(1)紫外吸収スペクトルにて250nm〜330nmの間に吸収を示し、(2)硫酸基含量が20〜40%、(3)ウロン酸含量が20〜45%、(4)ヘキソサミン含量が10〜50%である解重合ヘパリンである。【0031】本発明の第4は、得られた解重合ヘパリンをアミン化合物を用いてアミド化する、アミド化解重合ヘパリンの製造方法である。用いられるアミン化合物は好ましくは第1級アミンである。【0032】本発明のアミド化解重合ヘパリンは、(1)本発明によって得られた解重合ヘパリンを約pH2〜6の緩衝液に溶解する工程、(2)アミン化合物を添加する工程、(3)1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を添加する工程を含む。【0033】さらに、上記工程(3)後に、さらに(a)臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを添加する工程、(b)ヨウ化ナトリウムのエタノール溶液を添加、(c)アルカリ化剤を添加する工程、および(d)約pH3〜6.5に調整する工程をこの順序で含むことができる。【0034】本発明の第5は、本発明の方法によって得られ、平均分子量が約2,000〜18,000ダルトンである、アミド化解重合ヘパリンである。大部分は約5,000〜15,000ダルトンのアミド化解重合中分子ヘパリンである。また、アミド化解重合ヘパリンは、(1)硫酸基含量が20〜40%、(2)ウロン酸含量が20〜45%、(3)ヘキソサミン含量が5〜50%である。【0035】さらに、これらの解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体化した化合物が医薬品として有用であることも見いだした。特に、本発明の実施例で得られたMHE−FSおよびMHE−FSの誘導体は、平均分子量が約7000〜12000であるので、低分子ヘパリンのようにダイアライザーから漏出する恐れがなく有用である。また、本来ヘパリンが有している各種の生理活性を損なうことなく、出血傾向を軽減することができるため、従来、重篤な副作用ゆえに適用できなかった種々の疾病に対しても有効に使用することができる。【0036】すなわち、本発明の第6は、得られた解重合ヘパリンまたはアミド化解重合ヘパリンを含む医薬組成物であり、具体的には抗凝固剤、腎疾患治療剤、血小板凝集阻害剤、ラジカルスカベンジャー剤、メサンギウム細胞増殖抑制剤または補体活性抑制剤である。【0037】本明細書で用いられているヘパリンまたはアミド化ヘパリン誘導体の略号を以下に示す。HE:ヘパリンFSまたは−FS:本発明で得られた新規ヘパリンまたはアミド化ヘパリン誘導体であることを示す接頭語または接尾語MHE−FS:中分子ヘパリンFSF:中分子ヘパリニルフェニルアラニンFSR:中分子ヘパリニルアルギニンFSD:中分子ヘパリニルアスパラギン酸FSM:中分子ヘパリニルメチオニンFSS:中分子ヘパリニルセリンFSBC:中分子ヘパリニルベンジル-L-システインFSAMC:中分子ヘパリニル-2-アミノ-4-メチルチオフェン-3-カルボン酸FSBCK:中分子ヘパリニルベンジロキシカルボニル-L-リジンFSPA:中分子ヘパリニル-L-フェニルアラニノールFSPEA:中分子ヘパリニル-R-フェニルエチルアミンFSLPG:中分子ヘパリニル-L-フェニルグリシンFSDPG:中分子ヘパリニル-D-フェニルグリシンFSTR:中分子ヘパリニルタウリン【0038】抗凝固剤として好ましいアミド化解重合ヘパリン誘導体としては、FSAMC、FSBCK、FSPA、FSLPG、FSPEAおよびFSDPGである。【0039】腎疾患治療剤として好ましいアミド化解重合ヘパリン誘導体としては、FSF、FSDPGおよびFSLPGである。【0040】血小板凝集阻害剤として好ましいアミド化解重合ヘパリン誘導体としては、FSF、FSBC、FSBCK、FSDPGおよびFSLPGである。【0041】ラジカルスカベンジャー剤として好ましいアミド化解重合ヘパリン誘導体としては、FSF、FSR、FSD、FSM、FSS、FSBC、FSAMC、FSBCK、FSPA、FSPEA、FSLPG、FSDPGおよびFSTRである。【0042】メサンギウム細胞増殖抑制剤として好ましいアミド化解重合ヘパリン誘導体としては、FSF、FSLPGおよびFSDPGである。【0043】補体活性抑制剤として好ましいアミド化解重合ヘパリン誘導体としては、FSF、FSBCK、FSBC、FSM、FSTR、FSD、FSLPGおよびFSDPGである。【0044】【発明の実施の態様】本発明のヘパリン解重合法は、ヘパリンをリン酸緩衝液(pH=7.2)で溶解し、これに還元性金属(例えば、鉄、銅粉末等)および金属酸化物(例えば、カラムクロマト用シリカゲル等)を加え、激しく攪拌した後、脱塩することにより経時的に効率よく特定の平均分子量を有する解重合ヘパリンを得ることができる。【0045】上記還元性金属の例としては、還元作用を有するものであれば特に制限はないが、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、スズ、アルミニウム等が好適に用いられる。金属は表面積を大きくする意味から粉末状で用いるのが好ましい。これらの金属は単独であるいは混合物として用いられる。より好ましくは、銅および鉄またはそれらの塩であり、最も好ましくは鉄またはその塩である。【0046】また、本発明の解重合方法で用いる金属酸化物は、例えば、酸化ケイ素(二酸化ケイ素を含む)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化硫黄、酸化ウラン、酸化オスミウム、酸化カドミウム、酸化カルシウム、酸化金、酸化銀、酸化クロム、酸化ゲルマニウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化水銀、酸化スズ、酸化ストロンチウム、酸化セレン、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化鉄、酸化テルル、酸化銅、酸化トリウム、酸化鉛、酸化ニオブ、酸化ニッケル、酸化白金、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ヒ素、酸化ベリリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ヨウ素、酸化リチウム、酸化リン、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化パラジウム等が好適に用いられる。酸化ケイ素が特に好ましく、この酸化ケイ素としてカラムクロマトグラフィー用充填剤として市販されているシリカゲルを用いることができる。【0047】解重合中分子ヘパリンのアミド化誘導体の合成さらに、本発明の製法により得られる解重合ヘパリンをアミド化してアミド化誘導体の合成を行う。解重合によって得られた新規の中分子ヘパリン(以下、MHE−FSと称す)を誘導体化してMHE−FSのアミド化誘導体の合成を行うことができる。すなわち、MHE−FSおよび各種誘導体化エステル試薬を酸性条件下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えることにより反応を行う。反応終了後、4級アンモニウム塩とし、さらにアルカリ条件下で加水分解を行い、目的とする各種MHE−FSのアミド化誘導体を合成する。【0048】【化2】【0049】また、アミン化合物としては、例えば第一級アミン化合物および第二級アミン化合物を挙げることができ、合成物、天然物を問わない。第一級アミン化合物としてはアミノ基を有する化合物で有れば特に制限はない。第一級アミン化合物および第二級アミン化合物として、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリンなどのα−アミノ酸またはその誘導体が好適に用いられる。これらのアミノ酸はD体、L体またはDL体のいずれでもよい。【0050】具体的に用いられる第一級アミン化合物は、L-フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩、L-アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩、L-メチオニンメチルエステル塩酸塩、L-セリンメチルエステル塩酸塩、L-アルギニンメチルエステル二塩酸塩、2-アミノ-4-メチルチオフェン-3-エチルエステル、L-フェニルアラニノール、R-(+)-フェニルエチルアミン、L-2-フェニルグリシンメチルエステル一塩酸塩、S-ベンジル-L-システイン、N−ベンジロキシカルボニル-L-リジン、D-2-フェニルグリシンメチルエステル一塩酸塩、またはアミノエタンスルホン酸である。【0051】上記の第一級アミンを用いて、中分子ヘパリニルフェニルアラニン(以下、FSFと称す)、中分子ヘパリニルアスパラギン酸(以下、FSDと称す)、中分子ヘパリニルメチオニン(以下、FSMと称す)、中分子ヘパリニルセリン(以下、FSSと称す)、中分子ヘパリニルアルギニン(以下、FSRと称す)、中分子ヘパリニル-2-アミノ-4-メチルチオフェン-3-カルボン酸(以下、FSAMCと称す)、中分子ヘパリニル-L-フェニルアラニノール(以下、FSPAと称す)、中分子ヘパリニル-R-フェニルエチルアミン(以下、FSPEAと称す)、中分子ヘパリニル-L-フェニルグリシン(以下、FSLPGと称す)、中分子ヘパリニルベンジル-L-システイン(以下、FSBCと称す)、中分子ヘパリニルベンジロキシカルボニル-L-リジン(以下、FSBCKと称す)、中分子ヘパリニルタウリン(以下、FSTRと称す)および中分子ヘパリニル-D-フェニルグリシン(以下、FSDPGと称す)が得られる。これらの中分子ヘパリンのアミド化誘導体は新規化合物である。【0052】ヘパリンの基本5糖構造中の硫酸基と様々な生物活性については既述したとおりであるが、結合硫酸基含量は変化させることができる。【0053】1.硫酸基含量を増加させる方法硫酸基含量を増加させる割合によって適宜変更されるところであるが、下記に一般的な方法を示す。まず、MHE−FSまたはMHE−FSのアミド化誘導体約100mgに−4℃にて95%硫酸20mLおよびクロロスルホン酸10mLを加える。次に適当な時間、例えば約1時間撹拌した後、室温に戻し、更に約1時間撹拌する。その後−4℃の冷ジエチルエーテル50mLを加え、沈殿物を濾取する。該沈殿物を精製水に溶解し、0.5N NaOHで中和する。脱塩した後減圧濃縮を行い、硫酸基増加型MHE−FSまたはMHE−FSのアミド化誘導体を得ることができる。【0054】2.硫酸基含量を減少させる方法硫酸基含量を減少させる割合によって適宜変更されるところであるが、下記に一般的な方法を示す。まず、MHE−FSまたはMHE−FSのアミド化誘導体約3gを精製水25mLに溶解する。該溶解液をDowex 50W-X8(H+、20〜50mesh)カラムに供す。カラム溶出液と洗浄液を合わせ、冷却下にてピリジンを加え、pH=5.5〜6.0に調製した後濃縮する。得られたMHE−FSまたはMHE−FSのアミド化誘導体のピリジニウム塩にメタノール(該ピリジニウム塩0.9gに対しメタノール10mL)を加え、全体を湿潤させる。次に撹拌しながらDMSO 60mLを添加し、完全に溶解させた後、ジオキサン30mLを加える。該溶液をガラス製耐圧容器内で90℃に加熱する。24時間後室温に戻し開栓する。さらにピリジン塩酸塩(ピリジン2gを精製水8mLと混和し、3N HCl 7.5mLを少量ずつ撹拌しながら添加した後、濃縮乾燥する)のジオキサン−DMSO−メタノール(3:6:1 v/v)溶液4mLを添加し、再度密栓して36時間、90℃に加熱する。反応終了後、精製水300mLを加え、1N NaOHにてpH=9〜9.5に調製した後、再結晶(エタノール)し乾燥させることにより、硫酸基減少型MHE−FSまたはMHE−FSのアミド化誘導体を得ることができる。【0055】本発明の解重合方法で得られる解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体は、通常の方法により製剤化し、注射剤や経口剤として投与することができる。また、解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体には一般に生体内において遊離型と実質的に同等の生理活性または薬理活性を発揮するもの、例えば、本発明の化合物の誘導体および医薬的に許容される塩、付加塩、水和物などは本発明の技術的範囲に含まれるものである。また、例えば以下のような投与方法によって投与されるが、その投与量あるいは投与速度は、通常、本剤投与後、全血凝固時間または全血活性化部分トロンボプラスチン時間を測定しつつ、年齢、症例、適応領域あるいは使用目的によって決定される。【0056】例えば、静脈内点滴投与法では、解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体の5000〜50000ヘパリン単位に相当する量を5%ブドウ糖注射液、生理食塩液またはリンゲル液1000mLで希釈し、1分間に20〜30滴前後の速度で静脈内に点滴投与する。また、静脈内間歇注射法では、解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体の2000〜50000ヘパリン単位に相当する量を4〜8時間毎に静脈内に注射する。皮下注射・筋肉内注射法では、1回2000〜10000ヘパリン単位に相当する量の解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体を4時間毎に注射する。更に1日1回〜数回の単回投与も可能である。【0057】体外循環時(血液透析・人工心肺)における使用において、人工腎では各患者の適正使用量は透析前のヘパリン感受性試験の結果に基づいて算出されるが、全身ヘパリン化法の場合、通常、透析開始に先だって、1000〜3000ヘパリン単位に相当する量の解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体を投与し、透析開始後は、1時間当たり500〜1500ヘパリン単位に相当する量を間歇的に追加する。局所ヘパリン化法の場合は、1時間当たり1500〜2500ヘパリン単位に相当する量を持続注入する。また、人工心肺灌流時では、術式・方法によって異なるが、通常、150〜300ヘパリン単位/kgに相当する量を投与し、更に体外循環時間の延長に応じて適宜追加投与する。特に、実施例で得られたMHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体は、平均分子量が約7000〜12000であるので、低分子ヘパリンのようにダイアライザーから漏出する恐れがなく、有用である。【0058】経口投与の場合は、500〜2000ヘパリン単位/gに相当する量の解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体を1日1〜数回服用する。外用剤の場合は、100〜500ヘパリン単位/gに相当する量の解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体の軟膏として用いられ、適量を1日1〜数回塗布またはガーゼ等に延ばして貼付する。座剤の場合は、1000〜4000ヘパリン単位/gに相当する量の解重合ヘパリンおよびアミド化解重合ヘパリン誘導体を1日1〜2回肛門または膣に適用する。【0059】【実施例】実施例1 HE(ヘパリン)の解重合条件の検討ヘパリン(Scientific Protein Laboratories)を50mg秤取し、これを0.25Mリン酸緩衝液4mL(pH7.2)で溶解し、鉄粉末(Fe)を20または40mg(和光純薬製)およびワコーゲル(シリカゲル)(SiO2)12.5、25、50または100mg(和光純薬製)を加え、室温で密栓して激しく撹拌した。0、0.5、1、2、3、4、5および6時間後、反応物を濾過後、HPLCに供し、ヘパリンの推定分子量の経時的変化を測定した。その結果を図1に示した。【0060】いずれの条件の場合もヘパリンは、試薬の量にかかわらず経時的に低分子化されており、6時間の反応で平均分子量4,000〜5,000に低分子化されていた。【0061】液体クロマトグラフ(HPLC)による分子量分画の確認は、MHE−FSを蒸留水にて溶解し、次の条件により、分子量の分画を行った。検出器:RID-10A(島津製作所製)、光散乱検出器:mini dawn(Wyatt technology)、カラム:Shodex OH pak SB-5003(昭和電工製)、ガードカラム:Shodex OH pak SB-5000G(昭和電工製)。スタンダードにはポリエチレングリコール10,000(Mw.Av.=10,000、ALDRICH)、#6,000(Mw.Av.=8,500、東京化成)、#4,000(Mw.Av.=3,000、東京化成)および#1,540、(Mw=1,450、関東化学)を用い、検量線を作成し、分子量分画部分を確認した。【0062】以上の結果より反応時間および試薬量を調節することで特定の分子量を有するヘパリンを合成できることが明らかとなり、今回、これらの方法のうち比較的安定して反応が進行し、また、必要最小限の試薬を用いる方法(ヘパリン:Fe:SiO2=5:2:1.25)で、大量のMHE−FS(中分子ヘパリン)の合成を行った。【0063】実施例2 最適条件下でのMHE−FS(中分子ヘパリン)の合成ヘパリン1.0gを0.25M リン酸緩衝液80mL(pH=7.2)で溶解し、これに鉄粉末400mgおよびワコーゲル250mgを加え、室温で密栓して激しく撹拌した。4時間後、反応生成物をセライト(和光純薬製)で濾過し、濾液を酢酸でpH=4.5に調製し、5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水溶液をアンモニウム塩の沈澱物が生じなくなるまで加えた。次にこの沈澱物を遠心により完全に分離した後、沈澱物に5%ヨウ化ナトリウムのエタノール溶液(50mL)を加え、1時間撹拌後に濾過し、沈澱をエタノールで再結晶を行い粗MHE−FSを得た。これを蒸留水に溶解し、HPLCに供し、分子量5,000〜10,000の分画を分取した。減圧濃縮した後、エタノールで再結晶し、MHE−FS(720mg)を得た。その結果、約70%の収率で目的とするMHE−FS(中分子ヘパリン)が合成できた。【0064】実施例3 MHE−FSの機器分析フーリエ変換赤外分光計FTIR-8200PC型(島津製作所製)を用いて赤外線吸収(IR)スペクトルの測定を行った。試料の調製はKBr錠剤法により行った。すなわち、ヘパリンおよびMHE−FSを約3mg秤量し、KBr約100mgを混ぜ合わせ、ハンディープレスでペレットを作製しIRスペクトルの測定を行った。【0065】自記分光光度計UV-240(島津製作所製)を用いて紫外線吸収(UV)スペクトルの測定を行った。ヘパリンおよびMHE−FSを1mg秤量し、蒸留水で、1mg/mLの濃度に調製しUVスペクトルの測定を行った。【0066】Varian XL-200(200MHz)を用いてヘパリンおよびMHE−FSをD2Oに溶解し、1H NMRスペクトルの測定を行った。【0067】その結果、MHE−FSのIR、NMRスペクトルではヘパリンと略同一であったが、UVスペクトルで290nmに極大吸収が認められた(図2)。【0068】実施例4 MHE−FSのアミド化誘導体合成方法アミド化誘導体合成のために下記の試薬を用いた(かっこ内はアミド化誘導体になった場合の略号を示す)。【0069】【化3】【0070】具体的には、L-アルギニンメチルエステル二塩酸塩(SIGMA)、L-アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩(SIGMA)、L-メチオニンメチルエステル塩酸塩(SIGMA)、L-フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩(Aldrich)、L-セリンメチルエステル塩酸塩(半井テスク)、2-アミノ-4-メチルチオフェン-3-エチルエステル(Lancaster)、L-フェニルアラニノール(東京化成)、R-(+)-フェニルエチルアミン(東京化成)、L-2-フェニルグリシンメチルエステル一塩酸塩(Aldrich)、D-2-フェニルグリシンメチルエステル一塩酸塩(Aldrich)、アミノエタンスルホン酸(タウリン)(和光純薬)、N−ベンジロキシカルボニル-L-リジン(Lancaster)、S-ベンジル-L-システイン(Lancaster)である。【0071】中分子へパリニルフェニルアラニン(FSF)の合成MHE−FS560mgの水溶液15mLにpH=4.75においてL-フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩900mg、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)700mg(半井テスク)の水溶液5.1mLを徐々に加え、4時間撹拌した後、少量の水および5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(半井テスク)水溶液をアンモニウム塩の沈澱物が生じなくなるまで加えた。次にこの沈澱物を遠心により完全に分離した後、沈澱物に5%ヨウ化ナトリウム(半井テスク)のエタノール溶液50mLを加え、1時間撹拌後、濾過し、沈澱をエタノールで再結晶を行うことにより、白色粉末のヘパリニルフェニルアラニンメチルエステルを得た。次いで、この化合物に0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液10mLを加えて0〜5℃で窒素気圧下2日間撹拌した。反応後反応液に酢酸を加えpH=5とした後、濾過し、濾液にエタノールを加え生成する白色粉末の中分子へパリニルフェニルアラニン(以下、FSFと称す)を68%の収率で380mg得た。【0072】MHE−FSの各種アミド化誘導体を上記のアミド化試薬を用いて、上記のFSFの合成方法と同様に、それぞれFSR、FSD、FSM、FSS、FSBC、FSAMC、FSBCK、FSPA、FSPEA、FSLPG、FSDPGおよびFSTRを合成した。また、各誘導体の合成収率を表1に示した。【0073】【表1】MHE-FSのアミド化誘導体の収率【0074】実施例5 ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体の機器分析 フーリエ変換赤外分光計FTIR-8200PC型を用いて赤外線吸収(IR)スペクトルの測定を行った。試料の調製はKBr錠剤法により行った。すなわち、ヘパリンおよびMHE−FSを約3mg秤量し、KBr約100mgを混ぜ合わせ、ハンディープレスでペレットを作製した。そして、以下の条件によりIRスペクトルの測定を行った。【0075】自記分光光度計UV-240(島津製作所製)を用いて紫外線吸収(UV)スペクトルの測定を行った。各種中分子ヘパリンを1mg秤量し、蒸留水で、0.5mg/mLの濃度に調製し、UVスペクトルの測定を行った。【0076】Varian XL-200(200MHz)を用いてヘパリンおよび新規中分子ヘパリンをD2Oに溶解し、1H NMRスペクトルの測定を行った、【0077】各誘導体のIRおよびUVスペクトルの結果を表2に示した。【表2】HE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体のIRおよびUVスペクトルのデータ【0078】実施例6 MHE−FSのアミド化誘導体の絶対分子量測定ヘパリンのような複雑な構造を有する生理活性物質は、分子量分布、分子サイズ、レセプターとの親和性などから多様な活性を示すと考えられる。今まで低分子ヘパリンの分子量を測定する際には、分子量スタンダードを使って校正曲線を作成し、相対的な分子量を求めていたために、精度はスタンダードの品質に依存されていた。また、各スタンダードの分子量は固有粘度や超遠心などを用いて求めており、そのため各社における低分子ヘパリンの分子量分布が大きく異なっていた。今回、絶対分子量の測定にSEC/MALLS法(James, E. Knobloch et al. ; Anal. Biochem., 245, 231-241, 1997)を用い、ヘパリン、本発明で得られた中分子ヘパリン並びに各中分子ヘパリン誘導体13種FSF、FSD、FSM、FSS、FSR、FSAMC、FSPA、FSPEA、FSLPG、FSBC、FSBCK、FSTRおよびFSDPGの絶対分子量を多角度光散乱検出器を用い、分子排除クロマトグラフ法(SEC/MALLS)にて測定するとともに、ヘパリンおよびダルテパリン(キッセイ薬品、フラグミン注、Lot No 7047AH)との違いを検討した。なお、本実験の標準物質として単分散で分子量が明確なpullulan P-10(昭和電工製、Mw.Av.=11,800)を用い、絶対分子量の正確性を確認した。その結果、pullulanは単分散であり、平均分子量は11,760であった。ヘパリン、MHE−FS、ダルテパリンおよびMHE−FSのアミド化誘導体を2.5〜3mg秤取し、25mg/mLの濃度に調製した。これをHPLCに注入し、SEC/MALLS法により分子量を測定した。次の条件で分析を行った。検出器:RID-10A(島津製作所製)、光散乱検出器:mini dawn(Wyatt technology)、カラム:Shodex OH pak SB-803HQ(昭和電工製)、ガードカラム:Shodex OH pak SB-G(昭和電工製)。また、スタンダードについても同様の方法で行った。得られたデータについては解析ソフトASTRAを用いて解析し、それぞれの平均絶対分子量を求めた。【0079】SEC/MALLS法によるヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体の分子量の測定結果を表3(Mw:絶対分子量(重量分子量)、Mn:数平均分子量)に示す。すなわち、今回使用したヘパリンの平均分子量は14,170であり、また、このヘパリンより合成したMHE−FSの平均分子量は、8,327であった。ダルテパリンの平均分子量は、6,635であり、MHE−FSと大きく異なっていた。Mw/Mnが1であれば単分散を示し、1より大きくなるに従って多分散性を示す。測定結果を表3に示した。【0080】【表3】HE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体のSEC/MALLS 分析【0081】実施例7 硫酸基の測定合成したMHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体に含まれる硫酸基の割合を測定した。標準液として硫酸アンモニウム0、5、10、25、50、75、100μmol/mL(和光純薬)を蒸留水に溶解したものを使用した。【0082】ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体における硫酸基の含量を求めるためにX軸に硫酸アンモニウム濃度、Y軸に吸光度(500nm)として検量線を作成した。【0083】ヘパリン約1mgを1mol/Lの塩酸で1mg/2mLの濃度に調製し、1、3、5および6時間加水分解し、硫酸含量を測定した。【0084】ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体における硫酸基の含量をK.S.Dodgsonらの方法(K. S. Dodgson, et al. ; Biochem. J., 84, 106, 1962)に基づいて測定した。ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体を約5mg秤取し、1mol/Lの塩酸で10mg/mLの濃度に調製した。次にこの溶液100μLを共栓付試験管に移し、ドラフト中にて沸騰水浴中で、5時間加水分解を行った。加水分解後、減圧濃縮し、これに0.1mol/Lの塩酸4.5mLを加え、沈澱をよく溶解した後、3000rpm、10min遠心した。標準液については各々100μLを共栓付試験管に採取し、0.1mol/L塩酸4.4mLを加えた。次に標準液および試料液(遠心上清)を2mLずつ試験管に2本(空試験用、本試験用)分けて採取し、空試験にはゼラチン溶液(0.5gのゼラチン(DIFCO)に100mLの蒸留水を加え、湯浴(60〜70℃)で溶解し、4℃で一晩放置したもの)、本試験にはゼラチン-塩化バリウム溶液(左記のゼラチン溶液50mLに0.5gの塩化バリウム(無水)(和光純薬)を加え、4時間以上撹拌したもの)を0.25mL加えよく混合し、室温で20分間放置した後、1時間以内にUVIDEC 77Σ(日本分光)を用いて500nmで吸光度を測定した。結果を表4に示した。【0085】【表4】HE, MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体の硫酸基含量【0086】ヘパリンおよびMHE−FSの硫酸基の割合はそれぞれ31.75%および34.52%であったのに対し、MHE−FSのアミド化誘導体では23.51〜31.80%であった。従って、ヘパリンおよびMHE−FSと比較してMHE−FSのアミド化誘導体の硫酸基の割合が低くなっていることからMHE−FSをアミド化誘導体化することによりヘパリンのもつ抗血液凝固活性が軽減されたと考えられる。【0087】実施例8 ウロン酸含量の測定合成したMHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体に含まれるウロン酸(L-イズロン酸およびD-グルクロン酸)を測定した。標準液としてグルクロン酸ナトリウム0、0.05、0.1、0.25、0.5mg/mL(和光純薬、Lot No ECK4854)を蒸留水に溶解したものを使用した。【0088】ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体におけるウロン酸の含量を求めるためにX軸にグルクロン酸ナトリウムの濃度、Y軸に530nmにおける吸光度として検量線を作成した。【0089】ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のウロン酸含量をT.Bitterらの方法(T. Bitter, et al. ; Anal.Biochem., 4, 330, 1962)を用い、測定した。ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体を秤取し、1mg/mLの濃度に蒸留水を用いて調製した後、これらの試料、ブランク(蒸留水)および標準物質をそれぞれ200μL共栓付試験管に採取した。次に室温以上にならないように注意しながら氷冷した四硼酸ナトリウム硫酸溶液(四硼酸ナトリウム十水和物0.95g(和光純薬、Lot No ACN3456)を氷冷した濃硫酸100mL(キシダ、Lot No ES60424H)に溶解したもの)3.0mLを試料の入った試験管に滴下し、さらに、カルバゾール液(カルバゾール12.5mg(和光純薬、Lot No CAJ0034)を無水エタノール10mLで溶解したもの)を100μL加えた。十分に混合した後、沸騰水浴中で20分間加熱し、室温まで氷冷し吸光度(530nm)を島津自記分光光度計 UV-240を用いて測定した。結果を表5に示した。【0090】【表5】HE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体のウロン酸含量【0091】ウロン酸(L-イズロン酸およびD-グルクロン酸)の含量は、FSDPGが43.43%と最も多く含有しており、他は28〜40%ウロン酸を含有していた。【0092】実施例9 アミノ糖(ヘキソサミン)含量の分析一般にヘキソサミンは、硫酸基およびウロン酸と同様、ヘパリンのもつ様々な生物活性に影響を与える因子として大変重要であるとされている。一方、このヘキソサミンの測定には、今まで比色分析法が主として使用されていたが、微量での分析が困難であった。今回、我々はヘキソサミンがアミノ糖であり、ニンヒドリン反応で呈色することを利用し、微量のMHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体を用い、ヘキソサミン含量の測定を行った。【0093】標準液には、D-(+)-グルコサミン塩酸塩(和光純薬、Lot No TPH6525)0、10、100、1000μg/mLを0.02mol/L塩酸に溶解したものを使用した。また、測定には日立高速アミノ酸分析計L-8500形を使用し、アミノ酸クロマトグラフ法で測定した。分析条件は次の通りである。注入量:30μL、カラム:日立カスタムイオン交換樹脂#2622を内径4.6mm、長さ60mmのステンレス管に充填したもの、緩衝液(表6):B1、B2、B3、B4およびB5、反応液:和光純薬製ニンヒドリン試液L-8500セット、化学反応槽温度:135℃、検出器:可視部吸光光度計(測定波長:440nmおよび570nm)。【0094】【表6】アミノ酸分析装置用緩衝液【0095】1)和光純薬製ニンヒドリン試薬L-8500セット。ニンヒドリン溶液(1L中、ニンヒドリン0.22moL、水素化ホウ素ナトリウムおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルを含む)と緩衝液(1L中、酢酸リチウム二水和物2.0moL、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む)を等量混合した液。2)pH9.0のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸緩衝液 トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン60.57mgを希塩酸32.5mLに溶かし、水を加えて1000mLとした。3)0.1Mジトレイトール試液 ジトレイトール77mgをpH9.0のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸緩衝液に溶かし、5mLとする。4)酸性ニンヒドリン試液ニンヒドリン2.5gを氷酢酸に溶かし、塩酸40mLを加える。用時調製。5)クエン酸試液クエン酸一水和物24.2gを量り、水で1000mLとする。【0096】ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体について各々約100μgを試料用試験管に秤量し、この試験管を反応バイアル内に入れ減圧乾燥させた。次に反応バイアル底に加水分解用6mol/L塩酸(1%フェノール含有)を100μL入れ、減圧下、反応バイアル内を窒素で置換した後、105℃で18時間加水分解を行った。乾燥後、試験管を取り出し、0.02mol/L塩酸100μLを加えてよく混合し、フィルターで濾過し、濾液を試料溶液とした。この試料溶液についてアミノ酸分析装置を用い、各誘導体におけるヘキソサミンの含量を測定した。結果を表7に示した。【0097】【表7】HE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体のヘキソサミン含量【0098】ヘパリンのヘキソサミン含量は約14%であり、MHE−FSは約15%であった。また、MHE−FSのアミド化誘導体では約13〜40%であった。FSDPGにおいては40%と高い値を示した。【0099】実施例10 元素分析ヘパリンの構成成分はウロン酸とアミノ糖そして硫酸である。これらの成分は、C、H、O、NおよびSの五種類の元素から成り立っており、これらの元素の割合がヘパリンの持つ薬効を左右している可能性も考えられている。ゆえに、今回合成したMHE−FSのアミド化誘導体について、一分子中に含まれる個々の元素含量を元素分析により求めた。元素分析機は、CHN CORDER(柳本製)を用いた。【0100】ヘパリンおよびMHE−FSのアミド化誘導体について約3mg/バイアルを秤取した後、十分に乾燥させ燃焼法にて各元素(C、H、N、OあるいはS)含量を測定した。結果を表8に示した。【0101】【表8】HEおよびMHE-FSのアミド化誘導体の元素分析【0102】今回合成した誘導体は、硫黄含量(S)が7.84〜9.72%、酸素含量(O)が52.48〜57.96%とヘパリンの硫黄含量(10.58%)および酸素含量(61.25%)と比較して減少していたが、水素含量(H)、炭素含量(C)および窒素含量(N)は増加していた。【0103】実施例11 抗血液凝固剤MHE−FS 5000 低分子ヘパリン国際単位(抗第Xa因子活性)生理食塩水 適量pHを5.0〜7.5に調整し、全量を5mLとした。得られた抗血液凝固剤は浸透圧比が約1(対生理食塩水比)であった。【0104】実施例12 抗血液凝固剤MHE−FSの代わりにFSLPGを用いる以外は実施例11と同様にして調製した。得られた抗血液凝固剤は浸透圧比が約1(対生理食塩水比)であった。【0105】薬理試験薬理試験1. in vitro血液凝固系に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のin vitroにおける血液凝固系に及ぼす影響を検討した。すなわち、ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体におけるAPTTの延長作用と抗Xa活性を調べるためにヒト正常血漿(Coagulation Control Plasma (Normal) Level l:Pacific Hemostasis 製)を用いて、以下の項目について測定を行った。【0106】1) 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定APTT測定にはAPTT-テストワコー(APTT-P試薬、ケファリン)(和光純薬)、Amelung-Coagulometer、デカベット(エム・シー・メディカル)を使用した。ヒト正常血漿9容にヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体あるいはPBS(-)(対照)1容を加えて被験血漿を調製し、これらの被験血漿100μLに活性化部分トロンボプラスチン試薬100μLを加え、37℃、3分加温後、塩化カルシウム溶液を100μL添加し、血液凝固時間自動測定器Amelung-Coagulometerを用いて、凝固するまでの時間を測定した。【0107】2) 抗Xa活性の測定抗Xa活性測定には、テストチームRヘパリンS(第一化学薬品)を使用した。ヒト正常血漿2容にヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体あるいは緩衝液(50mM 2-アミノ-2-ヒドロキシル-1、3-プロパンジオール、pH8.4)(対照)2容および緩衝液6容加えて被験血漿を調製し、これらの被験血漿100μLを37℃で5分間加温した後、ウシ由来Xa試液(7.1 nkat/mL)50μLを加えた。さらに30秒間加温した後にあらかじめ加温しておいた基質液(N−ベンゾイル-L-イソロイシル-L-グルタミル-グリシル-L-アルギニル-p-ニトロアニリド・塩酸塩)100μLを添加し、3分間加温を続けた後、反応停止液(10%酢酸)950μLを加え、波長405nmの吸光度で残存するXa因子を測定した。測定結果を表9に示した。【0108】【表9】HE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体の抗Xa活性/APTT活性*: APTTを100秒に延長する濃度【0109】表9ではAPTTの延長作用をヘパリン比で表した場合、値が大きい程、出血傾向がヘパリンより軽減されており、例えばMHE−FSでは約2倍軽減されていることになる。また、抗Xa活性を1/ヘパリン比で表した場合、この値が1より大きい程、抗Xa活性(抗血栓作用)が、ヘパリンよりも優れていることになる。従って、抗凝固能の表現方法の一つとして用いられている抗Xa活性とAPTTの延長作用の比(抗Xa活性/APTT比)が大きい程、より安全性の高いヘパリン代用薬としての可能性がある。つまり、ヘパリンを1とした時、MHE−FSが2.44、FSAMCが2.15、FSBCKが4.89、FSPAが1.24、FSLPGが1.27と高い値を示した。このことから、これらの誘導体は、抗Xa活性が保持されAPTTの延長作用が弱められた結果、出血助長が少なく、かつ抗血栓作用をもったより安全性の高い抗凝固薬として期待される。【0110】MHE−FSのカルボン酸を置換した誘導体のうち、C末端の官能基の種類(水酸基(FSPA)、カルボン酸(FSF))ではAPTT活性にほとんど差がなかったが、抗Xa活性は、水酸基(FSPA)の方がカルボン酸(FSF)の約7倍の活性を示した。また、C末端の官能基がカルボン酸(FSLPG)と比較してメチル基(FSPEA)の場合、APTTは、約1/2.5に軽減されていたが、抗Xa活性は、約1/4に低下していた。ベンゼン環が、ヘパリンとの結合部位より遠隔になるFSDPG、FSF、FSBC、FSBCKの順でAPTTの延長作用が軽減されていた。さらに天然型のL体と非天然型のD体を比較するとAPTTはほとんど変わらないが、抗Xa活性はL体のほうが約10倍高かった。【0111】薬理試験2. ex vivo血液凝固系に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のex vivoにおける血液凝固系に及ぼす影響を検討した。雄性マウス(1群3〜5匹)にヘパリンおよびMHE−FSを0.1、0.3および1.0mg/kg、FSLPGおよびFSDPGを0.3、1.0、3.0および10.0mg/kg、その他のMHE−FSのアミド化誘導体を1.0、3.0、10.0および30.0mg/kg(対照はPBS(-))の用量で尾静脈内に投与し、投与15分後にエーテルおよびネンブタール麻酔下で腹部大動脈より3.8%クエン酸ナトリウム(血液9容に対して1容)を用いて採血し、以下の項目について測定を行った。【0112】1) 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定APTT測定にはAPTT-テストワコー(APTT-P試薬、ケファリン)(和光純薬)、Amelung-Coagulometer、デカベット(エム・シー・メディカル)を使用した。採血した血液より得た血漿100μLに活性化部分トロンボプラスチン試薬100μLを加え、37℃、3分加温後、塩化カルシウム溶液を100μL添加し、血液凝固時間自動測定器Amelung-Coagulometerを用いて、凝固するまでの時間を測定した。【0113】2) 抗Xa活性抗Xa活性測定には、テストチームRヘパリンS(第一化学薬品)を使用した。採血した血液より得た血漿2容に緩衝液(50mM 2-アミノ-2-ヒドロキシル-1、3-プロパンジオール、pH8.4)8容加えて被験血漿を調製し、この被験血漿100μLを37℃で5分間加温した後、ウシ由来Xa試液(7.1 nkat/mL)50μLを加えた。さらに30秒間加温した後にあらかじめ加温しておいた基質液(N−ベンゾイル-L-イソロイシル-L-グルタミル-グリシル-L-アルギニル-p-ニトロアニリド・塩酸塩)100μLを添加し、3分間加温を続けた後、反応停止液(10%酢酸)950μLを加え、波長405nmの吸光度で残存するXa因子を測定した。結果を表10に示した。【0114】【表10】HE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体の抗Xa活性/APTT活性*: APTTを100秒に延長する投与量【0115】表10においてはAPTTの延長作用をヘパリン比で表した場合、値が大きい程、出血傾向がヘパリンより軽減されている。また、抗Xa活性を1/ヘパリン比で表した場合、この値が1より大きい程、抗Xa活性(抗血栓作用)が、ヘパリンよりも優れていることになる。従って、抗凝固能の表現方法の1つとして用いられている抗Xa活性とAPTTの延長作用の比(抗Xa活性/APTT比)が大きい程、より安全性の高いヘパリン代用薬としての可能性がある。つまり、ヘパリンを1とした時、FSAMCが1.91、FSPAが2.14、FSPEAが1.81、FSLPGが2.48、FSBCKが2.22と、高い値を示した。すなわち、これらの誘導体については、臨床においてヘパリンより安全性の高い抗凝固薬としての応用が期待される。【0116】MHE−FSのカルボン酸を置換した誘導体の内、C末端の官能基の種類(水酸基(FSPA)、カルボン酸(FSF))ではin vitroでの結果と同様、APTT活性にほとんど差がなかったが、抗Xa活性は、水酸基(FSPA)の方がカルボン酸(FSF)の約7倍の活性を示した。また、C末端の官能基がカルボン酸(FSLPG)と比較してメチル基(FSPEA)の場合もin vitroでの結果同様、APTTは、約1/3に軽減されていたが、抗Xa活性は、約1/4.5に低下していた。天然型のL体(FSLPG)と非天然型のD体(FSDPG)を比較するとAPTTの延長はD体では、L体と比較して約1/3に軽減されているが、抗Xa活性はL体のほうが約10倍高い活性を示していた。【0117】薬理試験3. PAN腎症に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のpuromycin aminonucleoside(PAN)腎症に及ぼす影響を検討した。【0118】生理食塩液に溶解したPAN(和光純薬)を110mg/5mL/kgの用量でラットに1回腹腔内投与することによりPAN腎症を惹起した。PAN腎症惹起1、4、7、10および14日後にラットに水道水25mL/kgを経口投与した後、代謝ケージ(CT-10型、日本クレア)に収容し、絶食・給水下の条件で16時間採尿を行った。採取した尿は尿量を計測し、尿中蛋白濃度をマイクロTPテストワコー(和光純薬)を用いて測定し、尿蛋白排泄量/日を算出した。【0119】試験物質は0.15〜5mg/mL/kgの用量で静脈内投与し、メチルプレドニゾロン(注射用メプレドロン、富士レビオ、MP)は10mg/5mL/kgの用量で経口投与した。投与期間はPAN投与30分前および投与1日後より1回/日、連日14日間とした。【0120】動物は4週齢のJcl:SD系雄性ラットを使用した。各群の動物数は6〜7匹とした。また、陽性対照物質はMPを添付溶解液(全量2mL)に溶解した後、PBS(-)で希釈し2mg/mLの濃度に調製し使用した。【0121】測定値は平均値±標準誤差で表示した。対照群と試験物質投与群間については多重比較検討を行った。まずLevene法で各群の分散の一様性を検定し、等分散の場合には一元配置分散分析を、不等分散の場合にはデータを順位変換した後Kruskal-Wallis検定を行った後、Tukey法により検定した。また、対照群と陽性対照群間についてはt検定を実施した。結果を図3に示した。各測定値は1群当たりの動物数6〜7匹の平均値±S.E.示す。*(P<0.05)、**(P<0.01)において対照との間に有意差が見られた。【0122】対照群における尿蛋白排泄量はPAN投与4日後に58.6±31.9mg/dayと増加し始め、10日後に130±24.7mg/日とピークを示し、その後減少した。これに対して、陽性対照物質であるMP投与群における尿蛋白排泄量はPAN投与7日後以降有意に減少した(図3A)。FSF1mg/kg投与群においては尿蛋白排泄量の減少傾向が認められ、3mg/kg投与群の尿蛋白排泄量はPAN投与10日後において対照群の32%まで減少した(図3B)。FSDPG 1mg/kg投与群においては尿蛋白排泄量の減少傾向が認められた(図3C)。FSLPG 1mg/kg投与群における尿蛋白排泄量は、PAN投与7および10日後において有意に減少した(図3D)。ゆえに、FSFおよびFSLPGはPAN腎症における尿蛋白排泄を抑制することが明らかとなったことから、急性・慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、間質性腎炎、慢性腎盂腎炎、急性尿細管壊死、通風腎、重金属・薬剤中毒、薬剤による副作用、尿細管性アシドーシス、腎不全、ループス腎炎等の腎性蛋白尿をきたす、各種腎疾患の予防・治療剤に応用できる。【0123】薬理試験4. in vitro血小板凝集能に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のラット血小板に対するコラーゲンおよびトロンビン誘発凝集の影響を検討した。【0124】1)ラット血小板の採取ペントバルビタールナトリウム(ネンブタール注、大日本製薬)40mg/kg、i.p.麻酔下にてSD系雄性ラットを開腹し、腹部大動脈を露出した。3.8%クエン酸ナトリウム溶液(診断用チトラミン“フソー”、扶桑薬品)0.8mLを含む20mLシリンジポンプに18ゲージ注射針を装着し、腹部大動脈より8mL以上の血液を採取した。採血後、直ちにクエン酸ナトリウム溶液の添加比率が採血量の10%となるよう、同溶液をシリンジポンプ内に添加し、転倒混和した。この血液を低速遠心(650〜750rpm、25℃にて20分)し、上清を採取した。これを多血小板血漿(PRP)とした。さらに残りの血液を遠心(3000rpm、4℃にて、10分)し、上清を採取した。これを乏血小板血漿(PPP)とした。【0125】2)洗浄血小板溶液の調製PRPに1/100容の200mmol/L EDTA-2Na溶液を添加し、穏やかに混和した。これを遠心(2300rpm、4℃にて、10分)し、上清を吸引除去した。沈渣をもとのPPPとほぼ同量の0.3mmol/L EDTA-2Naを含むトリス塩酸緩衝生理食塩液(pH 7.4)に懸濁した。再び遠心(2300rpm、4℃にて、10分)し、上清を吸引除去した。沈渣を元のPPPとほぼ同量の0.1%ウシ血清アルブミン(Fraction V、生化学工業)を含むCa2+-freeタイロード(BSA-Tyrode)液に懸濁し、これを洗浄血小板溶液とした。【0126】3)コラーゲン誘発血小板凝集に対する影響PRPを測定に使用した。PRPは、多項目自動血球測定装置にて血小板数をカウントし、いずれも5×105/mLとなるようPPPにて調製した。対照用のキュベットにPPP、測定用のキュベットに調製PRP各々180μLを添加した。添加したキュベットを予め5分間以上37℃で加温した後、測定を開始した。測定開始1分後にPBS(-)10μLあるいは種々の濃度の試験物質(ヘパリン、MHE−FSあるいはMHE−FSのアミド化誘導体)の10μLを測定用キュベットに添加した。さらに3分後に、血小板凝集物質として0.4mg/mLコラーゲンの10μL(終濃度20μg/mL)を添加し、その後10分間測定を行った。測定開始時におけるPPPの光透過率を100%、調製PRPを0%とし、凝集物質添加後の光透過率の変化を血小板凝集率として測定した。コラーゲン(コラーゲンリエージェント“ホルム”、Nycomed Arzneimittel−モリヤ産業)は試薬に付属のSKFバッファーにて希釈した。血小板数の測定には多項目自動血球測定装置(K-1000、日本分光)を、血小板凝集能の測定には血小板凝集能測定装置(PAM-8C、メバニクス)を使用した。【0127】4)トロンビン誘発血小板凝集に対する影響洗浄血小板溶液を測定に使用した。前項と同様に洗浄血小板溶液の血小板数をカウントし、5×105/mLとなるようBSA-Tyrode液にて希釈した。対照用のキュベットにBSA-Tyrode液、測定用のキュベットに洗浄血小板溶液各々180μLを添加し、前項と同様に測定を行った。但し、凝集物質としては40 unit/mLトロンビン溶液の10μL(終濃度0.2 unit/mL)を添加した。トロンビン(トロンビン5,000単位モチダ、持田製薬)はPBS(−)にて溶解した。【0128】5)統計解析各凝集物質添加10分後までの最大凝集率を求めた。ヘパリン、MHE−FSまたはMHE−FSのアミド化誘導体の血小板凝集に対する阻害率は以下の式により算出した。但し、阻害率を算出に用いるデータは、各々同一個体の血小板より得られたデータとした。【0129】抑制率(%)=(1−各試験物質添加時の最大凝集率/PBS(-)添加時の最大凝集率)×100また測定は、各々異なる個体の血小板を用いて3〜5回繰り返して行い、その平均値と標準偏差を算出した。また濃度依存的な血小板凝集抑制を示した被験物質につき、抑制率が50%の前後となる2〜4用量における直線回帰式を求め、50%抑制率(IC50)を算出した。【0130】6)試験物質 ヘパリン、MHE−FS、FSF、FSR、FSD、FSM、FSS、FSAMC、FSPA、FSPEA、FSLPG、FSBC、FSBCK、FSDPGおよびFSTRを使用した。ヘパリン、MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体は種々の濃度にPBS(-)を用いて調製し、0.45μmのフィルター(ザルトリウス)で濾過した後使用した。陰性対照物質としてPBS(-)を使用した。【0131】その結果、コラーゲンおよびトロンビン凝集に対してはヘパリンをはじめ、すべての薬物で濃度依存的な凝集抑制作用が観察されたが、そのIC50は薬物によって大きく異なっていた。コラーゲン誘発凝集に対してはFSLPGとFSDPGがヘパリンの作用を上回る強い抑制作用を示した(表11)。トロンビン凝集に対してはFSF、FSLPG、FSDPG、FSBCおよびFSBCKがヘパリンの作用を上回る強い抑制作用を示した(表12)。以上の結果より、ヘパリンより強い作用を示した誘導体は、いずれもヘパリンに替わる抗凝固剤、DIC治療剤あるいは血小板凝集阻害に基づく腎疾患治療剤としての応用が期待される。【0132】【表11】ラットにおけるコラーゲン(20μg/mL)誘導血小板凝集に対するHE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体に対する50%抑制濃度【0133】【表12】ラットにおけるトロンビン(0.2単位/mL)誘導血小板凝集に対するHE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体に対する50%抑制濃度【0134】今回、スクリーニングに使用したMHE−FS誘導体のうち、ベンゼン環の配置をMHE−FSとの結合部位に最も近くしたFSLPGとFSDPGは、コラーゲンおよびトロンビンによる血小板凝集をともに強く抑制し、いずれもヘパリン、MHE−FSより強い作用であった。またFSFおよびベンゼン環の配置を若干遠くしたFSBCおよび最も遠い配置のFSBCKは、トロンビン誘発凝集は強く阻害したが、コラーゲン誘発凝集に対してはヘパリンと同程度(FSF)か約1/4(FSBC)または1/8(FSBCK)程度弱い作用であった。これらの事実は、MHE−FSに結合させる化合物がベンゼン環とカルボン酸を有することにより、トロンビンによる血小板凝集を強く抑制するようになるが、コラーゲン誘発凝集については、ベンゼン環の配置をMHE−FSとの結合部位付近に近づけることによって、強い抑制作用を有するようになることを示唆している。【0135】薬理試験5. ラジカルスカベンジ作用に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のラジカルスカベンジ作用を検討した。【0136】腎炎の発症にフリーラジカルの関与が報告されている。特に、抗原抗体複合体が関与する腎炎、尿毒素の一種であるメチルグアニジンが生体に蓄積することに起因する腎炎においてはフリーラジカルの関与が明らかにされている(大柳善彦;活性酸素と病気、化学同人、京都(1984)、大柳善彦;SODと活性酵素調節剤−その薬理作用と臨床応用−、日本医学館、東京(1989)、佐中孜他;腎と透析臨時増刊号、122-126、東京医学社(1994)、青柳一正他;腎と透析臨時増刊号、127-134、東京医学社(1994))。【0137】1)被験物質ヘパリン、MHE−FS、FSF、FSR、FSD、FSM、FSS、FSAMC、FSPA、FSPEA、FSLPG、FSBC、FSBCK、FSDPGおよびFSTRを用いた。調製は各々1mg/mLに培地を用いて調製した。【0138】2)方法L.M.hiebertとJi-min Liuの方法(L.M.Hiebert and Ji-min Liu : Atherosclerosis, 83、47-51、1990)に準じて行った。すなわち、正常ブタ肺動脈血管内皮細胞(PPA−EC)(大日本製薬)、またはヒトさい帯動脈血管内皮細胞(HUA−EC)(ダイアトロン)をタイプIコラーゲンコーティングフラスコ(75cm2;ファルコン)で20%ウシ胎児血清(Bio-whittaker)および細胞増殖添加因子(EGM-2添加因子セット;三光純薬)含有のM199アール培地(ギブコ)(2mL)により培養した。3回目の継代時に細胞を1×105 cells/wellの細胞密度でタイプIコラーゲンコーティング6穴プレート(ファルコン)に分注し、実験を行った。すなわち被験物質(1mg/mL)を全培地量の1/20容処置し、その後培地で調製したヒポキサンチン(0.2μM/mL)(シグマ)およびキサンチンオキシダーゼ(4U/mL)(ベーリンガーマンハイム)をいずれも全培地量の1/20容ずつ加えてフリーラジカルを発生させ放置した。その、24時間後培地上清を回収し、EDTA-トリプシン(0.02%-0.25%=1:1)処理により細胞を回収し、コールターカウンター(コールター社)を用いて生細胞数を計測した。その後被験物質を適用しない細胞(Normal)の平均生細胞数を100%としてcell viabilityを算出した。群間の有意性はBartlett法にて分散の均一性を確認した後、Tukey法により検定した。結果を表13に示した。【0139】【表13】ピポキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼ処理によるPPA-ECEに対するHE、MHE-FSおよびMHE-FSのアミド化誘導体の作用**P<0.01, V.S. PBS.(Tukey's test)【0140】その結果、PPA−ECを用いた検討におけるcell viabilityは被験物質を適用していない細胞と比べ、FSPA以外の被験物質処置細胞において有意(P<0.01;Tukey's test)に高かった(表13)。すなわち、FSPA以外の被験物質においてラジカルスカベンジ作用が確認された。【0141】薬理試験6. in vitroにおけるラットメサンギウム細胞(MC)および正常ヒトメサンギウム細胞(NHMC)に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のin vitroにおけるラットメサンギウム細胞(MC)および正常ヒトメサンギウム細胞(NHMC)増殖抑制作用について検討した。インスリン(Sigma)、L-グルタミン(コスモバイオ)、抗生物質としてAntibiotic-antimycotic(GIBCO)を使用した。試験薬物は300〜3000μg/mLの濃度に培地を用いて調製し、0.45μmフィルターでろ過した後使用した。【0142】1)MC増殖抑制作用の検討MCを20%FCS含有RPMI1640(GIBCO)培養液に加え、6-wellマイクロプレート(FALCON)に4.0×104cells/well播種し、24時間培養した。その後0.4%FCS(FCS、Biowhittaker)含有RPMI 1640培養液に置換し、3日間培養した。さらに、10%FCS含有RPMI 1640培養液に置換し、各試験物質を全容量の1/10容添加した。4日後にTrypsin−EDTA液にて細胞をすべてはがし、コールターカウンターを用いて細胞数を測定した。結果を図4Aに示した。【0143】2)NHMC増殖抑制作用の検討NHMC(TaKaRa)を20%FCS含有MsBM培養液(Biowhittaker)に加え、6-wellマイクロプレートに細胞数を3.5×104cells/well播種し、24時間培養した。その後0.4%FCS(FCS、Biowhittaker)含有MsBM培養液に置換し、3日間培養した。さらに、10%FCS含有MsBM培養液に置換し、各試験物質を全容量の1/10容添加した。6日後にTrypsin−EDTA液にて細胞をすべてはがし、コールターカウンターにて細胞数を測定した。結果を図4Bに示した。【0144】MCおよびNHMC増殖抑制作用に対する試験物質の評価は、下式に示す抑制率により行った。抑制率(%)=[1−(試験物質処置時の細胞数−0.4%FCS含有培養液添加7又は9日後の細胞数/無処置対照の細胞数−0.4%FCS含有培養液添加7又は9日後の細胞数)]×100【0145】その結果、ヘパリン適用群は30〜300μg/mLの用量においてMC増殖を用量依存的に31.32〜46.05%抑制した。FSF、FSLPGおよびFSDPG適用群においては30〜300μg/mLの用量においてそれぞれ用量依存的に抑制し、その抑制率はヘパリン適用群と比べてすべての用量において上回った(図4A)。【0146】また、ヘパリン適用群は50〜200μg/mLの用量においてNHMC増殖を用量依存的に57.93〜77.27%抑制した。FSFおよびFSDPG適用群において、それぞれ用量依存的に増殖抑制が見られた。またFSF、FSLPGおよびFSDPG各中分子ヘパリン誘導体適用群においてその抑制率はヘパリン適用群と比べて上回るものであった(図4B)。以上の結果より、今回用いたFSF、FSLPGおよびFSDPGがヘパリンよりも優れた腎メサンギウム細胞増殖抑制作用を有する化合物であることが明らかとなった。【0147】薬理試験7. in vitro補体活性化抑制作用に及ぼす影響MHE−FSおよびMHE−FSのアミド化誘導体のin vitroにおける補体活性化抑制作用について検討した。【0148】感作ヒツジ赤血球(8.5%感作ヒツジ赤血球、デンカ生研、以下EA)を5×108 cells/mLの濃度になるようにゼラチンベロナール緩衝液(以下、GVB)に浮遊させ、このEA浮遊液200μLにGVBで溶解・希釈したモルモット補体(乾燥補体、デンカ生研)を加えGVBを用いて全量1.5mLとした。37℃の恒温槽中で1時間反応させた後、3000rpmで10分間遠心分離し、上清のヘモグロビン量をUVIDEC−77Σ(日本分光)を用いて測定波長542nmで測定した。同時に物理的溶血として補体の代わりにGVBを加えたものおよび100%溶血として補体およびGVBの代わりに純水を加えた検体を作製し、同様の操作を行った後にその上清のヘモグロビン量を測定した。各被験物質の作用の検討は、補体活性化による溶血率が約50%になる条件で行った。また被験物質の添加量は全容量の1/100容となるように添加した。各被験物質の補体活性化によるEAの溶血に対する阻害率を下記の式により算出した。【0149】抑制率(%)=[1−(各試験物質添加時の溶血率/コントロール(溶媒のみを添加)の溶血率)]×100【0150】ヘパリン、MHE−FS、FSF、FSR、FSD、FSM、FSS、FSAMC、FSPA、FSPEA、FSLPG、FSBC、FSBCK、FSDPGおよびFSTRを使用した。陽性対照薬としてNafamostat mesilate(注射用フサンョ、鳥居薬品)を使用した。結果を表15に示した。【0151】【表14】【0152】補体活性化抑制作用などの抗凝固作用以外のヘパリンの生理活性を臨床に応用する場合、出血傾向などの副作用が問題になってくる。補体活性化抑制作用が強く、かつ出血傾向の少ないMHE−FSのアミド化誘導体を検出するための指標として(ヘパリンがAPTTを100秒に延長した用量を1とした時のそれぞれのMHE−FSのアミド化誘導体の用量比)×(ヘパリンの補体活性化抑制作用のIC50を1にした時のそれぞれのMHE−FSのアミド化誘導体のIC50の比の逆数)を算出した。その結果、陽性対照薬として用いたNafamostatのIndex,15.30よりも小さい値ではあったが、L-フェニルグリシン(LPG)、フェニルアラニン(F)、D-フェニルグリシン(DPG)、ベンジル-L-システイン(BC)、ベンジロキシカルボニル-L-リジン(BCK)、メチオニン(M)、アスパラギン酸(D)を導入することによってIndexは8.78〜1.15となりヘパリンの1より大きな値を示した(表15)。このことからFSF、FSBCK、FSBC、FSDPG、FSLPG、FSMおよびFSDはヘパリンよりも副作用が少なくかつ補体活性化抑制作用が強いことが示唆された。【0153】今回の結果からFSF、FSBCK、FSBC、FSDPG、FSLPG、FSM、FSD、特にFSFは補体の活性化が病態の発症あるいは進展に関与していると考えられている腎炎等の疾患の治療薬としての臨床応用が示唆された。また、MHE−FSにベンゼン環およびOH、OCH3、-OCOCH3、-NHCOCH3等の電子供与基を有した物質を導入する事によって更に強い補体活性抑制作用が得られると推測される。【図面の簡単な説明】【図1】反応時間および試薬量によるヘパリンの推定分子量の時間的変化を示す折線グラフである。【図2】ヘパリンおよびMHE−FSのUVスペクトルを示す【図3】ヘパリン誘導体のPAN腎症ラットに及ぼす影響を示す折線グラフである。*(P<0.05)、**(P<0.01)【図4】ヘパリン誘導体のin vitroにおけるラットメサンギウム細胞(MC)(A)および正常ヒトメサンギウム細胞(NHMC)(B)に及ぼす影響を示す棒グラフである。 下記の工程を下記の順序で含む、ヘパリンの解重合方法。(1)ヘパリンをpH6〜8の緩衝液に溶解(2)該溶解液に還元性金属としての鉄および金属酸化物としての二酸化ケイ素を添加 上記工程(2)の後に、さらに下記の工程を下記の順序で含む、請求項1記載のヘパリンの解重合方法。(a)反応液をpH3〜5.5に調整(b)臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを添加(c)ヨウ化ナトリウムのエタノール溶液を添加