タイトル: | 特許公報(B2)_ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法 |
出願番号: | 2000052831 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 17/25,B01J 27/13,C07C 23/08,C07B 61/00 |
関屋 章 高 仁孝 田村 正則 山田 俊郎 JP 4423414 特許公報(B2) 20091218 2000052831 20000229 ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 内田 幸男 100070792 関屋 章 高 仁孝 田村 正則 山田 俊郎 20100303 C07C 17/25 20060101AFI20100210BHJP B01J 27/13 20060101ALI20100210BHJP C07C 23/08 20060101ALI20100210BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100210BHJP JPC07C17/25B01J27/13 XC07C23/08C07B61/00 300 B01J27/00〜B01J27/32 C07B31/00〜C07B63/04 C07C1/00〜C07C409/44 CAPlus(STN) REGISTRY(STN) CASREACT(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平11−335118(JP,A) 特開平05−097728(JP,A) 特開平02−067235(JP,A) 国際公開第99/033771(WO,A1) 特開平08−301801(JP,A) 特開平03−163033(JP,A) 特開平04−211026(JP,A) 特表2001−513083(JP,A) 国際公開第96/017813(WO,A1) 1 2001240567 20010904 7 20050809 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成10年度新エネルギー・産業技術総合開発機構 有害塩素系溶剤等を代替する新規環状化合物の革新的製造技術の研究開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの) 安藤 達也 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、洗浄剤や溶剤として有用な1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(以下、HFCPAと略すことがある。)は、沸点が82.5℃(常圧下)の公知物質であり、従来よりその製造方法が知られている。【0003】HFCPAの製造法としては、例えば、パーフルオロシクロペンテンをパラジウムなどの水素化触媒の存在下に、水素と反応させて1,1,2,2,3,3,4,5−オクタフルオロシクロペンタンを合成する際の副生成物として得られることが報告されている(J.C.S.(C)、548頁、1968年)。しかしながら、このHFCPAを単離したという記載はなく、これら二つの化合物は沸点がほとんど同一なので、蒸留による主生成物からの分離は困難である。【0004】また、パーフルオロシクロペンテンを0.1%パラジウム担持アルミナを触媒として175〜200℃で水素により水素化することで、1,2−ジヒドロオクタフルオロシクロペンタンと共に少量成分としてHFCPAを得る方法が、英国特許第1046095号に記載されている。【0005】特開平11−322644号には、クロロノナフルオロシクロペンタンを出発原料として、パラジウム担持活性炭と炭酸水素ナトリウムの存在下に水素化還元してHFCPAを製造する方法が提案されているが、この方法で得られる生成物中のHFCPA(目的物)は35%であり、未反応原料が56.8%残存すると記載されているので、工業的に十分満足のいく製造方法とは言い難い。【0006】さらに、WO99/33771号公報には、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを原料として、パラジウムなどの貴金属触媒の存在下に水素化してHFCPAを製造する方法が提案されている。また、この公報には、貴金属触媒を活性炭、アルミナ、シリカゲル、チタニア、ジルコニアおよびこれらをフッ素化水素処理したものに担持して用いる方法も記載されている。【0007】この1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを原料とするHFCPAの製造方法は、原料の転化率が99%であり、前述した従来の製法と比較して著しく改善されている。しかしながら、反応生成物のガスクロマトフィー分析によると、異性体である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンタン(以下、F6Aと略すことがある。)や不飽和結合を有する1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロペンテン(以下、HFCPEと略すことがある。)が副生成物として4〜8.5%含まれていて、HFCPA選択性の観点からはいまだ改善の余地があり、選択性の一層の向上が求められていた。【0008】また、この担体触媒を用いる水素化反応の系内においては、強酸性の塩化水素およびフッ化水素が発生するために貴金属を担持する担体が劣化して、触媒成分である貴金属が脱落(剥離)しやすく、触媒寿命が短いという問題もあった。【0009】【発明が解決しようとする課題】従来技術の上記のような問題点に鑑み、本発明の目的は、水素化反応の担体触媒の劣化が少なく、しかも高選択性かつ高収率で工業的有利に1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する方法を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者らは、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを原料としてHFCPAを製造する反応条件、とりわけ担体触媒について鋭意検討を重ねた結果、特定の担体触媒を用いることにより、上記の課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。かくして、本発明によれば、水素化触媒の存在下に1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを水素化して1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造するに際し、触媒としてAlF3に担持した貴金属を用いることを特徴とする1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法が提供される。【0011】【発明の実施の形態】本発明の製造方法において、原料の1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンは既知物資であり、公知の方法(例えば、WO99/33771号公報参照)で製造されたものを使用すればよい。水素化反応に用いられる水素は、ガス状であればよい。水素は1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンに対して過剰モル使用することが有利である。水素は原料1モルに対して通常2モル以上、好適には2から50モルの水素を使用すればよい。【0012】使用される貴金属触媒は、貴金属単体または貴金属化合物である。貴金属触媒は、後述するAlF3に担持させた形態で使用することが必須である。かかる貴金属としては、例えば、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、白金などが挙げられ、なかでもパラジウム、ロジウム、ルテニウムが好ましく、パラジウムが最も好ましい。貴金属化合物としては、例えば、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウムなどの塩、塩化パラジウムなどのハロゲン化物などが挙げられる。これらの貴金属触媒は、単一金属からなるものを使用してもよいし、2種類以上の金属の合金、いわゆるバイメタル触媒として用いてもよい。かかる合金としてはパラジウムを主成分とするものが好ましい。【0013】また、本発明の触媒は、貴金属以外の金属成分を含むことができる。そのような金属成分としては、銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデン、タリウム、錫、ビスマス、鉛などが挙げられる。一般的に合金触媒においては、合金組成に応じて、その成分元素の特性が出現するといわれており、添加金属成分の量は、貴金属100重量部に対して0.01〜500重量部、好ましくは0.1〜300重量部が貴金属の特性を活かす意味で好適である。【0014】貴金属を担持させるAlF3担体の形状、大きさ、表面積は特に制限されるものではない。粉末でも球形ペレット状などの粒状でもよい。粒状物は加工された成形体であっても、破砕物であってもよい。好ましい形状は、液相反応の場合は粉末または粒状であり、気相反応の場合は粒状である。AlF3担体に対する貴金属の担持量は、通常、貴金属単体または貴金属合金および貴金属化合物中の貴金属の重量に基づき、0.05〜20重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。AlF3担体の表面積は広い方が好ましく、多孔質担体の使用が推奨される。触媒を担持した担体の比表面積は、0.5〜100m2/gの範囲から適宜選択すればよい。【0015】貴金属触媒の担持方法は特に限定されないが、通常、硝酸パラジウムや塩化パラジウムなどの金属塩の水溶液を単独で、また必要に応じて添加金属の塩の水溶液を所望の割合、濃度で混合し、AlF3担体をその水溶液に含浸させた後に乾燥させ、さらに100℃以上600℃以下の高温で処理することにより担持できる。このとき、必要により水素などの還元性物質を供給しながら行うこともできる。【0016】水素化反応の方式としては、液相または気相反応が可能である。液相反応は無溶媒で行っても、溶剤を用いてもよい。気相反応では希釈剤を必要により用いることができる。また、気相反応では、固定床型気相反応、流動床型気相反応などの方式をとることもできる。液相反応で使用する溶剤は、特に制限はなく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハイドロフルオロカーボン類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、水などが挙げられる。【0017】脂肪族炭化水素類は、その炭素数が、通常4〜15であればよく、脂肪族炭化水素類の具体例としては、n−ブタン、n−ペンタン、メチルペンタン、n−ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類の具体例としては、トリフルオロメチルベンゼンなどが挙げられる。ハイドロフルオロカーボン類の具体例としては、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン、デカフルオロペンタンなどが挙げられる。アルコ−ル類は、その炭素数が、通常1〜10であればよく、好ましくは1〜6である。アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロペンタノールなどが挙げられる。エーテル類は、その炭素数が、通常4〜10であればよく、好ましくは4〜6である。エーテル類の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。【0018】ケトン類は、その炭素数が通常3〜10であればよく、好ましくは3〜8である。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルプチルケトン、シクロペンタノンなどが挙げられる。エステル類は、その炭素数が、通常4〜10であればよく、好ましくは4〜8である。エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチルなどが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、または2種以上組み合わせて使用してもよい。溶剤の使用量は、特に制限はなく、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン100重量部に対して、通常0〜80重量部、好ましくは0〜50重量部である。【0019】気相反応の際使用する希釈剤としては、本水素化反応に不活性なガスであればよく、具体例としては、窒素ガス、希ガス、炭化水素ガス、ハイドロフルオロカーボンガスなどが挙げられる。希ガスの具体例としては、アルゴンガスやヘリウムガスなど;炭化水素ガスの具体例としては、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガスなど;ハイドロフルオロカーボンガスの具体例としては、ペンタフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン、デカフルオロペンタン、ヘプタフルオロシクロペンタン、ヘキサフルオロシクロペンタンなどが挙げられる。これらの希釈剤は、単独で使用してもよく、または2種以上組み合わせて使用してもよい。希釈剤の使用量は、特に制限はなく、例えば、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン100重量部に対して、通常、0〜500重量部、好ましくは0〜200重量部である。【0020】本水素化反応系の圧力は、通常、常圧〜50kgf/cm2程度であり、好ましくは常圧〜20kgf/cm2である。反応温度は、通常、常温〜350℃程度であり、好ましくは常温〜200℃程度である。また、本反応においては必要に応じて、反応系を撹拌または振とうする。【0021】本発明の水素化反応は、バッチ反応、または原料を連続的に反応器へ供給し、反応生成物を連続的に反応器から抜き出す連続反応が採用される。使用する反応容器は、バッチ反応の場合圧力容器であり、連続反応では、直列に連結した1個またはそれ以上の反応器、例えばカスケ−ド式反応器を使用することができる。反応容器の材料としては、例えば、ステンレススチールなどが適している。一般に、ステンレススチール製反応器は、使用前に例えば硝酸処理してコンディショニングすることが有利である。反応終了後は、副生する塩化水素および微量のフッ化水素を、水洗、中和、吸着または低温蒸留などの処理を施して、除去した後、蒸留などの通常の精製方法によって目的物を高純度で得ることができる。これらの後処理により目的物が変質することはない。本発明の方法により得られるHFCPAは、各種材料の洗浄剤や溶剤として用いられる。HFCPAは、オゾン層破壊力がなく、地球温暖化係数が低いのでその用途の一層の拡大が期待される。【0022】【実施例】以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。【0023】実施例1パラジウムが担持されたAlF3担体触媒の調製および1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの合成(触媒調製法)多孔質のAlF3(比表面積30m2/g)の粒径を篩で1.18〜1.40mmに揃えた後、120℃で12時間乾燥させた。2.0gの塩化パラジウムを30mlの36%塩酸水溶液に加えて、60℃で撹拌しながら溶解させた。これに蒸留水を加えて溶液の全量を50mlにした。乾燥したAlF320gをナスフラスコに仕込んで、上記塩化パラジウム−塩酸水溶液を8.4ml加えた。この容器の口部を開放にしたまま150℃に加熱し、約20分間攪拌して水分を蒸発させた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて水分を減圧留去し、内容物をよく乾固させた。【0024】この操作を5回繰り返し、合計42mlの塩化パラジウム−塩酸水溶液をAlF3に含浸させた。この含浸品は次の要領で焼成した。すなわち、室温から200℃まで30分かけて昇温、200℃で6時間加熱、200℃から300℃まで30分かけて昇温、300℃で6時間酸素ガス雰囲気において焼成した。一旦冷却後、さらに室温から200℃まで1時間かけて昇温、200℃で6時間加熱、200℃から300℃まで1時間かけて昇温、300℃で10時間、300℃から350℃まで1時間かけて昇温、最後に350℃で5時間気相水素還元(水素20ml/min)を行った。このようにして5重量%のパラジウムを担持したAlF3担体触媒を調製した。【0025】(水素化反応)ステンレススチール製反応管(容量180ml)に、上記で調製した5重量%パラジウム−AlF3担体触媒1g、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン1.7gを入れ、水素と1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンのモル比が12:1となるように水素ガスを加えたのち、170℃で5時間反応を行った。粗生成物をフッ化ナトリウムに通して微量に副成するフッ化水素を除去した後、真空ラインを用いて蒸留することにより塩化水素を除去した。得られた生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。【0026】実施例2〜4パラジウム担持量が異なるAlF3担体触媒の調製および1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの合成実施例1と同様にして、パラジウムの担持量が異なる3種類のAlF3担体触媒(表1参照)を調製した。そして、実施例1と同様に反応させた結果を表1に示す。【0027】表 1実施例 Pd担持量 原料転化率 生成物選択率(%) 比較例 (WT%) (%) HFCPA HFCPE F6A 実1 5 98.92 99.84 0.09 0.07実2 3.0 99.92 99.70 0 0.30実3 2.0 99.92 99.63 0 0.32実4 1.0 99.00 99.56 0 0.25比1 1.0 99.0 90.9 8.59 0.505比2 1.0 99.0 89.9 16.2 6.06 【0028】比較例1パラジウム担持アルミナ触媒による1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの合成1重量%パラジウム担持アルミナ(日揮化学製)を用いて、実施例1〜4と同様に反応させた結果を表1に示す。【0029】比較例2パラジウム担持活性炭触媒による1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの合成1重量%パラジウム担持活性炭(日揮化学製)を用いて、実施例1〜4と同様に反応させた結果を表1に示す。【0030】【発明の効果】本発明で用いるAlF3に担持した貴金属触媒は、強酸性の塩化水素やフッ化水素が発生する水素化反応系における劣化が少なく、触媒寿命が長い。しかも、高選択性かつ高収率で工業的有利に目的とする1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンが製造される。 水素化触媒の存在下に1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを水素化して1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造するに際し、触媒としてAlF3に担持した貴金属を用いることを特徴とする1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの製造方法。