タイトル: | 特許公報(B2)_イソチオウロニウム基を有する新規な化合物および前記化合物のアニオン種認識蛍光センサーとしての使用 |
出願番号: | 2000040785 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 335/12,G01N 21/76 |
久保 由治 JP 4512678 特許公報(B2) 20100521 2000040785 20000218 イソチオウロニウム基を有する新規な化合物および前記化合物のアニオン種認識蛍光センサーとしての使用 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 久保 由治 20100728 C07C 335/12 20060101AFI20100708BHJP G01N 21/76 20060101ALI20100708BHJP JPC07C335/12G01N21/76 C07C 335/00 G01N 21/00 CA/REGISTRY(STN) 特開平06−065220(JP,A) 特開平06−011446(JP,A) 特開平03−068551(JP,A) 特開昭55−110937(JP,A) 米国特許第02910505(US,A) 3 2001226347 20010821 11 20061226 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、請求項1に記載の一般式(I、II)で表される新規なナフタレン誘導型イソチオウロニウム化合物及び前記新規化合物のアニオン認識蛍光センサーとしての使用、特にカルボキシレートやホスフェートなどのオキソアニオン種を認識して蛍光発信するアニオン種認識蛍光センサーとしての使用、特に、臨床、生体分析、環境分析、生産管理等の分野での使用に関する。【0002】【従来技術】生体重要化学種の選択的錯体形成に伴って蛍光発信できる分子センサーの開発は基質-レセプター相互作用の分子論的解明に寄与する学術的興味のみならず、医療分析化学分野への適用等の実用面でも極めて重要である。これまでに主にアルカリ・アルカリ土類金属イオンに対する優れた蛍光センサーが開発されてきている(A.Minita and R.Y.Tsien,J.Biol.Chem.,1989,264,19449;I.Aoki,T.Sasaki,andS.Shinkai,Chem.Commun.,1992,730;G.Grynkiewicz,M.Poenie,and R.Y.Tsien,J.Biol.Chem.,1985,260,3440など)が、アニオンに対する関連センサー材料の開発例は少ない。これはアニオンが、カチオン種と比較してイオンサイズが大きいこと(同分子量および同電荷量で、対比した場合。)、アニオンは球状、直鎖状、平面状、四面体、八面体など様々な形状を持ち、カチオンがほとんどが球形であるのと極めて対称的であること、同程度のサイズのカチオンと比較して溶媒和されやすいこと、更にプロトン化を受けやすい性質を持つことなどにより、アニオンを認識するセンサーの分子設計を困難なものにしてきた(C.Seel,A.Galan, and J.de Mendoza,Top.Cur.Chem.,1995,175,102)。しかしながら、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチドにみられるように有機アニオン種は生体内で重要な役割を担っていることはよく知られている。そこで、リアルタイムにアニオン種の動態を検定できるセンサーは医療分析化学に分野において不可欠な材料といえる。こうした背景をうけて近年アニオン種を発光現象の変化などにより、光学的に観察できる光学センサーの開発が注目されている。【0003】アニオン種の定量には、イオンクロマトグラフィー、イオン選択性電極、または比色分析が可能であるが、検出感度では蛍光分析技術が勝っており、特に微量成分の分析には重要な役割をしている。しかしながら、検出感度のよいことは、検定条件にも影響を受けやすいということが言える。そこで、アニオン認識部位(アニオン結合特異性部位)と蛍光機能部位がスムーズに相互作用しうる(特定のアニオン種に特異的に結合することと蛍光特性の変化の応答性が優れている)限りシンプルな分子構造が望まれる。【0004】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、アニオン種を特異的に結合し、かつ蛍光特性の変化の応答性がよいアニオン検出用のセンサー化合物を提供することにある。アニオン種を効果的に結合(特異的に結合)するには、電子欠損型化学構造と、かつ水素結合ドナーグループ(ルイス酸)としての特性を併せ持つことがよいとされている。発明者らは、イソチオウロニウム基が、アニオン種に対して前記性質を満たすことを見出すと共に、またイソチオウロニウム基が蛍光特性を持つナフチル基と結合させた場合、分子内で縮合芳香族環であるナフチル基等の蛍光が、これに結合したイソチオウロニウム基により効果的に消光できる能力をもつことを発見した。更に、イソチオウロニウム基にオキソアニオンのようなアニオン種が結合すると、イソチオウロニウム基の電子欠損性が軽減される結果、ナフチル等の蛍光特性の回復(LUMO−HOMO間の電子遷移に伴う発光現象の回復)を引き起こすし、前記蛍光特性の変化をアニオン種の認識シグナル情報として読みとることができることを見出し、前記本発明の課題を解決したものである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明の第1は、一般式(I、II)で表されるナフタレン誘導型イソチオウロニウム化合物である。【0006】【化3】【0007】〔式I中、RはHまたは低級アルキル基(炭素数5程度までのアルキル基)を、R’はHまたはアルコキシ基いずれかを表し、XはBr又はPF6を表す。〕【0008】【化4】【0009】(式II中、R、R’およびXは前記式Iにおけるものと同じ意味を表す。A、A’は低級アルキル基、例えばメチル基を表す。ビナフチル基はラセミ体もしくは光学活性体である。)また、本発明の第2は、前記一般式(I、II)で表されるナフタレン誘導型イソチオウロニウム化合物のアニオン種認識蛍光センサーとしての使用であるであり、好ましくは、アニオン種が少なくとも1つのオキソアニオン種であることを特徴とする前記蛍光センサーとしての使用である。【0010】【本発明の実施の態様】本発明をより詳細に説明する。A.前記本発明の前記式IおよびIIの化合物は、アセトニトリル、アルコールなどの有機溶剤はもとより、水を含む溶媒、例えば、水:エタノールの混合溶媒にも溶けるから(式2の化合物は水:エタノール=1:1の溶媒に溶ける)、生体での観察にも利用でき可能性がある。また、一般式IIのAとA’とで環状ポリエーテル鎖を形成する(クラウンエーテル構造を形成する)化合物はアミノ酸類を認識する蛍光センサーとしての使用も可能である。【0011】B.一般式Iの合成経路は下記の反応式Iで表すことができる。【0012】【化5】【0013】式中RがH(1)の化合物を原料とし、R=Br(2)の化合物(2−ブロモメチルナフタレン)を経て2−アミノメチルナフタレンを得、この化合物にCH3NCSを反応させて化合物(3)を得、化合物(3)にベンジルブロミドを反応させてブロモ塩とし、該ブロモ塩とAgPF6とのカウンターアニオン交換することにより目的化合物(I)を得ることができる。【0014】C.一般式IIの合成経路は下記の反応式(II)で表すことができる。【0015】【化6】【0016】式(a’)中A,A’がH(1’)の化合物を出発原料とし、A,A’を所望の目的化合物(II)を得るための置換基とし、例えばメチル基(Me)(2’)とする。次いで、式(b’)のRとしてホルミル基(3’)を導入し、該ホルミル基を還元してヒドロキシメチル(4’)とし、該ヒドロキシ基をブロム置換(5’)し、以降は、アミノメチル化(6’)、N−メチルチオウレイドメチル化(7’)を経て、目的化合物(II)を得る。また(1’)のHをCH2OMeの保護基に代え、式(b’)のRを化学修飾ことにより前記一般式IIで定義した所望のA,A’とすることができる。【0017】【実施例】実施例1:本発明の(1)の化合物の合成A.2−ブロモメチルナフタレン〔反応式1の(2)〕の合成アルゴン気流下、2−メチルナフタレン(1000mg、7.03mmol)、N−ブロモサクシンイミド(NBS)(1314mg,7.38mmol)、およびベンジルパーオキサイド(5mg、0.02mmol)を乾燥四塩化炭素(12mL)に溶解させ、4時間加熱還流させた。その後、アゾイソブチロニトリル(AIBN)(12mg,0.07mmol)を加え、さらに24時間加熱還流した。少量の水(5mL)を加え反応を失活させたのち、クロロホルム(150mL)−水(50mL)で抽出をおこない、有機相を水(100mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−300,展開溶媒:10−20%(v/v)ヘキサン−クロロホルム)にかけて、白色結晶1,218mgを得た。収率78%であった。分析結果:1H NMR(200MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)4.68(s,2H,CH2)、7.47−7.54(m,3H,Ar-H)、7.765−7.88(m,4H,Ar-H)B.2−アミノメチルナフタレンの合成アルゴン気流下、2−ブロモメチルナフタレン〔500mg,2.26mmol:反応式Iの(2)〕を乾燥DMF(30mL)に溶かし、そこにカリウムフタルイミド(838mg,4.52mmol)を加え、90℃で3時間加熱撹拌する。反応終了後、クロロホルム(150mL)−水(50mL)で抽出をおこない、有機相を水(100mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。クロロホルム−ヘキサンで再沈をおこない中間体N−置換フタルイミド(590mg)を得る(収率92%)。この得られた中間体(51.3mg,0.18mmol)をTHF(0.5mL/EtOH(1.5mL)に溶かし、そこにヒドラジン・一水和物(0.1mL,2.1mmol)を加え50℃で4−5時間加熱撹拝した。溶媒を留去し、クロロホルム(30mL)−水(20mL)で抽出をおこない有機相を水(20mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。再び溶媒を留去して黄色オイル状の2−アミノメチルナフタレン(22mg)を得た。(収率77%)。分析結果:1H NMR(200MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)1.62(s,2H,NH2)、4.04(s,2H,CH2)、7.42−7.52(m,3H,Ar-H)、7.76(d,J=0.6Hz,1H,Ar-H)、7.80−7.85(m,3H,Ar-H)。【0018】C.2−(N−メチルチオウレイド)メチルナフタレン〔反応式1の(3)〕の合成2−アミノメチルナフタレン(300mg,1.91mmol)をクロロホルム(7mL)に溶かし、そこにCH3NCS(419mg,5.73mmol)のクロロホルム溶液(3mL)を加えた。一昼夜室温で撹拌し、反応終了後、クロロホルム(100mL)−水(40mL)で抽出をおこない有機相を水(40mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾操させた。溶媒を留去した後、クロロホルム−ジエチルエーテルで再沈をおこない目的物(299mg)を得た。(収率68%)。分析結果:1H NMR(300MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)2.97(d,J=4.8Hz,3H,NH-CH3)、4.81(d,J=4.05Hz,2H,Ar-CH2−NH)、5.96(brd,1H,NH)、6.12(brd,1H,NH)、7.43(dd,J=1.8,8.4Hz,1H,Ar-H)、7.46−7.52(m,2H,Ar-H)、7.75(d,J=O.7Hz,1H,Ar-H)、7.80−7.85(m,3H,Ar-H)。【0019】D.ナフタレンーイソチオウロニウム誘導体(1)の合成アルゴン気流下、2−(N−メチルチオウレイド)メチルナフタレン(338mg,1.47mmol)を乾燥エタノール(25mL)に溶かし、そこにベンジルブロミド(281mg,1.64mmol)の乾燥エタノール溶液(5mL)を加えた。30−40℃にて4−5時間加熱撹拝し、溶媒を留去した。メタノール−エチルエーテルで再沈をおこないブロモ塩544mgを得た。(収率92%)。次にそのブロモ塩(200mg,0.50mmol)を乾燥エタノール(11mL)に溶かし、そこにAgPF6(126.6mg,0.50mmol)の乾燥エタノール溶液(1.5mL)を加えてカウンターアニオンの交換をおこなった。逆相カラムクロマトグラフィー(MERCK Silicalgel 60 Silanized,展開溶媒:エタノール)でAgBrを除去し、溶媒を留去して目的物(232mg)を得た。(約100%収率)。分析結果:1H NMR(400MHz,CDC13,TMS)δ(ppm)3.07(s,3H,CH3)、4.32(s,2H,SCH2Ar)、4.69(s.2H,ArCH2NH)、7.25−7.27(m,6H,Ar-H)、7,67(brd,1H,Ar−H)、7.76−7.80(m,3H,Ar-H);13C NMR(100.7MHz,CDC13)δ(ppm)31.07(NHCH3)、35.89(SCH2Ph)、48.52(ArCH2NH)125.08,126.63,127.25,127.68,128.04,128.96,129.07,129.17,129.37,131.80,133.08 and 133.16(Ar-C)167.85(NH-C+-);FAB-MS,m/z321〔M+−PF6-〕;Anal.Calcd for C20H21N2SPF6:C,51.50;H,4.54;N,6.01.Found:C,51.66;H,4.53;N,5.98.【0020】実施例2本発明の化合物の蛍光センサー特性化合物Iのアセトニトリル中での蛍光特性、およびアセテートイオンを添加した場合の蛍光特性の変化を図1に示す。図1から、化合物1からは、2−メチルナフタレンの同条件における蛍光強度に対して2%程度の微弱蛍光しか観測されない。このことは、化合物1の電子欠損部位であるイソチオウロニウム基が分子内で効率よくナフタレン部の一重項状態をクエンチしている(LUMO位に励起された電子は、HOMO位に遷移することなくイソチオウロニウムのLUMO位に移る)ものと思われる。そこで、そのイソチオウロニウム基と親和性をもつと類堆されるアセテートイオンをゲストアニオン(分子認識されるイオンを一般にゲスト分子と呼ばれることと対応する)として添加したところ、ナフタレン環の持つ発光強度の著しい増大(回復)が観察される。そのスペクトル変化は、ほぼ化学量論比のゲストイオンの添加で飽和に達し、アニオンが存在しなかった場合の蛍光に対してして410%の蛍光強度の増大が見られた。【0021】この錯体形成モチーフを直接観測するため、核磁気共鳴装置による解析を実施した。その結果、CD3CN中、アニオン結合部位近傍に位置する(●)Naphtyl−CH2、(○)benzyl−CH2−S、(△)NHCH3〔それぞれの(CH2)、(CH2)、(CH3)〕のプロトンのそれぞれが、アセテートイオン〔(n−ブチル)4Nとの塩〕の添加に伴って最大0.2ppmの高磁場シフトをもたらした(図2)ことから、アセテートイオンはチオウロニウム部位に効率よく結合していることが確かめられた。【0022】実施例3アニオン種に対する応答性。図3のアニオン種、AcO-、(n−BuO)2P(O)O-、Cl-に対する化合物Iの応答挙動(錯体生成の平衡定数)から、前記アニオン種との結合定数Ka(M-1)は、それぞれ1.2×107、5.5×104、Cl-では算出不可能、であることが分かった。このことから、はアセテートイオンに強力に結合できるばかりでなく、オキソアニオン種に対しての良好な選択性を発現したことから、それら化学種に対する発光型分子センサーとして有用であることが分かった。【0023】実施例4前記一般式(II)のビナフチル誘導型イソチオウロニウム蛍光プローブの合成。〔式(II)中、R、R’、A、A’及びXは前記したとおりである。〕化合物(II)は、イソチオウロニウム基を有するダイトピック蛍光レセプター(Ditopic Fluorescent Receptor)であり、α、ω−ジカルボキシレート類のレセプターとして機能し、これらの化合物を認識できる機能を持つ。【0024】A.2,2’−ジメトキシナフタレンの合成〔前記反応式IIの(2’)の化合物〕1,1’−ビ−2−ナフトール〔化合物(1’)〕(3000mg、10.5mmol),K2CO3(5792mg、41.9mmol)を乾燥アセトン(100mL)に溶かし、アルゴン雰囲気下で30分間加熱還流させた。次に反応系を冷却後、水冷撹拌しつつヨウ化メチル(2.6mL,41.9mmol)を滴下し、遮光下で再び加熱還流させた。反応の終了を薄層クロマトグラフィーで確認したら、水冷撹拌しつつ少量の水(30mL)を加えて反応を失活させ、溶媒を減圧留去した。クロロホルム(250mL)1%(v/v)塩酸(150mL)で抽出をおこない、有機相を1%(v/v)塩酸(150mL)で2回、飽和NaCl水溶液(100mL)で1回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、クロロホルム−ヘキサンで再沈を行い白色粉末状の目的物を2935mg(収率89%)得た。【0025】分析結果:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)、3.77(s,6H,OCH3),7.11(d,J=8.4Hz,2H,Ar-H),7.21(dt,J=1.5,6.8Hz,2H,Ar-H),7.32(dt,J=1.5,6.6Hz,2H,Ar-H),7.46(d,J=9.2Hz,2H,Ar-H),7.87(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),7.98(d,J=9.2Hz,2H,Ar-H)。【0026】B.2,2’−ジメトキシ−3,3’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレンの合成〔化合物(3’)〕2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(2000mg,6.36mmol),N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(8.2mL,54.7mmol)を乾燥エチルエーテル(75mL)に溶かし、0℃で撹拌した。そこにn−ブチルリチウムの1.57Mヘキサン溶液(34.8mL,54.7mmol)をゆっくり滴下した。0℃のまま2時間撹拌し、その後室温で17時間撹拌をおこなった。再び0℃にし、乾燥DMF(8.4mL,108mmol)を加え、そのまま2時間撹拌した。飽和NH4Cl水溶液(50mL)を加え反応を失活させ、溶媒を留去した。クロロホルム(200mL)−水(150mL)で抽出をおこない有機相を水(100mL)で3回、飽和NaCl水溶液(80mL)で1回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後カラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300,展開溶媒:1.5%(v/v)酢酸エチル−クロロホルム)にかけて、黄色オイル状の目的物1,816mgを得た。(収率77%)分析結果:1H NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm)3.50(s,6H,OCH3)、7.36−7.54(m,4H,Ar-H),7.18(d,J=8.2Hz,2H,Ar-H),8.07(d,2H,J=8.2Hz,Ar-H),8.62(s,2H,Ar-H),10.56(s,2H,CHO)。【0027】C.3.3’−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合成〔化合物(4’)〕アルゴン雰囲気下2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(260mg,0.70mmol)を乾燥エタノール(9.5mL)−乾燥THF(2mL)に溶かし、そこにNaBH4(93mg,2.46mmol)を加える。室温で4時間撹拌した後、混合物を減圧条件下で濃縮した。そこにクロロホルム(50mL)−1%(v/v)塩酸(50mL)を加え、30分間撹拌した。クロロホルム(150mL)−1%(v/v)塩酸(100mL)で抽出をおこない有機相を水(100mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。クロロホルム−ヘキサンで再沈し、白色粉末状の目的物を218mg(収率83%)得た。【0028】分析結果:1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ(ppm)3.27(s,6H,OCH3),4.77(s,4H,CH2),5.37(brs,2H,OH),6.94(d,J=8.5Hz,2H,Ar-H),7.23(t,J=7.5Hz,2H,Ar-H),7.40(t,J=7.4Hz,2H,Ar-H),7.98(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),8.11(s,2H,Ar-H)。【0029】D.3.3’−ビス(ブロモメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合成〔化合物(5’)〕アルゴン雰囲気下、3.3’−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(300mg,0.80mmol)を乾燥THF(6mL)に溶かし、0℃で撹拌した。そこに三臭化リン(0.19mL,2.00mmol)を5分間かけて滴下した。室温に戻しそのまま3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーで反応の終了を確認し、溶媒を留去した。クロロホルム(100mL)−水(100mL)で抽出をおこない、有機相を水(100mL)で3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300,展開溶媒1.5%(v/v)酢酸エチル−クロロホルム)にかけて、黄色オイル状の目的物355mgを得た。(収率89%)分析結果:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)3.35(s,6H,OCH3),4.73(d,J=9.6 Hz,2H,CH2),4.94(d,J=9,5Hz,2H,CH2),7.20(d,J=8.5Hz,2H,Ar-H),7.28(dt,J=1.1,8.5Hz,2H,Ar-H),7.42(dt,J=1.1,1.5Hz,2H,Ar-H),7.88(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),8.07(s,2H,Ar-H)。【0030】E.3.3’−ビス(アミノメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合成〔化合物(6’)〕アルゴン雰囲気下、3.3’−ビス(ブロモメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(351mg,0.70mmol)を 乾燥DMF(9mL)に溶かし、そこにカリウムフタルイミド(455mg,2.46mmol)を加える。90℃で5時間加熱撹拌した後、溶媒を留去してクロロホルム(150mL)−水(150mL)で抽出をおこない有機相を水(100mL)で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、クロロホルム−ヘキサンで再沈をおこない白色のN−置換フタルイミド誘導体397mgを得た。(収率95%)。得られたN−置換フタルイミド誘導体(700mg,1.11mmol)をTHF(10mL)/エタノール(20mL)に溶かし、そこにヒドラジン−水和物(0.6mL,12.4mmol)を加え加水分解をおこなった。反応終了後溶媒を留去し、クロロホルム(200mL)−水(150mL)で抽出をおこない、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して目的物350mgを得た。(収率80%)。【0031】分析結果:1H NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm)1.76(s,4H,NH2),3.31(s,6H,OCH3),4.075(d,J=14.8Hz,2H,CH2),4.18(d,J=14.8Hz,2H,CH2),7.11-7.22(m,4H,Ar-H),7.39(dt,J=1.4,6.8Hz,2H),7.88(d,J=8.0Hz,2H,Ar-H),7.94(s,2H,Ar-H).【0032】F.3,3’−ビス(N−メチルチオウレイドメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレンの合成〔化合物(7’)〕3,3’−ビス(アミノメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(201mg,0.54mmol)をクロロホルム(4mL)に溶かし、そこにCH3NCS(236mg,3.23mmol)のクロロホルム溶液(2mL)を加えた。一昼夜室温で撹拌し、反応終了後、クロロホルム(100mL)−水(80mL)で抽出をおこなった。有機相を水(100mL)で3回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-300,展開溶媒:3%メタノール−クロロホルム)にかける。クロロホルム−ヘキサンで再沈をおこない目的物165mgを得た。(収率59%)。【0033】分析結果:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)3.00(d,J=4.8Hz,6H,NH-CH3),3.27(s,6H,OCH3),4.76−5.12(m,4H,ArCH2),6.30−6.34(m,2H,NH),6.57(brs,2H,NH),7.12(d,J=8.5Hz,2H,Ar-H),7.23−7.28(m,2H,Ar-H),7,41(dt,J=1.1,7.0Hz,2H,Ar-H),7.88(d,J=8.1Hz,2H,Ar-H),8.00(s,2H,Ar-H);FAB MS,m/e 518〔M+〕。【0034】G.ビナフタレン−イソチオウロニウム誘導体(II)アルゴン気流下、3,3’−ビス(N−メチルチオウレイドメチル)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフタレン(150mg,0.29mmol)を乾燥エタノール(10mL)に溶かし、そこにベンジルブロミド(109mg,0.64mmol)の乾燥エタノール溶液(3mL)を加えた。30−40℃で4−5時間加熱撹拌し、溶媒を留去した後、逆相中圧カラムクロマトグラフィー(MERCK Silicagel 60 Silanaized (逆相シリカ),f=2cm,h=15cm,展開溶媒:50%(v/v)イソプロパノール-水)にかけ、目的のブロモ塩(130mg)を得た(収率52%)。このブロモ塩(73.5mg,0.085mmol)を乾燥エタノール(3mL)に溶かし、そこにAgPF6(43.2mg,0.17mmol)の乾燥エタノール溶液(1.5mL)を加えてカウンター交換をおこなった。逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MERCK Silicalgel 60 Silanized,展開溶媒:エタノール)でAgBrを除去し、溶媒を留去後目的物(80mg)を得た。(収率95%)、分析結果;FAB−MS、m/z845〔M+−2PF6-〕。【0035】実施例5ビナフタレン−イソチオウロニウム誘導体(II)のα、ω−ジカルボキシレート類の認識特性を、アジピン酸塩(△)、グルタル酸塩(○)、ピメリン酸塩(▲)及びこはく酸塩(●)(いずれもn−Bu4N塩)に対する認識性を観察することによって行った。その結果を図4に示す。該特性曲線からα、ω−ジカルボキシレート類の蛍光プローブとして有用であることが分かる。【0036】なお、一般式(II)における、AとA’がポリエーテル基またはAとA’とで環状ポリエーテル鎖を形成する基とで環状ポリエーテル鎖を形成(クラウンエーテル構造を形成)する基である化合物は、反応式(II)における出発原料としてAとA’がポリエーテル基またはAとA’とで環状ポリエーテル鎖を形成する基をであるものを用いて合成できる。【0037】【発明の効果】以上述べたように、本発明の前記一般式(I、II)で表されるナフタレン誘導型イソチオウロニウム化合物は、アニオン種、特に少なくともオキソアニオン種の認識蛍光センサーとして、また、一般式IIにおけるA,A’の基により導かれる構造によりアミノ酸認識蛍光センサーとして有用な化合物を提供するものであり、生体に於ける種々の成分検出、又は反応の解析に寄与するという優れた効果がもたらされる。【図面の簡単な説明】【図1】 化合物Iのアセトニトリル中での蛍光特性およびアセテートイオンを添加した場合の蛍光特性の変化【図2】 アセテートイオン結合部位近傍に位置する(●)Naphtyl−CH2、(○)benzyl−CH2−S、(△)NHCH3〔それぞれの(CH2)、(CH2)、(CH3)〕のプロトンのそれぞれのアセテートイオン〔(n−ブチル)4Nとの塩〕の添加に伴う高磁場シフトを示す【図3】 アニオン種、AcO−(●)、(n−BuO)2P(O)O−(○)、Cl−(△)に対する化合物Iの応答挙動【図4】 化合物(II)のα、ω−ジカルボキシレート類の認識特性〔アジピン酸塩(△)、グルタル酸塩(○)、ピメリン酸塩(▲)及びこはく酸塩(●)(いずれもn−Bu4N塩)に対する認識性〕 下記一般式(I、II)で表されるナフタレン誘導型イソチオウロニウム化合物。(式中、RはHまたは低級アルキル基を、R’はHまたはアルコキシ基いずれかを表し、XはBr又はPF6を表す。)(式中、R、R’およびXは請求項1に記載の式Iにおけるものと同じ意味を表す。A、A’は低級アルキル基を表わす。ビナフチル基はラセミ体もしくは光学活性体である。XはBr又はPF6を表す。) 請求項1に記載の一般式(I、II)で表されるナフタレン誘導型イソチオウロニウム化合物のアニオン種認識蛍光センサーとしての使用。 アニオン種が少なくとも1つのオキソアニオン種であることを特徴とする請求項2に記載の蛍光センサーとしての使用。