生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_シラノール基濃度の測定方法
出願番号:2000021404
年次:2008
IPC分類:G01N 21/35


特許情報キャッシュ

木全 良典 中川 修太 加藤 秀樹 JP 4036416 特許公報(B2) 20071109 2000021404 20000131 シラノール基濃度の測定方法 東亞合成株式会社 000003034 木全 良典 中川 修太 加藤 秀樹 20080123 G01N 21/35 20060101AFI20071227BHJP JPG01N21/35 Z G01N21/00-21/61 特開平11−108833(JP,A) 特開平9−318525(JP,A) JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY,1990年,VOL.503,p.69−91 1 2001208683 20010803 8 20020812 2005006885 20050418 高橋 泰史 山村 祥子 黒田 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、近赤外線を光源とする吸光光度法を利用して、シリカ微粒子中のシラノール基の濃度(mmol/g)を測定する方法に関する。【0002】【従来の技術】シラノール基を有するシリカの粉体は物質を吸・脱着する性質があるため、これを利用して乾燥剤、吸着剤、クロマトグラフのカラム充填剤など幅広い分野で利用されている材料である。シリカ粉体の性質はその粒子表面に存在するシラノール基の濃度に依存するため、シリカ粒子の品質管理のためには、そのシラノール基濃度を測定する必要がある。従来、シリカのシラノール基を定量する方法としては、その化学反応性を用いた方法が幾つか提案されている。例えばメチルリチウムをシラノール基と反応させ、発生したメタンを定量することによりシラノールの量を求める方法が知られている〔S.C.Antakli, J.Serpinet, Chromatographia, Vol.23, No.10, p.767-769 (1987) 〕。また、不活性な有機溶剤中にシリカ粒子を分散させ、この分散液に既知量のトリエトキシシランを添加し、それとシラノール基との反応後のトリエトキシシランの濃度をガスクロマトグラフィー等で測定することにより、シラノール基の量を求める方法もある。上記の方法では、シラノール基濃度が0.5mmol/g程度かそれ以上の場合であれば測定可能であるが、それを下回るような量に対しては測定が難しかった。【0003】一方、赤外吸収スペクトル法により3000〜3700cm-1におけるシラノール基の赤外線吸収を利用して、シラノール基濃度を測定することも原理的には可能である。しかしながら、上記波数領域における赤外線吸収は、水のヒドロキシ基による吸収と重なりなり表面吸着水の影響を受けるために、シリカ粒子表面に存在するシラノール基を正確に測定することはできない。これに対して近赤外吸収帯を利用すると、水の吸収は5100〜5200cm-1に、またシラノール基の吸収は4500cm-1および7200cm-1付近に観測され、それぞれは分離する。従来、近赤外法によるシラノール基の定量は、主にシリル化反応等においてシラノール基の相対量をモニターする手段として利用されていた。シラノール基の絶対量を測定した例としては、比表面積が100 〜300m2 /gのクロマトグラフ用シリカゲルを四塩化炭素中に分散させ、その分散液の近赤外線吸光度を測定し、別途作成した検量線により定量したという報告がある〔S.G.Bosh, J.W.Jorgenson, J.Chromatogr., Vol.503, No.1, p.69-91 (1990) 〕。この方法では、検量線の作成のために用いるシリカゲル試料について、そのシラノール基の絶対量をシリル化反応法または重水素置換法にて求める必要があり、この点でやはり低濃度のシラノール基の測定には制約があった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明においては、低濃度たとえば0.1mmol/g以下の濃度の測定が可能で、かつ操作の簡便なシラノール基濃度の測定方法の提供を目的とした。【0005】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シリカ微粒子の表面に存在するシラノール基の濃度を測定するために、粒径が20μm以下のシリカ微粒子の四塩化炭素分散液を試料として、透過法による近赤外線吸光光度法を適用し、得られた吸光度をオルガノシラノールの標準溶液で作成した検量線によりシラノール基濃度に変換することにより、低濃度のシラノール基の濃度を相対値ながら容易に数値化できることを見出した。検量線の作成にシラノール基濃度が既知なシリカ微粒子を使用せずに、オルガノシラノールの四塩化炭素溶液を使用する点で、得られるシラノール濃度は相対値であるものの、本測定法で得られるシラノール基の濃度数値はシリカ微粒子の物性から予測されるシラノール基濃度と良好な相関関係があることも見出した。【0006】すなわち、本発明は、近赤外線を光源とする吸光光度法により粒径20μm以下のシリカ微粒子中のシラノール基の濃度(mmol/g)を測定するに当たり、シリカ微粒子を四塩化炭素に分散させ、得られる分散液を試料として透過法により4385〜4800cm-1吸収帯の吸光度を測定し、得られたピーク面積/シリカ濃度の直線関係の勾配値をシラノール基濃度が既知のオルガノシラノールの四塩化炭素溶液のピーク面積/シラノール基濃度の直線関係の勾配値と対比させることによりシラノール基濃度に変換させることを特徴とするシリカ微粒子中のシラノール基濃度の測定方法である。 上記本発明によれば、粒径が20μm以下のシリカ微粒子中のシラノール基濃度を数値化でき、しかもその数値によりシリカ微粒子の物性を管理できるという優れた効果が奏される。【0007】【発明の実施の形態】本発明においては、粒径が20μm以下のシリカ微粒子の四塩化炭素分散液を試料として、透過法により近赤外線の吸光度を測定する。用いる近赤外線の波数としては、シラノール基の特性吸収帯である4385〜4800cm-1が好ましい。近赤外線の吸光度の測定で光路にセットする試料セルの長さ(一般に光路長またはセル長と称される)としては、2〜10mmが好ましい。本発明による測定の対象となるシリカ微粒子の粒径としては、20μm以下であり、その下限は0.1μmが好ましい。さらに好ましい粒径は1〜10μmである。シリカ微粒子の粒径が20μmを越えると、シリカ微粒子による近赤外線の屈折および散乱等が無視できなくなり、測定誤差すなわちシラノール基の吸光以外の作用により吸光度が変動を受け易い。【0008】シリカ微粒子の分散液を得るために用いる媒体は四塩化炭素である。四塩化炭素は、4200〜4800cm-1の波数領域を含む近赤外領域に吸収を持たない点で好ましく使用できる。さらに、四塩化炭素(以下有機溶剤ということがある)は、屈折率がシリカの屈折率(1.45)と近似している点で好ましい。使用する媒体とシリカの屈折率が大幅に異なると、試料セルに当てられた入射光がそのまま直進せず屈折するため、かかる屈折が起こる分だけ透過光が減少し、その結果測定のノイズが大きくなる。測定に供するシリカ微粒子の分散液中の好ましいシリカ濃度は、0.1〜1g/mlである。【0009】本発明においては、オルガノシラノールを基準物質として使用する。種々のオルガノシラノールを用いることができ、具体的にはトリメチルシラノール、トリエチルシラノール、ジメチルシランジオール、ジエチルシランジオール、1,1,2,2,- テトラメチル-1,2- ジヒドロキシジシロキサン、ジターシャリブチルシランジオール、トリフェニルシラノールまたはジフェニルシランジオール等が挙げられる。シラノール基は一般に反応性が高く水分の存在下にそれが自己縮合反応を起こすとその量が変動し、かかるシラノール基を有するオルガノシラノールは基準物質として使用し難い。従って、反応性の低い程、基準物質として好ましく使用することができ、その点で、トリメチルシラノール、1,1,2,2,- テトラメチル-1,2- ジヒドロキシジシロキサンまたはジターシャリブチルシランジオールが特に好ましい。【0010】本発明においては、試料分散液から得られた吸光度をシラノール基濃度が既知のオルガノシラノール(以下基準物質ということがある)の有機溶剤溶液の吸光度と対比させるが、かかる対比に際しては、基準物質で作成した検量線を利用することが好ましい。後記した具体例における検量線は、トリメチルシラノールの四塩化炭素溶液(シラノール基濃度; 0.0056mol/L 〜0.17mol/L )を使用し、以下の測定装置によって作成した。吸光度としては、4800〜4385cm-1の波数領域における吸光度を積算したものすなわち吸光度を縦軸として吸光スペクトルにおける吸収ピーク面積を採用したが、特定の波数における吸光度すなわちピーク高さを採用することもできる。使用装置:Nicolet 製MAGNA750型フーリエ変換赤外分光光度計[光源:タングステンハロゲンランプ、ビームスプリッタ:フッ化カルシウム、検出器:DTGS]測定用セル:5mm (液体用石英セル)測定波数領域:8000〜4000cm-1波数分解能:8cm -1積算回数:32回測定時の温度:25℃【0011】試料分散液から得られた吸光度を上記方法によって作成された検量線に適用することにより、試料分散液中のシラノール基濃度が求められる。シリカ微粒子が有機溶剤に溶解しておらず、固形物のシリカ微粒子により近赤外線の試料セル透過が多少とも影響を受けるとすれば、本方法で真値を得ることは理論上無理であるが、シリカ微粒子の物性の管理にとって十分な基準物質換算のシラノール基濃度を求めることができる。シリカ微粒子の表面に存在するシラノール基の量は、シリカ微粒子を加熱することにより減少させることもできるし、またシリカ微粒子は周囲の空気中の水分を吸って表面シラノール基の量が徐徐に増加する。そして、前述のとおり、そのシラノール基の濃度によりシリカ微粒子の実用物性が異なるのである。本発明の方法によってシリカ微粒子中のシラノール基の量が管理できれば、シリカ微粒子を使用する者にとって好都合である。以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。【0012】<検量線の作成方法>標準物質のオルガノシラノール化合物としてトリメチルシラノール〔信越化学工業(株)製〕を選択し、検量線用標準近赤外吸収スペクトルを測定した。得られた近赤外スペクトルを図1に示した。シラノール基の吸収帯4800〜4385cm-1 のピーク面積を計算してトリメチルシラノール、すなわちシラノール基のモル濃度に対してこれをプロットすると、図2の検量線が得られた。【0013】【化1】【0014】【化2】【0015】【実施例2】平均粒子径5μm、比表面積250m2/g(BET法)の粉末状シリカA(東亞合成株式会社製)0.205gを5mmのセルに採取し、四塩化炭素1.0mLを加えて攪拌してシリカの分散液を調製した(試料濃度;0.164g/mL)。積算回数を500 回にしたこと以外は<検量線の作成方法>と同様の分析条件とし、シリカA分散液の近赤外吸収スペクトルを測定した。濃度を0.364g/mL、0.423g/mL、0.439g/mL、0.559g/mLに調製したシリカA分散液についても同様にスペクトル測定を実施した。四塩化炭素中に種々の濃度で分散させた粉末状シリカAの近赤外スペクトルを図3に示した。シラノール基の吸収ピークが4700〜4300cm-1に観測され、これらのピーク面積を分散液の濃度Cwに対してプロットすると図4が得られた。濃度と面積は比例関係が成立しており、Beerの法則に従うことが確認できた。<検量線の作成方法>よりシラノール基のモル濃度Cm[mol/L]と近赤外スペクトルのピーク面積Sとの関係式は、S=69.90×Cm・・・・・・・<1>であり、本実施例から粉末状シリカAの分散重量濃度Cw[g/mL]と近赤外スペクトルのピーク面積Sとの関係式は、S=42.07×Cw・・・・・・・<2>であるので、粉末状シリカAのシラノール基濃度C[mmol/g]は、C=Cm/Cw=(S/69.90)/(S/42.07)=0.602[mmol/g]と求められた。【0016】【化3】【0017】【化4】【0018】【実施例3】実施例2の被検試料である粉末状シリカAを1000℃で1時間熱処理してシラノール基の脱水縮合を行った比表面積が1.9m2/gである試料(以下、粉末状シリカBと言う)を用い、濃度Cwを0.381g/mL、0.454g/mL、0.594g/mL、0.620g/mLに調製した四塩化炭素分散液について実施例2と同様にして近赤外スペクトルの測定を行った。Cwとシラノール基吸収ピークの面積は図5のように比例関係が確認され、粉末状シリカBのシラノール基濃度は<検量線の作成方法>に基づく検量線式<1>より0.012[mmol/g]と求められた。【0019】【化5】【0020】【発明の効果】本発明の方法によれば、粉末状シリカ中のシラノール基濃度を簡便な近赤外分光法で迅速に測定することができ、水分が共存しても極めて低濃度のシラノール量まで定量することできる。 近赤外線を光源とする吸光光度法により粒径が20μm以下のシリカ微粒子中のシラノール基の濃度(mmol/g)を測定するに当たり、該シリカ微粒子を複数の濃度で四塩化炭素に分散させ、得られる分散液を試料として透過法により4385〜4800cm-1吸収帯の吸光度を測定し、得られたピーク面積/シリカ分散液濃度の直線関係の勾配値をシラノール基濃度が既知のオルガノシラノールの四塩化炭素溶液のピーク面積/シラノール基濃度の直線関係の勾配値と対比させることによりシラノール基濃度に変換させることを特徴とするシリカ微粒子中のシラノール基濃度の測定方法。


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