生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_血中尿酸低下作用剤
出願番号:2000018522
年次:2010
IPC分類:A61K 31/105,A61P 19/06,A61P 43/00,C07C 323/65


特許情報キャッシュ

日比 孝吉 JP 4515581 特許公報(B2) 20100521 2000018522 20000127 血中尿酸低下作用剤 名古屋製酪株式会社 390033617 足立 勉 100082500 田中 敏博 100106035 日比 孝吉 20100804 A61K 31/105 20060101AFI20100715BHJP A61P 19/06 20060101ALI20100715BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100715BHJP C07C 323/65 20060101ALN20100715BHJP JPA61K31/105A61P19/06A61P43/00 111C07C323/65 A61K 31/00 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) 特開2001−302508(JP,A) 特開2000−327565(JP,A) 特開平8−12570(JP,A) 特開昭63−8328(JP,A) 1 2001206843 20010731 7 20061127 長部 喜幸 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、血中尿酸低下作用剤に関する。【0002】【従来の技術】近年、食生活の欧米化がもたらす疾病が社会問題となっている。食生活の欧米化が一因とされる疾病の一種に高尿酸血症状がある。高尿酸血症状は、血中のキサンチンが酸化酵素であるキサンチンオキシダーゼによって酸化され、尿酸が高濃度に生成してくることにより発症する。特に関節部分に尿酸の結晶が生成した場合に発症する痛風は激痛を伴うことが知られている。痛風の発作は突発的に起こり、場合によっては歩行も困難となる。また、血中尿酸値の上昇による結晶の析出は関節周囲組織以外でも心臓、腎臓などに重大な傷害を与えることがある。【0003】【発明が解決しようとする課題】上記のような事情から高尿酸血症の発症を抑制する物質が望まれており、さまざまな研究が行われているが、いまだ十分ではなかった。本発明はこうした要望に応えることを目的としている。【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明者は種々の物質について実験および検討を重ねた。その結果、アホエン[Ajoene](すなわち、(E,Z)-4,5,9-トリチアドデカ-1,6,11-トリエン-9-オキシド[(E,Z)-4,5,9-trithiadodeca-1,6,11-triene-9-oxide])に、血中尿酸濃度を低下させる作用があることを見いだし、本発明を完成するに至った。【0005】すなわち、本発明の血中尿酸低下作用剤は、アホエンを有効成分とすることに特徴がある。【0006】【発明の実施の形態】本発明の血中尿酸低下作用剤の有効成分としてのアホエンには、下記の化学式1に構造式を示すように、シス型(Z-アホエン)とトランス型(E-アホエン)との2つの幾何異性体が存在する。本発明で使用するアホエンは、シス体およびトランス体のアホエンのいずれであってもよく、当然両者の混合物であってもよい。【0007】【化1】【0008】アホエンは、ニンニク(Allium sativum L. )中の含硫化合物であるアリインがアリイナーゼ[EC4.4.1.4 ]の作用によってアリシンに変換され、そのアリシンが特定の条件下で分解・重合して生成されることが知られている。例えば、調理に当たって生ニンニクを刻んだり潰したりするなど、生ニンニクを傷つけただけでもアリイナーゼが活性化してアリインがアリシンに変換され、微量ながらアホエンが生成される。つまり、ニンニクに由来するアホエンは天然物質であるが、天然のニンニク中にはアホエンはほとんど存在していない。【0009】ニンニクに由来するアホエンを多量に生成する方法に関しては、油中にて生成蓄積させる方法(特許第2608252号公報)やアルコール等の有機溶媒中で酸性加温条件下で生成蓄積させる方法(特許第1925982号公報)が知られている。また、アホエンの分離・精製は一般的に物質精製に用いられる液体分配や液体クロマトグラフィーなどの手法により得ることができる。【0010】アホエンは、上記の通りの特定の条件下でニンニクより生成蓄積し、必要であれば、これを抽出・精製して用いることができるが、本発明において利用可能なアホエンは、必ずしもニンニク由来のものに限定される訳ではなく、例えば合成等によって得られたアホエンを用いてもよい。【0011】前述のように、例えば調理に当たって生ニンニクを刻んだり潰したりすると、アリイナーゼが活性化してアリインがアリシンに変換されるので、ニンニクを使用した料理中にはアホエンが含まれている。そして、このような料理を摂取したことが原因で何らかの障害が発生した例はない。また、発明者の知る限りではアホエンの副作用についての報告例もない。すなわち、アホエンは人体に悪影響を及ぼすおそれはないと考えられるから、長期に服用しても副作用が発生するおそれはない。【0012】本発明の血中尿酸低下作用剤は、アホエンを有効成分としたものであり、アホエンを単独の成分とするものであっても、適当な賦形剤、結合剤、希釈剤と混合して成るものであっても良く、さらに、必要に応じて他の薬剤と調合してあっても良い。また、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤などの形態で経口的に投与されるものであっても、注射剤などの形態で非経口的に投与されるものであってもよい。【0013】また、本発明の血中尿酸低下作用剤は、医薬品という形態にとらわれるものではなく、一般の食品類あるいは健康食品として調製することも可能である。食品とする場合は、アホエンを直接任意の食品に添加するか、アホエンに任意の食品添加物または香料等を添加して、粉末、顆粒、塊状の固形食品あるいは飲料食品として加工することができる。また、健康食品として調製する場合は、アホエンに任意の賦形剤、結合剤、希釈剤を混合して、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、飲料等の形態に加工してもよい。【0014】以上のように構成される本発明の血中尿酸低下作用剤は、アホエンを有効成分とするものであり、血中尿酸濃度を低下させることにより、痛風等、血中尿酸濃度が高いことを原因とする疾病を予防したりそうした疾病の症状を改善させることが期待できる。【0015】なお、アホエンが血中尿酸濃度を低下させる理由については現在究明中であるが、発明者は、アホエンがキサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸の生成を阻害しているか、若しくは尿酸の前駆物質であるキサンチンの尿中への排出を促進しているのではないかと推定している。【0016】【実施例】次に、実施例により発明の実施の形態をより具体的に説明する。[アホエンの製造]この実施例では、特許第2608252号公報に開示されている公知の方法に従ってアホエンを製造した。その概要は次の通りである。【0017】まず、生ニンニク(ホワイト6片)1kgに水300gを加え、フードプロセッサー(Cuisinart社製,DLC−X PULS型)を用いて粉砕し、ナイロンろ過布を使用して手で搾り800gの搾汁を得た。これに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)(日本油脂株式会社製,商品名:パナセート810)800gを加えてホモミキサー(特殊機化工業株式会社製,M型)によって混合し、その後、37℃にて24時間保持し、アホエン含有油脂を得た。【0018】このアホエン含有油脂から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてアホエンを分離・精製した。すなわち、アホエン含有油脂を遠心分離(5,000r.p.m.×10分)して沈殿物を除き、シリカゲル(Wakogel Q−63)カラム(50×3cm)によって各成分を分離した。その結果、400mgのアホエンを抽出することができた。この操作を何回か繰り返し、次の投与試験に必要なアホエンを得た。[アホエンの分析]こうして得られたアホエンを高速液体クロマトグラフィーで分析した。測定条件は下記表1の通りである。【0019】【表1】【0020】この定量分析の結果、純度98.9%以上のE-アホエン、純度99.2%以上のZ-アホエンが得られた。[マウスへのアホエン投与試験]上記の手順で得たアホエンをマウスに投与し、マウスの血清中尿酸値を測定した。[投与試験1](5mg/0.5ml E-アホエン)Slc:ICRマウス8週齢雄(日本SLC)に対する血清中尿酸値を測定した。方法は、マウスをE−アホエン投与群6匹と対照群6匹とに分け、それぞれ一晩自由摂餌させた後、投与群にはE−アホエンを5mg含んだ0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC・Na)の試料を、対照群にはアホエンを含まないCMC・Naの試料を、それぞれ0.5mlずつ経口投与した。4時間後、注射器で採血し、4℃にて2,000r.p.m.、10分間遠心分離することで血清を得た。その後、アホエン投与群と対照群の血清中の尿酸値を測定した。投与試験はそれぞれ異なるマウスを使用して3回繰り返し実施した。[投与試験2](O.5mg/0.5ml E-アホエン)Slc:ICRマウス8週齢雄に対する血清中尿酸値を測定した。方法は、マウスをE−アホエン投与群6匹と対照群6匹とに分け、それぞれ一晩自由摂餌させた後、投与群にはE−アホエンを0.5mg含んだ0.5%CMC・Naの試料を、対照群にはアホエンを含まないCMC・Naの試料を、それぞれ0.5mlずつ経口投与し、以下、投与試験1と同様に測定した。投与試験はそれぞれ異なるマウスを使用して3回繰り返し実施した。[投与試験3](5mg/0.5ml Z-アホエン)Slc:ICRマウス8週齢雄に対する血清中尿酸値を測定した。方法は、マウスをZ−アホエン投与群6匹と対照群6匹とに分け、それぞれ一晩自由摂餌させた後、投与群にはZ−アホエンを5mg含んだ0.5%CMC・Naの試料を、対照群にはアホエンを含まないCMC・Naの試料を、それぞれ0.5mlずつ経口投与し、以下、投与試験1と同様に測定した。投与試験はそれぞれ異なるマウスを使用して3回繰り返し実施した。[投与試験4](O.5mg/0.5ml Z-アホエン)Slc:ICRマウス8週齢雄に対する血清中尿酸値を測定した。方法は、マウスをZ−アホエン投与群6匹と対照群6匹とに分け、それぞれ一晩自由摂餌させた後、投与群にはZ−アホエンを0.5mg含んだ0.5%CMC・Naの試料を、対照群にはアホエンを含まないCMC・Naの試料を、それぞれ0.5mlずつ経口投与し、以下、投与試験1と同様に測定した。投与試験はそれぞれ異なるマウスを使用して3回繰り返し実施した。[血清中尿酸値の測定]血清中尿酸値は、和光純薬社製の測定用キット、ウリックアシッド−テストワコー(リンタングステン法)を使用し測定した。測定操作は、該測定用キットのマニュアルに従った。[尿酸値低下率]上記各投与群のマウス血清中の尿酸値の低下率は下記の数式1より算出した。【0021】【数1】低下率(%)=(1−投与群/対照群)×100血清中尿酸値の測定結果は下記の表2〜5に示すとおりである。【0022】【表2】【0023】【表3】【0024】【表4】【0025】【表5】【0026】上記の結果から明らかな通り、E-,Z-アホエンは、血清中尿酸値をきわめて良好に低下させた。【0027】【発明の効果】発明の実施の形態で説明したとおり、化合物E−,Z−アホエンを有効成分とする本発明の血中尿酸低下作用剤は、血中の尿酸値を低下させる。これにより高尿酸血症の予防、抑制または緩和が可能になる。しかも、化合物E−,Z−アホエンの毒性あるいは副作用の報告例はなく、アホエンは人体に無害と考えられるので、たとえ長期に服用しても副作用のおそれはない。 アホエンを有効成分とする血中尿酸低下作用剤。


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