タイトル: | 特許公報(B2)_防食剤 |
出願番号: | 2000015602 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C09K 15/24,C09K 15/28,C23F 11/00,H01L 21/304,C07C 39/10,C07C 275/00,H01L 21/3205,H01L 23/52 |
青木 秀充 小糸 達也 中別府 健一 JP 3869608 特許公報(B2) 20061020 2000015602 20000125 防食剤 NECエレクトロニクス株式会社 302062931 宮崎 昭夫 100123788 緒方 雅昭 100127454 石橋 政幸 100106138 青木 秀充 小糸 達也 中別府 健一 20070117 C09K 15/24 20060101AFI20061221BHJP C09K 15/28 20060101ALI20061221BHJP C23F 11/00 20060101ALI20061221BHJP H01L 21/304 20060101ALI20061221BHJP C07C 39/10 20060101ALN20061221BHJP C07C 275/00 20060101ALN20061221BHJP H01L 21/3205 20060101ALN20061221BHJP H01L 23/52 20060101ALN20061221BHJP JPC09K15/24C09K15/28C23F11/00 CH01L21/304 622DC07C39/10C07C275/00H01L21/88 M C09K 15/24, C09K 15/28, C23F 11/00 - 11/18, H01L 21/304, C07C 39/10, C07C275/00 -275/70, H01L 21/3205- 21/3215, H01L 23/52 特公昭56−005825(JP,B1) 8 2001207170 20010731 22 20001212 小川 知宏 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、銅等の腐食性金属の腐食を防止する防食剤に関する。【0002】【従来の技術】半導体装置の製造プロセスにおいては、半導体ウェーハ上に所定の形状にパターニングされた金属膜を形成し、配線や接続プラグを形成する。このような配線や接続プラグの形成工程では、金属膜の腐食を防止し、抵抗上昇等を防ぐための防食技術が重要となる。特に、近年では、素子の高速動作化を図る観点から配線や接続プラグの構成材料として銅が広く利用されるようになってきており、金属膜の防食に対する要請は従来以上に厳しくなってきている。銅はエレクトロマイグレーション耐性に優れ、かつ、低抵抗であるという優れた利点を有するものの、容易に酸化等が起こり腐食しやすい性質を有しているからである。【0003】金属膜の防食が重要となるプロセスの例として、レジスト剥離液による剥離処理工程が挙げられる。金属配線上にスルーホールを形成する場合、ドライエッチングによりホールを形成した後、レジスト残渣やエッチング残渣を剥離除去する工程が必要となるが、この際、剥離液による金属配線の腐食を防止することが重要な課題となる。このため、レジスト剥離液に防食剤を配合し、金属配線の腐食を防止することが広く行われている。このような防食剤として、従来、カテコール、ピロガロール、ヒドロキシ安息香酸等の芳香族ヒドロキシ化合物、酢酸、クエン酸、コハク酸等のカルボキシル基含有有機化合物、ベンゾトリアゾール(BTA)類が使用されていた(特開平8−334905号公報等)。【0004】また、配線金属として銅を用いる場合に行われる化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing :CMP)プロセスにおいては、腐食による配線金属の品質劣化だけでなく、プロセス上の理由からも金属の防食が重要となる。配線金属として銅を用いる場合、ドライエッチング法による微細加工が困難であるため、通常、ダマシン法とよばれるプロセスにより配線のパターニングが行われる(図3)。ダマシン法では、まず絶縁膜3中に配線溝を形成した後(図3(a))、全面にバリアメタル膜4を形成する。次いで配線溝を埋め込むように全面に銅膜5を成膜した後(図3(b))、化学的機械的研磨(以下「CMP」という)により配線溝以外の領域に形成された銅膜5を除去する。このようにして配線溝に銅が埋め込まれた形状の銅配線を形成される(図3(c)、(d))。ここで、CMP工程では腐食性のスラリーが用いられるため銅の腐食が進行しやすいことから、銅の防食が重要となる。くわえて、CMPプロセスにおいては、(i)ディッシングやエロージョンの発生、(ii)銅膜とバリアメタル膜との間のスリットの発生、(iii)CMPにより研磨された銅の研磨パッドやウェーハへの付着等、CMPプロセス特有の課題が生じるため、これらを防止する観点からも銅の防食を行うことが重要となる。以下、この点について説明する。【0005】ディッシングとは、図4のように、銅膜5の表面中央部が凹む現象をいう。これは、銅膜5の研磨速度がバリアメタル膜4の研磨速度に比べて格段に大きいことに起因して生じるものである。このようなディッシングが生じると配線の断面積が減少して抵抗が局所的に抵抗が増加する等、種々の問題を引き起こすこととなる。【0006】エロージョンとは、配線密集部でCMPが過剰に進行し、図3(d)のように表面が凹んでしまう現象をいう。エロージョンが発生すると、配線抵抗が上昇するとともに、基板表面の平坦性が悪化して配線の短絡等の要因となる。【0007】銅膜とバリアメタル膜との間のスリットとは、CMP中に一種の電池効果によって生じる、図4に示すようなスリットをいう。このようなスリットが生じると、配線抵抗が上昇するとともに、その後の成膜不良の要因となる。【0008】CMPにより研磨された銅のウェーハ等への付着とは、CMP中に発生した銅イオンが研磨パッドに蓄積し、ウェーハ面上に再付着し、ウェーハ面の平坦性を悪化させたり、電気的短絡を起こしたりすることをいう。この問題については、たとえば特開平10−116804号公報等に記載されている。【0009】以上のように、CMPにおいては、腐食による配線金属の品質劣化だけでなく、プロセス上の理由からも金属の防食が必要となる。従来のCMPでは、主としてディッシング防止および研磨パッドへの銅の付着防止の観点から防食剤が使用され、ベンゾトリアゾールやその誘導体が用いられていた(特開平8−83780号公報、特開平11−238709号公報)。【0010】以上、半導体装置の製造プロセスにおける防食について述べたが、他の技術分野においても腐食性金属を好適に防食できる防食剤について、種々の検討が行われてきた。たとえば特開平10−265979号公報には、銅線や銅撚り線などの銅材の腐食を防止する目的でBTA等を防食剤として用いる技術が開示されている。【0011】【発明が解決しようとする課題】以上のように、銅のような腐食性金属の防食剤としては、防食効果の比較的高いBTAやその誘導体が一般的に用いられている。ところが、BTAやその誘導体は生物により分解処理することが難しく、廃液処理が困難であるという課題を有していた。【0012】近年、環境負荷低減に対する要求が強まる中、工場の廃液に対しても、より高い安全性が求められるようになってきた。このような廃液は、通常、生物学的処理(以下、「生分解処理」という)により分解されるのであるが、上記したBTAやその誘導体は生分解処理することが難しい。【0013】このため、BTA類からなる防食剤を使用した場合、その廃液の処理に際しコストや手間のかかる生分解処理以外の処理方法に頼らざるを得ないのが現状であった。【0014】一方、前述したように、レジスト剥離液の分野においては芳香族ヒドロキシ化合物やカルボキシル基含有有機化合物等が防食剤として用いられる場合もあった。これらの防食剤は、一般に、BTA類よりも生分解性に優れる。しかし、これらは主としてアルミ−銅合金からなる配線材料の防食を目的とするものであったため、銅のような腐食性の強い金属に対する防食作用は充分ではなく、CMPのような過酷な条件下で使用する防食剤として利用することは困難であった。【0015】本発明はこのような事情を踏まえてなされたものであり、銅等の腐食しやすい金属の腐食を効果的に防止する高い防食性能と、生物による分解処理が可能な良好な分解性を兼ね備えた防食剤を提供することを目的とする。【0016】【課題を解決するための手段】これまで、防食剤の開発にあっては、金属に対する防食性能をいかに高めるかが重要な技術的課題とされてきたが、防食性能に加えて優れた生分解性を付与するためには、従来とは異なる観点からの検討が必要となる。本発明者らは、かかる観点から検討を進め、二種類の化合物を併用した防食剤を用いることにより、高度な防食性能と優れた生分解性を両立させ得ることを見出し、本発明を完成した。【0017】 本発明によれば、(a)尿素または尿素誘導体、および(b)ヒドロキシ芳香族類を必須成分とし、銅または銅を主成分とする銅合金の防食に用いられる防食剤が提供される。【0018】 また本発明によれば、上記防食剤を水または有機溶媒に溶解させてなる、銅または銅を主成分とする銅合金の防食に用いられる防食液が提供される。【0019】 また本発明によれば、銅膜または銅を主成分とする銅合金膜の露出面を有する半導体ウェーハの防食処理に用いられる防食処理液であって、上記防食剤を含むことを特徴とする防食処理液が提供される。【0020】 また本発明によれば、銅膜または銅を主成分とする銅合金膜の露出面を有する半導体ウェーハを保管するための保管液であって、上記防食剤を含むことを特徴とする保管液が提供される。【0021】 また本発明によれば、銅膜または銅を主成分とする銅合金膜の露出面を有する半導体ウェーハの表面を化学的機械的研磨するためのスラリーであって、上記防食剤を含むことを特徴とする化学的機械的研磨用スラリーが提供される。【0022】ヒドロキシ芳香族類は、従来からレジスト剥離液の分野においてアルミニウム合金膜の防食剤として用いられていたが、これを単独で用いても、銅のような腐食性の金属に対する充分な防食効果は得られない。しかし、このヒドロキシ芳香族類を尿素や尿素誘導体と組み合わせることにより、各化合物単独では得られない優れた防食作用が得られるのである。尿素や尿素誘導体は、たとえば化学的機械的研磨用スラリー(以下、「CMP用スラリー」という)において、酸化剤として尿素−過酸化水素を用いた例(特開平11−21546号公報)はあったものの、通常、防食剤として使用されることはなかった。しかし、ヒドロキシ芳香族類と尿素や尿素誘導体とを組み合わせることによって、従来の技術的常識を超えた顕著な防食効果が得られるのである。【0023】この理由は明らかではないが、以下のように推察される。ヒドロキシ芳香族類は、その水酸基等を介して銅等の金属膜の表面に吸着する。このとき、疎水性の芳香環が外側に位置する形態となるため、金属の表面が疎水性となり、銅の腐食が妨げられる。しかしながら、ヒドロキシ芳香族類のみでは金属表面全体を充分に緻密に覆うことは困難である。一方、尿素または尿素誘導体(以下、適宜「尿素系化合物」と称する)は、金属膜に対してキレート的作用を有する窒素原子を分子内に2つ有している上、比較的低分子であることから、金属表面に強力に吸着し、緻密な被覆層を形成するという性質を有している。その上、尿素系化合物は水に対する溶解度が高いため、水を含む防食液中の添加量を多くすることができる。したがって、ヒドロキシ芳香族類と尿素系化合物を併用した場合、両者は金属膜表面に対し補完的に作用し、金属表面に疎水性を付与するとともに緻密な被覆層を形成する。このため、従来にない優れた防食作用が得られるものと考えられる。【0024】さらに本発明の防食剤は生分解性がきわめて良好であり、廃液の処理も容易である。尿素系化合物は、自然界に天然物として存在する尿素等と類似する構造を有しており、生物によりきわめて容易に分解される。また、ヒドロキシ芳香族類も同様に良好な生分解性を示すことから、本発明に係る防食剤は、生物による分解処理が可能な良好な分解性を有する。【0025】【発明の実施の形態】本発明における(a)成分は、尿素または尿素誘導体である。(a)成分の具体例としては、尿素、1,1−ジメチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,1,3−トリメチル尿素、1,1,3,3−テトラメチル尿素、チオ尿素、1,1−ジメチルチオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、1,1,3−トリメチルチオ尿素、1,1,3,3−テトラメチルチオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素等が挙げられ、これらの1種類または2種類以上を選択することができる。【0026】本発明における(a)成分は、下記一般式(1)で表される化合物とすることが好ましい。【0027】【化2】【0028】(R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Aは酸素原子または硫黄原子を表す。)上記構造の尿素系化合物は、金属表面に強固で緻密な被覆層を形成するため特に良好な防食性能を示す上、天然に存在する尿素と類似した構造を有するため生分解性にも優れる。上記構造の化合物のうち、尿素は、低分子である上、水に対する溶解度がきわめて高いことから、生分解性が特に優れ、また、水溶液中の配合量を高くすることによって防食性能をさらに向上させることができることから、特に好ましく用いることができる。【0029】本発明における(b)成分は、ヒドロキシ芳香族類である。ヒドロキシ芳香族類の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、ジアミノフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、サリチルアルコール、p−ヒドロキシベンジルアルコール、o−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ガリック酸、タンニン酸等を挙げることができ、また、上記安息香酸類やガリック酸、タンニン酸のメチルエステル、エチルエステルを用いることもできる。これらの化合物を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。【0030】これらのうち、分子内に2以上のフェノール性ヒドロキシル基を有するベンゼン誘導体を選択することが好ましい。金属に対し吸着しやすい上、水に溶解しやすいので水溶液中の添加量を多くすることができ、良好な防食性能が得られるからである。分子内に2以上のフェノール性ヒドロキシル基を有するベンゼン誘導体の例としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ガリック酸、タンニン酸が挙げられ、これらのうち、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ガリック酸およびタンニン酸が好ましく、ガリック酸およびピロガロールが特に好ましい。防食性能および生分解性が特に優れるからである。なお、これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。【0031】防食剤中の(a)成分および(b)成分の混合比は任意に設定することができるが、たとえば、(a)成分100質量%に対する(b)成分の量を、好ましくは1〜200質量%、さらに好ましくは10〜100質量%とする。このような混合比にすることによって、(a)、(b)成分が相乗的に作用して得られる防食効果がより顕著に発揮される。【0032】本発明の防食剤は、銅または銅を主成分とする銅合金の防食に用いられた場合、特に効果的である。銅を主成分とする銅合金とは、銅を90質量%以上含有する合金であって、銀、金、白金、チタン、タングステン、アルミニウム等の各種の導電性金属を含む銅合金という。【0033】本発明に係る防食液は、上記(a)、(b)を必須成分とする防食剤を水または有機溶媒に溶解させてなるものである。上記防食剤は水に対する溶解性が高いことから、水、あるいは、水と親水性有機溶媒の混合液に溶解させた液とすることがより好ましい。このようにすれば(a)、(b)成分が相乗的に作用して得られる防食効果がより顕著に発揮される。本発明に係る防食液中の(a)、(b)成分の濃度は、用途・目的に応じて適宜設定されるが、たとえば以下のようにすることが好ましい。すなわち、(a)成分の配合量の下限は0.001質量%が好ましく、特に0.01質量%が好ましい。上限については特に制限がないが、水等に対する溶解度の関係上、たとえば60質量%程度とする。一方、(b)成分の配合量の上限は20質量%が好ましく、特に10質量%が好ましい。また下限は0.0001質量%が好ましく、特に0.001質量%が好ましい。このような配合量とすることにより、防食性能を一層良好にすることができる。【0034】本発明の防食剤の好ましい用途として、半導体ウェーハ上に形成された金属膜(特に銅膜)の防食が挙げられる。たとえば、CMP用スラリーやCMP後等に用いられる防食処理液およびウェーハ保管液、あるいは、レジスト等の剥離液へ適用すれば、本発明の効果はより顕著に発揮される。【0035】本発明は、金属膜、特に銅膜の露出面を有する半導体ウェーハのCMPプロセスへ適用した場合、一層効果的である。CMPプロセスは、金属腐食性のスラリーが用いられることから金属の腐食が進行しやすい上、(i)ディッシングやエロージョンの発生、(ii)金属膜とバリアメタル膜との間のスリットの発生、(iii)CMPにより研磨された金属の研磨パッドやウェーハへの付着等、CMPプロセス特有の課題を有している。本発明の防食剤によれば、金属膜表面に緻密な保護層が形成され、かつ、金属膜表面が適度な疎水性に保たれるため、上記課題を有効に解決することができる。以下、本発明に係る防食剤のCMPプロセスへの適用について説明する。【0036】CMPを利用した銅配線形成プロセスは図1に示す工程を経て行われる。まず、図1(a)に示すように、シリコンウェーハ(不図示)上にシリコン酸化膜1、シリコン窒化膜2およびシリコン酸化膜3をこの順で形成し、ついで、ドライエッチングにより、所定の形状にパターニングされた複数の配線溝を形成する。次に図1(b)に示すように、全面にバリアメタル膜4をスパッタリング法により堆積する。バリアメタル膜の材料としては、Ta、TaN、Ti、TiN、W、WN、WSiN等を用いることができ、膜厚は、通常、10〜100nm程度とする。つづいてバリアメタル膜4上に銅膜5を形成する(図1(b))。銅膜5の形成は、めっき法、CVD法、スパッタリング法等を用いることができる。【0037】次に銅膜5の表面をCMP法により研磨する。CMPは、通常、酸化剤と研磨砥粒を主成分とするスラリーを用い、酸化剤の化学的作用で銅表面をエッチングするとともに、その酸化表面層を研磨砥粒により機械的に除去することにより行われる。このCMP用スラリーに本発明の防食剤を含有させることにより、CMP中の銅の腐食を防止し、また、銅の研磨速度を抑制することによりディッシングの防止を図ることができる。また、CMPプロセスでは大量の廃液が発生するが、本発明の防食剤は生分解性が良好であるため、廃液処理も容易となる。【0038】CMPは、最終的に図1(d)の如くバリアメタル膜4が完全に除去されるまで行うが、この工程において、単一のCMP用スラリーを用いても良いが、デイッシングやエロージョンを防止する観点から2種類以上のスラリーを用いてもよい。たとえば金属研磨用および酸化膜・バリアメタル膜研磨用の2種類のスラリーを用いることができる。CMP用スラリーに本発明の防食剤を適用する場合、どの段階のスラリーに添加してもよいが、特に図1(c)のようにバリアメタル膜露出以降のスラリーに添加すると効果的である。このようにすれば、配線部を構成する銅膜5の腐食防止効果、および、ディッシング・エロージョンの抑制効果が一層顕著となるからである。【0039】CMPはバリアメタル膜4が除去されてトルクが変化した時点で終了し(図1(d))、その後、必要に応じて後洗浄を行い、さらに純水を主成分とするリンス液でリンス処理して銅配線形成プロセスを終了する。【0040】CMPは、例えば図2に示すような化学的機械的研磨装置を用いて行うことができる。絶縁膜や銅系金属膜等が成膜されたウェーハ21は、スピンドルのウェーハキャリア22に設置される。このウェーハ21の表面を、回転プレート(定盤)23上に貼り付けられた研磨パッド24に接触させ、CMP用スラリー供給口25からCMP用スラリーを研磨パッド24表面に供給しながら、ウェーハ21と研磨パッド24の両方を回転させて研磨する。必要により、パッドコンディショナー26を研磨パッド24の表面に接触させて研磨パッド表面のコンディショニングを行う。なお、CMP用スラリーの供給は、回転プレート23側から研磨パッド24表面へ供給する構成とすることも可能である。【0041】本発明は、CMP後の後処理においても適用することができる。CMP後の後処理の一例を図5に示す。CMP後、いったん保管液中にウェーハを保管した後、研磨粒子等を除去するためのCMP後洗浄を行う。その後、必要に応じ防食処理を用いて防食処理を行い、最後に純水を主成分とするリンス液でリンスする。ここで、上記保管液や防食処理液、リンス液に、本発明に係る防食剤を添加すれば、廃液処理の困難をもたらすことなくウェーハに形成された銅膜を好適に防食することができる。【0042】CMPとCMP後処理がインライン化されている場合は、図6のようなプロセスとなる。この場合は、図中の防食処理において本発明に係る防食剤を用いることが有効となる。【0043】以下、本発明に係る化学的機械的研磨用スラリー、保管液および防食液の好ましい実施形態について説明する。【0044】本発明の化学的機械的研磨用スラリーは、前記した本発明に係る防食剤を含むものである。防食剤の含有量は、充分な防食効果を得る点から、スラリー全体量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、適度な研磨速度に調整する点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。含有量が多すぎると、防食効果が大きくなりすぎて銅の研磨速度が低下しすぎ、CMPに時間がかかる場合がある。【0045】本発明の化学的機械的研磨用スラリーは、上記防食剤のほかに研磨材、酸化剤及び水を含む構成とすることが好ましく、さらに、有機酸等を適宜配合させることもできる。【0046】研磨材としては、α−アルミナやθアルミナ、δ−アルミナ等のアルミナ、ヒュームドシリカやコロイダルシリカ等のシリカ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、セリア、及びこれらの金属酸化物研磨砥粒からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。【0047】CMP用スラリー中の研磨材の含有量は研磨能率や研磨精度等を考慮して適宜設定され、スラリー組成物全量に対し、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%の範囲とする。【0048】酸化剤としては、導電性金属膜の種類や研磨精度、研磨能率を考慮して適宜、公知の水溶性の酸化剤から選択して用いることができる。例えば、重金属イオンのコンタミネーションを起こさないものとして、H2O2、Na2O2、Ba2O2、(C6H5C)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物を挙げることができる。なかでも、金属成分を含有せず、有害な複生成物を発生しない過酸化水素(H2O2)が好ましい。酸化剤量は、十分な添加効果を得る点から、CMP用スラリー全量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。ディッシングの抑制や適度な研磨速度に調整する点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。なお、過酸化水素のように比較的経時的に劣化しやすい酸化剤を用いる場合は、所定の濃度の酸化剤含有溶液と、研磨剤等を含む液を別個に調整しておき、使用直前に両者を混合してもよい。【0049】有機酸は、上記酸化剤の酸化を促進するとともに安定した研磨を行うために添加される。有機酸はプロトン供与剤としての機能を有するものが用いられ、カルボン酸やアミノ酸が好適に用いられる。【0050】カルボン酸の具体例としては、クエン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、乳酸、コハク酸,ニコチン酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタル酸、クエン酸、マレイン酸、及びこれらの塩などが挙げられる。【0051】アミノ酸の具体例としては、例えば、L-グルタミン酸、D-グルタミン酸、L-グルタミン酸一塩酸塩、L-グルタミン酸ナトリウム一水和物、L-グルタミン、グルタチオン、グリシルグリシン、DL-アラニン、L-アラニン、β-アラニン、D-アラニン、γ-アラニン、γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸、L-アルギニン一塩酸塩、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸一水和物、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸カルシウム三水塩、D-アスパラギン酸、L-チトルリン、L-トリプトファン、L-スレオニン、L-アルギニン、グリシン、L-シスチン、L-システイン、L-システイン塩酸塩一水和物、L-オキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン一塩酸塩、DL-メチオニン、L-メチオニン、L-オルチニン塩酸塩、L-フェニルアラニン、D-フェニルグリシン、L-プロリン、L-セリン、L-チロシン、L-バリンなどが挙げられる。【0052】有機酸の含有量は、プロトン供与剤として十分な添加効果を得る点から、CMP用スラリー全体量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、ディッシングの抑制や適度な研磨速度に調整する点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。【0053】本発明のCMP用スラリーには、その特性を損なわない範囲内で、広く一般にCMP用スラリーに添加されている分散剤、緩衝剤、粘度調整剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。【0054】本発明のCMP用スラリーは、一般的な遊離砥粒研磨スラリー組成物の製造方法を用いて製造することができる。すなわち、分散媒に研磨材粒子を適量混合する。必要であるならば保護剤を適量混合する。この状態では、研磨材粒子表面は空気が強く吸着しているため、ぬれ性が悪く凝集状態で存在している。そこで、凝集した研磨材粒子を一次粒子の状態にするために粒子の分散を実施する。分散工程では一般的な分散方法および分散装置を使用することができる。具体的には、例えば超音波分散機、各種のビーズミル分散機、ニーダー、ボールミルなどを用いて公知の方法で実施できる。【0055】本発明の保管液は、本発明に係る防食剤を水に溶解させた水溶液とすることが好ましい。保管液全体に対する防食剤濃度の下限は、好ましくは0.001質量%、より好ましくは0.01質量%以上とする。防食剤濃度が低すぎると充分な防食効果が得られない場合がある。なお、防食剤濃度の上限は特にないが、たとえば30質量%以下でも充分な防食効果が得られる。半導体ウェーハを保管液に保管する際の環境については特に制限がない。たとえばCMP後の保管においては、CMP装置の設置されている環境と同一の環境で保管するのが一般的である。なお、本発明に係る保管液は、CMP後の保管だけでなく種々の工程において用いることができる。【0056】本発明の防食処理液は、上記保管液と同様、本発明に係る防食剤を水に溶解させた水溶液とすることが好ましい。この水溶液に適宜、他の添加剤や水溶性有機溶媒等を配合してもよい。保管液全体に対する防食剤濃度の下限は、好ましくは0.001質量%、より好ましくは0.01質量%以上とする。防食剤濃度が低すぎると充分な防食効果が得られない場合がある。なお、防食剤濃度の上限は特にないが、たとえば30質量%以下でも充分な防食効果が得られる。本発明の防食処理液は、図5中の防食処理工程に適用するほか、純水リンス工程で適用することもできる。この場合の防食処理液は、純水に本発明の防食剤を上記した濃度範囲で溶解させた構成とすることが好ましい。なお、本発明の防食処理液は、CMP後の防食処理だけでなく種々の工程において用いることができる。【0057】上記した化学的機械的研磨用スラリー、防食処理液および保管液は、金属膜露出面を有する半導体ウェーハの処理に用いられるものであるが、金属膜が銅膜または銅を主成分とする銅合金膜である場合、本発明の効果はより顕著に発揮される。【0058】本発明の保管液および防食処理液には、適宜、添加剤や有機溶媒等を配合してもよい。たとえば、pH調製のため酸や塩基と加えてもよく、防食剤の溶解性を良好にしたり防食性能をさらに向上させる目的で、水や他の配合成分と混和性のある有機溶媒を用いることができる。【0059】上記水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール類およびその誘導体があげられる。これらは単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。【0060】本発明に係る防食剤は、レジスト等の剥離液へ適用することもできる。この場合、剥離成分として、ヒドロキシルアミン類、アルカノールアミン、またはフッ化水素酸塩等を含み、さらに水を含む構成の剥離液とすることが好ましい。【0061】ヒドロキシルアミン類としては、具体的にはヒドロキシルアミン(NH2OH)、N−メチルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等が例示される。【0062】アルカノールアミンとしては、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルアミノエタノール、N−メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が例示される。このうち、モノエタノールアミン、N−メチルアミノエタノールが剥離性能に優れ、特に好ましい。【0063】剥離液中の剥離成分の上限は70質量%が好ましく、特に60質量%が好ましい。また下限は5質量%が好ましく、特に10質量%が好ましい。このような配合量とすることにより、防食性能を良好に維持しつつ、レジスト膜やエッチング残渣を一層効率よく除去することができる。【0064】剥離液中の水の配合量の上限は40質量%が好ましく、特に30質量%が好ましい。また下限は2質量%が好ましく、特に5質量%が好ましい。上記のような配合量とすることにより、剥離成分であるヒドロキシルアミン類またはアルカノールアミンの機能が充分に発揮され、剥離性能および防食性能が一層良好となる。【0065】本発明の防食剤を用いた剥離液には、水溶性有機溶媒を含有しても良い。水溶性有機溶媒としては前述したのと同様のものを用いることができる。水溶性有機溶媒の配合量の上限は、80質量%が好ましく、特に70質量%が好ましい。また下限は5質量%が好ましく、特に10質量%が好ましい。このような配合量とすることにより、剥離性能と防食性能のバランスが一層良好となる。【0066】上記剥離液は、半導体基板上の不要物を被剥離物とするものである。半導体基板上の不要物とは、半導体装置の製造プロセス中に生じた種々の不要物をいい、レジスト膜、ドライエッチング後のエッチング残渣のほか、化学的に変質したレジスト膜等も含む。特に、被剥離物が、金属膜露出面を含む半導体基板上のレジスト膜および/またはエッチング残渣である場合、より効果的である。さらに、上記金属膜が銅膜である場合、本発明の防食剤の防食作用がより効果的に発揮される。【0067】上記剥離液は、種々のレジストの剥離に使用することができる。たとえば、(i)ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト、(ii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト、(iii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト、(iV)光により酸を発生する化合物、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト等に対して使用することができる。【0068】次に、本発明の防食剤を用いた剥離剤組成物の適用例として、シングルダマシンプロセスにより銅配線上の層間接続プラグを形成する例を示す。【0069】まず図9(a)のように、トランジスタ等の素子を形成した半導体基板(不図示)上にシリコン酸化膜1、シリコン窒化膜2、およびシリコン酸化膜3を成膜した後、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing :CMP)を利用した公知のダマシンプロセスを用いてバリアメタル膜4および銅膜5からなる銅配線を形成し、さらにその上に膜厚50〜100nm程度のシリコン窒化膜6および膜厚600〜1000nm程度のシリコン酸化膜7を形成する。銅膜5の膜厚は任意に選択されるが、隣接配線間の寄生容量を低減する観点からは膜厚をたとえば350nm以下とすることが好ましい。銅配線の膜厚を薄くした場合、銅配線層全体に対する腐食層の厚みが相対的に大きくなり、銅表面の腐食による配線抵抗の増大が特に問題となるが、本発明の防食剤を用いた剥離剤組成物を用いれば、かかる問題を解消しつつ膜厚を薄くすることが可能となる。なお、本実施形態では、シリコン窒化膜6の膜厚を50〜100nm程度としているが、これより厚くしてエッチング阻止膜としての機能を高めてもよい。【0070】次いでシリコン酸化膜7の上に、所定の形状にパターニングしたレジスト膜8を設ける(図9(b))。【0071】次にレジスト膜8をマスクとしてシリコン窒化膜6が露出するまでシリコン酸化膜7をドライエッチングし、スルーホール10を形成する(図9(c))。このとき、スルーホール10の内壁にエッチング残渣11が付着する。スルーホールの開口径はたとえば0.2μm程度とする。エッチングガスとしては、シリコン窒化膜よりもシリコン酸化膜をより速くエッチングできるガスを用いることが好ましい。【0072】ここで、シリコン窒化膜6は銅の拡散防止機能のほか、エッチング阻止膜としての機能も有しているのであるが、図9(c)に示すように、シリコン窒化膜6上で制御性良くドライエッチングを停止できないことがある。これは以下の理由による。本実施形態のようなプロセスでは、一般に、半導体ウェーハ上に種々の開口径のスルーホールが形成される。ところが、小さい開口径のホールではマイクロローディング効果によりエッチングの進行が遅くなる。このため、スルーホール形成のためのエッチングに一定程度オーバーエッチング時間を設けることが必要となり、これにより、一部のスルーホールにおいてシリコン窒化膜6がエッチングを受け、銅膜5の一部が露出することとなる。また、たとえば銅膜5の上面にディッシングとよばれる凹部が生じると、シリコン窒化膜6の薄膜部が発生し、この箇所でシリコン窒化膜6がエッチングされて銅膜5の一部が露出することもある。図9(a)に示す工程でシリコン窒化膜6を厚く形成しておけば銅膜5の露出を防止することもできるが、この場合、隣接する銅配線の配線間容量が大きくなり、半導体素子の高速動作が阻害されるという弊害が生じやすい。【0073】エッチング終了後、酸素プラズマアッシングによりレジスト膜8の一部を除去した後、本発明の防食剤を含む剥離剤組成物を用いて剥離処理を行う。この剥離処理により、アッシングで除去しきれなかったレジスト膜やエッチング残渣11が除去される。前述したように、エッチング後、少なくとも一部のスルーホールにおいて銅膜5が露出していることから、剥離剤組成物には銅に対する防食性能が必要となるが、本発明の防食剤を用いた剥離剤組成物を用いることにより、銅膜5に損傷を与えることなくレジスト膜およびエッチング残渣11を効果的に除去することができる。剥離処理を終了した状態を図10(a)に示す。【0074】その後、上記したエッチングとエッチングガスを変え、シリコン窒化膜6のエッチングを行う。このとき、スルーホール10の内壁にエッチング残渣12が付着する(図10(b))。このエッチング残渣12を剥離除去するため、上記した剥離剤組成物を用いて、再度、剥離処理を行う。この剥離処理を行う段階では、スルーホール10底部に銅膜5が露出しているが、本発明の防食剤を含む剥離剤組成物を用いることにより、銅膜5に損傷を与えることなくエッチング残渣12を除去できる(図10(c))。【0075】その後、スルーホール内部に、TiおよびTiNがこの順で積層したバリアメタル膜14およびタングステン膜15を成膜し、次いでCMPによる平坦化を行うことにより層間接続プラグを形成することができる(図10(d))。【0076】【実施例】実施例1本実施例は、本発明に係る防食剤をCMP後の防食処理に適用した例である。以下、図7および図8を参照して本実施例で行ったプロセスの概要を説明する。【0077】はじめにCu−CMP工程70を行った(図7)。この工程に対応する状態を図8(a)、(b)に示す。まず、図8(a)に示すように、シリコンウェーハ上にシリコン窒化膜80およびシリコン酸化膜82をこの順で形成し、ついで、ドライエッチングにより、所定の形状にパターニングされた複数の配線溝を形成した。次に全面にTaNからなるバリアメタル膜84をスパッタリング法により堆積した後、シードCu15およびメッキCu16を形成した。つづいてウェーハ表面をCMP法により研磨し、図8(b)のように銅配線を形成した。【0078】次いで半導体ウェーハ表面に付着した研磨砥粒、研磨屑等の粒子、金属、スラリーを除去するため、以下の工程を行った。まずスクラブ洗浄工程72を行った。すなわち、回転するブラシに電解イオン水よりなる洗浄液をかけながらブラシを移動させて粒子汚染を除去した。次いでスピン洗浄工程74を行った。この工程では、半導体ウェーハを回転させながらシュウ酸の0.03wt-%水溶液よりなる洗浄液を10秒間吹きかけ、金属汚染すなわち表面のCuOを除去し、純水でリンスした。【0079】次に防食処理工程75を行った。この工程は通常のCMPの後処理では行われないものである。本実施例では、この工程で本発明の防食剤を含む防食処理液を用いる。用いた防食処理液は、以下の組成を有する。尿素 0.05質量%ガリック酸 0.01質量%水 残部この防食液を、半導体ウェーハを回転させながら1リットル/分の流量で10秒間、ウェーハ表面に吹きかけ、Cu膜の防食を行った。【0080】その後、スピンリンス・乾燥工程76で、純水で15秒間リンスを行った後、乾燥させた。【0081】上記のようにして得られた半導体ウェーハを、所定の日数、大気下に放置した後、成膜工程78(図7)で、図8(c)のようにシリコン窒化膜88を成膜し、さらにその上にシリコン酸化膜89を成膜した。シリコン窒化膜88は、CVD法により400℃で10〜15秒間処理することにより成膜を行い、膜厚は50nmとした。シリコン酸化膜89はプラズマCVD法により400℃で70秒間処理することにより成膜を行い、膜厚は1.1μmとした。【0082】以上のようにして得られたウェーハを試料1とする。【0083】また、下記表のように防食処理液を変更し、これ以外は上記と同様にして試料2、3を作製した。【0084】【表1】【0085】上記のように作製した試料1〜3について、Cu表面の変質の程度を評価するためCu/シリコン窒化膜界面の密着性評価を行った。評価は、シリコン窒化膜に1mmピッチで碁盤目状にラインを入れた後、シリコン窒化膜上に粘着テープを貼り付けてこれを引き剥がし、100個の碁盤目中の剥がれた碁盤目の数を計数することにより行った。剥がれが多く界面密着性が劣るものは、Cu表面の変質(酸化等)が進んでいると考えられる。この評価は、(i)洗浄直後にシリコン窒化膜を成膜したもの、(ii)洗浄後、大気下で1日放置し、次いでシリコン窒化膜を成膜したもの、(iii)洗浄後、大気下で3日放置し、次いでシリコン窒化膜を成膜したものについて行った。評価結果を表2に示す。【0086】【表2】【0087】上記結果から、本発明に係る防食剤を用いることにより、Cu表面の腐食が効果的に抑制され、Cu/シリコン窒化膜界面の密着性が向上することが確認された。【0088】実施例2本実施例は、シリコンウェーハ上に銅配線を形成するプロセスに本発明を適用した例である。ウェーハの処理手順について図1を参照して説明する。【0089】まず図1(a)に示すように、シリコンウェーハ(不図示)上にシリコン酸化膜1(膜厚600nm)、シリコン窒化膜2(膜厚100nm)およびシリコン酸化膜3(膜厚1000nm)をこの順で形成し、ついで、ドライエッチングにより、所定の形状にパターニングされた複数の配線溝を形成した。次に図1(b)に示すように、全面にTaNからなるバリアメタル膜4をスパッタリング法により堆積した。膜厚は20nmとした。つづいてこの上に、銅めっきを成長させるための銅からなるシード金属膜をスパッタリング法により堆積し、つづいて電解めっき法により銅膜5を形成した。ここで銅めっき膜5の膜厚は平坦部で900nm程度とした(図1(b))。300℃で30分程度、アニールを行った後、図2に示したものと同様の構成の研磨装置によりCMPを行った。CMPスラリーとしては、防食剤を含まない市販の金属研磨用スラリーを用いた。【0090】一定時間研磨を続けるとCMPの回転トルクが上昇した。このとき、基板の断面構造は図1(c)に示すように、絶縁膜平坦部上の銅めっき膜5が除去されバリアメタル膜4が露出した状態となっている。バリアメタル膜4を構成するTaNは、銅めっき膜5を構成する銅よりも硬くCMPによる研磨がされにくいため回転トルクが上昇するのである。回転トルクが上昇した時点で、CMP用スラリーを、ガリック酸0.1質量%、尿素0.4質量%を含み、研磨材としてシリカ、酸化剤として過酸化水素、分散媒として水を含むものに切り替え、さらにCMPを続けた。【0091】バリアメタル膜4が除去されてトルクが変化した時点でCMPを終了した。CMP終了後、後洗浄を行い、次いで純水でリンス処理し、評価用のウェーハを得た。得られたウェーハは、ディッシングやエロージョンの発生が少なく、スリットの発生も無いことが確認された。【0092】実施例3OECD法(「環境微生物実験法(須藤隆一編 講談社サイエンティフィック1988年)」第230頁〜第232頁に記載)に準拠した方法により、表3に示す供試物質の生分解性を評価した。すなわち、所定の植種を含む培養液中に供試物質を添加したものを25℃で保存し、初日、7日、14日、21日、28日後の分解率を測定した。28日後の分解率を以下の評価基準にしたがって評価した。◎…分解率が80%以上○…分解率が30%以上80%未満△…分解率が5%以上30%未満×…分解率が5%未満評価結果を表3に示す。【0093】【表3】【0094】実施例4本実施例は、銅配線上のスルーホール形成プロセスに、本発明に係る防食剤を含む剥離剤組成物を適用した例である。【0095】図1〜図2(c)に示したものと同様のプロセスを実施して試料を作成した。以下、試料の作成手順について説明する。【0096】まずシリコンウェーハ上に銅配線を形成した後、その上に膜厚90nmのシリコン窒化膜および膜厚900nmのシリコン酸化膜を成膜した。成膜は、いずれもプラズマCVD法によって行った。次にポジ型レジスト膜をスピンナー塗布しレジスト膜を形成した。レジスト膜材料としては、KrF用ポジ型レジスト材料であるPEX4(東京応化工業株式会社製)を用いた。このレジスト膜をマスクパターンを介して露光し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理しレジストパターンを得た。【0097】このレジスト膜をマスクとしてシリコン窒化膜が露出するまでシリコン酸化膜をドライエッチングし、開口径0.2μmのスルーホールを形成した。エッチングガスとしては、フルオロカーボン系のガスを用いた。エッチング終了後、酸素プラズマアッシングによりレジスト膜の一部を除去した後、表4中のNO.1に示す剥離剤組成物を用いて剥離処理を行った。【0098】次に、エッチングガスを変え、シリコン窒化膜のエッチングを行い、スルーホール底部に銅配線を露出させた。このエッチングにより生じたエッチング残渣を除去するため、前記した剥離処理で用いたものと同じ剥離剤組成物(表4中のNO.1)を用い、再度、剥離処理を行った。【0099】同様の処理を、表4中のNO.2〜8の剥離剤組成物を用いて行い、合計で8種類の試料を作成した。【0100】以上のように処理を行ったウェーハを純水でリンス処理した後、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察を行い、▲1▼レジスト膜およびエッチング残渣の剥離性および▲2▼銅膜に対する防食性を評価した。評価の基準は以下のとおりである。【0101】(剥離性)レジスト膜およびエッチング残渣の残存状況を観察し、以下の3段階で評価した。○…残存がほとんど認められなかった。△…残存量少。×…残存量多。【0102】(防食性)銅膜表面の腐食状況を観察し、以下の4段階で評価した。◎…銅膜の腐食がまったく認められなかった。○…銅膜の腐食がわずかに認められた。△…銅膜の腐食が認められた。×…銅膜の腐食が顕著であった。【0103】【表4】【0104】*1 水の配合量で「残部」とあるのは、100質量%から、防食剤および剥離剤の配合量を差し引いた残りをいう。【0105】*2 NMEA N−メチルエタノールアミンMEA モノエタノールアミン以上のように、本発明の防食剤を用いた剥離剤組成物は優れた剥離性能および防食性能が有していることがわかる。なお、本実施例はシングルダマシンプロセスに本発明を適用したものであるが、いわゆるデュアルダマシンプロセスにも本発明を適用できる。【0106】実施例5基板全面に銅膜が形成されたシリコンウェーハを、80℃で10分間、所定の剥離液に浸漬した。浸漬前後の銅膜の膜厚から銅のエッチングレートを測定した。結果を図11〜図12に示す。【0107】図11の剥離液は、以下の組成のものを用いた。アミン 60質量%ガリック酸 5質量%尿素 0,5,15,25,35質量%水 残部また図12の剥離液は、以下の組成のものを用いた。なお、ガリック酸添加量の相違によるpH変動の影響を排除するため、アンモニア水を添加し、pHを11にコントロールした。アミン 60質量%ガリック酸 0,1,4,7,10質量%尿素 10質量%水 残部アミンとしては、NMEA(N−メチルエタノールアミン)、またはMEA(モノエタノールアミン)を用いた。【0108】図の縦軸の示すエッチングレートが4nm/minを超えると銅膜の腐食が顕著となる。図に示す結果から、尿素およびガリック酸を併用することによって優れた防食性が発現することがわかる。【0109】【発明の効果】以上説明したように、本発明の防食剤は特定成分を含んでなるため、銅等の腐食しやすい金属の腐食を効果的に防止できる上、生分解処理が可能であり廃液の処理も容易である。このため、腐食性金属の防食に好適に用いることができ、特に、CMPやCMP後の処理、あるいはレジスト剥離プロセス等、金属配線の設けられた半導体装置の製造プロセスに好適に適用できる。【図面の簡単な説明】【図1】ダマシン法による銅配線の形成プロセスを説明するための工程断面図である。【図2】化学的機械的研磨装置の概略構成図である。【図3】ダマシン法による銅配線の形成プロセスを説明するための工程断面図である。【図4】ディッシングおよびスリットの発生した銅配線の断面を示す図である。【図5】CMP後の工程を説明するための図である。【図6】CMP後の工程を説明するための図である。【図7】実施例1で実施したプロセスを説明するための図である。【図8】実施例1で実施したプロセスを説明するための工程断面図である。【図9】スルーホール形成プロセスを説明するための工程断面図である。【図10】スルーホール形成プロセスを説明するための工程断面図である。【図11】銅膜のエッチング速度におよぼす尿素濃度の影響を示すグラフである。【図12】銅膜のエッチング速度におよぼすガリック酸濃度の影響を示すグラフである。【符号の説明】1 シリコン酸化膜2 シリコン窒化膜3 シリコン酸化膜4 バリアメタル膜5 銅膜6 シリコン窒化膜7 シリコン酸化膜8 レジスト膜10 スルーホール11 エッチング残渣12 エッチング残渣14 バリアメタル膜15 タングステン膜21 ウェーハ22 ウェーハキャリア23 回転プレート(定盤)24 研磨パッド25 CMP用スラリー供給口26 パッドコンディショナー70 Cu−CMP工程72 スクラブ洗浄工程74 スピン洗浄工程75 防食処理工程76 スピンリンス・乾燥工程78 成膜工程79 層間膜成膜工程80 シリコン窒化膜82 シリコン酸化膜84 バリアメタル膜85 シードCu86 メッキCu88 シリコン窒化膜89 シリコン酸化膜 (a)尿素または尿素誘導体、および(b)ヒドロキシ芳香族類を必須成分とし、銅または銅を主成分とする銅合金の防食に用いられる防食剤。 (a)成分が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の防食剤。(R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Aは酸素原子または硫黄原子を表す。) (b)成分が、分子内に2以上のフェノール性ヒドロキシル基を有するベンゼン誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の防食剤。 (b)成分が、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール、ガリック酸およびタンニン酸からなる群から選ばれる一または二以上の化合物であることを特徴とする請求項3に記載の防食剤。 請求項1乃至4のいずれかに記載の防食剤を水または有機溶媒に溶解させてなる、銅または銅を主成分とする銅合金の防食に用いられる防食液。 銅膜または銅を主成分とする銅合金膜の露出面を有する半導体ウェーハの防食処理に用いられる防食処理液であって、請求項1乃至4のいずれかに記載の防食剤を含むことを特徴とする防食処理液。 銅膜または銅を主成分とする銅合金膜の露出面を有する半導体ウェーハを保管するための保管液であって、請求項1乃至4のいずれかに記載の防食剤を含むことを特徴とする保管液。 銅膜または銅を主成分とする銅合金膜の露出面を有する半導体ウェーハの表面を化学的機械的研磨するためのスラリーであって、請求項1乃至4のいずれかに記載の防食剤を含むことを特徴とする化学的機械的研磨用スラリー。