タイトル: | 特許公報(B2)_超臨界水処理による精油の製造方法および超臨界水処理によって得られる精油 |
出願番号: | 1999551488 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C11B 9/02,A23L 1/221,A61K 8/31,A61Q 13/00,C11B 1/10,C11B 9/00 |
幹 渉 中原 光一 藤井 敬久 永見 憲三 新井 邦夫 JP 4386972 特許公報(B2) 20091009 1999551488 19990409 超臨界水処理による精油の製造方法および超臨界水処理によって得られる精油 サントリーホールディングス株式会社 小野 新次郎 社本 一夫 小林 泰 千葉 昭男 富田 博行 野▲崎▼ 久子 幹 渉 中原 光一 藤井 敬久 永見 憲三 新井 邦夫 JP 1998097821 19980409 20091216 C11B 9/02 20060101AFI20091126BHJP A23L 1/221 20060101ALI20091126BHJP A61K 8/31 20060101ALI20091126BHJP A61Q 13/00 20060101ALI20091126BHJP C11B 1/10 20060101ALI20091126BHJP C11B 9/00 20060101ALI20091126BHJP JPC11B9/02A23L1/221 CA61K8/31A61Q13/00 101C11B1/10C11B9/00 A C11B 9/00 - 9/02 A23L 1/221 A61K 8/31 A61Q 13/00 CAplus(STN) G-Search 食品関連文献情報(食ネット) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭62−270547(JP,A) 特開昭63−083198(JP,A) 特開平06−184182(JP,A) 小林宣男, いま、なぜ超臨界流体か, 工業材料, 1996, Vol.44, No.9, p/102-104 大平辰朗, 超臨界流体の利用とその木材工業への利用, 木材工業, 1997, Vol.52, No.9, p.428-432 8 JP1999001897 19990409 WO1999053002 19991021 7 20060323 森 健一 発明の属する技術分野本発明は、植物体からの精油の製造方法に関するものであって、特に、精油の抽出を超臨界状態又は亜臨界状態の水で行うことにより、短時間になおかつ簡便な操作でエステルを含まないテルペンを主成分とする精油を抽出する製造方法に関する。従来の技術精油は、種々の植物の花、つぼみ、葉、枝、幹、根などから得られる特有の芳香を持つ揮発性の油で、成分は通常数種のテルペン類、芳香族化合物で構成されており、アルコール、フェノール、エステル等の発香基をもつ。精油は香料の原料として利用されており、従来は水蒸気蒸留法、抽出法、圧搾法等で採取されている。水蒸気蒸留法とは、水蒸気と共存させることにより、沸点の高い液体をその沸点よりかなり低い温度で留出させる蒸留法であり、抽出法とは、ある成分を溶媒中に溶出させ分離回収する手法である。圧搾法は水蒸気蒸留法あるいは有機溶媒を用いた抽出法を併用し、圧搾することで留出する方法である。これらの従来の方法により採取した精油中には、エステルを含む成分が存在する。エステルは主として酢酸エステル類であるが、精油の保存中に脱エステル反応によって性状が変化するという問題がある。また脱エステル反応によって生じる酢酸そのものによる精油の酸分解と酸化変性が起こりやすいという欠点が存在する。さらに従来の方法はいずれの方法も、収率が低く、処理に多数の工程を経なければならず、短時間に留出を終了することができないという欠点が存在する。また従来の方法では、いずれの方法を用いた場合にも廃棄物である植物体の搾りカスが出るという環境的な観点からみた欠点も存在する。ところで、超臨界流体に関しては、抽出、精製、合成、分解と様々な応用研究がなされている。超臨界水については、PCB、ダイオキシンの無害化等の研究(特開平9-327678号)がなされている一方、バイオマスの分解反応についても研究され、特開平5-31000には、超臨界水を溶媒として用い、天然又は合成高分子化合物を選択的に加水分解または熱分解してポリマー類を構成単位若しくはそれらのオリゴマー程度の結合体まで分解する方法、具体的には紙、木材、わら等のポリマー資源中に大量に含まれているセルロースからのグルコースの生成、あるいはリグニン系試料の低分子化が報告されている。また、特開平9-268166にはタンパク質を超臨界状態の水で加水分解して種々のアミノ酸を製造する方法が記載されている。しかしながら、これまでは植物体を超臨界状態の水で処理することにより、精油を製造する方法は知られていなかった。発明の概要本発明は、植物体から、精油を製造する新規方法を提供することを目的とする。本発明はさらに、植物体から、エステルを含まないテルペン類を主成分とする精油を製造する方法およびその方法により製造した精油を提供することを目的とする。本発明の方法により、水蒸気蒸留等の従来の方法では得られない組成の精油を提供することができる。本発明はさらに、精油を得るために汎用されている水蒸気蒸留法等の従来の方法と比較して、抽出操作が極めて短時間(数分以内)に終了する精油の製造方法を提供することを目的とする。本発明はさらに、水蒸気蒸留法等の従来の方法で搾りカスとして生じていた廃棄物を排出しない、精油の製造方法を提供することを目的とする。発明の詳細な説明本発明は、植物体を超臨界水または亜臨界水で処理することにより、植物体に含まれる精油成分をエステルを含まない精油として遊離させ、この精油を分離精製することにより、短時間にかつ簡便な操作で精油を製造する方法である。使用する植物材本発明において精油を製造するために使用する植物としては、竹、杉、桧、ミズナラ、桜、トチ、松、ヒバ、栗、笹、樫、桐、梅、桃、楓、欅、藤、樅、楡、銀杏、椿、柳、桑、木蓮、柿、杏、花梨、ハマナス、バラ、枇杷、ボケ、キンモクセイ、楠、イチイ、アカシア、ウコギ、アミリス、ボアドローズ、ルー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。選択した植物によって、種々の香気を有する精油が得られる。上記植物を2種以上混合して用いてもよい。これらの植物は、幹、樹皮、茎、枝、根、葉、花、芽、種子等のいずれの部分も使用することができるが、典型的には木質部または花部を用いる。たとえば、醸造品、飲食品等の製造および/または保存に使用した木製容器を植物体として用いれば、廃材の有効利用にもつながるので好ましい。これらの植物体は、いずれの大きさで超臨界水処理を行ってもよく、好ましくは前処理として1cm角程度の大きさに細断してからまたは花部であれば細切してから超臨界水処理を行い、さらに好ましくは植物体を粉末化してから超臨界水処理を行う。超臨界水処理の条件本発明の方法は、植物体を超臨界水で処理することを特徴とする。物質には固体、液体、気体の3つの状態があることはよく知られている。気体と液体とが混じり合っている状態から、徐々に温度と圧力を上げていき、ある特定の圧力と温度(臨界点)を越えると、気体と液体の境界面が消失して両者が渾然一体となった流体の状態を維持する範囲が存在する。こうした流体を超臨界流体といい、気体と液体の中間の性質を持つ高密度の流体となる。すなわち液体のように種々の物質を溶解すると同時に気体のように高い流動性を持つ。水の場合の臨界点は、温度374℃および圧力221気圧であり、超臨界水とは、この臨界点を超えた特定の範囲の温度および圧力状態の水を意味する。超臨界水は、温度、圧力に依存して密度、粘度、誘電率、イオン積、および拡散係数等の値が連続的に変化する。反応溶媒として重要な指標である溶解度は密度の増大とともに大きくなることが知られている。溶解性に関わるもう一つの重要な要素は誘電率であるが、誘電率は密度の増大とともに大きくなり、温度の上昇につれて減少する。温度が充分に高ければ誘電率は非常に小さくなり、水はイオン間の静電気力を遮断することがほとんどできなくなる。この条件下では、溶解しているイオン種の多くはイオン対として存在することになり、したがって超臨界水は、極性物質というよりも非極性物質として振る舞うのである。ちなみに超臨界状態における水のpHは4であり、したがって水素イオン濃度は1/10000となるが、一方水酸イオン濃度も1/10000であり、液体での水とは全く異なった性状であることが理解できる。本発明は、上記超臨界水の特徴を利用して精油を製造するものであり、水蒸気蒸留法などの従来の技術と比較して、精油が容易かつ短時間で製造できることを特徴とするものである。このような本発明の特徴に鑑み、超臨界水に準じる亜臨界水により植物体を処理しても同様に精油を得ることができることは容易に予測される。したがって、以下における超臨界水についての言及には、文脈から明らかな場合は亜臨界水も含まれる。超臨界水処理に際して植物体と水とは、たとえば、植物体1に対して水約1から1,000の割合、好ましくは水約5から200の割合で混合する。反応容器は超臨界水処理を行うために適する任意のものでよく、製造規模に応じて適宜選択してよいが、たとえば容量が1mlから101、好ましくは10mlから1lの密閉容器(好ましくはSUS合金等の金属製)を使用する。この容器中におよそ30から40%(V/V)、好ましくは32から35%(V/V)の水を充填し、これに上記の割合で植物体を添加する。精油の製造のためには、処理を嫌気状態で行うことが好ましく、容器内を脱気するか、窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスで充分に容器内部および水を置換して密閉するとよい。処理は温度約374℃(このときの圧力は約221気圧以上とする)〜約500℃の温度(約300気圧以上)下において、水がいわゆる超臨界状態である条件下で、あるいは温度約300℃(圧力約150〜200気圧)を超えるいわゆる亜臨界状態である条件下で行う。処理時間は約30分間以内、好ましくは約2分間以内である。精油の分離精製超臨界状態の水で処理した植物体は、反応容器ごと氷水等を用いて急冷するなどの手段で冷却し、充分に温度が下がったのを確認して開封する。通常、水溶性物質は水溶液として回収され、脂溶性物質は壁面にタール状に付着する。そこでまず壁面を水洗し、その後に壁面に無水硫酸ナトリウム、塩化カルシウム等の吸水性塩類を降りかけて脱水した後、ヘキサン-ジエチルエーテル混液(混合比は1:1を基本とするが、植物体によって適宜選択する)を溶媒として使用して精油を回収する。使用できる溶媒の別の例は石油エーテル−ジエチルエーテル混液、石油ベンジン−ジエチルエーテル混液等である。回収した精油は、適宜、活性炭、吸着担体等を用いて精製して目的に応じて使用する。精製法としては、各種クロマトグラフィーの実施、各種分離膜の使用、各種樹脂の使用等によるが、これらの手法に限定されるものではない。このようにして得られた精油は、そのままで香料として、または、食品あるいは化粧品素材として使用することができる。また、医薬品への応用も期待できる。精油を抽出した後のタール状物質は、さらに別の有用成分を含んでいる可能性がある。たとえば、アルコール、アセトン、アセトニトリル等の有機溶媒でさらに抽出して、フェニルプロパノイド類、ピロガロール誘導体、ピロカテコール誘導体等を含む芳香族化合物を回収することが可能である。また、反応容器から回収された水溶液は、たとえばグルコースやリグニン等の低分子化合物を含んでいる可能性があり、必要に応じてそれらを別途単離してもよい。以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例1モクレン材を鋸を用いて細切、粉末化した。SUS合金製の反応容器(内容量10ml)に蒸留水3.25mlを入れ、これにモクレン材粉末500mgを添加後、充分に窒素を用いて容器内を置換し、速やかに密閉した。別途準備した380℃に保温中の樹脂製バス(マントルヒーターに充填)に反応容器を入れ、221気圧以上で45秒間反応後、氷水に容器ごと浸けて冷却した。内容物の温度が40℃になった時点で容器を開封し、まず水溶液を除去した後、壁に無水硫酸ナトリウムを3g振りかけ、5分間放置した。その後、直ちにヘキサン-ジエチルエーテル(1:1)混合液約10mlで精油成分を抽出した。精油成分は終濃度2,000ppmの活性炭で処理し、その成分組成を高速液体クロマトグラフィー(担体;ナカライテスク製シリカゲル順相、移動相;ヘキサンからジエチルエーテルまで50分間グラディエント溶出、流速1ml/分、検出波長280nm)およびガスクロマトグラフィー(担体;Cellite:Carbowax1500=10:2、温度;170℃、キャリアーガス;窒素ガス、流速0.6kg/cm2)を適宜用いて確認した。その結果を表1に示す。結果が示すとおり、水蒸気蒸留法では主成分として得られるエステル化合物、酢酸ボルネルは検出されず、代わってボルネオールが主成分として得られた。また、モクレン材そのものに対する収油率は、水蒸気蒸留法と比較して約5倍であった。(水蒸気蒸留法;0.6%、本法;3.1%)実施例2桧材を鋸を用いて細切、粉末化した。SUS合金製の反応容器(内容量10ml)に蒸留水3.25mlを入れ、これに桧材粉末500mgを添加後、十分に窒素を用いて容器内を置換し、速やかに密閉した。別途準備した380℃に保温中の樹脂製バス(マントルヒーターに充填)に反応容器を入れ、221気圧以上で45秒間反応後、氷水に容器ごと漬けて冷却した。40℃になった時点で容器を開封し、まず水溶液を除去した後、壁に無水硫酸ナトリウムを3g振りかけ、5分間放置した。その後、直ちにヘキサン−ジエチルエーテル(1:1)混合液で精油成分を抽出し、終濃度2,000ppmの活性炭で処理後、エバポレーターを用いて溶媒を留去して精油を得た。得られた精油は特有の香りを有していた。実施例3バラの花弁をはさみを用いて2〜3mmに細切した。SUS合金製の反応容器(内容量10ml)に蒸留水3.25mlを入れ、これに花弁細切物500mgを添加後、充分に窒素を用いて容器内を置換し、速やかに密閉した。別途準備した380℃に保温中の樹脂製バス(マントルヒーターに充填)に反応容器を入れ、221気圧以上で45秒間反応後、氷水に容器ごと漬けて冷却した。40℃になった時点で容器を開封し、まず水溶液を除去した後、壁に無水硫酸ナトリウムを3g振りかけ、5分間放置した。その後、直ちにヘキサン−ジエチルエーテル(1:1)混合液で精油成分を抽出し、終濃度2,000ppmの活性炭で処理後、エバポレーターを用いて溶媒を留去して精油を得た。得られた精油は特有の香りを有していた。発明の効果本発明の方法により、水蒸気蒸留法と比較して、極めて容易に短時間で効率的に精油を得ることができる。さらに、本発明の方法により、エステル結合が切れることにより、エステルを含まないテルペン類を主成分とする精油を抽出することが可能である。エステルは主として酢酸エステル類であるが、本発明の方法で抽出された精油はその保存中に生じる脱エステル反応によって生じる酢酸そのものによる酸分解と酸化変性が起こりにくいという特徴を有する。植物体には酢酸エステルが相当量存在するが、超臨界状態の水による処理によって酢酸は水溶性となり、例えば酢酸ボルニルは不ケン化物ボルネオールとして精油中に回収される。このような特徴を有する本発明の方法により製造された精油は、エステルを含まないため、酸化に強く、また保存中の脱酢酸による酸変性も抑えられるところから、従来法で得られる精油と比較して保存性に富む。さらに、エステル香がないところから全体としての香りも水蒸気蒸留法から得られるものと比べて異なった特徴を有する。また、極性が安定していて取り扱い易さに優れており、化粧品原料、食品原料として使用する場合に適している。さらに本発明の方法により精油を製造する場合、従来の方法で排出されていた搾りカスとしての廃棄物が排出されず、環境に優しい技術が提供される。 植物体を超臨界水または亜臨界水で処理して植物体からエステルを含まないテルペンを主成分とする精油を得る工程を含む、エステルを含まないテルペンを主成分とする精油の製造方法。 植物体を水とともに加圧容器内で、150〜300気圧の圧力下、300〜500℃の温度で加熱した後、該容器内をほぼ100℃以下に冷却して、生じたタール状物質を、ヘキサン−ジエチルエーテル混液、石油エーテル−ジエチルエーテル混液、石油ベンジン−ジエチルエーテル混液等からなる群から選択される有機溶媒を用いて抽出し、該抽出液から精油を分離することからなる、植物由来のエステルを含まないテルペンを主成分とする精油の製造方法。 150〜300気圧の圧力下、300〜500℃の温度での加熱が、減圧下および不活性ガス中から選択される嫌気状態で、30分間以下の時間行われる、請求項1の製造方法。 植物体が、細断・細切ないし粉末化された木質部または花部である請求項3の製造方法。 植物体1容量部を、水1〜1,000とともに加圧容器内で加熱する、請求項4の製造方法。 植物体を超臨界水または亜臨界水で処理して植物体からエステルを含まないテルペンを主成分とする精油を得る工程を含む、エステルを含まないテルペンを主成分とする精油を含む香料の製造方法。 植物体を超臨界水または亜臨界水で処理して植物体からエステルを含まないテルペンを主成分とする精油を得る工程を含む、エステルを含まないテルペンを主成分とする精油を含む化粧品の製造方法。 植物体を超臨界水または亜臨界水で処理して植物体からエステルを含まないテルペンを主成分とする精油を得る工程を含む、エステルを含まないテルペンを主成分とする精油をを含む、食品の製造方法。