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タイトル:特許公報(B2)_抗ヒトフィブリンモノマー特異的モノクローナル抗体、該モノクローナル抗体の製造方法、ハイブリドーマ及び免疫学的測定方法
出願番号:1999504152
年次:2008
IPC分類:C07K 16/36,C12N 5/10,C12P 21/08,G01N 33/53,G01N 33/536


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田中 誠司 浜野 明栄 梅田 衛 JP 4142747 特許公報(B2) 20080620 1999504152 19980619 抗ヒトフィブリンモノマー特異的モノクローナル抗体、該モノクローナル抗体の製造方法、ハイブリドーマ及び免疫学的測定方法 日水製薬株式会社 光来出 良彦 田中 誠司 浜野 明栄 梅田 衛 JP 1997183114 19970624 20080903 C07K 16/36 20060101AFI20080814BHJP C12N 5/10 20060101ALI20080814BHJP C12P 21/08 20060101ALI20080814BHJP G01N 33/53 20060101ALI20080814BHJP G01N 33/536 20060101ALN20080814BHJP JPC07K16/36C12N5/00 BC12P21/08G01N33/53 LG01N33/536 A C07K 16/00 - 16/46 G01N 33/53 - 33/98 MEDLINE/CAplus/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) PubMed Science Direct 国際公開第95/012617(WO,A1) 特開平04−233458(JP,A) Blood, 1996年 9月, vol.88, no.6, p.2109-2117 8 FERM BP-6386 JP1998002733 19980619 WO1998059047 19981230 12 20050411 戸来 幸男 技術分野本発明は、フィブリノーゲンに対して反応性を示さず、フィブリンモノマーに対して特異的に反応するモノクローナル抗体に関し、さらに詳しくは、体液中のフィブリンの測定において、フィブリンの分解というような可溶化処理を行うことなく、体液中に存在する状態のネイティブなフィブリンモノマーに対して特異的に反応し、且つ可溶性フィブリンに対しても特異的に反応するモノクローナル抗体に関し、また、各種フィブリンの分解産物及びフィブリノーゲンの分解産物の干渉を受けることがない、該モノクロナール抗体を使用した血液凝固形成を検出するための測定方法に関する。背景技術血管中の血液凝固形成により生じた血栓は生体に有害な結果となるので、血液凝固形成を検出することは各種疾患の早期診断に有用である。血液凝固形成においては、フィブリノーゲンが活性型トロンビンの作用を受け、それに伴いフィブリノーゲン中のα鎖N末端側のフィブリノペプチドAの切断が引き起こされ、デスAAフィブリン(desAA−Fbn)、別名フィブリンI(Fbn−I)が形成される。引き続いてβ鎖N末端側のフィブリノペプチドBが切断され、デスAABBフィブリン(desAABB−Fbn)、別名フィブリンII(Fbn−II)が形成される。これらのデスAAフィブリン及びデスAABBフィブリンはフィブリンモノマーと総称されている。形成されたフィブリンモノマーは引き続いて凝集・架橋し、フィブリン塊を生成する。フィブリン塊が形成される前のフィブリンモノマーは、通常、血液中では単独のモノマーとして存在する期間が非常に短いことが知られており、フィブリノーゲンを含めた種々の血中タンパク質と会合して可溶化しており、即ち、可溶性フィブリンを形成している。血液凝固形成を検出するための従来の報告としては、例えば、C.E.Dempfle等(Blood coagulation and Fibrinolysis,4:79−86,1993)は、フィブリノーゲンに対してトロンビンを作用させてフィブリノペプチドAを切断し、その結果生ずるα鎖のN末端を免疫原として得られる抗体及び該抗体を用いたフィブリンの測定法に関して報告している。しかしながら、フィブリンのα鎖N末端は、血液中においてはフィブリノーゲンを含めた種々の血中タンパク質との相互作用により隠蔽されるため、前記抗体は血液中の可溶性フィブリンに対して反応することが出来ないという欠点がある。H.Lill等(Blood coagulation and Fibrinolysis,4:97−102,1993)は、血液中における可溶性フィブリンに対して反応することが出来る測定法として、高濃度のカオトロピックイオン等で可溶性フィブリンを可溶化処理することにより、可溶性フィブリンをフィブリンモノマーの状態にし、得られたフィブリンモノマーを測定することを提案している。しかしながら、この手法では、可溶性フィブリンをフィブリンモノマーに変換するための可溶化処理に要する反応時間が必要となり、測定が非効率的であるばかりか、且つ、検出しようとする物質が該可溶化処理のため希釈され測定感度を低下する原因となるという欠点がある。G.Soe等(WO95/12617;Blood 88(6):2109−2117,1996)は可溶性フィブリンをフィブリンモノマーに変換するための可溶化処理等の前処理を行わないで可溶性フィブリンを測定する方法を提案し、そのために可溶性フィブリンを直接認識することができるモノクローナル抗体(FM−1、FM−2)について報告している。G.Soe等のモノクローナル抗体は、フィブリン塊を尿素で可溶化し、得られた尿素可溶化フィブリンモノマーを免疫原として得たモノクローナル抗体であって、血液中に生成されたフィブリンモノマーがフィブリノーゲンと複合体を形成する際にフィブリンモノマーのE分画に生じた立体構造の変化を認識するモノクローナル抗体である。しかしながら、該抗体を用いた測定方法では、血液中にはフィブリノーゲン以外にも種々のタンパク質が存在しているため、フィブリンモノマーと複合体を形成する血中タンパク質の種類(フィブリノーゲン以外)の影響により、測定結果が正確に反映されていない恐れがある。また、該抗体を用いた測定方法では、フィブリンモノマーの形成から可溶性フィブリンへと移行する経時的な結合度の変化において、立体構造の変化が生ずるものであるから、経時的な影響により安定した測定結果を得るには困難を伴う。また、G.Soe等のモノクローナル抗体を用いた血液凝固形成の測定においては、このような立体構造の変化によって出現するエピトープは、血液凝固形成初期には現れず、且つ血液中に形成されたネイティブなフィブリンモノマーとは該抗体は反応しない。また、前記これら従来の可溶性フィブリンを測定する方法において、使用される抗体は体液中でフィブリン分解産物(XDP)に交差反応するものが多く、血液凝固異常に対して、特に疾患の初期マーカーに特異的に反応するとは言い難いものであった。以上のように、従来、生体内での血液凝固形成を知る指標としては、可溶性フィブリンについて、会合状態を薬品での可溶化処理により強制的に解離させたモノマー状態のものを指標としたり、或いは、可溶化フィブリンを指標として分析が行われており、血液中に血液凝固形成初期に存在するフィブリンモノマー及び可溶性フィブリンを同時に直接反応する抗体を使用した分析方法は知られていなかった。本発明の課題は、活性トロンビンの作用により、血液凝固形成の初期の段階で生ずるネイティブなフィブリンモノマーを特異的に検出することができ、しかも同時に可溶性フィブリンも検出することができるモノクローナル抗体、該モノクロナール抗体を生産することができるハイブリドーマ、及び該モノクローナル抗体を使用した、血液凝固形成の初期の段階を高感度に、且つ迅速に測定することができる免疫学的測定方法を提供することを目的とする。発明の開示本発明者らは鋭意研究の結果、血液中のフィブリンモノマー類似化合物を免疫原として使用し、フィブリノーゲンに対して反応性を示さず、ネイティブなフィブリンモノマー及び可溶性フィブリンを同時に特異的に認識することができるモノクローナル抗体を作製した。前記ネイティブなフィブリンモノマーとは、体液中、特に、代表的には血液中に存在しているフィブリンモノマーであって、可溶化処理されていないものであり、具体的には、デスAAフィブリン及びデスAABBフィブリンの両方をいう。すなわち、本発明のモノクローナル抗体は、検体試料として体液を使用しても、ネイティブなフィブリンモノマーに特異的に反応し、且つ体液中に存在するフィブリノーゲン以外の夾雑タンパク質とフィブリンモノマーとの相互作用の影響を受けることなく、フィブリノーゲンとフィブリンモノマーとが会合してなるネイティブな可溶性フィブリンにも同時に特異的に反応するモノクローナル抗体である。本発明のモノクローナル抗体は、上記反応特異性に加えて、線溶酵素プラスミンでの分解によって体液中に生成される、各種フィブリンの分解産物及びフィブリノーゲンの分解産物に対して反応性を示さない特徴を持つ。本発明のモノクローナル抗体は、血液凝固形成の初期から、即ち、フィブリンモノマー生成時から且つ可溶性フィブリンの形成までを含めてネイティブな形態の被検物質を直接測定ができ、従来法のようなフィブリン検体を可溶化処理して解離させる工程が必要ないので、免疫学的分析において作業効率が向上し、迅速性、正確性に優れる。更に本発明のモノクローナル抗体を使用することにより、フィブリン検体を可溶化処理するような工程が不要であるので、測定感度を向上させることができる。本発明のモノクローナル抗体の製造方法は、フィブリノーゲンをバトロキソビン処理してなるフィブリンモノマー類似化合物を免疫原とし免疫された動物から得られた抗体産生細胞と、骨髄腫細胞を細胞融合法により融合し、目的とする反応性を有する抗体産生能を有するハイブリドーマをスクリーニングし、次いで、ハイブリドーマを樹立することを特徴とする。該モノクローナル抗体を得るのに、フィブリンモノマー類似化合物を免疫する理由は、血中においてフィブリノペプチドAが遊離したフィブリン、すなわち血中のフィブリンモノマー及び可溶性フィブリンの両方に対して反応する性質の抗体を得るためである。本発明のモノクローナル抗体の製造において、免疫原としてネイティブなフィブリンモノマー自体を使用しない理由は、フィブリンモノマーは血中においてフィブリノーゲンを含めた種々の血中タンパク質と会合して可溶性フィブリンを形成しているため、それ自体を免疫してもフィブリンモノマーに特異的な抗体が得られる可能性は極めて低いからである。そこで、可溶性フィブリンからフィブリンモノマーを精製し、免疫原とする方法が考えられるが、そのためには可溶性フィブリンを高濃度の尿素やカオトロピックイオン等のタンパク変性剤で可溶化処理しなければならない。このようなタンパク変性剤はタンパクの立体構造を変化させるため、得られたフィブリンモノマーはネイティブなものとは言い難い。また、タンパク変性剤を使用せず人工的にフィブリンモノマーを調製する方法として凝集阻害ペプチドを使用する方法があるが、その際ネィティブに近い形としてトロンビンを使用し、フィブリノペプチドAの切断を行うと、フィブリノペプチドBも切断される。つまりフィブリンモノマーのトロンビン処理によるN末端切断部位に対する複合体形成阻害ペプチドが2種類必要となり、その製造条件が困難となる。本発明において、フィブリンモノマー類似化合物とは、フィブリノーゲンに対して、分解酵素、薬品等の処理を行って、フィブリノペプチドを解離させることにより、体液中に生成されるフィブリンモノマーと類似の物質としたものをいい、解離されたフィブリノペプチドのアミノ酸の個数が、体液中のフィブリンモノマーに比べて、若干多いか、若干少ないか、或いはそれらが、他の化合物で置換されたものをいう。本発明において、フィブリンモノマー類似化合物の例は、好ましくは、蛇毒のバトロキソビン(”bathroxobin”)により処理したフィブリノーゲンである。バトロキソビン(”bathroxobin”)はフィブリノーゲンのペプチドAを特異的に切断する作用を有している。バトロキソビン(”bathroxobin”)により処理したフィブリノーゲンを免疫して、細胞融合法により得た本発明のモノクローナル抗体が、上記のような反応特異性を持つ理由は、活性トロンビン処理されたフィブリノーゲン(即ち、フィブリンモノマー)のアミノ末端より少し内部に存在するエピトープに反応し、フィブリンモノマーがフィブリノーゲンと会合、或いは他の夾雑タンパク質と会合しても、該エピトープがマスキングされないことによるものと推定される。本発明のモノクローナル抗体の製造方法において、蛇毒により処理されたフィブリノーゲンは、そのままでは、夾雑タンパク質と会合して複合体が形成されるので、その系に複合体形成阻害ペプチドを添加しておくことにより、フィブリンモノマー類似物質の状態とすることができる。本発明で使用される複合体形成阻害ペプチドには、例えば、グリシル−プロリル−アルギニル−プロリン、又はグリシル−プロリル−アルギニル−アルギニルサクロシン(ANDREW P. 等 Proc. Natl.Sci. USA, 1978)が挙げられる。本発明のハイブリドーマの製造方法におけるハイブリドーマのスクリーニングは、フィブリノーゲン、フィブリン分解産物に対して反応性はなく、且つ蛇毒処理フィブリノーゲンからなるフィブリンモノマー類似物質、トロンビン処理したフィブリノーゲン、前記フィブリンモノマー類似物質にさらにフィブリノーゲンを添加して会合させた可溶性フィブリン類似物質に対して反応性がある抗体産生のものを選定する。なお、このスクリーニング工程において、スクリーニング項目となる物質は、各々酵素免疫測定法用のプレートに固定されたものである。前記トロンビン処理したフィブリノーゲンは、プレート上に固定されたフィブリノーゲンに対してトロンビン処理をしたものである。本発明のハイブリドーマの製造方法における細胞融合工程において、抗体産生細胞及び骨髄腫細胞は、融合可能であれば、その由来動物は限定されるものではない。しかし、融合効率等を加味すると同一の動物種の抗体産生細胞と骨髄腫細胞を使用することが好ましい。また、細胞融合方法としてはおよびMilstein(Nature 256,495-497,1975)の方法により目的とする反応特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマの作製が可能である。本発明のハイブリドーマは、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に1997年6月17日に寄託番号(FERM P−16276)として寄託され、1998年6月17日にブダペスト条約に基づく国際寄託へ寄託番号(FERM BP−6386)として移管された。該ハイブリドーマは、インビトロ(培地)又はインビボ(動物体内)で培養してモノクローナル抗体を分泌することができる。本発明のモノクローナル抗体の製造は、前記のようにして得られたハイブリドーマを試験管内で培養するか若しくは、動物の腹腔内で培養することにより得ることができる。得られた抗体の精製法としてはプロテインA法、イオン交換クロマトグラフ法等により精製が可能である。本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定方法は、体液中に存在する状態の可溶化処理されていないフィブリンモノマーを含む試料に対して、フィブリノーゲンに対して反応性を示さず、フィブリンモノマーに対して特異的に反応する固相化モノクローナル抗体を反応させることにより、体液中のフィブリンを測定することを特徴とする。本発明の免疫学的測定方法は、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法による測定法ならば特に限定されるものではないが、被検試料はフィブリンモノマー(可溶化フィブリン)を含有する可能性のある試料、特に血液、血漿、血清、尿等が挙げられる。また、免疫学的測定方法としては本発明により得られたモノクローナル抗体を少なくとも1種類、ポリスチレン製プレート、ボール又は磁性粒子等に吸着させ、被検試料を添加した後に、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ等の酵素標識抗体を用いるEIA法、放射性同位元素標識抗体を用いるRIA法、蛍光標識抗体を用いる蛍光免疫測定法FIA法が利用可能である。その他にも不溶性担体粒子(リポソーム、ラテックス等)表面に本発明により得られた抗体を少なくとも1種類、化学結合もしくは物理結合で固定化させ、その抗体固定化担体に被検試料を混合しスライド上及びセル内での凝集塊量を測定する担体凝集測定法にも応用が可能である。該担体凝集測定法は、好ましくは、免疫学的反応の速度を吸光度の増加として反応開始後少なくとも2回測定して体液中に存在する状態のネイティブなフィブリンモノマーや可溶性フィブリンの量を測定する。【図面の簡単な説明】図1: 本発明のモノクローナル抗体の可溶性フィブリンとの反応性を示し、トロンビン処理フィブリノーゲンを加えていないものを示す。図2: 本発明のモノクローナル抗体の可溶性フィブリンとの反応性を示し、トロンビン処理フィブリノーゲンを加えたものを示す。発明を実施するための最良の形態実施例1(1)モノクローナル抗体の作製免疫化脾細胞の調製免疫原として1mg/ml蛇毒処理ヒトフィブリノーゲン(バイオプール社製、Desafib)100ulを等量のフロインド氏の完全アジュバントと乳化するまで混合し、4週齢のBALB/Cマウスの皮下に免疫を行った。追加免疫として不完全アジュバントを用いて上記と同様の方法にて、2週おきにさらに2回免疫を行った。最終免疫から14日後、細胞融合3日前に10ugの抗原を腹腔内に投与した。細胞融合免疫を行ったマウスの脾臓を無菌的に抽出し、ナイロンメッシュ付きシャーレ上に移し、スパーテル等を用いてメッシュを通した。シャーレ内に得られた脾臓細胞懸濁液を50ml遠心管に集め、さらにダルベッコ氏のリン酸緩衝液を加え、遠心(1000rpm×5分)を行うことにより細胞の洗浄を行った。この操作をリン酸緩衝液にて3回、RPMI1640培地で2回の計5回行った後、あらかじめ用意したマウス由来骨髄腫細胞(NS−1)(公知の細胞株であり、誰でも細胞取扱メーカーから購入可能の株である。Eur.J.Immunol.,6;511-519, 1976)約1×107個に対し、前記マウス脾細胞1×108個を加え混合した。余分な培地を吸引除去した後、脾細胞と骨髄腫細胞混合液中に37℃に保温しておいた50%ポリエチレングリコール4000(商品名:メルク社製の分子量が4000のポリエチレングリコール)溶液を1ml添加し、2分間混合した。次に37℃に保温したRPMI1640培地をゆっくりと加え、洗浄操作を1回行い、更に培地を加えた後、1時間37℃5%CO2ガスインキュベーター中に放置した。次に洗浄操作によりRPMI1640培地から選択用培地であるHAT培地に交換し、96穴細胞培養用プレートの各ウエルに融合前の脾臓細胞数で1.5×105個となるよう200ul添加し、5%CO2ガスインキュベーター中で培養した。培養期間中、約2〜3日間隔で培養液を約100ul吸引除去後、HAT培地を新たに100ul添加し、約1週間培養を行い、未融合脾臓細胞および骨髄腫細胞が死滅した後、10%ウシ胎児血清添加RPMI1640培地にて更に1週間〜2週間培養し、ハイブリドーマを得た。抗ヒトフィブリンモノマー抗体産生ハイブリドーマの選定前記工程で得られたハイブリドーマ中、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選定すべく、スクリーニングを行った。スクリーニングの方法としては従来より行われている酵素免疫測定法を用いた。スクリーニング項目としてはヒトフィブリノーゲン、蛇毒処理ヒトフィブリノーゲン、ヒトフィブリノーゲンをプレート上でトロンビンにて処理した物質および前記プレートにヒトフィブリノーゲンを更に添加した血中可溶性フィブリン類似物質、フィブリン分解産物の5項目を選定し、該各物質を各々プレートに固相化して酵素免疫測定法用プレートを作製した。コロニーが形成されたハイブリドーマの培養上清10〜100倍希釈液を、前記工程で作製した各酵素免疫測定法用プレートに添加し、1時間反応後洗浄し、アルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG抗体を1時間反応させ、更に洗浄後、発色を行いヒトフィブリノーゲンおよびヒフィブリン分解産物に反応せず、且つその他の項目の全てに反応する抗体を有するウエル中の細胞のクローニングを行った。ハイブリドーマの樹立酵素免疫測定法にて目的の抗体が産生されていることが確認されたウエル中の細胞を96穴細胞培養用プレートから24ウエル細胞培養用プレートに移し、細胞数を増やした後、限界希釈による細胞のクローニングを2回行った。最終的にヒトフィブリノーゲン分解物に反応せず、蛇毒処理ヒトフィブリノーゲン、トロンビン処理ヒトフィブリノーゲンおよび可溶性ヒトフィブリン類似物質(即ち、インビトロにおける可溶性フィブリン)に反応する抗体F405を産生するハイブリドーマが得られた。モノクローナル抗体の製造0.5mlのプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン:和光純薬製))をBALB/Cマウスの腹腔内に投与し約1週間後、マウス1匹当たりにインビトロにて培養されたハイブリドーマ5×106個をマウスの腹腔内に接種した。約2週間後に該マウスの腹水を回収し、硫安塩析法にて1次精製した後、プロテインAカラムにて2次精製を行い、純度の高められた抗体を得た。〔実施例2〕モノクローナル抗体の特性の確認(i)モノクローナル抗体の免疫グロブリンクラスの確認各種抗マウス免疫グロブリンクラス抗体と前記実施例1で得られた抗体F405との反応をオクテロニー免疫拡散法にて確認したところ、IgG1であった。(ii)可溶化処理を加えていない各種抗原に対する特異性の確認抗体の特異性確認のため、あらかじめ酵素免疫測定用プレートに前記実施例1で得られた抗体F405を固相化し、そこに尿素処理又は酸処理等の可溶化処理を加えてない(即ち、ネイティブな)各種抗原を添加し1時間反応後、プレートの洗浄を行い、次にPOD標識抗ヒトフィブリノーゲンポリクローナル抗体を添加し更に1時間反応後、プレートの洗浄を行い、酵素の発色を行った。得られた結果を下記の表1に示す。表1において−は酵素免疫測定法で反応を示さないこと、+は反応を示すことを意味する。この結果より抗体F405は、ヒトフィブリノーゲンには反応せず、活性化トロンビンの作用を受けた、ネイティブなヒトフィブリノーゲン或いはネイティブなヒトフィブリノーゲン由来物質(可溶性フィブリン)にのみ反応することがわかる。また、血液凝固第XIII因子の作用を受けた物質であるDD/E,DDに関しては反応を示さないことから、抗体F405は凝固を特異的に検出できることを示している。なお、表1に示すフィブリノーゲンはMILES社製、フィブリノーゲンフラグメントX、フィブリノーゲンフラグメントY、フィブリノーゲンフラグメントE及びDDはCRYSTAL CHEM社製であり、またDD/E及びDMは常法により調製した。(iii)可溶化処理抗原に対する反応性の確認各抗原を5M尿素で可溶化処理した溶液、および各抗原を50mM酢酸緩衝液(pH3.5)で処理した溶液の各々について遠心により可溶性分画と不溶性分画を分離し、得られた各可溶性分画を酵素免疫測定用プレートに固相化した。可溶性分画が固定されたプレートの各ウエルに前記実施例1で得られた抗体F405を添加し、25℃で1時間反応させた後、プレートの洗浄を行い、アルカリフォスファターゼ標識した抗マウスIgG抗体を各ウエルに添加し、25℃で1時間反応させた。さらにプレートの洗浄を行い基質液を加え25℃で30分間反応させた後、そこに発色液を添加して、主波長490nm、副波長650nmで測定を行った。その結果を下記の表2に示す。また、従来公知のG.Soe等の抗体であるFM−1及びFM−2(WO/95/12617)の反応性を比較のために下記の表2に併せて示す。表2において、−は酵素免疫測定法では反応を示さないことを、+は反応を示すことを意味する。この結果から本発明のモノクローナル抗体F405は、抗原の可溶化処理の有無にかかわらずフィブリノペプチドAの解離したフィブリノーゲン及びその分解物に反応することがわかる。またフィブリノペプチドAは解離しているが、血液凝固第XIII因子による架橋が生じたDD/E分画には反応を示さないことが確認された。可溶性ヒトフィブリンとの反応性ヒトフィブリノーゲン(1mg/ml)中に凝集塊の形成が起きない程度の微量のトロンビン(0.1U/ml)を加えることにより、ヒトフィブリノーゲンをフィブリンモノマーに変換した。次いで、得られたヒトフィブリンモノマー(1mg/ml)を5mg/mlのヒトフィブリノーゲン中に添加することにより、人工的に調製された可溶性ヒトフィブリンを得た。次に得られた可溶性ヒトフィブリンをファルマシア社FPLCシステムを用いて分子ふるいクロマトグラフにより分離し、その分画ごとの吸光度を測定し、また酵素免疫測定法(特異性試験と同様の方法)を用いて可溶性ヒトフィブリンに対するF405の反応性の確認を行った。その結果を図1及び図2にグラフとして示す。図1はトロンビン処理ヒトフィブリノーゲンを加えていないものを示し、図2はトロンビン処理ヒトフィブリノーゲンを100ug加えたものを示している。図1及び図2共に横軸は分画番号を表し、縦軸(左)は波長280nmでの吸光度(○で表示)を示し、縦軸(右)は抗体F405を使用した酵素免疫測定法による測定値(吸光度)(●で表示)を示す。図1のトロンビン処理ヒトフィブリノーゲンを添加していないものに比較し、図2の添加したものはメインピークに対して、高分子側に可溶性ヒトフィブリンが認められる。図1の全ての分画に抗体F405は反応を示さなかったが、可溶性ヒトフィブリンには反応が認められた。一般検体との反応性実際の検体中の可溶性フィブリンと反応をみるため、市販のFM測定試薬(ベーリンガーマンハイム社 エンチムンテストFM)によりフィブリン量を測定し、値付けした一般血漿検体の5検体の測定について、抗体F405を使用した酵素免疫測定法を用いて次のようにして行った。10ug/mlになるように抗体F405をリン酸緩衝液で希釈したのち、Nunc社のイムノモジュールの各ウエル中に100ul分注し、37℃にて30分間反応させた後、リン酸緩衝液にて3回プレートの洗浄を行った。次に、前記プレートのブロッキング(非特異反応防止のため)として0.5%BSA含有リン酸緩衝液を各ウエル中に200ul分注し、37℃にて30分間反応を行い、酵素免疫測定法用の抗体F405固相化プレートを調製した。検体の測定は、予め検体5ulを1000ulの0.5%BSA含有リン酸緩衝液で希釈し、酵素免疫測定法用の前記抗体F405固相化プレートの各ウエルに100ul検体希釈液を添加し、25℃にて60分間反応させた。次に、リン酸緩衝液にて3回プレートの洗浄を行った後、ペルオキシダーゼ標識抗フィブリノーゲンポリクローナル抗体(DAKO社製)を0.5%BSA含有リン酸緩衝液で1000倍希釈した溶液を各ウエルに100ul添加し、25℃にて60分間反応を行った。さらに、リン酸緩衝液にて3回プレートの洗浄を行った後、2、2′−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム溶液を発色剤として各ウエルに100ul添加し室温で約10分間反応させた後、波長405nmにて吸光度を測定ところ下記の表3のような結果が得られた。表3の結果から抗体F405使用により検体を可溶化処理することなく、血中ヒトフィブリン(可溶性ヒトフィブリン)量を測定できることが確認された。検体未処理による測定感度本発明による抗体F405を使用した酵素免疫測定法を利用して、検体可溶化処理時と検体可溶化未処理時の反応性の違いに関する検討を次のようにして行った。即ち、ヒトフィブリン値陽性一般検体5検体を使用し、測定方法としては検体未処理測定は一般検体との反応性の項と同様の方法で行い、検体処理測定は検体の希釈時に検体5ulに対して100ulの5M NaI、0.98M KSCN混合溶液を添加した後に25℃で30分間反応した後、900ulの0.5%BSA含有りん酸緩衝液で希釈する。次いで、得られた検体希釈液の100ul毎に、酵素免疫測定法用抗体F405固相化プレートの各ウエルに添加し測定した(以降の操作は前検体未処理測定の場合と同様)ところ、下記の表4に示す結果が得られた。表4に示すように、検体について可溶化処理を不必要とする測定系では、それを必要とする測定系に比較して約1.5〜2.7倍の測定感度の上昇が可能となることがわかる。産業上の利用可能性本発明のモノクローナル抗体は、活性トロンビンの作用により、血液凝固形成の初期の段階で生ずるネイティブな(即ち、尿素処理または酸処理等の可溶化処理を加えていない)フィブリンモノマーを特異的に検出することができ、同時に可溶性フィブリンも検出することができ、また、各種フィブリンの分解産物及びフィブリノーゲンの分解産物の干渉を受けることがない。したがって、該モノクローナル抗体を使用することにより、血液凝固形成の初期の段階を高感度に、迅速に、効率的に、正確に測定することができる。 ネイティブな、フィブリンモノマー、可溶性フィブリンの両方に対して特異的に反応し、ネイティブな、フィブリノーゲン、DD/E、DDに反応せず、変性された、フィブリノーゲン、DD/E、DDに反応しないモノクローナル抗体であって、 FERM BP−6386として寄託されたハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体。 バトロキソビン処理したフィブリノーゲンを免疫原として得られた、請求項1記載のモノクローナル抗体。 前記フィブリンモノマーが、デスAAフィブリン及びデスAABBフィブリンの両方である請求項1記載のモノクローナル抗体。 FERM BP−6386として寄託されているハイブリドーマ。 フィブリノーゲンをバトロキソビン処理してなるフィブリンモノマー類似化合物を免疫原とし、細胞融合法により請求項1乃至3の何れか1項記載のモノクローナル抗体を分泌することができるハイブリドーマFERM BP−6386を樹立し、得られたハイブリドーマを培地或いは動物体内で培養し、培地或いは動物体内からモノクローナル抗体を採取することを特徴とするモノクローナル抗体の製造方法。 可溶化処理されていないネイティブなフィブリンモノマーを含む被検試料に対して、フィブリノーゲンに対して反応性を示さず、フィブリンモノマー及び可溶性フィブリンに対して特異的に反応する固相化された請求項1乃至3の何れか1項記載のモノクローナル抗体を反応させることにより、体液中のフィブリンを測定することを特徴とする免疫学的測定方法。 前記固相化モノクローナル抗体は、不溶性担体粒子に固定されたものであり、前記フィブリンの測定は吸光度の増加を測定するものである請求項6記載の免疫学的測定方法。 前記モノクローナル抗体が少なくとも1種類のモノクローナル抗体である請求項7記載の免疫学的測定方法。


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