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タイトル:特許公報(B2)_4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法
出願番号:1999373495
年次:2009
IPC分類:C07C 213/02,B01J 23/44,C07C 215/80,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

白鳥 元人 鈴木 秀雄 橋場 功 JP 4367592 特許公報(B2) 20090904 1999373495 19991228 4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法 日産化学工業株式会社 000003986 白鳥 元人 鈴木 秀雄 橋場 功 20091118 C07C 213/02 20060101AFI20091029BHJP B01J 23/44 20060101ALI20091029BHJP C07C 215/80 20060101ALI20091029BHJP C07B 61/00 20060101ALN20091029BHJP JPC07C213/02B01J23/44 XC07C215/80C07B61/00 300 C07C 1/00-409/44 B01J 23/00-23/96 C07B 61/00 CAplus(STN) REGISTRY(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平7−242604(JP,A) 特開平11−279128(JP,A) 8 2001187767 20010710 13 20061212 服部 智 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、4,6−ジアミノレゾルシノールまたはその塩の製造方法に関する。更に詳しくいえば、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの還元により副生物の少ない高純度の4,6−ジアミノレゾルシノールまたはその塩の製造方法に関する。【0002】4,6−ジアミノレゾルシノールは、ポリベンゾオキサゾールのモノマーであり、このポリベンゾオキサゾールは高強度、高弾性率を有し、また耐熱性、耐薬品性に優れた特性を有するポリマーである(特表昭61−501452号公報、特開平2−229143号公報参照)。【0003】【従来の技術】4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールの還元は通常、貴金属触媒を用い水素で還元する(特開平7−242604号公報)。特開平7−242604号公報によれば、還元は中性条件で溶媒中で実施されている。溶媒としては、水、低級アルコール、芳香族炭化水素類、ハロ置換ベンゼン類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、低級ケトン類を単独、または組み合わせて使用することが記載されている。また、還元反応終了後の後処理は2つの方法が記載されている。1つは、窒素雰囲気下そのままセライト濾過して4,6−ジアミノレゾルシノールを得た後、酸を加え酸性塩とし、触媒およびセライトを濾別後、精製し単離する方法である。2つ目は、反応液に酸を加えて塩とし溶解して、触媒を濾別後、精製し単離する方法である。【0004】前者は、反応で生成するアニリンの回収が容易で、精製工程が簡単であるという効果があるが、濾過性が非常に悪い。濾液への4,6−ジアミノレゾルシノールのロスが多く収率が60%と悪く、工業的方法とは言い難い。【0005】後者は、酸を加えて塩としているので空気中の安定性は良く操作性は良い。また、濾過性も良く、問題になることはない。ただし、副生成するアニリンと4,6−ジアミノレゾルシノールの分離精製が酸性溶液中のため甚だ複雑になる欠点も有する。【0006】本発明者等は、上記問題を解決するために、すでに、特開平11−279128号公報にすでに、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを金属触媒、溶媒として脂肪族ニトリル化合物の存在下に水素還元し、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩を得る方法を出願した。【0007】その後更に検討したところ、上記方法では、下記の反応式中で示される5−(置換)アニリノ−4,6−ジアミノレゾルシノール(ADARと略記する。)の副生成物の生成が起きて、ポリベンゾオキサゾールの原料とするには、再結晶を繰り返して精製する必要があった。【0008】【化2】【0009】(式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシカルボニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表し、nは0又は1〜5のいずれかの整数を表し、2個以上のRは互いに同一又は異なっていてもよい。)即ち、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノール(BPARと略記する。)を2モル分子の水素で還元することにより、中間体の4,6−ビス[(置換)フェニルヒドラゾ]レゾルシノール(BPHRと略記する。)が得られる。BPHRは更に2モル分子の水素によって還元されると目的物の4,6−ジアミノレゾルシノール(DARと略記する。)とアニリン誘導体が得られるが、DARの生成に伴い、5−(置換)アニリノ−4,6−ジアミノレゾルシノール(ADAR)の副生が避けられない。【0010】【発明が解決しようとする課題】ADARがDAR製品中に混在した場合、テレフタル酸との重合反応で得られるポリベンゾオキサゾール(BPO)中に架橋構造を形成し、紡糸工程での糸切れの原因となり好ましくない。【0011】DARの製造上で、還元反応後、再結晶を繰り返して精製する事により製品DAR中の副生物のADARの含量を減らすことは可能だが、DARの精製収率を低下させることから好ましくない。【0012】本発明の目的は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを還元し、4,6−ジアミノレゾルシノールを得る際に、副生物のADARの生成を低減させた4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法の提供にある。【0013】【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決する方法を見出し本発明を完成した。即ち、本発明は、式〔1〕【0014】【化3】【0015】(式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシカルボニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表し、nは0又は1〜5のいずれかの整数を表し、2個以上のRは互いに同一又は異なっていてもよい。)で表される4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを金属触媒及び溶媒として脂肪族ニトリル化合物の存在下に水素還元し、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩を得る方法において、極性溶媒及び/又は塩基性化合物を添加して還元を行うことを特徴とする4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法に関する。【0016】【発明の実施の形態】本発明の出発原料である4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールは、式〔2〕【0017】【化4】【0018】(式中、Rとnは式〔1〕中と同じに定義される。)で表される(置換)アニリンをジアゾ化し(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を得、該ジアゾニウム塩を、レゾルシノールとカップリング反応させて得ることができる。具体的には、置換アニリンと5〜10重量倍の水との混合物中に、冷却下、アニリンに対して2.5〜4当量の無機酸を滴下し、この混合液中へ、(置換)アニリンに対し2〜3重量倍の水に溶解した1〜1.5倍モルの亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムを10℃以下で滴下することにより(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を得る。無機酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸及び燐酸の中から選ばれた少なくとも1種の無機酸が用いられる。これらの無機酸の中で塩酸が工業上経済的に好ましい。【0019】具体的には、例えばアニリン、2−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、アントラニル酸、o−アニシジン、m−アニシジン及びp−アニシジン等を挙げることができ、これらのアニリンのいずれかを使用することが好ましい。経済性、化合物の安定性などでアニリンが最も好ましい。【0020】(置換)ベンゼンジアゾニウム塩とレゾルシノールのカップリング反応は、公知の方法が用いられるが、本出願人が特開平9−124575号公報として出願した式〔3〕【0021】【化5】【0022】(式中、Rとnは式〔1〕中と同じに定義され、XはCl、Br、OSO3H又はOPO3H2を表す。)で表される(置換)ベンゼンジアゾニウム塩をアルカリ性にした溶媒中で反応させることによる方法、或いは特開平9−157239号公報として出願した、式〔3〕で表される(置換)ベンゼンジアゾニウム塩の溶液とアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の溶液又は懸濁液とを混合し、アルカリ性とした混合液を得、この混合液とレゾルシノール及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を混合し反応させる方法が好ましい。【0023】この様に本願発明の原料である4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールはレゾルシノールとアルカリ性(置換)ベンゼンジアゾニウム塩を反応したのち、酸性とした後濾集し、水洗したものである。これをそのまま用いても良いし、乾燥して用いても良い。【0024】反応混合物を精製しないで使用する為、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの純度は80%前後であり、他に4−フェニルアゾレゾルシノールや2,4,6−トリフェニルアゾレゾルシノールや構造不明のものも含まれるが、大きな問題はない。この混合物をトルエンなどで再結晶し精製したものも、当然使用でき結果は良いが、4,6−ビスフェニルアゾレゾルシノールの精製は、その溶解性の悪さの為に非常に困難である。【0025】次に、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールの金属触媒及び溶媒の存在下の水素還元方法について述べる。還元反応に用いられる溶媒としては、、脂肪族ニトリル化合物である。脂肪族ニトリル化合物としては、炭素数2〜6のモノシアノ化合物が好ましい。具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル及び4−メチルバレロニトリル等が挙げられる。特に好ましいものは、反応が速く、経済的に安価なアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル及びイソブチロニトリル等が挙げられる。【0026】溶媒の使用量は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを基準として1〜50重量倍、好ましくは2〜20重量倍である。【0027】その際に反応中に濾過助剤を加えると、濾過性改良に効果的である。濾過助剤としては、活性炭、セライト、活性白土及びセルロースが用いられ、特には活性炭が好ましい。【0028】濾過助剤の量としては4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対して1〜100重量%であるが、濾過性が悪い場合は多く、良い場合は少なくて良い。好ましくは5〜30重量%である。反応系への濾過助剤の添加は、濾過性の向上のみならず、反応時間の短縮にも効果的である。原料中の不純物を吸着し、触媒の劣化を防いでるのであろう。また、場合により、反応終了後に濾過助剤を添加しても濾過性の改善が見られる。【0029】本発明で使用する金属触媒としては、銅及び周期律表第8族元素の中から選ばれた少なくとも一種の金属である。周期律表第8族元素としては白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、イリジウム等が挙げられる。これらの金属触媒の中で白金及びパラジウムが、本反応では4,6−ジアミノレゾルシノールを高収率で得ることができ好ましい。【0030】触媒の形態としては、例えばパラジウム黒や白金黒等の単体、ラネーニッケルやコバルト等の合金、塩化パラジウムや酢酸パラジウム等の金属塩、酸化銅や酸化白金等の金属酸化物、アセチルアセトン銅やアセチルアセトンパラジウム等の金属錯体及び炭素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト等の酸化物に担持させた担体付き金属等が挙げられる。これらの中で特には担体付き金属が回収再使用の都合上好ましく、パラジウム−炭素や白金−炭素が好ましい。特に白金−炭素が、低担持量にもかかわらず、パラジウム−炭素より高活性で好ましい。【0031】更に、活性を向上させる目的と反応及び酸処理等による劣化を抑制し、再使用を可能にする目的から、白金、パラジウムまたはルテニウム等の第一金属に、第二金属を添加した多元金属系触媒にすることもできる。第二金属としては、レニウム、イリジウム、錫、アンチモン、ゲルマニウム、インジウム及びロジウム等の一種以上を、第一金属に対して2〜50原子モル%添加する事が好ましい。【0032】具体的には、例えば5%Pd/1%Re−C、5%Pd/2%In−C、2%Pt/0.5%Re−C、1%Pt/0.2%Ge−C等を挙げることができる。【0033】触媒の使用量は、4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールに対し金属分として0.0005〜10重量%が好ましく、特には0.001〜10重量%で使用される。【0034】本発明の還元方法の特徴である、副生物の生成を減少させる方法について述べる。本発明者等は、副生物の5−(置換)アニリノ−4,6−ジアミノレゾルシノール(ADAR)の生成機構を次の様に推論した。一般に、ヒドラジン化合物は、酸触媒下でベンジジン転位及びp−位に置換基がある場合は、セミジン転位を起こす事が知られており、事実、本還元反応を塩酸水等の酸性雰囲気下で行った場合は、ADARの収率が増加する(比較例2参照)。しかし、本発明者等が出願した特開平11−279128号公報に記載の反応条件下では、酸触媒が存在しないところから原料のBPARのヒドロキシ基が酸触媒となってヒドラゾン基に分子内及び/又は分子間配位し、セミジン転位を誘起しているのではないかと推論される。【0035】【化6】【0036】従って、この配位を形成させない反応系で還元を行えばADARの副生は抑制されるものと予測された。そこで、本発明者等は、レゾルシノールのOH基の酸性度を中和する添加物のスクリーニングをおこなった。【0037】第一に、本発明で使用するニトリル系溶媒より極性の高い溶媒を添加することにより、ADARの副生が抑制されることが判った。この原因として、反応進行中に副生して来るアニリン誘導体が、極性溶媒(添加物)の存在で、解離度が上がり塩基性が増してレゾルシノールの酸性度を低下させているためと考えられる。反応系への極性溶媒添加による塩基性の増加は、表3のpH測定によって証明された。【0038】本願発明で採用できる極性溶媒としては、水、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン等であり、これらの極性溶媒は、2種以上混合して用いても良い。これらの溶媒の中で、水が副生物の生成抑制効果が大きく特に好ましい。極性溶媒の添加量は、原料BPARに対して、10〜200重量%が良く、多い方が副生物の生成抑制効果が大きくなるが、同時にDARの溶解度も増し、濾液へDARが溶解しロスするため、ケーキとしての収率は低下する。そのため、添加量は50〜100重量%が好ましい。【0039】極性溶媒の他、塩基性化合物がADARの副生抑制効果がある添加物として用いることができる。塩基性化合物としては、(1)カルボン酸金属塩、(2)燐酸金属塩、(3)アミン類、(4)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、(5)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物及び(6)アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホン酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の塩基性化合物が用いることができる。【0040】具体的には、カルボン酸金属塩のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ノナン酸等が挙げられ、金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。具体的には、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ブタン酸ナトリウム、ノナン酸ナトリウム、蟻酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、蟻酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、蟻酸バリウム、酢酸バリウム、プロピオン酸バリウム等が挙げられる。これらの中で、特には酢酸ナトリウムが好ましい。【0041】燐酸金属塩の金属としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、燐酸リチウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸マグネシウム、燐酸カルシウム及び燐酸バリウムなどが挙げられる。これらの中で特には、燐酸ナトリウム及び燐酸カリウムが好ましい。【0042】アミン類としては、具体的には、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.0]オクタン(TED)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等があげられる。これらの中で特には、アンモニア、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン及びDBUが好ましい。【0043】アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩としては、具体的には、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウム等が挙げられる。これらの中で特には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムが好ましい。【0044】アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物としては、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。これらの中で特には、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムが好ましい。【0045】アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩としては、メタンスルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸カリウム、エタンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸リチウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸マグネシウム及びp−トルエンスルホン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中で特には、p−トルエンスルホン酸ナトリウムが好ましい。【0046】上記の(1)〜(6)の塩基類の添加量は、塩基性の強度によって異なるが、原料BPARに対して1〜10モル%が好ましい。塩基類の添加量が増加するとADARの副生の抑制効果が大きくなるもののDARの収率低下が見られる。【0047】そこで、本発明者等は、更にADARの副生抑制条件とDARの収率低下を防止する条件を探索し、その結果、前記の第1添加物である極性溶媒と(1)〜(6)の塩基類を組み合わせることにより、各単独の添加時より好ましい結果が得られることを見出した。【0048】それらの混合割合は、極性溶媒:塩基=5〜200重量%:1〜20モル%(対BPAR)であり、より好ましくは、極性溶媒:塩基=10〜100重量%:2〜10モル%(対BPAR)である。この二成分の添加により、ADARの副生量を無添加時の数分の1に減少させ、DARの選択率及び収率を向上させる事ができる。【0049】次に、他の還元条件について述べる。水素圧は、常圧〜10000kPaであるが、好ましくは常圧〜1000kPaである。反応温度は、−10〜150℃で可能であるが、好ましくは0〜100℃より好ましくは10〜80℃である。【0050】反応液は、4,6−ジアミノレゾルシノールが固体となり存在している。取り出し方法について説明する。空気に触れないようにして、濾過することで4,6−ジアミノレゾルシノールを触媒、濾過助剤とともに得る事ができる。アニリンは濾液に行くが、濾過性が悪いとケーキの含液が多くアニリンの除去が不充分になるので、少量の反応溶媒、低級アルコール、水のいずれかで洗浄する。【0051】4,6−ジアミノレゾルシノールはフリーでは、酸素、温度とも不安定であるので酸を加えて塩とする必要がある。酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸等が使用できるが塩酸がもっとも工業的に好ましい。2倍モル以上の塩酸水溶液に加えて、加熱溶解するか、ロート上に2倍モル以上の塩酸水溶液を加えて溶解または懸濁して抜き出し、加熱溶解する。不溶物を濾別し、必要によっては活性炭処理を行い、活性炭を濾別し塩酸を加えて冷却して析出した4,6−ジアミノレゾルシノール塩酸塩を濾集する。活性炭は脱色に卓効がある。【0052】塩酸水溶液を用いて4,6−ジアミノレゾルシノールを溶解するとき、塩酸量は2〜10倍モル使用するが、塩酸が多いと溶解度が下がるので、4,6−ジアミノレゾルシノールの2〜3倍モルが好ましい。水は4,6−ジアミノレゾルシノールの1〜20部使用するが、溶解度及び晶析の関係で3〜10部が好ましい。活性炭は着色と目的に応じて必要量が変わるが、0〜100重量%、好ましくは5〜30重量%である。【0053】活性炭処理後、濃塩酸を加えて塩析で固体を析出するが、加える塩酸は4,6−ジアミノレゾルシノールの4〜20倍モルが良い。経済的には水量にも影響されるが、4〜8倍モルが好ましい。更に濾過後乾燥して4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩を得る。【0054】4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩も酸化を受けやすいが、塩化第1錫を加えると酸化に対して抵抗効果がある。尚、前記還元反応は、連続的に行う事が出来る。【0055】【実施例】以下、実施例により本願発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。比較例14,6−ビスフェニルアゾレゾルシノール(BPAR)5.57g(純度85.6%)(0.015mol)、アセトニトリル23.8g(BPARに対し5重量倍)、5%Pd−C0.233g(含水率59.0%)(2重量%)、活性炭(武田薬品工業(株)製 商品名 カルボラフィン)0.716g(15重量%)を100mlハステロイ製オートクレーブに仕込み、水素を300kPaの一定圧力で水素蓄圧器より供給しながら、攪拌速度600rpm、30℃で反応させた。反応時間4時間で、水素蓄圧器の圧力減少が停止した。そこで攪拌停止後、オートクレーブを室温に戻し、6.4%塩酸水(BPARに対して5モル倍)を加えて塩を形成させた後ち、窒素置換後反応物を取り出した。このスラリー状の反応物をメタノール/水(5/1)に溶解した後、濾過により活性炭及び触媒を除去し、その濾液を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した。【0056】内標法によるDARの収率は94.9%であり、ADARのDARに対するLC面積比は0.0498であった。【0057】実施例1〜14比較例1において、オートクレーブへの仕込み時に、表1に示す添加物を加えた他は、比較例1と同様に反応を行った。その結果を表1に併せて示す。【0058】【表1】【0059】実施例15〜20比較例1において、オートクレーブへの仕込み時に、表2に示す水及び添加物を加えた他は、比較例1と同様に反応を行った。結果を併せて表2に示す。【0060】【表2】以上の結果から、極性溶媒と塩基類の二元添加により、ADARの副生量を減少でき、DARの収率の向上が認められた。【0061】参考例1〜8還元反応生成物のpHとADARの生成量の関係を見るために、前記の実施例及び比較例の反応後の反応系を想定して、アセトニトリル溶媒と反応後生成するアニリン、更に添加物類が存在した場合の各pHを測定した結果を表3に示す。【0062】【表3】【0063】反応溶媒のアセトニトリル23.85g中に、還元反応後生成するアニリン2.79gを混合した場合のpHは6.8であった(比較例1)。そこへ水をBPARに対して20重量%添加すると、pHは7.27に上がった(実施例1)。更に、50重量%に増加するとpHは7.93に上昇した(実施例2)。この塩基性増加に比例しADARのDARに対する割合(面積%)は無添加時の4.98から2.80、1.83へと減少した。塩基性増加に伴いADARの副生の抑制効果も大きくなることがわかる。【0064】同様に、トリエチルアミンや酢酸ナトリウムの塩基のみの添加では、pHは、さほど高くならないが、そこに水を共存させることによりpHが高くなり、それぞれADARの副生を大きく抑制した。【0065】比較例22Lオートクレーブに、BPAR(純度99.9%:95.4g、0.3モル)、5%Pd/C(5.72g、対BPAR3%)、活性炭(38.2g、対BPAR20%)、水(286.2g、対BPAR3部)、35%塩酸水(62.6g、対BPAR2モル倍)、イソプロパノール(47.7g、対BPAR0.5部)、トルエン(286.2g、対BPAR3部)を仕込み、窒素置換後、水素圧300kPaの定圧で、30℃とし、600rpmの速度で攪拌しながら反応を行った。7時間後、水素吸収が停止した。常圧常温に戻してから、開封し反応混合物を取り出し、濾過により触媒、活性炭を分離した。1%塩酸水(57.5g)で洗浄し、その濾液に重曹20gを加え、pHを調整し、トルエン(200g)で3回抽出することによりアニリンを分離した。水層を液体クロマトグラフィーで分析すると、DAR/アニリン/ADAR=73.0/19.4/4.9(面積%)であった。【0066】この水層を1回に2mLの割合で分取液体クロマトグラフィー(分取HPLC)で精製分取した後、フリーズドライにより溶媒を除去することにより高純度(97.6%)の褐色結晶が約1.5mg得られた。この操作を繰り返して得られた結晶の構造解析を行った結果を以下に示す。【0067】尚、分取HPLC条件は以下の通りである。機種:オーブン;GL サイエンス社製:モデル 556,PV565.ポンプ;日立社製:L-6050(2)検出器;日立社製:L-4000UVフラクション コレクター;GL サイエンス社製:PV565.カラム:イナートジル PREP-ODS 20.0×250mm流速:H2O 6mL/min、MeOH 0.5mL/minカラム温度:40℃検出波長:254nm【0068】MASS(FAB,m/e(%)):231(M+,83),115(16),95(22),74(33).1H-NMR(d6-DMSO,δppm):4.96(s,1H:Ha),6.49(s,1H:Hb),6.52(d,J=8.05Hz,2H:HC),6.66(t,J=7.41Hz,1H:Hd),7.12(t,J=7.69Hz,2H:He),8.60(br.,4H:Hf).HbとHfは重水添加で消失した。【0069】【化7】【0070】13C-NMR(d6-DMSO,δppm):97.4,101,113,117,129,145,156,172.IR(KBr,cm-1):1514.7(NH2),1252.7.融点(℃):>290℃以上の結果から本化合物は、5−アニリノ−4,6−ジアミノレゾルシノール(ADAR)であることを確認した。【0071】【発明の効果】4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを金属触媒及び溶媒として脂肪族ニトリル化合物の存在下に水素還元し、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩を得る方法において、極性溶媒及び/又は塩基性化合物を添加して還元を行うことにより、5−(置換)アニリノ−4,6−ジアミノレゾルシノールの副生を抑え高収率で高純度の4,6−ジアミノレゾルシノールを得ることができる。 式〔1〕(式中、Rはハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、ヒドロキシカルボニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表し、nは0又は1〜5のいずれかの整数を表し、2個以上のRは互いに同一又は異なっていてもよい。)で表される4,6−ビス(置換)フェニルアゾレゾルシノールを金属触媒及び溶媒として脂肪族ニトリル化合物の存在下に水素還元し、4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩を得る方法において、極性溶媒及び/又は塩基性化合物を添加して還元を行うことを特徴とする4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 脂肪族ニトリル化合物が、炭素原子数2〜6のモノシアノ炭化水素化合物である請求項1に記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 金属触媒が銅及び周期律表第8族元素の中から選ばれた少なくとも一種の金属である請求項1又は2に記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 金属触媒が白金である請求項1乃至3のいずれかに記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 金属触媒が、白金、ルテニウム又はパラジウムに、レニウム、インジウム、錫、アンチモン、ゲルマニウム、イリジウム及びロジウムから選ばれた一種以上の元素を添加した多元素系触媒である請求項1乃至3のいずれかに記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 添加する極性溶媒が、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド及びスルホランの中から選ばれた少なくとも1種の極性溶媒である請求項1乃至5のいずれかに記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 添加する極性溶媒が水である請求項6に記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。 添加する塩基性化合物が、カルボン酸金属塩、燐酸金属塩、アミン類、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホン酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の塩基性化合物である請求項1乃至7のいずれかに記載の4,6−ジアミノレゾルシノール又はその塩の製造方法。


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