生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_細菌の鑑別方法
出願番号:1999345392
年次:2010
IPC分類:C12Q 1/04


特許情報キャッシュ

田代 茂 JP 4495809 特許公報(B2) 20100416 1999345392 19991203 細菌の鑑別方法 三菱化学メディエンス株式会社 591122956 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 田代 茂 20100707 C12Q 1/04 20060101AFI20100617BHJP JPC12Q1/04 IPC C12Q 1/04 DB名 CA/BIOSIS/MEDLINE(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed Science Direct CiNii WPI 特開平10−033158(JP,A) Acta path. microbiol. scand. Sect. B,1974年,vol.82 no.6,pp.835-842 Current Laboratory Medicine,1991年,vol.9 no.3,pp.323-326 3 2001161394 20010619 7 20060830 山本 匡子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、生化学的性状による細菌の鑑別方法において、当該細菌が有する酵素活性を利用して鑑別する方法に関する。【0002】【従来の技術】臨床検査における細菌の鑑別は、通常、培地上の孤立集落を純培養した後、その生化学的性状を鑑別表に照合して行われる。例えば、分離培地上にヘモフィルス(Haemophilus)属の細菌を疑われる集落が生じたら、生化学的同定を行い、その菌種(例えばヘモフィルス インフルエンザあるいはヘモフィルス パラインフルエンザなど)であることを確かめなくてはならない。その決定は、一般的にX因子(ヘミン)とV因子(ニコチンアミドアデニンジヌクレイチド)の要求性に基づいて行われているが、培地への両因子の添加と菌の発育との関係を培養法で調べるため、どうしても結果を得るまでに18〜24時間かかる。また、安定した結果を得るためには両因子の持ち込みを避けるための操作と細心の注意が必要である。【0003】上記の問題点を解決するために、キリアンはX因子要求性テストの代わりに5−アミノレブリン酸からのポルフィリン合成能テストで確かめられるべきことを強調したが[Kilian,M.(1974).Acta Path.microbiol.scand.B82,835]、この方法でも、ヘモフィルス属の細菌を鑑別するには充分な菌量と4〜16時間の培養時間を必要とする。【0004】【発明が解決しようとする課題】 前記のように、感染症の診断における従来の技術は、迅速性はまだ充分とはいえず、また厳密に操作しなかった場合鑑別結果の誤認の危険性もある。こういった事実が細菌検査による感染症の診断に大きな障害となっているのが現状である。従って、感染症の治療や予防対策手段の早期決定にその検査成績が必ずしも反映されているとは言い難い。本発明はこうした細菌検査を迅速、簡便に行える手段を提供し、細菌検査が抱える根本的な課題を解決することを目的とするものである。【0005】【課題を解決するための手段】前記課題は、本発明による、生化学的性状による細菌の鑑別において、5−アミノレブリン酸を含ませた吸水性を有する担体と被検試料を培養して培地上に発育した孤立集落を直接接触させ、細菌が有する酵素活性により5−アミノレブリン酸から生成した物質を、紫外線照射による発蛍光または呈色液添加による発色として検出することを特徴とする細菌の鑑別方法、により解決することができる。【0006】【発明の実施の形態】本発明は、培地上に孤立集落を形成する被検試料中に存在する細菌が有する酵素活性の有無を調べることで、分離した菌を判別することを基本とし、この特異酵素の活性を発蛍光または呈色試薬による発色等を用いて確認するものである。例えば、前記のシグナルを発現するための特定の化合物を吸水性を有する担体に含ませておき、培地上の孤立集落と直接接触させて、適当な条件下で細菌の酵素活性により生成した物質を、紫外線照射による発蛍光または呈色液添加による発色として検出する。【0007】本発明に用いる発蛍光または呈色試薬による発色を発現するための物質としては、5−アミノレブリン酸が挙げられる。好適にはその塩酸塩が用いられる。この化合物は生化学的性状による細菌の鑑別において、特定の細菌(例えば、ヘモフィルス インフルエンザ)は欠失しているがそれ以外の多くの細菌が有する酵素群が作用し、その酵素活性によって生成した物質(例えばポルフィリンやポルホビリノーゲン)は紫外線の照射によって蛍光を発する。また、呈色液の添加によって発色する性質も有する。従って、この化合物を含ませた吸水性を有する担体と、予め被検試料を適当な平板培地(例えばチョコレート寒天培地)に塗沫し適温(例えば37℃)で培養して培地上に発育させた孤立集落を直接接触させた後、当該担体に含まれる物質由来のシグナルである発色または発蛍光を目視的あるいは機器を用いて観察・検出することができる。【0008】本発明における吸水性の担体としては、その機能(吸水性)を有していれば特に材質、形状は限定されない。具体的には、例えば、紙、濾紙、セルロース、不織布、綿、スポンジ等を挙げることができる。この担体をそのまま使用しても良いし、あるいはガラス、プラスチック、木材、金属、等の適当な部材に具備させ、取り扱い易くして用いることもできる。その形状、及び長さ、太さは特に限定されない。好適には、いわゆる綿棒をそのまま用いることができる。【0009】前記担体の調製法も周知の方法によれば良く、特に限定されない。具体的には、5−アミノレブリン酸塩酸塩の0.01〜20%の水溶液を10〜1000μlを吸水性担体あるいは綿棒等の吸水性担体を具備したものに染み込ませ、自然乾燥、送風乾燥、凍結乾燥等で乾燥させて用いる。【0010】上記のように作製した担体は、その材質、形状を問わず、冷蔵保存(2〜10゜C)であれば少なくとも6ヶ月間は試薬性能(発蛍光性、発色性)の劣化はみられず安定的に使用できる。更に、驚くべきことに、吸水性を有する担体に綿棒を使用した場合に保存試験を行った結果、12ヶ月に渡りその性能が変わることはなく、それ以上の期間が経過しても使用できることが知見された。このことは、本発明の使用範囲・試験条件を広げるという効果を発揮するものである。【0011】本発明における被検試料としては、ヒト、家畜等の動物の血液、尿、糞便、髄液、咽頭液、痰、気管支分泌液、鼻咽頭液、眼液などすべての臨床材料から分離した菌を用いることができる。【0012】臨床材料の病原性細菌の一般的な検査手順は、被検試料から培養により菌分離を行った後、生化学的性状試験培地で1〜7日培養後判定した成績を生化学的性状鑑別表に照合して菌種を確認する、という長い工程を経る。対して本発明は被検試料を適当な平板培地(例えばチョコレート寒天培地)に塗沫し適温(例えば37℃)で培養し、培地上の孤立集落に前記のようにして調製した5−アミノレブリン酸塩酸塩含有担体を直接接触させ、20〜40℃、例えば37℃で、1〜4時間後、例えば、3時間後に吸水性を有する担体に含まれる5−アミノレブリン酸(塩酸塩)から生成した物質由来のシグナルを発生させ、(例えばポルフィリンを検出する場合は紫外線照射下の蛍光、ポルホビリノーゲンの場合は呈色液による発色)そのシグナルの有無を肉眼で判定する事により菌の鑑別を行うことができる。あるいは、機械的に蛍光または発色を検出しても良い。【0013】例えば、分離された菌がヘモフィルス インフルエンザかヘモフィルス パラインフルエンザかを鑑別するとき、培地上に発育した集落を精製水に5−アミノレブリン酸塩酸塩を1〜10%に溶解した液を、例えば工業用綿棒(株式会社日本綿棒)に30〜50μl染み込ませ、凍結乾燥させた担体(試薬を含む部分)と接触させ、綿棒を例えば0.1Mリン酸緩衝液(pH6〜9)50μlを分注した小試験管に担体部分が当該緩衝液で湿潤する状態で入れ、例えば37℃、3時間反応させ、長波長の紫外線(例えば360nm付近)を照射し、吸湿性を有する担体部分に含まれるポルフィリンから発する赤色蛍光の有無を肉眼で判定する。あるいは、その試験管に精製水0.5mlと呈色液(例えばコバック試薬:5gのパラジメチルアミノベンズアルデヒドに対し75mlのアミルアルコールと25mlの濃度が12Nの濃塩酸を加えた混合液)0.5mlを加えよく振った後静置し、ポルホビリノーゲンの有無を下層部の発色で判定する。紫外線を当てたとき赤色蛍光がある場合、あるいは精製水とコバック試薬を添加したときの下層部が赤く発色する場合は、ポルフィリン産生能を有することが確認でき、ポルフィリン産生能の無い菌(例えばヘモフィルス インフルエンザ)との鑑別が簡便にできる。【0014】本発明によれば、ヘモフィルス インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、(Haemophilu haemolyticus)とこれら以外のヘモフィルス属の細菌との鑑別ができる。即ち、公知手段によってヘモフィルスが疑われた検査対象物に本発明を適用し、その結果発蛍光、発色が認められなければヘモフィルス インフルエンザ、ヘモフィルス エジプチウス及びヘモフィルス ヘモリティクスと鑑別でき、発蛍光、発色が認められたらそれ以外のヘモフィルス、例えばヘモフィルス パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス パラヘモリティクス(Haemophilu parahaemolyticus)等であることが鑑別できる。【0015】本発明はヘモフィルス属の鑑別に限らず、公知手段によってある細菌感染が疑われその鑑別が必要になった場合に適用できる。例えば、アクチノバチルス(Actinobacillus)属、パスツレラ(Pasteurella)属、エイケネラ コロデンス(Eikenella corrodens)等の生化学的性状の鑑別方法を迅速、簡便に行うことが可能である。【0016】【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。【実施例1】(担体の調製)5−アミノレブリン酸塩酸塩(和光純薬工業社)0.558gを精製水100mlに溶解し(0.558%水溶液)、その30μlを工業用綿棒(日本綿棒)の吸水部に染み込ませ、凍結乾燥したもの(本発明1)と、同様に調製し4℃で12ヶ月保存したもの(本発明2)を用いた。【0017】(試験菌および試験菌の培養)被検試料として用いた試験菌は、IDテスト・NH−20ラピッド(日水製薬)を用いて同定した臨床分離株12株を用いた。その内訳は、ヘモフィルス インフルエンザが8株、ヘモフィルス パラヘモリティクスが2株、そしてヘモフィルス パラインフルエンザが2株であった。この12株の試験菌をチョコレ−ト寒天培地(日水製薬)で37℃、18時間培養後、培地上の孤立集落に前記のようにして調製した5−アミノレブリン酸塩酸塩含有担体を直接接触させ、綿棒をpH8の0.1Mリン酸緩衝液50μl分注した小試験管に担体部分が当該緩衝液で湿潤する状態で入れ、37℃で、2時間後に吸水性を有する担体部分に360nmの紫外線を照射し、そこから発する蛍光の有無を肉眼で判定した。【0018】(従来法)従来法として「ポルフィリン合成能テスト」を同時に行った。操作法は、5−アミノレブリン酸塩酸塩(和光純薬工業)0.0335gと硫酸マグネシウム7水和物(和光純薬工業)0.00197gを0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)100mlに溶解し、この基質液0.5mlへチョコレート寒天培地(日水製薬)で37℃、18時間培養した各試験菌を濃厚(マックファーランド No.3)に浮遊させ、37℃で4時間培養し、波長360nmの紫外線を照射して赤色蛍光の有無を肉眼で判定した。結果を【表1】以下に示す。【0019】【表1】【0020】以上のように、従来法と本発明による各菌種の持つ生化学的性状は一致した。また、4℃、12ヶ月の保存後も性能の劣化はみられなかった。【0021】【実施例2】反応条件の確認(担体の調製)5−アミノレブリン酸塩酸塩(和光純薬工業)0.558gを精製水100mlに溶解し(0.558%水溶液)、その30μlを工業用綿棒(日本綿棒)の吸水部に染み込ませ、凍結乾燥したものを用いた。【0022】(試験菌および試験菌の培養)被検試料として用いた試験菌は、IDテスト・NH−20ラピッド(日水製薬)によって同定した臨床分離株ヘモフィルス パラインフルエンザを用いた。【0023】(操作)0.1Mリン酸緩衝液(pH7)を作製し、同緩衝液に6Nの濃塩酸を加えpH6の0.1Mリン酸緩衝液を、2Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液を加えてpH8、9及び10の0.1Mリン酸−トリス緩衝液を作製した。試験菌をチョコレ−ト寒天培地(日水製薬)で37℃、18時間培養後、培地上の孤立集落に前記のようにして調製した5−アミノレブリン酸塩酸塩含有担体を直接接触させ、綿棒を各pHの0.1Mリン酸緩衝液50μl分注したそれぞれの小試験管に担体部分が当該緩衝液で湿潤する状態で入れ、37℃で、4時間反応させた。1時間経過ごとに吸水性を有する担体部分に360nmの紫外線を照射し、そこから発する蛍光の有無を肉眼で判定した。【0024】(従来法)比較例として従来法である「ポルフィリン合成能テスト」を行った。操作法は、5−アミノレブリン酸塩酸塩(和光純薬工業)0.0335gと硫酸マグネシウム7水和物(和光純薬工業)0.00197gを0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)100mlに溶解し、この基質液0.5mlへチョコレート寒天培地(日水製薬)で37℃、18時間培養した各試験菌を濃厚(マックファーランド No.3)に浮遊させ、37℃で4時間培養した。1時間経過ごとに、360nmの紫外線を照射して赤色蛍光の有無を肉眼で判定した。結果を【表2】以下に示す。表の「−」は陰性、「+」は弱陽性、「++」は陽性、「+++」は強陽性を意味する。【0025】【表2】【0026】以上のように、従来法では4時間経過しなければ判定できる状態にならない。対して、本発明によれば、pHが6〜10の間であれば、各pHともに少なくとも3時間以内、pH8、9であれば1時間以内で判定結果が得られる。【0027】【発明の効果】以上のように本発明方法によれば、臨床材料において、培地上に発育した集落の鑑別をする場合、従来法は結果の判定までに4〜24時間必要であったのに対し、本発明は少なくとも、培地上に細菌の発育が認められてから1〜3時間で鑑別が可能である。検出法も、5−アミノレブリン酸塩酸塩を含ませた吸水性を有する担体と被検試料を培養して培地上に発育した孤立集落を直接接触させ、当該担体へ紫外線を照射あるいは呈色試薬を添加しての蛍光または発色を検出するという簡便な操作である。この迅速性と簡便性は細菌検査が治療、予防等に今まで以上に寄与するものとなる。 生化学的性状による細菌の鑑別において、5−アミノレブリン酸を含ませ、且つ、乾燥させた綿棒と被検試料を培養して培地上に発育した孤立集落を直接接触させ、細菌が有する酵素活性により5−アミノレブリン酸から生成した物質を、紫外線照射による発蛍光または呈色液添加による発色として検出することを特徴とする細菌の鑑別方法。 5−アミノレブリン酸を含ませ、且つ、乾燥させた綿棒を含み、請求項1に記載の細菌の鑑別方法に使用する、細菌の鑑別用試薬。 請求項1に記載の細菌の鑑別方法に使用する、5−アミノレブリン酸を含ませ、且つ、乾燥させた綿棒。


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