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タイトル:特許公報(B2)_粒子担体を使用する改良された核酸の抽出方法
出願番号:1999323122
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

吉賀 聡子 駒井 茂 大門 克哉 JP 4214255 特許公報(B2) 20081114 1999323122 19991112 粒子担体を使用する改良された核酸の抽出方法 東洋紡績株式会社 000003160 吉賀 聡子 駒井 茂 大門 克哉 20090128 C12N 15/09 20060101AFI20090108BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20090108BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A C12N 15/00-90 C12N 1/00ー9/99 C12P 1/00-41/00 C12Q 1/00-70 G01N 33/50ー98 PubMed、MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平11−178571(JP,A) 特開平04−360686(JP,A) 特開平10−155481(JP,A) 1 2001136970 20010522 12 20030326 斎藤 真由美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、粒子担体を使用して核酸を含有すると考えられる材料から核酸を抽出し単離する方法に関する。より詳細には、核酸を含むと考えられる材料を水不溶性のフィルタに通過させる工程を介することにより、改良された核酸の抽出方法に関する。【0002】【従来の技術】近年の遺伝子工学や分子生物学等の分野の進歩により、感染症や遺伝子疾患等について、DNA/RNAレベルで解析することが可能になった。特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法;Science 230,p1350-1354 (1985))や、核酸配列に基づく増幅法(以下、NASBA法という;Nature 350,p91-92(1991)、特許第2648802号公報及び特許第2650159号公報)等に代表される核酸増幅方法の発明により、従来であれば検出が非常に困難であった極微量の核酸の検出が可能となり、遺伝子解析が飛躍的に容易なものとなった。ただし、生物試料中の核酸を、必要であれば増幅し、検出するためには、試料中の核酸を選択的に取り出す必要がある。これは、通常の生物試料中には核酸以外の夾雑物質、例えば、タンパク質、脂質、糖類などが大量に含まれており、これらが増幅や検出に悪影響を及ぼす可能性が少なくない。そのため、予め試料中の夾雑物質を除き、核酸を抽出し単離する操作が必要となる。【0003】このような核酸の単離方法は古くから様々な手法で行われてきた。代表的なものとして、フェノール/クロロホルム抽出法(Biochimica et Biophysica acta 72, p619-629(1963))、アルカリSDS法(Nucleic Acids Research 7,p1513-1523 (1979))等の液相で行う方法がある。これらは実験室スケールで汎用されるが、有害で廃棄の困難なフェノールやクロロホルムのような有機溶剤の他、危険物である水酸化ナトリウムなどを使用するため、技術的には熟練を要し、再現性良く実施することは容易でない。【0004】また、核酸の単離に核酸結合用担体を用いる系としては、ガラス粒子とヨウ化ナトリウム溶液を使用する方法(Proc. Natl. Acad. Sci.USA 76-2,p615-619 (1979))、ハイドロキシアパタイトを用いる方法(特開昭63−263093号公報)等がある。これらの方法は有害な有機溶剤等は使用しないものの、工程中に遠心分離操作を多く含むため、多数の試料を一度に処理することが困難で、核酸を単離するのに長時間かかるという問題を含んでいる。【0005】従って、上記の核酸単離方法は有機溶剤やアルカリなどの危険な試薬を使用すること、遠心分離操作を必要とし、多数検体の処理が難しいことなどの難点がある。そしてさらに、抽出および単離工程の自動機械化に際し大きな問題が生じる。多数の検体を再現性良く処理し、更に人的コストを低減させるためには、核酸抽出および単離法の自動化は今後不可欠になる。【0006】この自動機械化を目指したものとして、シリカ粒子とカオトロピックイオンを用いた方法(J.Clinical Microbiology 28-3, p495-503(1990)、特開平2−289596号公報)がある。これは、核酸結合性のシリカ粒子と、試料中の核酸を遊離する能力を有するカオトロピックイオンとを試料と混合し、核酸をシリカ粒子に結合させ、夾雑物質を洗浄により除去した後、シリカ粒子に結合した核酸を回収するものである。この方法はDNAに加えてより不安定であるRNAの抽出にも好適であり、また純度の高い核酸が得られるという点で非常に優れている。ただしこの核酸が結合した粒子の洗浄については遠心分離またはフィルターなどを使用した濾過などを行う必要があり、機械化の際に工程が複雑となる恐れが高い。【0007】従って、シリカ粒子を容易に混合・洗浄するために、粒子に磁性を持たせ、磁気により混合および撹拌する方法(特開平9−19292号公報)が報告されている。この方法は、核酸を磁性シリカ粒子に結合させ、以下洗浄後回収するもので、機械化の際の工程はより簡便になる。ただし、単に磁性を持たせた粒子を使用するだけでは、検体中の夾雑物質の影響などを受け、回収効率が低下する現象が多くみられる。その理由としては、粒子の周囲に核酸を吸着させ、不要物を洗浄して除去した後核酸を回収する方法において、夾雑物質が非常に多い場合にはそれが粒子表面を覆ってしまい、核酸の吸着効率が低下するためと推定されている。この問題を解決するために、表面積のより大きい粒子担体を使用する方法(特願平10−65662号)や予め粒子担体を界面活性剤で懸濁することにより夾雑物質の吸着を抑える方法(特願平9−351102号)が考案されている。しかしながら、血液検体特に全血検体のような極めて夾雑物質が多い試料については、現状では十分な抽出量を得ることができず、磁性粒子の形状を最適化するだけでは試料中の目的核酸の有無を判定するのが困難であった。そこで、これらの問題点を克服した方法が必要とされている。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、核酸を含有すると考えられる材料から核酸を抽出および単離する際に、臨床検体のような多量の夾雑物質を含む試料から、効率よく核酸を抽出する方法を提供する。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意研究を進めた結果、粒子担体を使用し生物材料から核酸を抽出し単離する際、臨床検体のような多量の共雑物質を含む試料から効率よく核酸を抽出するためには、抽出前の処理として水不溶性のフィルタに通過させる工程を実施することが有効であることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。(1)核酸を含有すると考えられる材料から核酸を抽出および単離するための方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする核酸の抽出方法。(a)核酸を含有すると考えられる材料を水不溶性のフィルタに通過させる工程(b)核酸を含有すると考えられる材料、核酸を吸着できる核酸結合性磁性粒子担体、および核酸を該担体に吸着させるための核酸抽出溶液とを混合する工程(c)核酸以外のものを核酸と粒子担体との複合体を洗浄することにより除去する工程(d)核酸と担体との複合体より核酸を溶出して回収する工程(2)該核酸がDNAおよび/またはRNAである(1)の核酸の抽出方法。(3)該核酸を含有すると考えられる材料が生物材料である(1)の核酸の抽出方法。(4)該生物材料が、血液、組織、尿、喀痰よりなる群から選ばれたいずれかである(3)の核酸の抽出方法。(5)該核酸抽出溶液がカオトロピック物質を含有する(1)の核酸の抽出方法。(6)該カオトロピック物質が、グアニジン塩、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、(イソ)チオシアン酸塩および尿素よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものでなる(5)の核酸の抽出方法。(7)該カオトロピック物質が、グアニジン(イソ)チオシアン酸塩および/またはグアニジン塩酸塩である(6)の核酸の抽出方法。(8)工程(c)において用いられる洗浄液が、カオトロピック物質を含む第一の洗浄液およびアルコールを含む第二の洗浄液を使用する(1)の核酸の抽出方法。(9)グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩およびチオシアン酸ナトリウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する第一の洗浄液を使用する(8)の核酸の抽出方法。(10)40〜100%濃度のアルコールを含有する第二の洗浄液を使用する請求項8記載の核酸の抽出方法。(11)40〜100%濃度のエタノールを含有する第二の洗浄液および60〜100%濃度のエタノールを含有する第三の洗浄液を使用する(8)の核酸の抽出方法。【0010】【発明の実施の形態】次に本発明において使用する言葉を定義し、その測定法を説明する。本発明において水不溶性のフィルタとは、試料を通過させる際に不純物を内部又は表面に保持するかまたは通過の際に以後の操作に影響を及ぼさない程度に物理的な切断または破砕する性質を有するものであれば特に限定はされない。素材に関しても、一般的にこの分野において用いられるものであれば、特に限定されるものではない。このような性質を有するフィルタとしては、具体的には、例えばすでに市販されているQIAGEN社製の各種核酸精製用フィルタなどが挙げられる。【0011】本発明において用いられる粒子担体は特に限定されないが、磁性シリカ粒子であることが特に好ましい。該磁性シリカ粒子は以下のような構造を有している。すなわち、下記超常磁性金属酸化物の表面がシリカで被覆されており、そして、さらに微小なシリカ粒子で構成される無機多孔性壁物質で複合されている。この磁性シリカ粒子はほぼ完全な球状である。核酸と該磁性シリカ粒子とは、シリカ表面の水酸基と核酸の塩基との間で生じる水素結合により結合される。【0012】超常磁性金属酸化物とは、磁場変化度に応答するが、永久磁化はされず、残留磁化が小さい金属酸化物をいう。好ましい超常磁性金属酸化物としては、酸化鉄が挙げられる。この酸化鉄としては、四三酸化鉄(Fe3O4)および四三酸化鉄を徐々に酸化して得られるr型三二酸化鉄(rFe2O3)などが用いられる。この四三酸化鉄は残留磁気が小さく、さらに好ましい表面構造を有するため、磁気分離および再分散のサイクルを反復することが可能である。四三酸化鉄を含有する磁性シリカ粒子は、弱酸性の水溶液中で安定であり、2年以上も貯蔵可能である。【0013】上記磁性シリカ粒子中に含まれる超常磁性漢族酸化物の重量は、磁極の強さにもよるが、10〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40重量%である。この好ましい範囲内では、磁性担体は市販の磁石を用いる場合に、特に迅速に分離できる。なお、シリカとは、SiO2結晶および他の形態の酸化ケイ素、SiO2から構成されるケイソウ植物の骨格ならびに無定型酸化ケイ素を含む。【0014】本発明に用いる磁性シリカ粒子は下記性質を有するものが最も好ましい。(1)担体は、超常磁性酸化鉄を含む磁性シリカ粒子である。(2)磁性シリカ粒子の外部表面積は少なくとも10m2/gである。(3)磁性シリカ粒子は、その表面がシリカで被覆されている超常磁性金属酸化物を微小なシリカ粒子で構成される無機多孔性壁物質で複合してなる。(4)超常磁性酸化鉄の重量は10〜60重量%である。(5)磁性シリカ粒子の比表面積は10〜800m2/gである。(6)磁性シリカ粒子の表面細孔直径は50〜500nmである。(7)磁性シリカ粒子の細孔容積は200〜5000mm3/gである。(8)磁性シリカ粒子の粒子径は0.5〜15.0μmである。【0015】上記のような磁性シリカ粒子は、例えば特開平6−47273号公報の記載の方法により製造され得る。例えば、四三酸化鉄をテトラエトキシシランのアルコ−ル溶液に添加し、超音波分散機により分散湿潤させる。これにテトラエトキシシランの加水分解触媒を加え、超音波分散させながら、四三酸化鉄の表面にシリカを沈着させる。このようにして得られた分散液に、ケイ素ナトリウムを加え、有機溶媒おび界面活性剤(ソルビタンモノステアレ−トのトルエン溶液)を加えて乳化し、W/O型エマルジョンを形成させる。この乳濁液を硫酸アンモニウム水溶液に添加し、十分攪拌させるその後、濾過分離、水洗、アルコ−ル沈殿を行い、乾燥させることにより、所望の球状シリカ粒子が得られる。【0016】本発明における核酸抽出溶液とは、生物試料中の核酸を含む細胞などを破壊し、核酸を露出させ、そして、この核酸を磁性シリカ粒子に結合させる働きを持つ溶液である。このような溶液としては、好ましくは、カオトロピック物質のようなシリカ粒子表面の疎水性を高める物質が選択される。さらに好ましくは、グアニジン(イソ)チオシアン酸塩および/またはグアニジン塩酸塩のような核酸分解酵素の阻害活性を有する化合物の溶液が使用できる。【0017】カオトロピック物質としては、具体的にはグアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸ナトリウム、尿素等が挙げられるが、これらのうち、RNAを分解するリボヌクレアーゼに対する阻害効果の大きなグアニジンチオシアン酸塩あるいはグアニジン塩酸塩の使用が好ましい。これらのカオトロピック物質の使用濃度は、用いられるカオトロピック物質により異なり、通常1.0〜8.0M、より好ましくは4.0〜7.0Mである。例えば、グアニジン塩酸塩を使用する場合は、4.0〜7.5Mが好ましい。また、グアニジンチオシアン酸塩を使用する場合には、3.0〜5.5Mが好ましい。【0018】本発明の吸着剤を含む核酸抽出溶液には、緩衝剤を含有させることが好ましい。これは予め抽出溶液に含まれていても、また、細胞を溶解した後に緩衝液として添加してもよい。この緩衝剤としては、一般に使用されるものであれば、特に限定されないが、中性付近、すなわちpH5.0〜9.0において緩衝能を有するものが好ましい。例えば、トリス−塩酸塩、四ホウ酸ナトリウム−塩酸、リン酸二水素カリウム−四ホウ酸ナトリウム緩衝液等が挙げられる。その濃度としては1〜500mM、pHは6.0〜9.0の範囲が好適である。【0019】また、核酸抽出溶液には、細胞膜の破壊あるいは細胞中に含まれるタンパク質を変性させる目的で界面活性剤を含有させてもよい。該界面活性剤としては、一般に細胞等からの核酸抽出に使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、トリトン系界面活性剤およびツイーン系界面活性剤等の非イオン界面活性剤、N−ラウロイルサルコシンナトリウム等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。本発明においては、特に非イオン界面活性剤を0.1〜2.0%の範囲で使用するのが好ましい。さらに、核酸抽出溶液には試料中に含まれるタンパク質、特にリボヌクレアーゼを変性、失活させる目的で、2−メルカプトエタノールあるいはジチオスレイトール等の還元剤を含有させることが好ましい。【0020】本発明において必要により使用する洗浄液とは、核酸結合性担体から核酸の溶離を促進することなく、かつ、タンパク質、糖類、脂質の固相への結合を妨げるものであれば特に限定されない。具体的には、4.0〜7.5Mグアニジン塩酸塩溶液あるいは40〜100%エタノールで洗浄することが好ましい。また、初めに溶解・吸着工程にて使用した抽出溶液を洗浄液として使用すると、ゲノムDNAとタンパク質の除去に有効である。特に、カオトロピック物質を含む第一の洗浄液と、アルコールを含む第二の洗浄液を併用するのが好ましい。カオトロピック物質としては、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、チオシアン酸ナトリウム塩などが挙げられる。また、アルコールとしては、エタノール、イソアミルアルコール、2−プロパノールなどが挙げられる。40〜100%、好ましくは60〜100%濃度のエタノールを含む溶液で洗浄することが特に好ましい。さらには、60〜80%、より好ましくは70%程度の濃度のエタノールを含む第二の洗浄液と、60〜100%、より好ましくは99%程度の濃度のエタノールを含む第三洗浄液とを用いるのが効果的である。【0021】本発明における核酸の結合した核酸結合性担体から核酸を溶出する核酸溶出液とは、核酸結合性担体から核酸の溶離を促進するものであれば特に限定されない。具体的には、水あるいはTE緩衝液(10mMトリス−塩酸塩、1.0mM EDTA;pH8.0)が好ましい。この核酸−磁性シリカ粒子複合体を形成する際、夾雑物を多量に含む生物試料、例えば血液のような検体を処理する場合、核試料由来の物質が磁性シリカ粒子の周囲に付着し、核酸の結合を妨げる傾向にある。実際、夾雑物が多い試料ほど核酸の回収能力が低下する。この問題を解決するため、本発明においては、細孔直径および細孔容積がより大きい粒子を使用することにより、上記試料由来の夾雑物質が粒子に付着しても、核酸の結合に影響が出にくく、従って高い回収率を維持することが可能となる。【0022】本発明では、このような磁性シリカ粒子を、核酸を含有すると考えられる試料とともに核酸吸着用溶液中に添加し、磁性シリカ粒子−核酸複合体を形成する。本発明の核酸単離方法は、具体的には下記(a)〜(d)の工程を含む。(a)核酸を含有すると考えられる材料を水不溶性のフィルタに通過させる工程(前処理工程)(b)核酸結合性担体、核酸を含有すると考えられる試料および核酸を核酸結合性担体に吸着させるための核酸抽出溶液を混合して、核酸を核酸結合性担体に結合させる工程(吸着工程)(c)核酸が結合した核酸結合性担体を液体から分離し、必要により洗浄する工程(分離工程)(d)核酸結合性担体−核酸複合体から核酸を溶出する工程(溶出工程)【0023】核酸を含有すると考えられる材料とは特に限定されないが、全血、血清、血漿、尿、唾液、体液などの動物由来の生物材料、その他、植物、微生物などの動物以外の生物材料を包含する。また、これらの生物から分離した細胞および培養細胞を含む。さらに、部分精製された核酸も包含する。【0024】核酸とは、DNAまたはRNAを意味する。DNAとしては、2本鎖DNA、1本鎖DNA、プラスミドDNA、ゲノムDNA、cDNAなどを含む。また、RNAとしては、ウイルス、細菌あるいは真菌等の外来性寄生生物由来のRNAに加えて、これらの生物材料を産する生物に由来する内在性のRNAを含み、tRNA、mRNA、rRNAなどを含む。【0025】本発明において、前処理工程(a)では核酸を含むと考えられる材料を水不溶性のフィルタに通過させ、不純物をフィルタの内部又は表面に保持するかまたは通過の際に以後の操作に影響を及ぼさない程度に物理的な切断または破砕する。通過の際には卓上の遠心機で2分程度の遠心を実施した。吸着工程(b)では、核酸結合性担体、核酸を含有すると考えられる試料および核酸抽出溶液を混合し、核酸を核酸結合性担体に吸着させる。混合方法は、ボルテックスによる攪拌、転倒混和、磁気による攪拌などがあり、混合時間は約1〜60分間である。これらの物質を混合することにより、試料中の核酸、タンパク質、糖類などが核酸結合性担体に物理的に吸着する。分離工程(c)における液相と核酸結合性担体との分離手段としては、粒子内の超常磁性金属酸化物を使用することによる、磁石等を用いた簡便な磁気分離法が可能である。分離工程(c)では、必要により洗浄を行い、不要なタンパク質、糖類、脂質などを溶離する。洗浄は1回または2回以上行う。溶出工程(d)は、上記分離工程(c)における核酸が吸着した核酸結合性担体から該核酸を溶出する工程である。このとき回収した核酸は、透析やエタノール沈殿法等の脱塩、濃縮操作を施すことなく、制限酵素やDNAポリメラーゼ等を使用する酵素反応に直接使用することができる。また必要により増幅した後、核酸プローブ試薬を使用して目的核酸を検出することもできる。【0026】【実施例】以下に実施例を挙げることにより、本発明の効果をより一層明瞭なものとする。ただし、これらの実施例によって本発明の範囲は限定されるものではない。ここでは、核酸配列(β2.7)を利用したサイトメガロウイルス(CMV)核酸の増幅ならびに検出用試薬キットおよびこれらの試薬を用いてCMVを簡便かつ迅速に増幅し、検出する方法を例示する。【0027】実施例1(抽出前処理を実施した試料中の核酸の抽出)磁性シリカ粒子は、細孔直径が1〜200nm、細孔容積が40〜2200mm3/g、平均粒子径の範囲が1.0〜5.0μm、四三酸化鉄粒子の含有量がグラム重量あたり30%である粒子を準備した。また、抽出には自動核酸抽出装置であるMAGFREX(東洋紡績製)を用いた。まず、0.1mg/ml濃度になるように5.0M NaCl溶液に懸濁した磁性シリカ粒子を準備した。被験試料としては、サイトメガロウイルス(CMV)核酸を保有する全血検体の希釈物(サンプル1,2)、合成競合RNA(サンプル3,4)を使用した。【0028】また、核酸抽出用溶液としては、以下の組成のものを使用した。50mM トリス−HCl5.0M グアニジンチオシアン酸塩20mM EDTA1.2% Polyethylene Glycol Mono-p-isooctylphenyl Ether【0029】本実施例の具体的な操作は次の通りである。(1)1.5ml容のエッペンドルフチューブに、上記の組成を持つ核酸抽出用試薬0.9mlを入れ、次に核酸を含有すると考えられる生物試料0.1mlを添加し、よく混合した。(2)次に、混合した試料を市販の核酸前処理フィルタQIAshredder(QIAGEN社製)に通過させ、所定の方法により抽出前処理を実施した(条件A)。なお、対照として前処理なし(条件B)も同時に実施した。(3)次に、5.0M NaCl溶液に懸濁した磁性シリカ粒子担体35.0μlを加え、よく混合した試料を自動核酸抽出装置MAGFREXに設置し室温で10分間撹拌し反応させた。(4)磁気分離機構により粒子をチューブ底部に厚め、溶液層を静かに吸引は移出した。(5)次に、洗浄液として5.0Mチオシアン酸ナトリウム塩を含むトリス−塩酸緩衝液0.9mlを加え、混合した後、上記(4)と同様にして磁気分離、吸引排出を実施した。(6)洗浄液による洗浄操作をもう一度繰り返した。(7)0.9mlの70%エタノール溶液により上記(5)と同様に、核酸の吸着したシリカ粒子を洗浄し、高濃度の塩溶液を除去した。(8)再度0.9mlの70%エタノール溶液で洗浄した後、0.9mlの99%エタノールで同様に洗浄した。(9)56.0℃に上記の試料を加温し、約30分間静置することにより、チューブ内およびシリカ粒子中のエタノールを完全に蒸発させて除去した。(10)0.9mlのトリス−NaCl洗浄液(10.0mM トリス−HCl,15.0mM NaCl)を加え、同様に洗浄した。(10)0.1mlの滅菌水を加え、56.0℃に上記試料を加温し10分間反応させた。(11)MAGFREX磁気分離機構により溶出された核酸を新しいチューブに回収した。(12)12000rpmで約5分間遠心分離することにより残存した粒子をチューブ底部に集め、別の新しいチューブに回収した。回収液量は通常60〜70μl程度である。【0030】実施例2(サイトメガロウイルス核酸の増幅)次にこの回収した核酸をNASBA法(Nature 350,p91-92 (1991)、特許第2648802号公報及び特許第2650159号公報)により増幅した。増幅反応はサイトメガロウイルスの核酸配列中より最適な配列を有する増幅用プライマーを使用した。5'側プライマーの塩基配列が、5'-TCCTTTCCTT AATCTCGGAT TATCA-3'(配列番号1)、3'側プライマーの塩基配列が、5'-AATTCTAATA CGACTCACTA TAGGGAGGAG GGAATCGTCG ACTTTGAATT CTTCGA -3'(配列番号2;T7RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含む)である。これらのプライマー配列は、特開平9−289900号公報に開示されたものである。また、NASBA法はT7 RNAポリメラーゼ、逆転写酵素およびRNaseH(一重鎖もしくは二重鎖RNAまたはDNAを加水分解することなくRNA−DNAハイブリッドのRNAを加水分解するリボヌクレアーゼ)を用いた。NASBA法による高濃度核酸配列の調製は、まず下記の増幅反応液20.0μlに、実施例1の方法により抽出、単離したCMV核酸溶液15.0μlを加え、65℃で5分間静置した。そして41℃に反応温度を下げ、その後下記に示すような酵素溶液5.0μlを加えた。その後、41℃で90分間静置した。こうして得られた増幅核酸溶液を、核酸評価のため検出に用いた。【0031】増幅反応液の組成は以下に示す通りである。40.0mM トリス−HCl12.0mM MgCl270.0mM KCl5.0mM DTT15%(v/v) DMSO1.0mM dNTP2.0mM rNTP0.2μM プライマー×2【0032】酵素液の組成は以下に示す通りである。0.01U RNaseH(東洋紡績(株)製;Thermus thermophilus由来)20.0U T7 RNAポリメラーゼ(ギブコBRL製)7.5U 逆転写酵素(生化学工業(株)製)1μg BSA【0033】実施例3(増幅した核酸溶液の検出)核酸のサンドイッチハイブリダイゼーション法により、サイトメガロウイルス遺伝子の検出を行った。〔サイトメガロウイルス遺伝子検出用捕捉プローブおよび標識プローブの合成〕捕捉プローブおよび標識プローブは、DNAシンセサイザー391型(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてホスホアミダイト法により合成した。捕捉プローブの塩基配列は、5'-TTCCCTCTCC TACCTACCAC GAA-3'(配列番号3)、標識プローブの塩基配列は、5'-CGCAGATGAT AAACAAGAGG GTAA-3'(配列番号4)である。標識プローブの配列中Xは、5'位にリンカーアームを有するウリジンを示す。これらのプローブは特開平9−289900号公報に開示されているものである。【0034】〔標識プローブの酵素(アルカリフォスファターゼ)標識〕合成標識プローブと、そのリンカーアームを介してのアルカリフォスファターゼとの結合を、文献(Nucleic Acids Research 14,p6155(1986))に従って行った。【0035】〔捕捉プローブ−固相の調製法〕固相はポリスチレン製のマイクロタイタープレート(マイクロライト2、ダイナテック社製)を用い、上記方法で得られた捕捉プローブを、マイクロタイタープレートのウェルに100μlずつ分注し、25℃で一夜インキュベートし、捕捉プローブをプレートに結合させた後、デオキシリボヌクレオチド三リン酸によりブロックを行った。【0036】〔サンドイッチハイブリダイゼーション法による核酸の検出〕以上の方法で調製した試薬および試料を用いて、核酸溶液の検出を以下に述べる方法で行った。得られた核酸溶液を、水酸化ナトリウム溶液で処理して変性させた。そして上記プレートに、変性させた試料を2.0μl、ハイブリダイゼーション緩衝液を50.0μl、アルカリフォスファターゼ標識プローブ溶液を50.0μl加え、50℃で30分間ハイブリダイゼーションを行った。ウェルから液を除き、1.0%ラウリル硫酸ナトリウムを含む洗浄液1を200μl加え、50℃で5分間洗浄し、次に0.5% Polyethylene Glycol Mono-p-isooctylphenyl Etherを含む洗浄液2を200μl加え室温で5分間洗浄、さらに1×SSC溶液200μlで洗浄した。そして、アルカリフォスファターゼの基質であるLumiphos 480(和光純薬工業製)を100μl加え、37℃で15分間酵素反応を行った後、発光量をマイクロライト1000(ダイナテック社製)で測定した。実施例1〜3の結果を表1に示す。【0037】【表1】【0038】表1から明白なように、核酸抽出前の前処理として水不溶性のフィルタで処理した場合には、前処理なしと比較して抽出効率において明らかな差が認められ、検出感度が大きく向上していることが示される。【0039】実施例4(各種前処理フィルタを使用した抽出感度の比較)上記と同様の粒子を使用し、次に、混合した試料を市販の核酸前処理カラムとして、A:QIAshredder(QIAGEN社製)、核酸精製用カラム、B:RNeasy Spin Columns、C:QIA amp Spin Columns、D:QIA quick Spin Columns(全てQIAGEN社製)に通過させ、所定の方法により抽出前処理を実施した。被験試料としては、CMV核酸を保有する全血検体の希釈物を使用した。結果を表2に示す。【0040】【表2】【0041】表2から明白なように、核酸抽出前の前処理として水不溶性のフィルタである各種カラムで処理した場合には、従来の抽出法である前処理なしと比較して格段の差がみられる。水不溶性フィルタを使用した抽出前処理を実施する場合、検出感度が大きく向上していることがわかる。特にカラムA(QIA shredder)とカラムB(RNeasy Spin columns)で良好な感度が得られていることが分かる。【0042】【発明の効果】上述したように、本発明における核酸抽出方法は、核酸を含むと考えられる材料を水不溶性のフィルタを用いて予め処理を行うことで、生物材料から高い回収率で核酸を抽出および単離することが可能となる。特に、全血試料のような夾雑物質を多量に含む材料からの核酸抽出においては、従来の粒子担体と比べて飛躍的な効果が得られるという利点を有する。【0043】【配列表】【0044】【0045】【0046】 全血試料からRNAを抽出および単離するための方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする核酸の抽出方法。(a)核酸を含有すると考えられる材料を、QIAshredder(QIAGEN社製)核酸精製用カラム、または、RNeasy Spin Columns(QIAGEN社製)に通過させる工程(b)核酸を含有すると考えられる材料、核酸を吸着できる核酸結合性磁性粒子担体、および核酸を該担体に吸着させるための3.0〜5.5Mグアニジンチオシアン酸塩を含有する核酸抽出溶液とを混合する工程(c)核酸以外のものを核酸と粒子担体との複合体を、カオトロピック物質を含む第一の洗浄液、60〜80%のエタノールを含む第二の洗浄液および60〜100%のエタノールを含む第三の洗浄液を使用して洗浄することにより除去する工程(d)核酸と担体との複合体より核酸を溶出して回収する工程


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