タイトル: | 特許公報(B2)_植物ステロールの製法 |
出願番号: | 1999313618 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07J 75/00,C07C 51/41,C07C 53/126,C07J 9/00,C07J 13/00 |
服部 泰幸 堀尾 政光 河野 潤 JP 4393640 特許公報(B2) 20091023 1999313618 19991104 植物ステロールの製法 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 古谷 馨 100063897 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 服部 泰幸 堀尾 政光 河野 潤 20100106 C07J 75/00 20060101AFI20091210BHJP C07C 51/41 20060101ALI20091210BHJP C07C 53/126 20060101ALI20091210BHJP C07J 9/00 20060101ALI20091210BHJP C07J 13/00 20060101ALI20091210BHJP JPC07J75/00C07C51/41C07C53/126C07J9/00C07J13/00 C07J 75/00 C07J 9/00 C07J 13/00 C07C 51/41 C07C 53/126 CAplus(STN) MEDLINE(STN) EMBASE(STN) BIOSIS(STN) 米国特許第02835682(US,A) 米国特許第03840570(US,A) 特開昭49−005959(JP,A) 国際公開第99/042471(WO,A1) NEKRASOVA, V. B.,Separation of phytosterol from aqueous alcohol solutions of saponified pitch by crystallization using the LTA method,IZV. VUZ, LESNOI ZH.,1974年,17(6),p. 105-108 5 2001131198 20010515 7 20051117 早乙女 智美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、植物油脂由来の粗植物ステロール中に含まれる脂肪酸エステルを効率良く鹸化する方法、ひいてはその鹸化後の液を用いて高純度の植物ステロールを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】植物ステロールは、血中コレステロール低減効果を期待した臨床投与等に使用されるだけでなく、コレステロール代替物として医薬品原料、又は乳化剤や乳化安定剤として化粧品や食品に利用されている。【0003】ステロール類は、大豆油、ナタネ油、米糠油、パーム油、パーム核油、椰子油等の植物油脂中に含まれ、油脂精製時に発生する脱臭濃縮物等から抽出・精製して製造する方法が実用化されている。一般的な抽出法は、特公昭52−8309号に記載されており、油脂類の脱臭留出物に低級アルコールを加えて酸触媒でエステル化処理した後に、水洗し触媒除去を行い、新たに低級アルコールとアルカリ触媒を加えてエステル交換反応を行い、その後一夜静置し、析出した結晶を濾過により分離し、ヘキサン洗浄・乾燥により、植物ステロールを得る方法であり、得られた植物ステロールの純度は82%と記載されている。しかし、精製植物ステロールとしては純度が低くこのままでは医薬用、食品添加物としては使用できない。【0004】特に、低級アルコールとしてメタノールをエステル化あるいはエステル交換反応に用いた場合、植物ステロール中には炭素数6〜28の脂肪酸のメチルエステルが不純物として含まれてくる。この脂肪酸メチルエステルを除くことができれば、高純度の植物ステロールが得られることになる。【0005】除去方法の1つにアルカリを用いた鹸化処理が挙げられる。この方法は、脂肪酸エステルをアルカリにより石鹸とし、冷却によりステロールの結晶を析出させ、この結晶を分離し、結晶に対して再結晶・乾燥を行い、高純度の植物ステロールを得る方法である。この方法では、鹸化反応をいかに効率的に行うかが重要となるが、従来の方法では鹸化速度が遅く実用的ではなかった。そのため、工程的には多くなるが、再結晶を繰り返すことによる精製が一般的に用いられてきた。この方法の問題点は、多工程を経ることで植物ステロールの回収ロスが生じ、収率面で経済的でない点にある。【0006】本発明の課題は、植物油脂由来の粗植物ステロールから、実用的かつ収率よく高純度の植物ステロールを得る方法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、低級アルコールと水の混合溶媒中にて粗植物ステロール中に含まれる脂肪酸エステルをアルカリで処理する鹸化方法、並びにこの鹸化方法後に、反応液を冷却して植物ステロールの結晶を析出させ、得られた結晶を分離する植物ステロールの製法である。【0008】【発明の実施の形態】本発明において植物ステロールとは、植物油脂中に含まれるステロール類を指し、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等が挙げられる。また粗植物ステロールとは、不純物として少なくとも脂肪酸エステルを含有する植物ステロールである。植物ステロールの原料となる植物油脂は、特に限定されないが、大豆油、ナタネ油、パーム核油、椰子油、パーム油等が好ましい。【0009】本発明において、脂肪酸エステルとは、主に高級脂肪酸と低級アルコールとのエステルであるが、好ましくは炭素数6〜28の脂肪酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステルである。脂肪酸は直鎖又は分岐鎖、あるいは飽和又は不飽和脂肪酸の1種又は2種以上の混合物のいずれも用いることができる。【0010】また本発明において低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール及び直鎖又は分岐鎖のブタノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。これらの中でメタノール又はエタノール或いはそれらの混合物が好ましい。【0011】粗植物ステロール中に含まれる脂肪酸エステルの含量は特に制限はないが、ステロール抽出の効率化の点から50重量%以下が好ましく、30重量%以下が更に好ましい。【0012】また、粗植物ステロール中には遊離の脂肪酸に基づく酸価(AV)が検出される。この酸価はステロールの高濃度化のためには、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。更に、粗植物ステロール中の植物ステロールの含量は50重量%以上が好ましく、70重量%以上が更に好ましい。【0013】本発明においては、この粗植物ステロールに含まれる脂肪酸エステルを、低級アルコールと水の混合溶媒中で、アルカリで処理して鹸化する。ここで使用されるアルカリは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等が好ましい。アルカリの使用量は、粗植物ステロール中に含まれる脂肪酸エステルの含有量から計算される当量以上が、反応を完結させるためには必要である。しかし、過剰にアルカリ量を増やすことは経済性の面から好ましくなく、また、アルカリ量を大幅に増やしても、水添加がない場合は実用的な反応速度が得られないので、アルカリ量は、粗植物ステロール中に含まれる脂肪酸エステルに対して、50当量以下が好ましく、20当量以下が更に好ましい。【0014】本発明において鹸化の際に用いられる低級アルコールと水の混合溶媒中の水と低級アルコールの混合比率は、水が低級アルコールに対して4重量%以上となることが好ましく、更に好ましくは8重量%以上、特に好ましくは12重量%以上である。水の比率が多くなれば、脂肪酸エステル除去率は増加傾向を示すが、後工程での結晶析出性や設備の効率の面から、低級アルコールに対して100重量%以下が好ましい。【0015】粗植物ステロールの低級アルコールに対する濃度は特に限定されないが、溶媒への溶解性の面から10重量%以下が好ましい。【0016】本発明の鹸化反応における条件は特に限定されず、10〜100℃で0.1〜10時間行うことが好ましい。反応はバッチ式の反応装置を用いるのが好ましく、反応中は溶媒成分の還流が行われる方が反応温度の面で有利である。【0017】更に本発明は、鹸化反応が終了した反応液を冷却することにより植物ステロールの結晶を析出させる。この結晶を分離し、必要に応じて再結晶を行い、必要があれば乾燥を行い、高純度の植物ステロールを得ることができる。【0018】冷却は、冷却装置を用いて行い、1〜40℃で静置することにより結晶を析出させるのが好ましい。結晶の分離は、例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等の方法で行う。ここで、分離された結晶中には鹸化反応で生成したアルカリ石鹸はほとんど含まれない。なぜなら、アルカリ石鹸の大部分は溶媒中に溶けた状態で存在するためである。また再結晶は、メタノール等の公知の溶媒を用いて行うことができる。必要があれば、その後乾燥を行うが、100℃前後の温度で乾燥することが好ましい。乾燥方法は特に限定されず、熱風等により行う。【0019】最終的に得られたものは、医薬用、食品添加物にも使用可能な高純度の植物ステロールとなる。【0020】【実施例】例中の%は、特記しない限り重量%である。【0021】実施例1植物ステロール純度:84.3%(ここで、植物ステロール純度とはβ−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロールの4種の合計を指す)、炭素数6〜28の脂肪酸のメチルエステル体含量:10.5%、その他:5.2%(いずれもカラムとして、ULTRA No.1(ヒューレットパッカード社製)を用いたガスクロマトグラフィーの分析値)の組成を有し、酸価(AV)=3.1、鹸化価(SV)=18.9のパーム核油由来の粗植物ステロールを原料として用いた。【0022】上記粗植物ステロール2g、溶媒としてメタノール200g及び水20gを、水酸化カリウム0.5g(鹸化価から求めた脂肪酸メチルエステルと当量の水酸化カリウム量は0.039gであり、ここで用いた水酸化カリウム量は脂肪酸メチルエステルに対し13倍当量となる)と共に1Lのガラス製フラスコに仕込み、メタノール還流下で4時間反応を行った。反応終了液をガスクロマトグラフィーで分析し、炭素数6〜28の脂肪酸のメチルエステル体含量を求めた。結果を表1に示す。【0023】実施例2水の仕込量を30gとする以外は実施例1に従って反応/分析を行った。結果を表1に示す。【0024】実施例3水の仕込量を10gとする以外は実施例1に従って反応/分析を行った。結果を表1に示す。【0025】実施例4粗植物ステロール量を2倍の4gとし、それに応じて水酸化カリウム量を2倍の1.0gとする以外は実施例1に従って反応/分析を行った。結果を表1に示す。【0026】実施例5水の仕込量を5gとする以外は実施例1に従って反応/分析を行った。結果を表1に示す。【0027】比較例1水を添加しない以外は実施例1に従って反応/分析を行った。結果を表1に示す。【0028】【表1】【0029】表1からわかるように、水を添加しない比較例では、アルカリを大過剰用いているにもかかわらず、反応4時間後のメチルエステル含量は高い、それに対し、水を添加した実施例では、反応4時間後のメチルエステル含量は著しく減少していることがわかる。【0030】実施例6実施例1と同じ粗植物ステロール2g、溶媒としてエタノール200g及び水20gを、水酸化カリウム0.1g(ここで用いた水酸化カリウム量は脂肪酸メチルエステルに対し2.6倍当量となる)と共に1Lのガラス製フラスコに仕込み、エタノール還流下で4時間反応を行った。反応終了液をガスクロマトグラフィーで分析し、炭素数6〜28の脂肪酸のメチルエステル体含量を求めた。結果を表2に示す。【0031】比較例2水を添加しない以外は実施例6に従って反応/分析を行った。結果を表2に示す。【0032】【表2】【0033】実施例7実施例4の4時間反応終了品を5℃まで冷却し結晶を析出させ、減圧濾過器にて結晶を分離した。得られた結晶を60℃のメタノール200gに溶解し、その液を5℃まで冷却・再結晶を行い、減圧濾過器で結晶を分離し、110℃、12時間空気中で乾燥した。乾燥後の結晶は植物ステロール純度:95.8%であり、脂肪酸のメチルエステルはガスクロマトグラフィーで検出されなかった。また、鹸化工程も含めた植物ステロールの回収率は86.8%であった。【0034】【発明の効果】本発明の鹸化方法を用いれば、水と低級アルコールの混合溶媒により鹸化反応が促進され、実用的な速度で反応を終結させることができる。また、本発明の植物ステロールの製法を用いれば、植物ステロール中の脂肪酸エステルを検出限界以下にまで減らすことができ、実用的に粗植物ステロールから高純度の植物ステロールを収率よく得ることができる。 低級アルコールと水の混合溶媒中にて粗植物ステロール中に含まれる脂肪酸エステルをアルカリで処理する鹸化方法であって、 粗植物ステロールの酸価が10以下であり、且つ粗植物ステロール中の植物ステロールの含量が50重量%以上である、鹸化方法。 混合溶媒中の水の含量が低級アルコールに対し4〜100重量%である請求項1記載の鹸化方法。 脂肪酸エステルが炭素数6〜28の脂肪酸と低級アルコールとのエステルである請求項1又は2記載の鹸化方法。 請求項1〜3の何れかに記載の鹸化方法後に、反応液を冷却して植物ステロールの結晶を析出させ、得られた結晶を分離する植物ステロールの製法。 分離された植物ステロールの結晶を再結晶操作に付す、請求項4記載の植物ステロールの製法。