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タイトル:特許公報(B2)_歯科用硬化性組成物
出願番号:1999306930
年次:2008
IPC分類:A61K 6/083,A61K 6/00


特許情報キャッシュ

本 田 成 道 山 本 隆 司 上 木 秀 幸 詫 摩 啓 輔 大 辻 淳 夫 鈴 木 理穂子 JP 4180204 特許公報(B2) 20080905 1999306930 19991028 歯科用硬化性組成物 サンメディカル株式会社 592093578 三井化学株式会社 000005887 鈴木 俊一郎 100081994 牧村 浩次 100103218 本 田 成 道 山 本 隆 司 上 木 秀 幸 詫 摩 啓 輔 大 辻 淳 夫 鈴 木 理穂子 20081112 A61K 6/083 20060101AFI20081023BHJP A61K 6/00 20060101ALI20081023BHJP JPA61K6/083 500A61K6/00 Z A61K 6/083 A61K 6/00 BIOSIS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 特開平11−071316(JP,A) 5 2001122721 20010508 24 20041215 原田 隆興 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、歯科用の硬化性組成物に関する。更に詳しくは本発明は、加熱、2液混合、光線照射などによってラジカル重合して硬化する歯科用の組成物であり、特に、歯科用途でコンポジットレジン、レジンインレー、硬質レジン、義歯床用材、義歯床補修材、セメント、接着材などの用途に好適に使用される組成物に関する。【0002】【従来の技術】従来より、歯科用途に用いられる硬化性組成物(コンポジットレジン、レジンインレー、硬質レジン、義歯床用材、義歯床補修材、セメント、接着材等)の成分として、単官能、又は多官能メタクリル酸エステル化合物が多用されてきた。【0003】これらのメタクリル酸エステル化合物でメタクリル酸のカルボキシル基部分と結合する構造(基)としては、アルキル基、シクロアルキル基、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン構造を有する基、芳香環を有する基、複素環を有する基などがある。【0004】上記の硬化性組成物は、歯科治療の効果を確認するためにX線写真でその存在を確認可能であることが望ましく、そのため歯科用の硬化性組成物には、X線造影剤として、バリウム、ジルコニウム、ストロンチウムなどの重元素を含有するガラス粉末などが配合され用いられてきた。これらのガラス粉末に充分なX線造影性が発現するように重元素を添加した場合、これらのガラス粉末の屈折率は1.52〜1.56程度になる。【0005】歯科材料に求められる重要な要求性能の一つに色調が挙げられる。特にコンポジットレジン、レジンインレー、硬質レジン等の歯冠部代替材料では、天然の歯と同等の色調と透明感が求められる。【0006】その場合、透明性の高い材料に顔料などを添加して色調を調整するわけであるが、そのためにも、素材であるメタクリル酸エステル化合物の硬化物とX線造影剤の屈折率とを合わせる必要がある。【0007】しかしながら、先程述べたX線造影性ガラス粉末の屈折率に匹敵する高い屈折率を有するメタクリル酸エステル化合物はあまり多くなく、通常使用されているメタクリル酸エステル化合物の硬化物の屈折率はそれよりかなり低く1.45〜1.50程度である。【0008】歯科材料用途で、X線造影性ガラス粉末に近い高屈折率モノマーとしては、下記の2種類のメタクリル酸エステル化合物が特に多用されている。【0009】【化4】【0010】【化5】【0011】両者共に、屈折率は、1.54(20℃)程度であり、これらは重合することにより重合物の屈折率は、さらに0.02〜0.03程度高くなる。歯科用用途では、通常は、トリエチレングリコールジメタクリレート(屈折率1.46)などの屈折率が低いメタクリル酸エステル化合物と上記のメタクリル酸エステル化合物とを組み合わせて屈折率を調整して使用されている。【0012】また、これらのメタクリル酸エステル化合物を主原料とした歯科用硬化性組成物は良好な機械物性を示す。【0013】しかしながら、これらのメタクリル酸エステル化合物は、共にその部分構造にビスフェノールA骨格を有しており、出発原料はビスフェノールAである。【0014】近年、ビスフェノールAがいわゆる”環境ホルモン”として、生物に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。上記2種類のメタクリル酸エステル化合物が環境ホルモンとして生体に対して影響を与えるか否かは確認されていないが、より高い安全性を求めて、ビスフェノールA部分骨格を有していない高屈折率メタクリル酸エステル化合物を用いたX線造影性歯科用硬化性組成物の登場が望まれている。【0015】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、その部分構造中にビスフェノールA骨格を含まない高屈折率メタクリル酸エステル化合物を用いたX線造影が可能な歯科用硬化性組成物を提供することである。【0016】【課題を解決するための手段】本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物;【0017】【化6】【0018】 (式(1)中、R11はそれぞれ独立に、水酸基を有していてもよい、直鎖または分岐状の鎖状オキシアルキレン基、または、水酸基を有していてもよい、直鎖または分岐のポリオキシアルキレン基のいずれかの基を表し、R12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)、(B)ラジカル重合性モノマー、および(D)ラジカル重合開始剤からなることを特徴としている。【0019】また、本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物;【0020】【化7】【0021】(式(2)中、R21はそれぞれ独立に、水酸基を有していてもよい直鎖状のオキシアルキレン基、または、水酸基を有していてもよい直鎖状のポリオキシアルキレン基のいずれかの基を表し、R22はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)、(B)重合性モノマーおよび(C)重合開始剤よりなることを特徴としている。【0022】さらに本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物;【0023】【化8】【0024】(式(3)中、R31はそれぞれ独立に、繰り返し数が1〜3のオキシエチレン基、または、2−ヒドロキシプロピレンオキシ基のいずれかの基を表し、R32はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)、(B)重合性モノマー、および(C)重合開始剤よりなることを特徴としている。【0025】(A)の(メタ)アクリル酸エステル化合物はその部分構造内にビスフェノールA骨格を有していないが、前記2.6EおよびBis−GMAに匹敵する高い屈折率を有し、前述のX線造影性ガラス粉末と組み合わせて歯科用硬化性組成物を調製しても高い透明性を示す。【0026】また、(A)の(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いた歯科用硬化性組成物は、前記2.6EあるいはBis−GMAを用いた歯科用硬化性組成物に匹敵する良好な機械物性を示す。【0027】【発明の具体的説明】以下に、本発明の歯科用硬化性組成物について具体的に説明する。本発明の歯科用硬化性組成物を形成する(A)成分は、下記式(1)、(2)または(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物である。【0028】【化9】【0029】 上記式(1)において、R11は、それぞれ独立に、直鎖または分岐のオキシアルキレン基、または、直鎖または分岐のポリオキシアルキレン基のいずれかの基である。これらのオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基は、水酸基を有していても良い。【0030】また式(1)において、R12は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。【0031】【化10】【0032】上記式(2)中、R21はそれぞれ独立に、水酸基を有していてもよい直鎖状のオキシアルキレン基、または、水酸基を有していてもよい直鎖状のポリオキシアルキレン基のいずれかの基を表す。また、式(2)において、R22はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。【0033】【化11】【0034】上記式(3)において、R31はそれぞれ独立に、繰り返し数が1〜3のオキシエチレン基、または、2−ヒドロキシプロピレンオキシ基のいずれかの基を表す。また式(3)において、R32はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。【0035】上記アクリル酸エステル化合物は、特開平11-71316号公報に記載されている方法により製造することができる。具体的には上記式(1)〜(3)で表されるアクリル酸エステル化合物を構成する主骨格を有する下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸クロリドなどとを反応させることにより製造することができる。【0036】【化12】【0037】ただし、上記式(4)において、R41は、上記式(1)〜(3)におけるR11、R21、R31と同じ意味である。こうしたジヒドロキシ化合物と、(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸クロリドとの反応に関しては、例えば、上記特開平11-71316号公報、J. Oog. Chem., 45, 5364(1980)、および Eur. Polym. J., 19, 399(1983)などに詳細に記載されている。【0038】本発明では、アクリル酸エステル化合物として、上記式(1)、(2)および(3)で表される化合物の中から適宜選択して使用することができるが、これらのアクリル酸エステル化合物の中でも、特に次式で表される「DSA」および「SG-FA」を使用することが好ましい。【0039】【化13】【0040】【化14】【0041】このような式(1)、(2)あるいは(3)で表される化合物は、本発明の歯科用硬化性組成物中の重合性成分、具体的には上記(A)成分と以下に記載する(B)成分と、さらに必要により(D)成分との合計100重量部中に通常は20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部の範囲内の量で配合される。【0042】本発明で用いられるラジカル重合性モノマー(B)として、単官能モノマー(B1)および多官能モノマー(B2)を挙げることができる。【0043】単官能モノマー(B1)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびアダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2-または1,3-ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレートおよびエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)グリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチル(メタ)アクリレートおよびヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン等のケイ素含有の(メタ)アクリレート;ならびに、テトラフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。【0044】多官能モノマー(B2)の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、へキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロープロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;下記式で表わされる脂肪族、脂環族または芳香族の(メタ)アクリレート;【0045】【化15】【0046】(ただし、上記式(I)において、R3は水素原子またはメチル基を示し、mおよびnは0または正の数を示す。また、R4は、【0047】【化16】【0048】【化17】【0049】のいずれかの基を表す。)、下記式で表わされる脂肪族、脂環族または芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート【0050】【化18】【0051】(上記式(II)において、R5は水素原子またはメチル基を示し、nは0または正の数を示し、R6は、【0052】【化19】【0053】【化20】【0054】のいずれかの基を表わす。);さらに、下記式で表わされる分子内にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。【0055】【化21】【0056】上記(III)式において、R7は水素原子またはメチル基を示し、R8は、【0057】【化22】【0058】【化23】【0059】のいずれかの基を表わす。【0060】また、1分子内に酸性基を有するラジカル重合性モノマー(D)は、特に、金属、歯質、セラミック等に対する接着性能を向上させるため、この硬化性組成物を接着性材料として使用する場合に特に好ましく用いられる。酸性基としては、例えばカルボン酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基およびスルホン酸基等を挙げることができる。【0061】1分子中にカルボン酸基またはその無水物基を有するラジカル重合性モノマーの例としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸およびポリカルボン酸またはその無水物を挙げることができる。【0062】ここで使用できる単官能重合性モノマーとしては、特公平6-62688号公報に記載されているカルボン酸または/およびその無水物を挙げることができる。特に、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p-ビニル安息香酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、1,4-ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-または3-または4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N,O-ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O-(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N-(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N-(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N-(メタ)アクリロイルp-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイルO-アミノ安息香酸、N-フェニルグリシンまたはN-トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4-[(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3-または4-[N-メチル-N-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、(メタ)アクリロイルアミノサリチル酸、(メタ)アクリロイルオキシサリチル酸を挙げることができる。【0063】また、ここで使用できる多官能重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物、2モルの2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと1モルの無水マレイン酸または3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物または3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを反応させた付加反応物、2-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパンなどを挙げることができる。【0064】1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2-および3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2-(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2-または3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェートおよび2-(メタ)アクリロイルオキシエチルp-メトキシフェニルアシドホスフェートなどを挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。チオリン酸基を有する重合性単量体としては、特開昭54-21438号公報、特開昭59-140276号公報および特開昭59-142268号公報に記載されているものを使用することができる。具体的には下記の化合物を挙げることができる。また、この化合物は、対応する化合物の右に括弧書きして示した互変異性体であってもよい。【0065】【化24】【0066】1分子中にスルホン酸基を有するラジカル重合性モノマーの例としては、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1-スルホ-1または2-プロピル(メタ)アクリレート、1または3-スルホ-2-ブチル(メタ)アクリレート、3-ブロモ-2-スルホ-2-プロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシ-1-スルホ-2-プロピル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-2-スルホエチル(メタ)アクリルアミド、2-メチル-2-(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸などを挙げることができる。【0067】上記に例示した中で、単官能モノマーとしては、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような分子内にエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート等が特に好ましく用いられる。【0068】また、多官能モノマーとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのような分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート、【0069】【化25】【0070】(ただし、上記式(IV)において、R9はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)等で表わされる化合物などが特に好ましく用いられる。【0071】また、1分子内に酸性基を有するラジカル重合性モノマーとしては、11-メタクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、またはその無水物、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、及び2-メチル-2-(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸などが特に好ましく用いられる。【0072】また、これらラジカル重合性モノマーは単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。本発明において、上記(B)成分は、本発明の歯科用硬化性組成物中の重合性成分、具体的には上記(A)成分と以下に記載する(B)成分と、さらに必要により(D)成分との合計100重量部中に通常は20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部の範囲内の量で配合される。【0073】また、上記(D)成分を使用する場合には、この(D)成分は、本発明の歯科用硬化性組成物中の重合性成分、具体的には上記(A)成分と以下に記載する(B)成分と、さらに必要により(D)成分との合計100重量部中に通常は0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の範囲内の量で配合される。【0074】本発明で用いるラジカル重合開始剤(C)としては、有機過酸化物、無機過酸化物、ホウ素含有重合開始剤、α- ジケトン化合物、有機アミン化合物、有機スルフィン酸、有機スルフィン酸塩、無機硫黄化合物、有機燐化合物およびバルビツール酸類を挙げることができる。これらは1種または2種以上用いることができる。これらの重合開始剤は、便宜上、加熱重合タイプ、常温化学重合タイプ、光重合タイプおよびこれらの複合したデュアル重合タイプなどに類別することができる。【0075】加熱重合および常温化学重合タイプで使用される過酸化物(C1)としては、例えばジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'- ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p'- ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p'- ジメチルベンゾイルペルオキシドおよびp,p'- ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物および過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物を挙げることができる。これら過酸化物は、ラジカル重合性モノマー(B)に対して、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で使用される。【0076】また、常温化学重合タイプで使用されるホウ素含有重合開始剤(C2)としては、一般に、有機ホウ素化合物またはこれを含有してなる組成物を挙げることができる。【0077】有機ホウ素化合物の例としては、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ-sec- ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素およびトリシクロヘキシルホウ素等のトリアルキルホウ素類;ブトキシジブチルホウ素等のアルコキシアルキルホウ素類;ブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランおよび9-ボラビシクロ[3.3.1] ノナン等のジアルキルボラン;ならびに上記化合物の一部が部分的に酸化された化合物などを挙げることができる。これらの化合物は単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらの中ではトリブチルホウ素、あるいは部分酸化したトリブチルホウ素が好ましく用いられる。部分酸化したトリブチルホウ素としては、例えばトリブチルホウ素1モルに対し酸素を0.3〜0.9モル付加させたものが好ましく用いられる。これら有機ホウ素化合物は、ラジカル重合性モノマー(B)に対して、好ましくは0.1 重量%〜50重量%の範囲内の量で使用される。【0078】また、光重合タイプで使用される重合開始剤は、紫外光線もしくは可視光線を照射することによって光重合することができる重合開始剤である。こうした光重合の際に使用できる重合開始剤に特に制限はないが、例えばベンジル、4,4'-ジクロロベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、9,10- アントラキノン、ジアセチル、d,l-カンファーキノン(CQ)およびトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどの紫外線または可視光線増感剤が挙げられる。これら紫外光線もしくは可視光線を照射することによって光重合することができる重合開始剤は、ラジカル重合性モノマー(B)に対して、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で使用される。【0079】常温化学重合もしくは光重合タイプによってラジカル重合を行う際には、還元性化合物を併用することができる。ここで、有機還元性化合物としては、例えばN,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p- トルイジン、N,N-ジエチル-p- トルイジン、N,N-ジエタノール-p- トルイジン、N,N-ジメチル-p-tert-ブチルアニリン、N,N-ジメチルアニシジン、N,N-ジメチル-p- クロルアニリン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N-ジエチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N-ジメチルアミノベンツアルデヒドなどの芳香族アミン類;N-フェニルグリシン、N-トリルグリシンならびに、N,N-(3- メタクリロイルオキシ-2- ヒドロキシプロピル)フェニルグリシンなどを併用することができる。【0080】これらのアミン化合物は、単独であるいは組み合わせて用いることができる。また、還元性化合物としては、その他、例えばベンゼンスルフィン酸、o-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸およびナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩類を併用することもできる。【0081】無機還元性化合物としては、硫黄を含有する還元性無機化合物が好ましく使用できる。この還元性化合物としては、水または水系溶媒などの媒体中でラジカル重合性単量体を重合させる際に使用できるレドックス重合開始剤としての使用される還元性無機化合物が好ましく、例えば亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオン酸、1,2-チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。これらの還元性無機化合物は、単独で、もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。これら還元性無機化合物は、ラジカル重合性(B)に対して、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内の量で使用される。【0082】本発明で用いられる充填材(E)は、有機質フィラー、無機質フィラーおよび有機質複合フィラーから選択される少なくとも1種のフィラーである。有機質フィラーとしては、重合体の粉砕もしくは分散重合によって得られた粉末重合体のフィラーおよび架橋剤を含む重合性モノマーを重合させた後粉砕して得られたフィラーを挙げることができる。ここで、有機質フィラーの原料となる重合体としては特に限定はないが、前述のラジカル重合性モノマーの単独重合体もしくは共重合体を用いることが好ましい。有機質フィラーの原料となる好適な重合体の例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート)およびポリ(トリメチロープロパントリメタクリレート)等が挙げられる。【0083】また、その他の重合体として、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールおよびそれらの共重合体などを挙げることができる。【0084】無機質フィラーとしては、例えばシリカ、シリカアルミナ、アルミナ、アルミナ石英、ガラス(バリウムガラスを含む)、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタンおよびリン酸カルシウムなどを挙げることができる。これらには通常のカップリング処理を施すことが好ましい。【0085】有機質複合フィラーとしては、前述した無機質フィラー表面を前述の重合性モノマーで重合して被覆した後、粉砕して得られるフィラーを挙げることができる。【0086】具体的には、無機質フィラーのうちの微粉末シリカまたは酸化ジルコニウムなどをトリメチロールプロパントリメタクリレートを主成分とする重合性単量体で重合被覆し、得られた重合体を粉砕したフィラー等を挙げることができる。【0087】本発明の組成物は、上記の(A)〜(E)成分以外に、さらに、重合禁止剤(以下、「重合抑制剤」と記載することもある)、顔料、防カビ剤、抗菌剤、溶剤(アセトン、アルコール等)などの成分を含有することができる。【0088】【発明の効果】本発明の歯科用硬化性組成物は、上記式(1)、(2)あるいは(3)で表されるアクリル酸エステル化合物を用いており、この化合物は、環境ホルモンとして生体に対する影響が懸念されているビスフェノールAに由来する部分構造を有していない。しかも、このアクリル酸エステル化合物を用いた硬化体は、エナメル質、象牙質の両者に対して優れた接着性能を示す。さらに、このアクリル酸エステル化合物を共重合させることにより、硬化体の屈折率を容易に調整することが可能であり、高い屈折率が必要なX線造影可能な高屈折率の硬化体が得られる。本発明の組成物を使用することにより、自然歯と同等の外観を形成することができる。【0089】【実施例】以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。【0090】【実施例1】【0091】【化26】【0092】上記の化合物(特開平11-71316号公報の実施例10に記載の方法で合成した:略号DSA)の屈折率を測定すると20℃での屈折率(N20D)が1.54であった。【0093】上記DSA70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村科学工業(株)製、商品名;NKエステル3G)30重量部、カンファーキノン(Aldlich社製)0.1重量部、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(東京化成工業(株)製)0.1重量部を混合し、良く撹拌して均一な可視光硬化性組成物シロップとした。このシロップの屈折率(N20D)は20℃で1.52であった。【0094】この組成物シロップを用いてISO4049:1988の7.8項に記載の方法で曲げ試験片の作製及び曲げ物性の評価を行った。この時、可視光線は歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射した。試験片は5個作製し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の平均値を得た。結果を表1に示す。【0095】【比較例1】【0096】【化27】【0097】上記式で表される構造を有するBis−GMA(新中村科学工業(株)製、商品名;D−GMA)70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村科学工業(株)製、商品名;NKエステル3G)30重量部、カンファーキノン(Aldlich社製)0.1重量部、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(東京化成工業(株)製)0.1重量部を混合し、良く撹拌して均一な可視光硬化性組成物シロップとした。このシロップの屈折率(N20D)は20℃で1.52であった。【0098】この組成物シロップを用いてISO4049:1988の7.8項に記載の方法で曲げ試験片の作製及び曲げ物性の評価を行った。この時、可視光線は歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射した。試験片は5個作製し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の平均値を得た。結果を表1に示す。【0099】【比較例2】【0100】【化28】【0101】上記式で表される構造を有する2.6E(新中村科学工業(株)製、商品名;D-2.6E)70重量部、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村科学工業(株)製、商品名;NKエステル3G)30重量部、カンファーキノン(Aldlich社製)0.1重量部、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(東京化成工業(株)製)0.1重量部を混合し、良く撹拌して均一な可視光硬化性組成物シロップとした。【0102】この組成物シロップを用いてISO4049:1988の7.8項に記載の方法で曲げ試験片の作製及び曲げ物性の評価を行った。この時、可視光線は歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射した。試験片は5個作製し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の平均値を得た。結果を表1に示す。【0103】【表1】【0104】【実施例2】実施例1で製造した可視光硬化性組成物シロップ25重量部に、定法によって3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(略号:シラン、東芝シリコーン(株)製、商品名:TSL8370)で表面処理したバリウム含有アルミノ珪酸塩ガラス(平均粒径約5μm、屈折率1.55、ガラス100重量部に対してシラン1重量部で表面処理したもの)75重量部を混合し、均一なペーストとした。【0105】このペーストを用いてISO4049:1988の7.8項に記載の方法で曲げ試験片の作製及び曲げ物性の評価を行った。この時、可視光線は歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射した。試験片は5個作製し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の平均値を得た。結果を表2に示す。【0106】【比較例3】比較例1で製造した可視光硬化性組成物シロップ25重量部に定法によってシランで表面処理したバリウム含有アルミノ珪酸塩ガラス(平均粒径約5μm、屈折率1.55、ガラス100重量部に対してシラン1重量部で表面処理したもの)75重量部を混合し、均一なペーストとした。【0107】このペーストを用いてISO4049:1988の7.8項に記載の方法で曲げ試験片の作製及び曲げ物性の評価を行った。この時、可視光線は歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射した。試験片は5個作製し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の平均値を得た。結果を表2に示す。【0108】【比較例4】比較例2で製造した可視光硬化性組成物シロップ25重量部に定法によってシランで表面処理したバリウム含有アルミノ珪酸塩ガラス(平均粒径約5μm、屈折率1.55、ガラス100重量部に対してシラン1重量部で表面処理したもの)75重量部を混合し、均一なペーストとした。このペーストを用いてISO4049:1988の7.8項の方法で曲げ試験片の作製及び曲げ物性の評価を行った。この時、可視光線は歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射した。試験片は5個作製し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の平均値を得た。結果を表2に示す。【0109】【表2】【0110】【実施例3】実施例2で使用したペーストを直径20mmの穴が開いた厚さ1.0mmのテフロンTM 製モールドに填入し、両面をセロファン及びガラス板(厚さ1mm)で覆った上で可視光線を歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射し、厚さ1mm、直径20mmの試験片を作製した。試験片は5個作製し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 UV-160)を用いて500、及び700nmでの光線透過率を求めた。結果を表3に示す。【0111】【比較例5】比較例3で使用したペーストを直径20mmの穴が開いた厚さ1.0mmのテフロンTM 製モールドに填入し、両面をセロファン及びガラス板(厚さ1mm)で覆った上で可視光線を歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射し、厚さ1mm、直径20mmの試験片を作製した。試験片は5個作製し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 UV-160)を用いて500、及び700nmでの光線透過率を求めた。結果を表3に示す。【0112】【比較例6】比較例4で使用したペーストを直径20mmの穴が開いた厚さ1.0mmのテフロンTM 製モールドに填入し、両面をセロファン及びガラス板(厚さ1mm)で覆った上で可視光線を歯科用可視光線照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)を用いて試験片の両面より30秒ずつ照射し、厚さ1mm、直径20mmの試験片を作製した。試験片は5個作製し、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 UV-160)を用いて500nm、及び700nmでの光線透過率を求めた。結果を表3に示す。【0113】【表3】【0114】【実施例4〜8、比較例7】(歯質と歯科用レジンとの接着試験方法)本発明の歯科用硬化性組成物を歯質への接着剤として適用するための接着紙片方法を以下に記す。【0115】新鮮なウシ下顎前歯を抜去し、水中で凍結して保存したものを歯質サンプルとして使用した。解凍した牛歯を新鮮なエナメル質または象牙質が露出するように回転式研磨機(Buehler社製、商品名:ECOMET-IIIを用いて注水、指圧下で耐水エメリー紙#80まで研磨して平滑な面を得た。【0116】研削した牛歯を一度気銃にて水分を除去して直径4.8mmの円孔のあいたセロハンテープを張り付けた。続いて、エッチング材として、表面処理材グリーン(サンメディカル(株)製スーパーボンドC&B用表面処理剤、表中表4示:G)または、表面処理材、高粘度レッド(サンメディカル(株)製スーパーボンドC&B用表面処理材、表4中表示:R)をスポンジS(サンメディカル(株)製、スーパーボンド&B付属スポンジ)に含ませ、充分量塗布してエナメル質30秒および象牙質に10秒間塗布して水洗した。【0117】その後、水洗した表面を歯科用綿球にて余剰な水分を除去するのみで乾燥させないまま、表4に記載の組成物を適用した。適用に際しては、組成物をスポンジに充分に含ませて、このスポンジに液を供給しながら2度連続的に塗布した。10秒間静置後に、液が動かなくなるまで軽くエアブローし続けた。このときの硬化物の被膜厚さは約30μmであった。【0118】直ちに可視光照射器(クルツァー社製、商品名;Translux CL)にて20秒間光照射して硬化性組成物を硬化させた。片面に粘着材のついた内径5.1mm厚さ1mmの厚紙を上記処理面に置いて固定し、この穴にコンポジットレジン(サンメディカル(株)製、商品名:Epic−TMPT)を充填した後、この孔の上を厚さ50μmのポリエステルフィルムで覆った。【0119】このフィルムの上から可視光照射器(クルツァー社製、商品名:Translux CL)にて40秒間光照射してコンポジットレジンを硬化させた後、ポリエステルフィルムを剥がし、歯科用接着剤(商品名:メタファースト、サンメディカル(株)製)にてアクリル棒を植立して15分間静置した。【0120】接着操作を実施した後、この試料を37℃水中に24時間浸漬し、24時間経過後試料を取り出して、室温で30分以内に引張試験を行った。引張試験は、オートグラフ((株)島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minで行った。【0121】その結果、表4の実施例4-8に示したように、接着強さは12〜14MPaで、試験後の破壊形態の観察において、コンポジットレジンの凝集破壊であることが確認され、強力に接着していた。一方、比較例7では歯質と接着材の間で剥離した部分が認められ、接着力は8〜9MPaとやや低かった。(ギャップ)ウ蝕部分を除去した歯牙のモデルに接着材とコンポジットレジンを適用し、隙間なく修復できたかどうかをギャップの有無を確認して評価した。【0122】新鮮なウシ下顎前歯を抜去し、水中で凍結して保存したものを歯質サンプルとして使用した。解凍した牛歯を新鮮な象牙質が露出するように回転式研磨機(BUEHLER社製、ECOMET-III)で注水、指圧下で耐水エメリー紙#80まで研磨して平滑な面を得た。【0123】研削した牛歯を一度気銃にて水分を除去して直径約3mm深さ約2mmの窩洞をカーバイドバーを用いてエアタービンにて形成した。続いて、エッチング材として、表面処理材グリーン(サンメディカル(株)製、商品名:スーパーボンドC&B)または、表面処理材、高粘度レッド(サンメディカル(株)製)を用いてスポンジSにて充分量塗布してエナメル質30秒および象牙質に10秒間塗布して水洗した。【0124】その後、水洗した表面を歯科用綿球にて余剰な水分を除去するのみで乾燥させないまま、表4に記載の組成物を適用した。適用に際しては、スポンジにて十分に含ませた組成物をスポンジに液を供給しながら2度連続的に塗布した。10秒間静置後に、液が動かなくなるまで軽くエアブローし続けた。このときの硬化物の被膜厚さは約30μmであった。【0125】直ちに可視光照射器(クルツァー社製、商品名;Translux CL)にて20秒間光照射して硬化性組成物を硬化させた。この穴にコンポジットレジン(サンメディカル(株)製、商品名;Epic−TMPT)を充填して、厚さ50μmのポリエステルフィルムで覆った。このフィルムの上から可視光照射器(クルツァー社製、商品名;Translux CL)にて40秒間光照射してコンポジットレジンを硬化させた後、フィルムを剥がした。【0126】更に、耐水エメリー紙#1000にて窩洞の辺縁部が現れるまで研磨し、塩基性フクシンに10秒間浸漬してギャップの発生部位を着色させ、水洗・乾燥した。光学顕微鏡による観察と辺縁部の着色からギャップの有無を確認した。ギャップの有無の判定は、塩基性フクシンによる着色部位が光学顕微鏡(400倍)にて観察した場合に明らかな亀裂を認められない場合に「なし」、亀裂が認められる場合には「あり」とした。上記試験の結果を表4に示した。【0127】【表4】【0128】表4のギャップに示すように、実施例4〜8の結果に示すようにギャップが認められず、良好に修復ができることが確認された。一方、比較例7では、一部にギャップが形成され充分な修復ができなかった。【0129】以上の結果から、DSA、及びSG−FAは、Bis−GMAや2.6Eと比較して、歯科用組成物の主モノマーとして、機械物性、透明性、接着性等において同等以上の良好な性能を有することが分かった。 (A)下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物; (式(1)中、R11はそれぞれ独立に、水酸基を有していてもよい、直鎖または分岐状の鎖状オキシアルキレン基、または、水酸基を有していてもよい、直鎖または分岐のポリオキシアルキレン基のいずれかの基を表し、R12はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)、 (B)重合性モノマー、 および (C)重合開始剤よりなることを特徴とする歯科用硬化性組成物。 (A)下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物; (式(2)中、R21はそれぞれ独立に、水酸基を有していてもよい直鎖状のオキシアルキレン基、または、水酸基を有していてもよい直鎖状のポリオキシアルキレン基のいずれかの基を表し、R22はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)、 (B)重合性モノマー、 および (C)重合開始剤よりなることを特徴とする歯科用硬化性組成物。 (A)下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物; (式(3)中、R31はそれぞれ独立に、繰り返し数が1〜3のオキシエチレン基、または、2−ヒドロキシプロピレンオキシ基のいずれかの基を表し、R32はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)、 (B)重合性モノマー、 および (C)重合開始剤よりなることを特徴とする歯科用硬化性組成物。 請求項1、2、または3の組成物が、さらに (D)分子内に酸性基を有するラジカル重合性モノマーを含有する歯科用硬化性組成物。 請求項1、2、3または4の組成物が、さらに、 (E)充填材を含有する歯科用硬化性組成物


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