タイトル: | 特許公報(B2)_酵素処理パルプを用いた印刷用紙およびその製造方法 |
出願番号: | 1999288242 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | D21H 11/20,C12S 3/04 |
松下 泰幸 杉野 光広 辻 洋二 宮西 孝則 JP 4308384 特許公報(B2) 20090515 1999288242 19991008 酵素処理パルプを用いた印刷用紙およびその製造方法 日本製紙株式会社 000183484 社本 一夫 100089705 今井 庄亮 100071124 増井 忠弐 100076691 栗田 忠彦 100075236 小林 泰 100075270 戸水 辰男 100077506 松下 泰幸 杉野 光広 辻 洋二 宮西 孝則 20090805 D21H 11/20 20060101AFI20090716BHJP C12S 3/04 20060101ALI20090716BHJP JPD21H11/20C12S3/04 D21B 1/00- D21J 7/00 C12S 3/04 特開平08−049187(JP,A) 特開平10−046493(JP,A) 特開平08−302588(JP,A) 特開平10−266090(JP,A) 特開平07−229085(JP,A) 特開平10−259587(JP,A) 5 2001115388 20010424 7 20060327 河原 肇 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は印刷用紙およびその製造方法に関する。更に詳しくは、寸法安定性に優れた印刷用紙およびその製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、印刷物に対する品質要求が高まり、より印刷適性の優れる紙が求められるようになった。また、印刷物の需要が増えてきており、抄紙及び印刷の高速化が進んでいる。しかしながら、抄紙及び印刷の高速化に対応するには紙の原料となるパルプの叩解度を高め、紙の強度を高める方法が一般的に採られているが、この方法であると寸法安定性が悪化し、オフセット印刷の場合印刷ずれを起こしたり、電子写真方式に代表されるトナー印刷の場合、紙がカールし印刷機から紙が排出されず紙詰まりが発生することがある。【0003】以上のように、抄紙及び印刷の高速化の要求を同時に満たすことは非常に困難なことであった。従来この欠点を防ぐため、紙力増強剤等の薬品を用いているが、内添した場合、高速抄紙であると紙へのリテンションが低くなり、多量の添加が必要となる。また、リテンションが低いため白水に蓄積されやすくデポジットの原因となり、マシントラブルや紙面欠陥などを引き起こす。【0004】外添した場合、紙の内部まで浸透しないので内添よりも効果が低く、問題を解決するまでには至っていない。近年、パルプの改質方法として酵素をパルプ繊維に作用させる技術が多数報告されている。たとえば、特公平2−20756号公報、特開平1−92490号公報、特公平3−4672号公報、特開平6−166978号公報、特開平6−316899号公報、特開平7−279078号公報、特開平7−331588号公報、特開平3−124891号公報、特許2841328号公報等に開示されているように、叩解前或いは後に酵素を添加し叩解性やパルプ繊維の改質を行う方法や、特開平2−229291号公報のように白水に酵素を添加し抄紙機の操業性を向上させる方法が開示されている。また、特許2838003号公報に酵素と水溶性カチオンポリマーとを組み合わせて紙パルプの濾水性を向上させる方法が開示されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】この発明は、紙の強度を落とさず、印刷用紙の寸法安定性を向上させる方法について鋭意研究を重ねた結果、少量のセルラーゼを繊維と反応させてやれば紙の強度が変わらず、寸法安定性が著しく向上することを見いだし、本発明に至った。【0006】なお、特開平10−46493号公報、特開平10−46495号公報に酵素を用いて寸法安定性を向上させる方法が提案されているが、この提案はろ紙分解活性を有さない酵素で処理すればよいことを見いだしたのに対し、本発明はろ紙分解活性を有するあらゆる酵素をごく少量添加すればよいこと見いだした点で異なっている。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、CMC活性およびろ紙分解活性を有する酵素をパルプに対してCMC活性が0.01〜1unit/絶乾パルプg、かつろ紙分解活性が0.001〜0.2unit/絶乾パルプgであるように添加して反応させた後、前記酵素を失活させ、そのようにして得られた酵素処理パルプを全体の20%以上用いた印刷用紙およびその製造方法を提供する。【0008】【発明の実施の形態】本発明はセルラーゼを作用させたパルプを用い、寸法安定性の優れた印刷用紙を製造することおよびその印刷用紙に関する。使用するパルプは植物繊維由来のものであれば製法にかかわらず何でも構わない。また使用する酵素はCMC活性およびろ紙活性があれば、どのような酵素でも構わない。酵素の添加量はCMC活性0.01〜1unit/絶乾パルプg、好ましくは、0.1〜0.5unit/絶乾パルプg、ろ紙分解活性が0.001〜0.2unit/絶乾パルプg、好ましくは0.01〜0.1unit/絶乾パルプgであればよく、pHは3〜10、好ましくは、4〜9であり、反応温度は30〜70℃、反応時間は10分間以上でおこなえば問題ない。酵素処理後、酵素を失活させることに関しては、抄紙段階でドライヤーに入るため、特に失活させる工程を設ける必要はないが、酵素添加してから抄紙するまでの時間が長い場合は、反応を止めるために80℃以上、15分間以上で失活させてもよい。【0009】紙の寸法安定性は繊維間結合力に大きく影響する。繊維同士の絡み合いが強くなり接触している場所が多くなると、空間的に余裕がなくなり、繊維の膨潤伸縮の影響が出やすくなる。一方、繊維間結合が弱い場合、繊維自体は膨潤伸縮するが、隣接する空間部分を埋めるだけに終わり、紙全体の寸法はあまり変わらない。従って、この発明の効果が起こる原因としては、酵素処理により結合力を増やしている微細繊維が溶解し、空間的に余裕が出て、紙全体の寸法安定性が向上するものと考えられる。しかしながら、酵素の添加量が多くなると繊維が柔らかくなり、それ自体の膨潤伸縮が大きくなるため寸法安定性は悪化する。また、繊維のフィブリルもなくなってしまうため紙の強度も悪化する。しかしながら、上記の酵素添加であれば非常に微細な繊維だけを溶かし、繊維のフィブリルはそのままなので、紙の強度低下を起こさずに寸法安定性を飛躍的に向上させることができる。【0010】酵素の添加場所は機械的な力が加わり、微細繊維が発生した後、つまり、叩解処理後に行うのが望ましく、更には酵素をマシン前チェストに添加し、使用するパルプ全部を処理するのが望ましいが、叩解処理後に酵素処理したパルプを少なくとも20%以上配合すれば本発明の効果を十分に発揮することができる。【0011】前記酵素処理されたパルプは公知の抄紙機にて抄紙されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。しかしながら、高速抄紙を考慮に入れた場合には、ギャップフォーマーを有する抄紙機が好適に用いられる。また、タルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の填料の他に、一般に使用される各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内填サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加しても何ら問題はない。【0012】また、外填としてポリアクリルアミド、デンプン等を塗布しても構わない。【0013】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に示すが、本発明は勿論かかる実施例に限定されるものではない。【0014】CMC活性及びろ紙分解活性の測定法:カルボキシメチルセルラーゼ(CMCase)活性は、クエン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH4.8)で好適に希釈した0.25mlの酵素を、0.25mlの0.5%CMC(中粘度;Sigma Chemical、St. Louis、MO)とともに50℃で10分間インキュベートすることによって測定する。0.50mlの2-ヒドロキシ-3,5-ジニトロ安息香酸(DNSA)溶液(蒸留水50ml中DNSA 0.5gと、水酸化ナトリウム0.8gと、酒石酸カリウムナトリウム15g)を加えて100℃で5分間インキュベートする。最後に5mlの蒸留水を加えた後、内容物を十分に撹拌する。遊離糖類は,Perkin E1mer Lambda 3B UV/Vis分光光度計により標準物質としてグルコースを用い、540nmにおいて測定する。酵素の濃度は、補正吸光度が0.05〜0.25の範囲にあるように設定する。この分析法は通常エンド−1,4−べータグルカナーゼ活性を測定する。【0015】ろ紙分解活性は、0.5mlの酵素溶液を、Whatman No.1ろ紙50mgを含有する1.0mlのクエン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH4.8)に加えることによって測定する。50℃において60分間インキュベート後、3.0ml のDNS.A溶液を加えて正確に5分間沸騰させる。ついで内容物を2 0mlの蒸留水で希釈し、比色法により540nmにおいて標準物質としてグルコースを用いて遊離糖類を測定する。実施例1リファイナーでフリーネスを400mlに調整した市販LBKP50gを硫酸でpH4.5に調整した後、セルラーゼとして合同酒精社製ベッセレックスをCMC活性0.5unit/絶乾パルプgであるように添加し、さらに水を加えてパルプ濃度10%にして50℃で30分反応させた。CMC活性0.5unit/絶乾パルプgのときのろ紙分解活性は0.02unit/絶乾パルプgであった。その後、80℃で30分加温して酵素を失活させた。この酵素処理パルプを、JIS P8222に規定されているように手すき、コーチング、プレスを行った後、シートを乾燥プレートから剥がし、湿度65%、温度20℃にて自由乾燥させた。乾燥後、マークを2点つけ、その距離を正確に測定した後、水に1時間浸し、その2点間の距離がどのくらい変化したかを測定し、以下の式で水伸び率を算出した。【0016】結果を表1に示す。【0017】【表1】【0018】実施例2リファイナーでフリーネスを400mlに調整した市販LBKP50gに、セルラーゼとして合同酒精社製ベッセレックスをCMC活性0.5unit/絶乾パルプgであるように添加し、50℃で30分反応させた後、80℃で30分加温して酵素を失活させた。その後、JIS P8222に規定されているように手すき、コーチング、プレスを行った後、シートを乾燥プレートから剥がし、湿度65%、温度20℃にて自由乾燥させた。乾燥後、マークを2点つけ、その距離を正確に測定した後、105℃で5分間乾燥させ、その2点間の距離がどのくらい変化したかを測定し、以下の式で収縮率を算出した。結果を表2に示す。【0019】【表2】【0020】実施例3LBKPの替わりに新聞古紙から製造した再生パルプを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。実施例4LBKPの替わりに新聞古紙から製造した再生パルプを用いた以外は実施例2と同様の操作を行った。結果を表2に示す。実施例5リファイナーでフリーネスを400mlに調整した市販LBKP50gを硫酸でpH4.5に調整した後、セルラーゼとして合同酒精社製ベッセレックスをCMC活性0.5unit/絶乾パルプgであるように添加し、さらに水を加えてパルプ濃度10%にして50℃で30分反応させた。CMC活性0.5unit/絶乾パルプgのときのろ紙分解活性は0.02unit/絶乾パルプgであった。その後、80℃で30分加温して酵素を失活させた。この酵素処理パルプを、JIS P8222に準じて手抄紙を調製し、JIS規格にて強度試験を行った。結果を表3に示す。【0021】【表3】【0022】実施例6LBKPの替わりに新聞古紙から製造した再生パルプを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。結果を表3に示す。比較例1セルラーゼを加えない点以外は実施例1と同様の操作を行った。【0023】結果を表1に示す。比較例2セルラーゼを加えない点以外は実施例2と同様の操作を行った。【0024】結果を表2に示す。比較例3セルラーゼを加えない点以外は実施例3と同様の操作を行った。【0025】結果を表1に示す。比較例4セルラーゼを加えない点以外は実施例4と同様の操作を行った。【0026】結果を表2に示す。比較例5セルラーゼを加えない点以外は実施例5と同様の操作を行った。【0027】結果を表3に示す。比較例6セルラーゼを加えない点以外は実施例6と同様の操作を行った。【0028】結果を表3に示す。この結果から、パルプに極少量のセルラーゼを作用させてやれば、紙の強度を落とさず、寸法安定性を飛躍的に改善することが可能となった。【0029】【発明の効果】本発明により、非常に簡便な方法で紙の強度を落とさず、印刷用紙の寸法安定性を飛躍的に向上させることが可能となった。 CMC活性がある酵素をパルプに対してCMC活性0.01〜1unit/絶乾パルプgかつろ紙分解活性が0.001〜0.2unit/絶乾パルプgであるように添加して処理した酵素処理パルプを全体の20%以上用いて製造した印刷用紙。 酵素を添加するパルプが、再生パルプであるか、ケミカルパルプを有するものであるか、又はメカニカルパルプを有するものである請求項1に記載の印刷用紙。 CMC活性がある酵素をパルプに対してCMC活性0.01〜1unit/絶乾パルプgかつろ紙分解活性が0.001〜0.2unit/絶乾パルプgであるように添加して反応させた後、前記酵素を失活させ、そのようにして得られた酵素処理パルプを全体の20%以上用いて印刷用紙を製造する方法。 CMC活性がある酵素を叩解処理後のパルプに対してCMC活性0.01〜1unit/絶乾パルプgかつろ紙分解活性が0.001〜0.2unit/絶乾パルプgであるように添加して反応させた後、前記酵素を失活させ、そのようにして得られた酵素処理パルプを全体の20%以上用いて印刷用紙を製造する方法。 酵素を添加するパルプが、再生パルプであるか、ケミカルパルプを有するものであるか、又はメカニカルパルプを有するものである請求項3又は4いずれかに記載の印刷用紙を製造する方法。