タイトル: | 特許公報(B2)_ケルダール法による有機化合物中の窒素定量法 |
出願番号: | 1999256576 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 30/06,G01N 31/00 |
米持 敏之 中島 信一 JP 4233179 特許公報(B2) 20081219 1999256576 19990910 ケルダール法による有機化合物中の窒素定量法 日本曹達株式会社 000004307 廣田 雅紀 100107984 松橋 泰典 100113860 米持 敏之 中島 信一 20090304 G01N 30/88 20060101AFI20090212BHJP G01N 30/06 20060101ALI20090212BHJP G01N 31/00 20060101ALI20090212BHJP JPG01N30/88 HG01N30/06 EG01N31/00 F G01N 30/88 G01N 30/06 G01N 31/00 - 31/22 B01J 19/12 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開昭54−030891(JP,A) 特開昭63−072336(JP,A) 特開平10−332661(JP,A) 特開平08−029402(JP,A) 特開平07−098304(JP,A) 特開平03−010158(JP,A) 特開平08−054380(JP,A) 特開昭55−000451(JP,A) 特開昭61−258166(JP,A) 特開昭63−286763(JP,A) 特開昭57−084355(JP,A) 特開昭50−025286(JP,A) 米持 敏之,マイクロウェーブ及びイオンクロマトグラフィーを用いたケルダール法窒素分析法の検討,第94回品質管理セミナー・ベーシックコース 班別研究発表会 抄録,1993年 3月15日,P.9-12 J.M.Bremner, and J.C.Yeomans,Laboratory Techniques for Determination of Different Forms of Nitrogen,Advances in Nitrogen Cycling in Agricultural Ecosystems,1988年,P.399-414 Lois M.Atakins, David J.Miner, G.Sitta Sittampalam, and Charles D.Wentling,Recommendations for Establishment of Reference Standards for Recombinant-DNA-Derived Proteins and Polypeptides,Association of Official Analytical Chemist,1987年 7月,Vol.70, No.4,P.610-617 1 2001083134 20010330 7 20060710 特許法第30条第1項適用 平成11年3月15日〜3月19日 財団法人日本科学技術連盟主催の「第94回品質管理セミナー・ベーシックコース 班別研究発表会」において文書をもって発表 河野 隆一朗 【0001】【発明の属する技術分野】この発明はケルダール法による有機化合物中の窒素定量法に関わり、更に詳しくは窒素濃度の測定にイオンクロマトグラフィーを用いる窒素定量法に関する。【0002】【従来の技術】有機化合物中の窒素含量を測定する場合、一般的に用いられている方法にケルダール窒素定量法がある。このケルダール窒素定量法は分析精度が良好で、タンパク質など種々の窒素含有有機化合物の定量に広く用いられており、日本薬局方では窒素定量法としてケルダール法が採用されている。ケルダール法の原理は周知のごとく、試料を適切な分解促進剤である触媒の存在下で濃硫酸により加熱分解し、試料中の窒素を硫酸アンモニウムとして固定し、これに水酸化ナトリウムなどの強アルカリを加え、遊離したアンモニアを蒸留して捕集し、硫酸により滴定して試料中のアンモニア量を定量するものである。しかしながら、加熱分解には時間を要する場合があり、蒸留、滴定まで行うと複数の試料を分析する場合には相当の時間を要する。また、操作が煩雑であり分析者の熟練を要することや試料の加熱分解あるいはアンモニア定量時の滴定には濃硫酸を使用するため危険性を伴うなどの指摘がある。そこで、分析時間の短縮、分析操作の煩雑さを回避するためケルダール窒素定量法における種々の改良がなされている。【0003】例えば、分解時間を短縮する方法として、特開昭54−30891号公報、特開昭55−451号公報、特開昭61−258166号公報には、分解触媒として過硫酸カリ、アンチモン酸塩、無機ペルオクソ塩を用いることが記載されている。また、特開昭50−25286号公報、特開昭63−286763号公報等には、自動分解装置、自動蒸留滴定装置、硫酸、触媒添加の自動化など、それぞれの装置を組み合わせることによって一部あるいは全工程を自動化した方法が記載されている。【0004】また、特開昭63−72336号公報、食品総合研究所研究報告、61、15(1997)には、分解工程の短縮における時間の短縮、操作の簡略化のためマイクロ波装置を用いて有機化合物を分解することが記載されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来のケルダール窒素定量法の欠点である分析時間、及び操作性を改善する試みとして試料の加熱分解、遊離したアンモニアの蒸留、捕集、滴定の3段階をそれぞれ自動化した装置等が開示されているが、これら自動化された装置は高価であり、更にこの装置を他の分析への応用するという点では汎用性に欠けているという問題があった。また、分解触媒の改良や、マイクロ波装置を用いる方法は、試料の分解時間を短縮する効果があるものの、依然としてアンモニアの定量には従来の方法が用いられており改善の余地がのこされている。本発明は、分析時間の短縮、分析操作の簡便性、安全性の向上を図り、しかも汎用性の高い装置を用いてケルダール法による有機化合物中の窒素定量方法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、含窒素有機化合物をマイクロウエーブ分解装置により分解し、硫酸アンモニウムとした分解液をイオンクロマトグラフィーにより定量することで、分析時間の短縮、分析操作の簡便性、安全性の向上を図り、しかも汎用性の高い装置を用いて有機化合物中の窒素を定量することが可能となり本発明を完成するに至った。【0007】即ち、本発明は、ケルダール法を用いた有機化合物中の窒素定量法において、マイクロウエーブ分解装置で濃硫酸中、過酸化水素、及び硫酸銅を用いて有機化合物を分解する工程、及びイオンクロマトグラフィーを用いてアンモニウムイオンを定量する工程を含む窒素定量法であって、マイクロウエーブ分解装置を用いて有機化合物を分解する工程において用いる過酸化水素の量を、用いる濃硫酸の量に対して容積基準で1/10〜1/2とすることを特徴とする、窒素定量法に関する。【0009】【発明の実施の形態】本発明に用いられるマイクロウエーブ分解装置としては、含窒素有機化合物を分解するのに十分なエネルギー量のマイクロ波を照射し急速に分解できる装置であれば特に制限されず、湿式化学分析における多目的サンプル前処理処理装置として使用され、特に高い精度を要求される原子吸光、ICP、ICP−MS分析のサンプル分解に広く使用されている汎用の装置を使用することができる。また、開放系、密閉系の両方とも使用することができる。【0010】マイクロウエーブ分解法ではマイクロ波の迅速な分解能を利用しており、特に密閉系では外部の汚染を受けることなく、また目的元素が揮散により損失することなく分解できる。また、従来のケルダール法と異なり、硫酸、触媒等を添加する際に容器の壁に付着しないよう等の特別の注意を払う必要がなくなる。装置としては、近年のマイクロウエーブ分解装置の進歩による分解温度、時間、マイクロ波加熱電力などのプログラミングが可能で、安全機能が十分な装置が好ましい。【0011】本発明に用いられるイオンクロマトグラフィーは、イオン交換クロマトグラフィーの一つであり、分離カラムを用いて試料中のイオン成分を分離し、分離カラムの後に接続した除去カラムによって、移動相として用いた溶離液を水または低伝導度のものに変換して溶離液のバックグラウンドを低減することにより目的のイオン成分を電気伝導度セルによって検出することを可能にしたクロマトグラフ法であり、試料中の陽イオン、陰イオン、または遷移金属の分析に汎用されている一般的な方法を使用することができる。アンモニウムイオンの保持時間は約4〜5分であるため、一度に多数の試料を分析する場合においても短時間で定量が可能である。また、自動注入装置を用いれば分析に拘束される時間は短縮される。【0012】本発明の方法では、まず試料、硫酸、分解促進剤をマイクロウエーブ分解容器に入れ、マイクロウェーブ分解装置にて分解を行う。試料量、硫酸、分解促進剤の添加量は例えば日本薬局方で採用されているセミミクロケルダール法等に準じて調整することができるが、マイクロウエーブ分解容器の大きさに依存するため必要に応じて適当に調整する必要がある。試料は、その性状に関係なく測定が可能であり、直接秤量した試料を容器に直接移し取ることもできるし、少量秤量する場合には、溶媒で希釈後分取することもできる。希釈する溶媒としては、窒素を含まない溶媒であれば特に制限されないが、溶解するものであれば希硫酸が特に好ましい。【0013】硫酸は水分含量の少ない濃硫酸を用いるのが好ましい。用いる量は、分解する試料量、及び反応容器によって制限はされるが、通常、含まれる窒素量2〜3mgに対して硫酸2〜10mlの範囲で使用される。分解促進剤としては、例えば試料100mgに対して、硫酸カリウム10g、硫酸銅1gの混合物を1g、過酸化水素1ml用いることが例示することができる。その他、各種の硫酸塩や、酸化水銀等の重金属、酸化セレン、酸化アンチモン等の15族典型金属が一般的に用いられているが、本発明の方法ではイオンクロマトグラフィーによる定量を行うことから過剰のカリウムイオン等はアンモニウムイオンの定量の妨害となる場合があり、更に分析後の廃棄物の環境への影響を考慮して、アンモニウムイオンの定量に影響を与えない塩の選択および量、及び過酸化水素の量を調整することにより最適の分解条件を見出した。【0014】即ち、用いる硫酸の量に対して、容積基準で1/10〜1/2、好ましくは1/5〜2/5の範囲で過酸化水素を用い、更に硫酸銅を触媒に用いることで、分解促進剤としてもっとも汎用されている硫酸カリウムを用いることなく93%以上の回収率で含窒素有機化合物を分解することが可能となった。多数のサンプルを一度に分析する場合、硫酸カリウム等の塩はなるべく少ない方が、廃棄物の量を極力抑えられるため、分析効率が向上する。【0015】用いる過酸化水素は、通常30%のものが使用されるが、50%ものを使用することもできる。用いる硫酸銅は、通常溶解性を考慮して水和物で使用される。用いる量は、通常試料に対して10倍〜1000倍の範囲で使用される。【0016】密閉型のマイクロウェーブ分解装置を用いた場合、試料、硫酸、触媒、過酸化水素をマイクロウエーブ分解容器に入れに蓋をして密閉する。マイクロウェーブ分解装置を用いる方法では、通常マイクロ波を照射後は触媒、過酸化水素等を更に加える必要はないが、反応が不十分な場合には照射を停止して試薬を加えることもできる。【0017】分解容器を分解装置に設置し、試料の種類・量に応じてマイクロ波の出力を適当に設定し、照射して分解を行うことができる。マイクロ波の出力は分解時間ともある程度関係するが、装置の安全基準を超えない限り適当な範囲に設定することができ、更に、経時的に変化させることもできる。【0018】分解時間は、分解する試料の量にもよるが、5分から30分程度で十分に分解できる。分解終了後、マイクロウェーブ分解容器を装置から取り出し冷却し、イオンクロマトグラフィーの検量線濃度の範囲内となるように分解液を適当に希釈調製するだけで有機化合物の含窒素分をアンモニウムイオンとして検出することができる。【0019】アンモニウムイオンをイオンクロマトグラフィー法で検出する手順としては、まず検量線を作成する。検量線濃度は試料中の窒素含量、イオンクロマトグラフィーの検出器感度等を勘案し決定する。検量線溶液、希釈試料溶液をイオンクロマトグラフィーにて分析を行う。分離カラムは陽イオン用カラムを使用し、分離カラムに適した溶離液を用いる。例えば、ポリマー系充填剤でカルボン酸あるいはスルホン酸を官能基に持つ陽イオン交換カラムを使用した場合、溶離液として10〜20mmol/lのメタンスルホン酸または塩酸などの酸性溶液を例示することができる。【0020】また、溶離液に用いている電解質を水あるいは低伝導度のものに変換して目的とするイオン成分の検出感度を上げる効果のある陽イオン分析用サプレッサーを使用することが望ましい。硫酸濃度が高いと硫酸イオンがクロマトグラムに影響を与えるので試料溶液の希釈等で調整する。検量線よりアンモニウムイオンを定量し、試料中の窒素含量を求める。【0021】以下実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。【0022】【実施例】実施例1DL−メチオニン(試薬特級)1.50gを精秤し0.1モル/lの硫酸50mlに溶解した。この試料溶液0.3mlを100mlのマイクロウエーブ分解容器に取り、硫酸銅(II)5水和物(試薬特級)100mg、濃硫酸(96〜98%)5ml、30%過酸化水素1mlを添加し蓋をして密閉した。マイクロウエーブ分解容器を分解装置に設置し、分解を開始する。マイクロウエーブ分解条件は250W:1分、0W:2分、250W:5分、400W:6分、650W:10分、冷却5分の分解プログラムで分解を行った。分解終了後、分解容器を冷却し、分解液を100mlメスフラスコに移し、水を加えて100mlとする。更に、この溶液0.3mlを50mlのメスフラスコに分取し水を加えて50mlとし、これを希釈試料溶液とした。【0023】イオンクロマトグラフィーにて試料中のアンモニウムイオンを定量するため、3点検量線用溶液を調製した。市販のアンモニウムイオン標準液(1000μg/ml)を用いて、それぞれ0、0.08、0.2μg/mlとなる溶液を調製し検量線溶液とする。この溶液には希釈試料溶液とマトリックスを合わせるため硫酸0.03ml/100mlを加えた。検量線溶液、希釈試料溶液をそれぞれイオンクロマトグラフィーで分析し、得られた検量線から試料中のアンモニウムイオンを定量し、試料より計算した窒素含有量と比較して回収率を求め、その結果を第1表に示した。【0024】実施例2、3、4濃硫酸4ml、過酸化水素水2ml(実施例2)、濃硫酸5ml、過酸化水素0.5ml(実施例3)、濃硫酸5ml、過酸化水素2ml(実施例4)を用いる以外実施例1と同様に分析を行い、その回収率を第1表に示した。【0025】比較例1、2、濃硫酸6ml、過酸化水素水4ml(比較例1)、濃硫酸4ml、過酸化水素4ml(比較例2)を用いる以外実施例1と同様に反応を行い、回収率を第1表に示した。【0026】【表1】【0027】実施例5実施例1に記載されている操作をサンプリング数2回の4日間について行い、回収率を求め第2表に示した。【0028】【表2】【0029】得られたデータを用いて分散分析を行い、第3表に示した。【0030】【表3】【0031】以上の結果を用い分析精度の推定を行ったところ、窒素含量理論値に対し、回収率はほぼ100%を示し、日間に有意差はなく、分析精度は良好であることが確認された。【0032】【発明の効果】本発明より汎用性の高い装置によりケルダール法による窒素分析が可能となった。また、イオンクロマトグラフィーでアンモニウムイオンを定量することにより、遊離アンモニアの蒸留、捕集や硫酸によるアンモニアの滴定が不要となることから安全に分析を行うことができ、分析時間が短縮された。したがって、窒素含有有機化合物の分解にマイクロウエーブ分解装置を用い、分解液中のアンモニウムイオンの定量にイオンクロマトグラフィーを用いることにより、▲1▼分解、定量に要する分析時間あるいは分析に拘束される時間が短縮される。▲2▼分解し遊離したアンモニアの蒸留・捕集操作を必要としないことから分析時間の短縮となり、また強アルカリを用いてアンモニアを遊離させ蒸留する操作に関する危険性を伴わない。▲3▼アンモニアの定量をイオンクロマトグラフィーで行うことから、滴定に使用する硫酸を扱うことがなく安全に操作ができる。▲4▼これらより5試料について分析を行った場合、従来法では約7時間要したところ本発明法では約3〜4時間に短縮された。▲5▼マイクロウエーブ分解装置あるいはイオンクロマトグラフィーは他の分析に汎用されている。などの効果があった。 ケルダール法を用いた有機化合物中の窒素定量法において、マイクロウエーブ分解装置で濃硫酸中、過酸化水素、及び硫酸銅を用いて有機化合物を分解する工程、及びイオンクロマトグラフィーを用いてアンモニウムイオンを定量する工程を含む窒素定量法であって、マイクロウエーブ分解装置を用いて有機化合物を分解する工程において用いる過酸化水素の量を、用いる濃硫酸の量に対して容積基準で1/10〜1/2とすることを特徴とする、窒素定量法。