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タイトル:特許公報(B2)_血液処理方法および組成物
出願番号:1999256245
年次:2009
IPC分類:G01N 33/48,A61B 5/15


特許情報キャッシュ

永井 宏幸 JP 4260303 特許公報(B2) 20090220 1999256245 19990909 血液処理方法および組成物 旭化成ファーマ株式会社 303046299 永井 宏幸 20090430 G01N 33/48 20060101AFI20090409BHJP A61B 5/15 20060101ALI20090409BHJP JPG01N33/48 BG01N33/48 KA61B5/14 300B G01N 33/48 BIOSIS(STN) BIOTECHABS(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) WPIDS(STN) Inflammation Research,1997年,Vol.46,No.9,p.342-347 Journal of Immunological Methods,1992年,Vol.153, No.1/2,p.125-131 Thrombosis and Haemostasis,1997年,Vol.77, No.4,p.690-696 Journal of Experimental Medicine,1964年,Vol.120, No.4,p.507-530 10 2001083144 20010330 14 20060804 吉田 佳代子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、キレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、および水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩により血液を処理することで、血液細胞を分離することなく、血液細胞反応の決定を再現性良く行うことができる血液の処理方法及び処理用組成物を提供するものである。【0002】【従来の技術】血液中に含まれる血球として知られているのは、赤血球、好塩基球、好中球、好酸球、リンパ球、単球などであり、これらの細胞は、生体に必要な酸素の運搬及び免疫反応や炎症反応などの生体の防御反応に携わることが良く知られている。【0003】免疫反応や炎症反応は、血球それ自身の貧食作用に代表される細胞自身による外敵や組織への直接の細胞反応や血球が保有していたメディエーターを放出する反応を通じ、そのメディエーターがその他の細胞または、組織に作用することにより行われることが知られている。これら血液中の細胞(血球)から放出されるメディエーターとして、インターロイキン類、例えば、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン9(IL−9)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン13(IL−13)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍懐死因子(TNF−α、TNF−β)を始めとするサイトカイン類や、ヒスタミン、ロイコトリエン、platelet activating factor(PAF)、major basic protein(MBP)、eosinophil cationic protein(ECP)、eosinophil peroxidase(EPO)、charcot−leyden crystal (CLC)等が知られている。これらメディエーターの血球からの放出は、時として過剰となり、気管支喘息、慢性関節リウマチ、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、糖尿病などの症状を引き起こすことが知られている。従ってこれらの物質量を決定することは、上記の疾患患者の病態を調べることや、治療に用いる薬剤の選択、さらに、疾患の基礎研究の分野において大変重要とされている。【0004】これら、血液中のメディエーター量を測定するための従来の問題点として、再現性がないこと、及び、その操作が簡便でないことが挙げられる。血液中のメディエーターは、その量が極めて微量であるうえ、血液中に存在する多量多雑なタンパク、または、血球成分が測定の精度に悪影響を及ぼすことが知られており、これを回避するためにメディエーターと、その他のタンパク、血球成分を分離して測定する操作を数段階にわたって必要としていた。メディエーターのなかで、ヒスタミン、ロイコトリエンを例として血球からのメディエーターを遊離させる方法を説明すると、血液から白血球を分離して測定する方法として、特許公開番号特開平6−205695が挙げられる。試験管に被検者からEDTA採血した血液と磁石粒子に固着化した抗好塩基球モノクローナル抗体を加え室温で5分間反応を行わせ、好塩基球を血液から分離する。磁性粒子をアビジン固層化マイクロプレートに移し、アレルギーの特異抗原をマイクロプレートのウエル内に分注し、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。そのヒスタミンの定量方法として、反応液にビオチン標識ヒスタミン、酵素標識抗ヒスタミン抗体を加え、洗浄後、アビジン固層化抗体に結合した、ビオチン標識ヒスタミン−酵素標識抗ヒスタミン抗体複合体の酵素活性を求めヒスタミン量を測定する方法が開示されている。【0005】また、別な方法としては、血液から白血球を分離して測定するために、EDTA添加条件で採血を行い、4%デキストランを加え赤血球を沈殿させ、白血球浮遊液を分離し、遠心を行い、タイロイド反応液(124mM NaCl、4mMKCl、0.64mM NaH2 PO4、1mM CaCl2、0.6mM MgCl2、10mM HEPESおよび0.03%ヒト血清アルブミン)に浮遊させ、遠心、浮遊を繰り返し行い、白血球の洗浄を行う。その浮遊液に、アレルギーの特異抗原液を加え反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。反応後遠心し、上清を採取し、上清中のヒスタミン遊離量を蛍光法、RIA法、HPLC法にて測定を行う方法がよく知られている。【0006】また、別のメディエーターであるロイコトリエンの測定方法では、血液から白血球を分離し、カルシウムイオノフォアーを加え反応を行い、好塩基球からロイコトリエンを遊離させる。そして、プロスタグランジンを含む氷冷アセトニトリル/メタノール/酢酸液を加え反応を停止し、−20℃で1時間放置後、遠心を行い、反応液中のロイコトリエン量をHPLCにて測定する方法が知られている。【0007】このように、血球から放出されるメディエーターであるロイコトリエンの測定方法において、ロイコトリエン自身の吸収特性として、280nm付近の吸収を持っているにも関わらず、ロイコトリエンの血中濃度が微量で有り、なおかつ、血中に含まれるタンパクも280nm付近の吸収を持っているために全血中のロイコトリエン量を血液から標的細胞を分離することなく測定することは不可能である。従って、血球から放出されるロイコトリエン量を測定するためには、血中からの標的細胞の分離操作が必要となる。【0008】以上の通り、血球から遊離するメディエーターを測定する方法のほとんどは、血液から血漿、血清や標的細胞を分離する操作が必要である。これは、血液中には、アルブミン、グロブリン、抗体などのタンパクや、ナトリウム、カリウムなどの無機物、糖や脂質などの有機物を含んでいるために、測定対象物を定量しようとする際に用いられる検出系である蛍光法や比色法や発光法における、ブランク値上昇の要因や血中の夾雑物によって反応が阻害されることによる反応特異性(感度)の低下が引き起こされる為である。このように、メディエーターの測定において、目的とするメディエーターと他の血液成分を分離するために数段階にわたる分離操作を必要とするのが一般的で、極めて複雑かつ煩雑な方法であった。【0009】また一方、血液と目的とするメディエーターの分離をより簡便化させた方法として、特開平3−19948による全血を用いて血球からヒスタミンを遊離させる方法が知られている。具体的には、ヘパリン採血した血液25μlとアレルゲン溶液25μlをグラスファイバーを固定化したマイクロプレートに分注し、37℃で90分反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。ヒスタミンが吸着しているマイクロプレートを洗浄後、蛍光法にて測定を行う方法が開示されている。しかしながら、この方法では、血液成分と目的のメディエーターとの分離が不十分であるため、再現性が悪く、診断に必要とする充分な感度が得られていない。【0010】以上の通り、細胞反応の決定を再現性良く行う際には、目的とする物質とそれ以外の成分を分離しなければならず、被検者から採血した際に、採血管1本1本を遠心し血球を沈降させることによる分離操作や、遠心によって得られた血漿及び血清の他容器への分注操作、あるいは、血球特異的抗体を用いた血液から血球の分離作業が必要とされるなど、操作上大変な手間がかかるとともに測定者の作業時間が伸び、それに伴う、コストをあげる要因ともなっていた。【0011】また、例え、血液成分と目的物質との分離操作を簡略化させた方法があったとしても、血液中の成分の影響により、再現性が悪く、データのバラツキから、その結果と患者の病態とは異なる結果が得られることがあるため、これら細胞反応の決定方法として、血液成分と目的物質の分離ステップを簡略化しうる、簡便かつ再現性の良い血液処理方法が望まれていた。【0012】【発明が解決しようとする課題】細胞反応の決定方法として、簡便かつ再現性の良い血液処理方法を樹立できれば、正確な測定値が得られ、結果として、被検者の病態を正しく反映するとともに、異常値に対する再検査の必要も無くなる。また、測定操作の簡便化ができ、検査センターなどの実施者のコストも大幅に改善できる。このように、再現性向上と簡便化は、この分野の検査を進めていくうえでの必然の要求である。従って、本発明の目的は、血液中の細胞反応の決定方法において、再現性が良く、簡便化が可能となる血液の処理方法及びその処理用組成物を提供することを目的とする。【0013】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題に対して、鋭意研究を行った結果、血液に、キレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、及び水溶性媒体中で2価金属イオンを溶出しうる金属塩を添加することで、前記課題を解決しうることを見出し本発明に至った。【0014】即ち、本発明は、血液に、キレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、及び水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩を添加することを特徴とする、細胞反応のための血液処理方法、及び処理用組成物を提供する。本発明で用いられる血液とは、全血を生理的塩類溶液にて1〜10倍希釈した血液で有ればよいが、好ましくは全血が望ましい。【0015】本発明におけるキレート剤とは、水溶液中の2価金属イオンと結合する能力を持つ物質で、血液中にモル濃度比として、キレート剤1分子に対して2〜10倍分子のカルシウムが存在する場合に、室温条件下で1時間以内に血液凝固が起こる物質である。例としては、EDTA、クエン酸、シュウ酸、クラウンエーテル、ニトリロ三酢酸、などが挙げられるが、好ましくは、市販されている採血管に含まれているEDTA−2Na、EDTA−2Kが好ましく、さらに好ましくは、EDTA−2Naが好ましい。その血液細胞反応時の濃度は、1〜50mMであれば良く、好ましくは1.5〜14mM、より好ましくは2〜3.5mMが好ましい。【0016】本発明におけるキレート能を有しない抗血液凝固剤とは、血液中に1〜10mMのカルシウムの存在下、または非存在下において、血液凝固が起こらない抗凝固剤のことであり、例えば、2mMのカルシウムの存在下、室温で1時間以内に血液凝固が起こらない抗血液凝固剤である。抗血液凝固剤の例としては、ヘパリン、プラスミン、ヒルジン、アンチトロンビンIII、トロンボモジュリン、プロスタグランジン、Chicago blue、Germanin、血液凝固因子に対する抗体、血液凝固因子に対するレセプター等が挙げられる。血液凝固因子としては、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子などが有り、それに対する抗体またはレセプターなら何でも良い。これら抗血液凝固剤として、好ましくはヘパリンナトリウム、ヘパリンリチウムなどが挙げられるが、さらに好ましくは、ヘパリンナトリウムが挙げられる。その血液細胞反応時の濃度は、1〜50U/ ml、好ましくは5〜30U/ mlが望ましい。ここで、1Uとは、日本薬局方に定められた1単位と同等量とする。【0017】また、本発明における2価陽イオンとは、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、マンガンイオン(Mn2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、カドミウムイオン(Cd2+)、及び銅イオン(Cu2+)等が挙げられるが、好ましくはカルシウムイオン、あるいは、マグネシウムイオンが好ましい。水溶液中で2価陽イオンを生じさせうる金属塩としては、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が挙げられる。例えば、CaCl2、MgCl2、MnCl2、ZnCl2、CdCl2、CuCl2、CaSO4 、MgSO4、MnSO4、ZnSO4、CdSO4、CuSO4、Ca(NO3)2、Mg(NO3)2、Mn(NO3)2、Zn(NO3)2、Cd(NO3)2、Cu(NO3)2、CaCO3 、MnCO3、CdCO3 、CaHPO4、MgHPO4、Zn3(PO4)2等が挙げられるが、好ましくは、CaCl2、MgCl2が望ましい。その血液細胞反応時の濃度は、1〜200mMが望ましく、キレート剤とのモル濃度比は、キレート剤1分子に対して金属塩が1〜200倍が良く、好ましくはキレート剤1分子に対して1〜50倍が望ましい。【0018】本発明で用いられる細胞反応とは、細胞上のタンパク発現反応、細胞からのタンパク等の有機化合物放出反応であり、細胞に何らかの刺激を与えた時、または、何ら刺激を与えていない状態で、細胞の代謝の中で放出されたものであっても構わない。ここで言う細胞の刺激とは、外部から物質を添加し、細胞上の物質との結合、あるいは細胞内への浸透により、細胞内の情報伝達系を活性化することである。情報伝達系としては、タンパク質のリン酸化やプロテアーゼ活性化、または、イノシトール3リン酸による細胞内カルシウム濃度上昇作用があげられる。細胞に何らかの刺激を与えた時の例としては、好塩基球からのヒスタミンやロイコトリエンの放出において、好塩基球上のFcεRIレセプターに結合したアレルギー特異的IgE抗体の2分子とアレルゲンが結合し、アレルギー特異的IgE抗体を架橋することにより、細胞内の情報伝達系であるリン酸化酵素が活性化され、細胞内へのカルシウム流入を引き起こし、ヒスタミンなどのメディエーターが放出される例が挙げられる。【0019】また、刺激されていない状態で放出される例としては、好塩基球からのインターロイキン4、インターロイキン8の放出が挙げられる。そして、放出される有機化合物としては、血液細胞から放出されたメディエーターが挙げられる。メディエーターとしては、好塩基球からのヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキン類、platelet activating factor(PAF)、好酸球からのMajor basic protein(MBP)、Eosinophile cationic protein(ECP)、Eosinophil−derivered neurotoxin(EDN),Eosinophil peroxidase(EPO)、Charcot−beydencrystal(CLC)、トロンボキサンなどが挙げられるが、好ましくは、好塩基球から遊離されるヒスタミン、ロイコトリエン、PAF、インターロイキンが望ましい。【0020】血液の処理方法としては、3つの組成物すなわち、キレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩を添加する順序は問わず、いずれの順序で添加しても、再現性良く細胞反応を決定することを可能にするものである。例えば、採血時にキレート剤のみを添加しておき、細胞反応時にキレート能を有しない抗血液凝固剤、及び水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩を加えても良いし、採血時にキレート能を有しない抗血液凝固剤を添加しておき、細胞反応時にキレート剤、及び水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩を加えても良い。また、採血時にキレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩のすべてを添加し、これを用いて細胞反応を行っても良い。【0021】この時のキレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩の添加方法としては、粉末であっても、適当な緩衝液中に溶解されていても良い。適当な緩衝液とは、Pipes緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、Good緩衝液などで、細胞の安定化のための至適なpHに調整されていることが好ましく、その範囲は5〜10、好ましくは6〜9に調整されることが望ましい。また、必要に応じて塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、酢酸カリウムの塩や防腐剤としてアジ化ナトリウムを加えても良い。【0022】添加する際の容器の材質に関しては、ポリスチレン、ポリプロピレン、テフロン、ポリエチレン、メチルベンテン樹脂(TPX)、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂等のプラスティック、ステンレス、チタン等の金属、ガラス及びゴム等何でも用いることができる。容器の色に関しては、透明、半透明、褐色等何でも用いることができる。【0023】具体的な方法として、抗血液凝固剤としてヘパリンを添加した血液に、キレート剤であるEDTA及び金属塩として塩化カルシウムを添加し、この組成液に被験者において疑われるアレルゲンを添加し、血液細胞からヒスタミン等のメディエーターを放出させる。そして、その放出されたヒスタミン等を既知の測定法にて直接測定するだけで良い。【0024】ここで言う、アレルゲンとは、アレルギー反応を引き起こす原因物質であり、特異的IgE抗体量測定試薬として市販されているアレルゲンやアレルゲン抽出物として市販されているものなど通常検査で用いられているアレルゲンであれば何でも良い。例えば、スギ、カモガヤなどの花粉や、牛乳、卵白などの食物、菌類などが挙げられる。【0025】別の使用例においては、キレート剤であるEDTAを用い、EDTA採血された血液に、抗凝固剤であるヘパリン及び、金属塩として2価の重金属を添加する。そして、この組成液に上述のごとく、アレルゲンを添加し、血液細胞からメディエーターを放出させ、これを既知の測定法で測定すれば良い。さらに、別の例では、被検者から採血し、その血液にキレート剤であるEDTA、抗凝固剤であるヘパリン及び、金属塩として2価の重金属を添加し、この組成液に上述のごとく、アレルゲンを添加し、血液細胞からメディエーターを放出させ、これを既知の測定法で測定すれば良い。【0026】決定方法とは、細胞反応によって放出された有機化合物の量を定量する方法や目視などにより確認する方法である。有機化合物量を定量する方法には、支持体に固着させた担体に目的とする有機化合物を補足させ、検出系により測定する方法や有機化合物をカラムにより分離した後に検出系によって測定する方法が挙げられる。目視により確認する方法とは、細胞反応後の血球の状態を目視により確認する方法である。決定方法として好ましくは、有機化合物を定量する方法が望ましく、より好ましくは、支持体に固着させた担体に有機化合物を補足させる方法が望ましく、さらに好ましくは、有機化合物に特異的な吸着体を用いて測定する方法が望ましい。【0027】ここで言う支持体とは、血球からメディエーターを遊離させる反応を行う容器であり、マイクロプレート、試験管、磁性ビーズなどが挙げられる。支持体の材質に関しては、ポリスチレン、ポリプロピレン、テフロン、ポリエチレン、メチルベンテン樹脂(TPX)、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂等のプラスティック、ステンレス、チタン等の金属、ガラス及びゴム等何でも用いることができ、また、支持体の色に関しては、褐色、透明、半透明など何でも良い。【0028】また、固着させた担体とは、有機化合物に対して特異的に吸着する物質のことであり、有機化合物に対する抗体やレセプター、グラスファイバーなどが挙げられる。検出系とは、有機化合物量を測定する方法であり、比色法、蛍光法、発光法、放射活性法などが挙げられ、EIA法やRIA法及び特異的に吸着する担体を用いて測定する方法である。【0029】ここで言うEIA法とは、メディエータに対する抗体を支持体に固定化し、標識酵素の活性によりメディエーター量を測定する酵素免疫測定方法である。例えば、EIA法を用いた細胞反応によって放出された有機化合物の決定方法として、好塩基球から放出されるヒスタミンの測定では、市販されているキットの方法によって測定できる。例えば次のように行う。被検者からヘパリン採血した血液とアレルギー特異的抗原溶液と反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。遊離したヒスタミンとアシル化試薬を反応させ、ヒスタミンをアシル化する。次に、ヒスタミンの定量方法として、抗アシル化ヒスタミン抗体を固層化したマイクロプレートにアシル化したヒスタミンと酵素標識したヒスタミンを添加し反応を行い、標識酵素活性を測定することによって抗アシル化ヒスタミン抗体に結合した酵素標識ヒスタミン量を求め、そこから、アシル化ヒスタミン量を求める方法である。【0030】また、他のヒスタミン測定方法では、特開平6−205695によると、血液10mlにHA−HEPES緩衝液40mlを加え、血液を希釈した後、試験管に500μlずつ分注し、これに、好塩基球と反応するモノクローナル抗体を固着させた磁性粒子50μlを加え、室温で5分間反応を行い、モノクローナル抗体と好塩基球の結合反応を行う。続いて磁石でビーズを集め上清を除いた後、緩衝液にて1回洗浄を行う。そして、磁性粒子をアビジン固層化マイクロプレートに移し、アレルギー特異的抗原溶液と反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。その時に、反応液にビオチン標識ヒスタミン、酵素標識抗ヒスタミン抗体を同時に加えておく。洗浄後、アビジン固層化抗体に結合したビオチン標識ヒスタミン−酵素標識抗ヒスタミン抗体複合体の酵素活性を求めヒスタミン量を測定する方法が開示されている。【0031】また、他の有機化合物であるロイコトリエンは、市販されているキットの方法による抗ロイコトリエン抗体を用いたEIA法によって測定可能である。また、他の血球から放出される有機化合物であるインターロイキン3は、市販されているキットの方法によって測定できる。例えば、次のように行う。抗インターロイキン3抗体を固層化したマイクロプレートに血漿又は血清を添加し反応を行い、固層化抗体とインターロイキン3を結合させる。反応液を洗浄後、酵素標識抗インターロイキン3抗体を加え、反応を行い、インターロイキン3と酵素標識抗インターロイキン3を結合させる。そして標識抗体の酵素活性を測定することによってインターロイキン3の量を測定する方法である。また、他のインターロイキンであるインターロイキン6では、特開平1−271862よれば、抗−インターロイキン6モノクローナル抗体を固定化したマイクロプレートに血清を加え、室温で2〜3時間放置し、固層化抗体とインターロイキン6を結合させる。反応液を除去後、洗浄を行った後、ビオチン化抗インターロイキン6ポリクロナル抗体を加え37℃1時間反応を行い、インターロイキン6とビオチン化抗体を結合させる。次に、酵素標識ストレプトアビジンを加え、37℃30分放置し、ビオチン化抗体と酵素標識ストレプトアビジンを結合させ、反応液を除去後、3回以上洗浄を行った後、定量系として、4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシドを加え、遊離した4−メチルウンベリフェロンの蛍光強度を測定する方法が開示されている。【0032】ここで言うRIA法とは、放射性標識体を用いた免疫測定法である。例えば、RIA法を用いた細胞反応によって放出された有機化合物の決定方法として、好塩基球から放出されるヒスタミンの測定では(臨床検査 vol.26 no.2 1982/2) 、例えば、次のように行う。EDTA添加条件にて採血後、遠心によって血漿を分離する。アシル化試薬チューブに血漿又は標準ヒスタミンとアシル化緩衝液を加え、血漿中のヒスタミンをアシル化する。次に125I標識ヒスタミンを加え抗ヒスタミン抗体固層化チューブ内で反応させる。反応後、反応液を除去し、抗ヒスタミン抗体チューブに結合した放射能を測定することにより血漿中のヒスタミン量を求める方法が報告されている。【0033】他の有機化合物であるロイコトリエンの測定においては、試料または標準の非標識ロイコトリエン、抗ロイコトリエン抗体、3H標識ロイコトリエンを4℃、5〜24時間反応させた後、デキストランチャーコールと氷中10分間反応させる。遠心後、上清を分取し、放射活性を測定することによりロイコトリエンの量を求める。【0034】また、他の有機化合物であるPAFの測定は、試料または標準の非標識PAF、抗PAF抗体、125I標識PAFと2次抗体を室温で、5〜24時間反応させた後、遠心分離で得られた沈殿物の放射活性を測定することによりPAFの量を求める。好酸球から遊離する有機化合物であるECPの測定方法については、市販されているキットでは次のように行われる。抗凝固剤存在下で採血を行い、遠心によって血漿又は血清に分離し、標準ECP及び検体を50μlずつ試験管にとり、125I標識ヒトECPとウサギ抗ヒトECP抗体を50μlずつ加え、室温で1晩インキュベートする。これにヒツジ抗ウサギIgG抗体2mlを加え室温で30分インキュベート後、遠心にて上清を除去し、沈殿物のγカウンターを測定することによりECP量を測定する方法が知られている。【0035】ここで言う、有機化合物をカラムにより分離した後に検出系によって測定する方法とは、イオン性、疎水性、親和性などのメディエーターの物性を利用し、樹脂を充填したカラムにより、メディエーターを分離する方法であり、HPLC法が挙げられる。HPLC法を用いた有機化合物の決定方法として、例えば、特開平6−205695によるヒスタミンの測定法があげられる。例えば、次のように行う、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに試料を通じ、ヒスタミンを分離した後に、0.1%オルトフタルアルデヒドとNaOHを加え、ヒスタミン−オルトフタルアルデヒド結合反応を行いヒスタミンを蛍光体として、HClを加え、反応を停止し、蛍光強度を測定することによってヒスタミン遊離量を測定する方法が報告されている。また、他の有機化合物であるロイコトリエンの測定においては、血液から白血球を分離し、カルシウムイオノフォアーを加え好塩基球からロイコトリエンを放出させ、プロスタグランジンを含む氷冷アセトニトリル/メタノール/酢酸液で反応を停止し、−20℃で1時間放置後、遠心、逆層クロマトグラフィでロイコトリエンの分離を行って、ロイコトリエンの吸収特性である280nmの吸収を測定し、ロイコトリエン量を測定する方法である。【0036】ここで言う有機化合物を特異的に吸着する担体とは、グラスファイバー、抗体、酵素、レセプター、レクチンなどが挙げられる。有機化合物を特異的に吸着する担体を用いて測定する方法としては特開平3−19948が挙げられ、血球から遊離されるヒスタミンの測定において、ヘパリン採血した血液とアレルゲンをグラスファイバーを固定化したマイクロプレートに分注し、好塩基球からヒスタミンを放出させ、グラスファイバーに結合したヒスタミン量を蛍光法にて測定する方法が開示されている。【0037】【発明の実施の形態】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが本発明は何らこれに限定されるものではない。【0038】【実施例1】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、EDTAナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に1mMになるようにEDTAナトリウム(同人化学社製)を添加した血液25μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム(和光純薬工業社製)、70mM酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、2.5mM酢酸カリウム(和光純薬工業社製)、10U/mlヘパリンナトリウム(ヘキスト・マリオン・ルセル社)及び、0.005%アジ化ナトリウム(和光純薬工業社製)を含むPipes緩衝液(同人化学社製)(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液(DAKO社製)25μlをグラスファイバーを固定化したマイクロプレートに分注し、37℃90分間反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させた。反応後、マイクロプレートを洗浄し、界面活性剤を200μl添加し37℃60分反応させ、グラスファイバーに付着した血液中の夾雑物を洗浄する。その後、水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)で調整した0.05%オルトフタルアルデヒド溶液(和光純薬工業社製)を75μl分注し、蛍光体を形成した後、0.6%過塩素酸(和光純薬工業社製)75μlを分注して反応を停止し、蛍光強度を測定しヒスタミン標準液よりヒスタミン量を求めた。試験は5回行い、標準偏差を平均値で割った値を100倍し、Coefficient of Variation(CV)(%)を求めた。その結果CV値は7.8%であった。【0039】【実施例2】EDTAナトリウム濃度が、ヒスタミン遊離反応時に1、25、50mMである以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は9%、8.5%、9.7%、であった。【0040】【比較例1】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、ヘパリンナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に10U/mlになるようにヘパリンナトリウムを添加した血液25μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液25μlを用いて実施例1と同様の方法にてヒスタミンの測定を行った。その結果、CV値は123%であり、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲では、実施例1の結果と合わせ、CV値が7.8〜9%と低下した。ばらつきの程度を表すCV値が有意に低下する結果から明らかなように、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの添加によって、細胞反応の再現性が向上した。【0041】【実施例3】塩化カルシウム濃度が、ヒスタミン遊離反応時に1、100、200mMである以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は8.5%、8.5%、8.3%であった。【0042】【比較例2】塩化カルシウム濃度が、ヒスタミン遊離反応時に0mMである以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。 その結果CV値は、150%であり、カルシウム濃度1〜200mMの範囲では、実施例1の結果と合わせ、CV値が7.8〜8.5%へと低下した。この結果から明らかなように、カルシウム濃度1〜200mMの範囲内において、細胞反応の再現性が向上した。【0043】【実施例4】ヘパリンナトリウム濃度が、ヒスタミン遊離反応時に1、20、50U/mlである以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、8.3%、8.0%、8.4%であった。【0044】【比較例3】ヘパリンナトリウム濃度が、ヒスタミン遊離反応時に0mMである以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、143%であり、ヘパリンナトリウム濃度1〜50U/mlの範囲では、実施例1の結果と合わせ、CV値が7.8〜8.4%へと低下した。この結果から明らかなように、ヘパリン濃度1〜50U/mlの範囲内において、細胞反応の再現性が向上した。【0045】【実施例5】EDTAナトリウムが、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、8.2%であった。【0046】【実施例6】EDTAナトリウムが、シュウ酸ナトリウム(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、8.1%であった。実施例1、実施例5、実施例6、比較例1の結果から、キレート剤が、EDTAナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムであっても、CV値が7.8〜8.2%と低下し、細胞反応の再現性が向上した。【0047】【実施例7】ヘパリンナトリウムが、プラスミン(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、8.9%であった。【0048】【実施例8】ヘパリンナトリウムが、トロンビン(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、8.6%であった。実施例1、実施例7、実施例8、比較例2の結果から、キレート能を有しない抗血液凝固剤が、ヘパリンナトリウム、プラスミン、トロンビンであっても、CV値が7.8〜8.9%と低下し、細胞反応の再現性が向上した。【0049】【実施例9】塩化カルシウムが、塩化マグネシウム(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、9.7%であった。【0050】【実施例10】塩化カルシウムが、塩化マンガン(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、9.9%であった。実施例1、実施例9、実施例10、比較例3の結果から、2価陽イオンがカルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオンであっても、CV値が7.8〜9.9%と低下し、細胞反応の再現性が向上した。【0051】【実施例11】塩化カルシウムが、硫酸カルシウム(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、9.3%であった。【0052】【実施例12】塩化カルシウムが、炭酸カルシウム(和光純薬工業社製)である以外は実施例1と同様の方法にて試験を行った。その結果CV値は、9.5%であった。実施例1、実施例11、実施例12、比較例3の結果から、金属塩が塩化物、硫酸塩、炭酸塩であっても、CV値が7.8〜9.5%と低下し、細胞反応の再現性が向上した。【0053】【実施例13】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、ヒスタミン遊離反応時にEDTAナトリウム濃度が1mM、ヘパリンナトリウム濃度が10U/mlになるように、EDTAナトリウムとヘパリンナトリウムを添加した血液25μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液25μlを用いて実施例1と同様の方法にてヒスタミンの測定を行った。その結果、CV値が8.0%であり、実施例1のCV値7.8%と同等の結果が得られた。この結果から明らかなように、キレート剤、キレート能を有さない抗血液凝固剤を血液に同時に添加しても、細胞反応の再現性が向上した。【0054】【実施例14】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、ヒスタミン遊離反応時にヘパリンナトリウム濃度が10U/mlになるようにヘパリンナトリウムを添加した血液25μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、1mM EDTAナトリウム及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液25μlを用いて実施例1と同様の方法にてヒスタミンの測定を行った。その結果、CV(%)が8.0%であり、実施例1のCV値7.8%と同等の結果が得られた。この結果から明らかなように、血液にキレート能を有さない抗血液凝固剤を添加し、緩衝液にキレート剤と金属塩を添加しても、細胞反応の再現性が向上した。【0055】【実施例15】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対しEDTAナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に1、25、50mMになるようにEDTAナトリウムを添加した血液50μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、10U/mlヘパリンナトリウム及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE溶液50μlをプラスチックチューブに分注し、37℃90分間反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。その後、遠心を行い、血球を除去した後、遊離したヒスタミンとアシル化試薬を反応させ、ヒスタミンをアシル化する。抗アシル化ヒスタミン抗体を固層化したマイクロプレートにアシル化したヒスタミンと酵素標識ヒスタミン200μlを添加し5度で18時間反応を行い、洗浄後、酵素基質200μlを加え25度で反応を行い、30分後、反応停止液50μlを加え、405nmの吸光度を測定した。その結果、CV値は9.2%、8.8%、9.5%であった。【0056】【比較例4】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、ヘパリンナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に10U/mlになるようにヘパリンナトリウムを添加した血液50μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液50μlを用いて実施例15と同様の方法にてヒスタミンの測定を行った。その結果、CV値は140%であり、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲では、CV値が8.8〜9.5%と低下した。この結果から明らかなように、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲内において、細胞反応の再現性が向上した。【0057】【実施例16】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対しEDTAナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に1、25、50mMになるようにEDTAナトリウムを添加した3種類の血液それぞれ50μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、10U/mlヘパリンナトリウム及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE溶液25μlをチューブに分注し、37℃、90分間反応を行い、好塩基球からヒスタミンを遊離させる。その後、遠心を行い、血球を除去した後、アシル化試薬チューブに遊離したヒスタミン500μlと標準ヒスタミンμlとアシル化緩衝液50μlを加え、遊離したヒスタミンをアシル化する。次に125I標識ヒスタミン1mlを加え抗ヒスタミン抗体固層化チューブ内で4度、16時間反応させる。反応後、反応液を除去し、抗ヒスタミン抗体チューブに結合した放射能を測定した。その結果、CV値は、9.3%、9.0%、9.5%であった。【0058】【比較例5】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるヒスタミンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、ヘパリンナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に10U/mlになるようにヘパリンナトリウムを添加した血液25μlとヒスタミン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液25μlを用いて実施例16と同様の方法にてヒスタミンの測定を行った。その結果、CV値は140%であり、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲では、CV値が9〜9.5%と低下した。この結果から明らかなように、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲内において、細胞反応の再現性が向上した。【0059】【実施例17】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるロイコトリエンの測定を行った。採血時に血液5mlに対しEDTAナトリウム濃度がロイコトリエン遊離反応時に1、25、50mMになるようにEDTAナトリウムを添加した3種類の血液それぞれ25μlとロイコトリエン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、10U/mlヘパリン及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE溶液25μlをチューブに分注し、37℃、90分間反応を行い、好塩基球からロイコトリエンを遊離させる。その後、遠心を行い、血球を除去した後、プロスタグランジンを含む氷冷アセトニトリル/メタノール/酢酸液で反応を停止し、−20℃で1時間放置後、遠心、逆層クロマトグラフィでロイコトリエンの分離を行って、ロイコトリエンの吸収特性である280nmの吸収を測定し、ロイコトリエン量の測定を行った。その結果、CV値は、それぞれ、8.1%、8.8%、9.3%であった。【0060】【比較例6】健常人ボランティア血液1例を用いて、血球から遊離されるロイコトリエンの測定を行った。採血時に血液5mlに対し、ヘパリンナトリウム濃度がヒスタミン遊離反応時に10U/mlになるようにヘパリンナトリウムを添加した血液25μlとロイコトリエン遊離反応時の濃度として、50mM塩化カルシウム、70mM酢酸ナトリウム、2.5mM酢酸カリウム、及び、0.005%アジ化ナトリウムを含むPipes緩衝液(pH7.4)にて調整したヒト抗IgE抗体溶液25μlを用いて実施例17と同様の方法にてロイコトリエンの測定を行った。その結果、CV値は120%であり、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲では、実施例17の結果と合わせ、CV値が8.1〜9.3%と低下した。この結果から明らかなように、EDTAナトリウム濃度1〜50mMの範囲内において、細胞反応の再現性が向上した。【0061】【発明の効果】本発明は、血液細胞反応の決定方法において、血液、キレート剤、キレート能を有しない抗血液凝固剤、及び水溶性媒体中で2価陽イオンを溶出しうる金属塩からなる群より組み合わせた組成物を用いた血液処理により、血液を分離することなく細胞機能を再現性よく測定できることを示したものである。従って本発明の効果は、細胞機能検査の再現性を高めることができる効果、操作の簡便化による作業者の作業時間軽減及びそれに伴うコストを低下させる効果が期待される。 下記(1)〜(3)を添加することを特徴とする、血球からのメディエーター遊離反応に供する血液の処理方法; (1)Etylenediamine tetraacetic acid(EDTA)及び/又はクエン酸 (2)1〜50U/mlのヘパリン (3)水溶性媒体中でカルシウム、マグネシウム及びマンガンから選ばれる1種以上の2価陽イオンを溶出しうる金属塩であって、(1)に対して1〜200倍のモル濃度比の2価陽イオンを溶出しうる金属塩。 金属塩が、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩よりなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1記載の処理方法。 メディエーターが、ヒスタミン、ロイコトリエン、platelet activating factor(PAF)あるいは、サイトカインである、請求項1又は2記載の処理方法。 EDTA及び/又はクエン酸の濃度がメディエーター遊離反応時に1〜50mMである、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の処理方法。 2価陽イオンを溶出しうる金属塩の濃度が、メディエーター遊離反応時に1〜200mMである、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の処理方法。 下記(1)〜(3)よりなる、血球からのメディエーター遊離反応に供する血液の処理用組成物; (1)Etylenediamine tetraacetic acid(EDTA)及び/又はクエン酸 (2)1〜50U/mlのヘパリン (3)水溶性媒体中でカルシウム、マグネシウム及びマンガンから選ばれる1種以上の2価陽イオンを溶出しうる金属塩であって、(1)に対して1〜200倍のモル濃度比の2価陽イオンを溶出しうる金属塩。 金属塩が、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩よりなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項6記載の組成物。 メディエーターが、ヒスタミン、ロイコトリエン、platelet activating factor(PAF)、あるいは、サイトカインである請求項6又は7記載の組成物。 EDTA及び/又はクエン酸の濃度がメディエーター遊離反応時に1〜50mMである、請求項6〜8のうちいずれか1項に記載の組成物。 2価陽イオンを含む金属塩の濃度が、メディエーター遊離反応時に1〜200mMである、請求項6〜9のうちいずれか1項に記載の組成物。


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