| タイトル: | 特許公報(B2)_歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法 |
| 出願番号: | 1999226354 |
| 年次: | 2010 |
| IPC分類: | A61K 6/083 |
岡田 香 広田 一男 JP 4467672 特許公報(B2) 20100305 1999226354 19990810 歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法 株式会社ジーシー 000181217 野間 忠之 100070105 岡田 香 広田 一男 20100526 A61K 6/083 20060101AFI20100428BHJP JPA61K6/083 500 A61K6/00-6/10 特開平11−151251(JP,A) 特表平07−504189(JP,A) 特開平03−281614(JP,A) 特開平02−006358(JP,A) 3 2001048717 20010220 8 20060802 辰己 雅夫 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、歯科医療等において歯の修復用に用いられる従来型の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法に関するものである。【0002】【従来の技術】 歯牙の治療に一般に使用されている歯科用セメントには数多くの種類がある。代表的なものでは、酸化亜鉛とリン酸とを反応させるリン酸亜鉛セメント、酸化亜鉛とポリカルボン酸とを反応させるカルボキシレートセメント、アクリル系モノマーの重合を利用したレジンセメント、水酸化カルシウムと油性成分とを反応させる水酸化カルシウムセメント、酸化亜鉛とユージノールとを反応させる酸化亜鉛ユージノールセメント、フルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸を利用したグラスアイオノマーセメント等がある。【0003】 これらの歯科用セメントは歯科の治療において幅広い範囲の治療に用いられており、例えばクラウン,インレー,ブリッジ等の歯科用補綴物と歯質、又は矯正装置と歯質とを合着させる際に使用する合着用セメント、歯牙の窩洞を充填するための充填用セメント、小窩裂溝を埋めるためのシーラント用セメント、窩洞の裏層に用いる裏層用セメント、支台築造用セメントなど幅広い用途に用いられている。【0004】 中でも歯科用グラスアイオノマーセメントは生体に対し優れた親和性を持ち、歯質に対する接着性もあり、硬化体が半透明を有し審美性に優れていることに加え、硬化後に経時的にフッ素を徐放し歯質強化作用も期待できるという利点があることから、現在、歯科の広範な用途で最も一般的に使用されている歯科用セメントである。【0005】 この歯科用グラスアイオノマーセメントは、主成分であるフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸とが水の存在下で硬化反応を起こして硬化する歯科用セメントであり、具体的にはポリアクリル酸の水溶液がフルオロアルミノシリケートガラス粉末に作用してガラス中の金属イオン(アルカリ金属イオン,アルカリ土類金属イオンやアルミニウムイオン)を遊離し、これらがポリアクリル酸のカルボキシル基とイオン結合し架橋構造を形成してゲル化して硬化する(以後、アイオノマー反応と言うことがある)歯科用セメントである。そして、この歯科用グラスアイオノマーセメントは、初期硬化後もアイオノマー反応が起こり続け、硬化体の圧縮強度は硬化開始から1年後まで徐々に上昇することも知られている。 更に今日では、歯科用グラスアイオノマーセメントに重合可能なモノマーを配合し、アイオノマー反応に加えてモノマーの重合反応を併用したレジン強化型歯科用グラスアイオノマーセメントなるものが開発されている。このレジン強化型歯科用グラスアイオノマーセメントは、アイオノマー反応のみで硬化する従来型歯科用グラスアイオノマーセメントと比較して、曲げ強さ等の機械的強度や歯質への接着性が向上している。【0006】 一般的に行われている歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法は、フルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリアクリル酸の水溶液とをそれぞれ秤量し、専用の練和紙上でスパチュラ等の器具を用いて適当な割合で混合・練和したり、それぞれ秤量した所定量のフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリアクリル酸の水溶液とを隔離した状態でカプセル内に収納しておいて使用時にその隔壁を破壊してフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリアクリル酸の水溶液とを混合し、カプセルミキサー等で練和したりした後、窩洞や小裂窩溝に充填又は塗布することで行われている。そして、一部の製品ではフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリアクリル酸の粉末との混合物を提供し、水と練和し硬化させる水硬性歯科用グラスアイオノマーセメントもある。更には、部分的に一部のポリアクリル酸を粉末化した形態もあるが、何れにしても水の存在下でガラスとポリアクリル酸の反応を起こさせる形態を採っている。【0007】 このように歯科用グラスアイオノマーセメントはアイオノマー反応を利用しているので初期硬化するための時間が必要であり、その初期硬化まで次の臨床操作に移ることができない。更に初期硬化前後に、歯科用グラスアイオノマーセメント混合物の表面が水分に触れると硬化反応途中の金属イオンが溶出したり、水分の含有量が多くなったりしてセメント表面が白濁化,脆弱化等を起こして硬化物の最終的な表面性能が低下してしまうという問題、いわゆる感水と呼ばれる欠点が指摘されている。これは歯科用グラスアイオノマーセメントのアイオノマー反応が水の存在下におけるフルオロアルミノシリケートガラス(塩基)とポリカルボン酸(酸基)との酸・塩基反応によるものであり、外部からの水の影響を敏感に受けることが原因である。【0008】 この欠点に対して従来は、初期硬化前の歯科用グラスアイオノマーセメントを唾液などの外部からの水分が触れないよう慎重に充填,塗布操作を行い、その上からレジン系等のバーニッシュと呼ばれる防湿材を塗布し乾燥させて歯科用グラスアイオノマーセメント表面に被膜を形成し、初期硬化中の20〜25分間防湿する作業が行われていた。【0009】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、歯科用グラスアイオノマーセメントにおいて、バーニッシュによる感水防止を行わなくても感水し難く、感水時間・初期硬化時間を短縮できる歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法を提供することを課題とする。【0010】【課題を解決するための手段】 そこで本発明者等は、歯科用グラスアイオノマーセメントに利用されているアイオノマー反応が温度変化に対して敏感に反応し僅かな温度の上昇でも急速に硬化反応が促進されることに着目し、鋭意研究した結果、歯科用グラスアイオノマーセメントに光を照射することにより感水時間・初期硬化時間を短縮することが可能であることを見出し、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法を完成したものである。【0011】【発明の実施の形態】 即ち、本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法は、歯科用グラスアイオノマーセメントにおいて、フルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸と水との混合物であって光重合開始剤と重合性モノマーのどちらも配合されていない混合物に光を照射することによって初期硬化を速めることを特徴とする方法である。 中でも、本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法において照射する光は波長320〜3000nmの範囲であることが好ましく、光の放射照度が200〜3000mw/cm2,光照射時間が1〜180秒間であることが好ましい。【0012】 本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法は、前述した如く歯科用グラスアイオノマーセメントにおいて、フルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸と水との混合物であって光重合開始剤と重合性モノマーのどちらも配合されていない混合物に光を照射することによって初期硬化を速める硬化方法であり、光を照射しない硬化方法と比較して、バーニッシュの塗布,乾燥等の感水防止の操作を特に行わなくても数秒から数分間の光照射を行うだけで感水時間・初期硬化時間を短縮でき、歯科用グラスアイオノマーセメントの構成に手を加えないため歯科用グラスアイオノマーセメントの優れた特徴はそのまま維持することができる歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法である。【0013】 このフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸と水との混合物であって光重合開始剤と重合性モノマーのどちらも配合されていない混合物に対して光を照射するとアイオノマー反応が促進し歯科用グラスアイオノマーセメントが硬化する現象は、長年に渡り光重合で初期硬化する光重合型歯科用グラスアイオノマーセメントが使用されてきたにも拘らず着目されることがなかった。 これは、歯科分野において従来から光重合型歯科用コンポジットレジンや光重合型歯科用グラスアイオノマーセメントに光を照射して光重合で硬化させることは広く行われていたが、これらの歯科用材料は、その組成中に必ずカンファーキノン等の光重合開始剤と重合性モノマーとが含まれているものであり、光照射により光重合開始剤が活性化し重合性モノマーの重合反応で硬化させる方式であったため、光を照射することが必須であったためと考えられる。【0014】 これに対し、本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法は、光照射により混合物の温度を上昇させてアイオノマー反応を促進させ、歯科用グラスアイオノマーセメントを硬化させるものである。従って、光重合開始剤,重合性モノマーのどちらも配合されていない歯科用グラスアイオノマーセメントに対して大きな効果を得ることができる。【0015】 本発明に使用される歯科用グラスアイオノマーセメントとは、水の存在下でフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸が硬化反応(即ち、アイオノマー反応)を起こして硬化するという機構のみを持つ従来型歯科用グラスアイオノマーセメントを言う。【0016】 一般的な歯科用グラスアイオノマーセメントに使用されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末の主な組成は、ガラスの総重量に対してAl3+:10〜25重量%、Si4+:5〜30重量%、F-:1〜30重量%、Sr2+:0〜20重量%、Ca2+:0〜20重量%、アルカリ金属イオン(Na+、K+等):0〜10重量%であり、これらを含む原料を混合・溶融した後、冷却・粉砕し平均粒径0.02〜20μm程度の粉末に調製して作製される。【0017】 ポリカルボン酸は、α−β不飽和モノカルボン酸又はα−β不飽和ジカルボン酸の重合体であり、一般的にはアクリル酸,メタアクリル酸,2−クロロアクリル酸,3−クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸,シトラコン酸等の重量平均分子量5000〜40000の共重合体又は単独重合体である。 更に、一般的な歯科用グラスアイオノマーセメントには、必要に応じて公知の重合禁止剤,紫外線吸収剤,可塑剤,着色用顔料,酸化防止剤,抗菌剤,界面活性剤等が添加される。【0018】 光照射に使用する装置としては、現在、歯科で広く使用されている赤外線,可視光線,紫外線照射器が使用可能であり、波長320〜3000nmの範囲の光を放出する光源を使用した装置を使用することができる。波長320nm未満であると生体に対し為害性が強くなってしまうので好ましくない。一方、波長3000nmを超える波長領域の光は歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化反応を促進させる作用が小さくなってしまう。中でも、一般にレジン強化型歯科用グラスアイオノマーセメントやコンポジットレジンを重合させるときに使用する波長390〜510nmの光を照射できる可視光線光照射器を用いることは歯科医にとって容易な方法であり望ましい。【0019】 本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法において波長320〜3000nmの範囲の光の照射は、歯科用グラスアイオノマーセメントの温度を適度な時間内で上昇させ硬化反応を促進するため、少なくとも200mw/cm2の放射照度で行うことが好ましい。光照射を行う時間は操作性から考慮するとできる限り短い時間が好ましいが、光照射の効果を得るためには前記光照射器を用いた場合少なくとも1秒間必要であり、一般的な歯科用グラスアイオノマーセメントの初期硬化時間が4分から8分であることから180秒以内で光照射を終えることが好ましい。【0020】 以下、本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法の使用例を説明する。1.最初に、切削等により齲蝕等を削除し窩洞を形成した歯牙に、手又はカプセルミキサー等で練和した未硬化状態の歯科用グラスアイオノマーセメント混合物を充填又は塗布する。歯科用グラスアイオノマーセメントを充填に使用する場合は硬めの混合物を窩洞に充填し、シーラントとして使用する場合は流動性の高い混合物を咬合面に塗布する。2.次に、充填又は塗布した歯科用グラスアイオノマーセメントに光照射を行う。光照射の終了時点で歯科用グラスアイオノマーセメントは初期硬化していてもしていなくてもよいが、シーラントとして使用した場合の歯科用グラスアイオノマーセメントは初期硬化させる方がよい。3.充填に使用した歯科用グラスアイオノマーセメントは初期硬化した後、表面を研磨し最後の仕上げを行う。研磨の時期は材料によっても異なるが、光照射を行った場合は行わない場合と比べ明らかに感水期間が短縮されているので通常より早く研磨を行うことができる。【0021】【実施例】 以下に実施例を挙げて本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 なお、実施例,比較例に使用した歯科用グラスアイオノマーセメントは、4種類全てが水の存在下でのフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸の反応のみで硬化する従来型歯科用グラスアイオノマーセメントであり重合性モノマーを含まないセメントである。【0022】[実施例1] 市販の従来型歯科用グラスアイオノマーセメント(製品名:フジアイオノマータイプII,株式会社ジーシー製)を、粉:液を2.7:1の割合(重量)で混合し30秒間練和し、直径10mm,高さ5mmのアクリルリングに充填した。透明なセルロイド板を乗せて圧接し、混和開始から1分後にセルロイド板の上から可視光線照射器(製品名:ジーシーラボライトLV−II,株式会社ジーシー製,波長400〜520nm,放射照度780mw/cm2)を用いて20秒間光照射した。光照射直後にセルロイド板を外してアクリルリングごと試料を37℃の水中に浸漬した。同様の方法で各試料に光照射し、練和開始から2分後(この場合は光照射から40秒後),3分後,4分後,・・と1分おきに30分後までの試料を室内に放置後、37℃の水中に浸漬した。24時間後に各試料を水中から取り出し乾燥させ、試料表面の感水による白濁を目測で観察し白濁が確認されなくなる試料の練和開始からの時間を感水時間とした。更に同様にして光照射時間を40秒,60秒に変更して感水時間を測定した。結果を表1に示す。【0023】 上記方法で練和した従来型歯科用グラスアイオノマーセメントに関して、20秒,40秒,60秒間光照射を行い、JIS T-6607(歯科用グラスポリアルケノートセメント)の「5.4 硬化時間測定」を準用して光照射時間を含む練和開始からの初期硬化時間を測定した。その結果も併わせて表1に示す。【0024】[実施例2] 市販の従来型歯科用グラスアイオノマーセメント(製品名:ケタックセム,エスペ社製)を、粉:液を2:1の割合(重量)で混合し実施例1と同様にして、試料表面の感水時間と初期硬化時間を評価した。結果を表1に示す。【0025】[実施例3] 市販の従来型歯科用グラスアイオノマーセメント(製品名:フジIVGP,株式会社ジーシー製)を、粉:液を3.6:1の割合(重量)で混合し実施例1と同様にして、試料表面の感水時間と初期硬化時間を評価した。結果を表1に示す。【0026】[実施例4] 市販の従来型歯科用グラスアイオノマーセメント(製品名:ケタックモーラー(カプセル),エスペ社製)を、カプセルミキサーCM1(株式会社ジーシー製)で混合し実施例1と同様にして、試料表面の感水時間と初期硬化時間を評価した。結果を表1に示す。【0027】[比較例1〜4] 光照射を行わず、練和開始から10分後,11分後,・・と1分おきに30分後までの各試料を37℃の水中に浸漬した以外は実施例1〜4と同じ市販の従来型歯科用グラスアイオノマーセメント及び試験方法を行い、感水時間,初期硬化時間の測定を行った。結果を表2に纏めて示す。【0028】【表1】【0029】【表2】【0030】【発明の効果】 以上の実施例及び比較例から明らかなように、本発明に係る歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法は、歯科用グラスアイオノマーセメントの初期硬化を速めることができるのでバーニッシュ等の感水防止の操作を特に行うことなく感水を防止する効果のある硬化方法であることが確認できた。 また、光照射を行う時間により感水時間・初期硬化時間の短縮が調整できることから、操作時間を術者の任意に設定することも可能である歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法であり、歯科医療に貢献する価値の非常に大きなものである。 歯科用グラスアイオノマーセメントにおいて、フルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリカルボン酸と水との混合物であって光重合開始剤と重合性モノマーのどちらも配合されていない混合物に光を照射することによって初期硬化を速めることを特徴とする歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法。 照射する光の波長が320〜3000nmの範囲である請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法。 光の放射照度が200〜3000mw/cm2の範囲であり、光照射時間が1〜180秒間である請求項1又は2に記載の歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化方法。