タイトル: | 特許公報(B2)_シアナミド簡易定量法とそのためのキット |
出願番号: | 1999221931 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 31/00,A01G 16/00,A01N 59/24,G01N 31/22,G01N 33/18 |
高橋 淑子 古川 洋一郎 JP 3979748 特許公報(B2) 20070706 1999221931 19990805 シアナミド簡易定量法とそのためのキット 電気化学工業株式会社 000003296 高橋 淑子 古川 洋一郎 20070919 G01N 31/00 20060101AFI20070830BHJP A01G 16/00 20060101ALI20070830BHJP A01N 59/24 20060101ALI20070830BHJP G01N 31/22 20060101ALI20070830BHJP G01N 33/18 20060101ALI20070830BHJP JPG01N31/00 RA01G16/00 ZA01N59/24G01N31/22 122G01N33/18 Z G01N31/00〜31/22 G01N21/75〜21/83 A01G 16/00 A01N 59/24 G01N 33/18 CAplus(STN) JSTPlus(JDream2) 特開昭62−098239(JP,A) Mushkin, Yu. I.,Rapid spectrophotometric determination of cyanamide,Zavodskaya Laboratoriya,1967年,33(3),296 滝本雅祥 平野洋子,シアナミド誘導体の分離定量法の研究 (第4〜5報),日本化学雑誌,1960年,81(9),1414-1418 滝本雅祥 小枝幾久雄,シアナミド誘導体およびそのメチロール化合物のペーパークロマトグラフィーによる識別,工業化学雑誌,1960年,63(5),797-799 3 2001050947 20010223 8 20051117 三木 隆 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、携帯に便利であり、現場で簡単に、短時間で、例えば田面水中のシアナミド濃度を定量する方法、およびそれに用いるキットに関する。【0002】【従来の技術】近年、スクミリンゴガイの水稲被害を防ぐために、殺害効果とともに肥料効果のある石灰窒素が使用されている。しかし、石灰窒素を施用後、田面水において石灰窒素の成分の一つであるシアナミド濃度があまりに高いと、周辺の魚貝類への影響、水稲の発芽へ影響することも予測される。田面水のシアナミド濃度は、石灰窒素散布後、日数経過とともに減少するが、田面水のシアナミド濃度を確認するのために、現場で簡単に短時間で判定する方法が必要とされている。【0003】従来のシアナミド分析方法は、肥料分析法で定められる硝酸銀法が用いられている。また、比色定量法としては、発色試薬にナトリウムペンタアンミンフェロエートを用いてシアナミドを発色させ、溶液の吸光度を測定する方法が知られている。しかし、これらの方法は定量値を示すことができ、検出感度も高いなどの優れた特徴があるが、分析時間も長く、現場での分析には不適当であり、実用的な方法ではなかった。更に、ナトリウムペンタアンミンフェロエート法は、試薬が安定性に欠けるため、分析時に試薬を調製する必要があり、現場で行う分析として簡便ではないという問題もある。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、例えば田面水等の検水中のシアナミド濃度を、現場で簡便に、かつ短時間で定量する方法、及びそれに用いるキットを提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、例えば田面水等の、シアナミドを含有する検水と、複数の所定シアナミド濃度の標準液とを用意し、検水と各標準液のおのおのについて、pHを調整した後、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液を添加して発色させ、検水の発色程度と各標準液の発色程度とを比較することにより検水中のシアナミド量を定量することを特徴とするシアナミド簡易定量法である。【0006】又、本発明は、複数の所定濃度のシアナミドを含有するシアナミド標準液と、pH緩衝液と、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液と、前記標準液と検水とをおのおの秤量し発色の程度を比較するのに充分に透明な蓋付き容器と、pH緩衝液と炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液とを前記標準液と検水とに所定量注ぐための容器と、からなることを特徴とするシアナミド簡易分析用キットである。【0007】【発明の実施の態様】本発明者らは、本発明の目的を達成するべく、いろいろ検討した結果、シアナミドと反応発色する試薬のうち、溶液の濃淡が目視判定しやすいもの、試薬の保存性が良いものを検索し、更にその最適反応条件を検討した結果、ニトロプルシド(ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物)がシアナミドと鋭敏に反応し、目視判定が可能であることを見いだし、本発明に至ったものである。【0008】本発明者らの検討によれば、前記発色反応については、シアナミドが検水中に存在すれば赤色〜赤紫色を呈し、濃度が高ければ濃赤紫、低ければ黄色味を帯びた赤色を呈するが、この反応は時間とともに進行することが判った。更に、本発明者らは、濃度既知のシアナミド標準溶液を用意し、検水と同時にこれらを発色させ、発色の程度を目視にて比較するのみで、容易に定量をすることができるという知見を得て、本発明に至ったものである。【0009】本発明に使用する試液等の組成、用法について説明する。【0010】(a)炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液シアナミドを検出するための試薬であり、例えば、以下の処方のものを使用することができる。0.2M ニトロプルシド 10ml0.2M フェリシアン化カリウム 10ml2.5M 水酸化ナトリウム 5ml0.7M 炭酸アンモニウム 2ml【0011】前記組成の水溶液をフラスコに順次加えた後、蒸留水を加えて全量が100mlになるようにする。30分程度放置し、試薬の色が暗褐色から淡黄色になったものを用いる。【0012】ニトロプルシド試液は以下のような反応でニトロプルシドとフェリシアン化カリウムが反応する。【0013】【化1】【0014】さらにシアナミドと以下のように反応し発色する。【0015】【化2】【0016】なお、田面水のような自然環境水は場所、気象状況など条件によって異なるが、前記の発色反応が安定して行われるように、pH緩衝液を添加し、標準溶液との発色誤差を少なくする必要がある。更に、自然環境に多く存在するアンモニウムイオンが発色時の溶液の色調を変えて、判定誤差を大きくすることを避ける目的で、ニトロプルシド試液に予め炭酸アンモニウムを添加する。【0017】(b)pH緩衝液前述の通りに、検水とシアナミド標準溶液のpHが大きく異なることを防ぐために使用する。前記発色反応は、pH=10で最も感度が高くなるので0ppm〜50ppm程度の、低濃度のシアナミドの定量にはpH=10のpH緩衝液を用いるが、100ppm〜500ppm程度の高濃度シアナミドの判定にはpH=12のpH緩衝液を用いて充分である。【0018】本発明において、pH緩衝液の例としては、pH=10の緩衝液としてはホウ酸緩衝溶液が、pH=12の緩衝液としては酸混合液−水酸化ナトリウム緩衝溶液が挙げられる。それぞれの、処方は次のとおりである。ホウ酸緩衝溶液;0.1M KClに溶解した0.5M ホウ酸溶液 200mlを2.5M NaOHで、pH=10に調整し、全容を250mlとする。酸混合液−水酸化ナトリウム緩衝溶液;酸混合液(0.04M H3PO4+0.04M酢酸+0.04Mホウ酸)100mlと2M NaOHを混合し、pH=12に調製する。【0019】前記の調整法に従って作成した各試液等は、例えば一定量分取できるポンプ式の分注瓶に入れておき、測定の際に分注して使用すると好都合である。以上の様に小分けした状態で、各成分はいずれも、少なくとも約6ヶ月間室温で安定であり、試薬の能力になんら変化はない。【0020】また、本発明は、前記のシアナミド簡易定量法を具体的に実行するのに好適なキットである。本発明のキットは、前述の定量法を実施するために必要な試液類、即ち、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液、pH緩衝液(pH=10と12用)、更に所定濃度のシアナミドを含有するシアナミド標準溶液の複数(後述の通りに、通常は、15ppm、30ppm、100ppm、300ppmを備えれば良い)とを備え、また、検水や前記試液類を秤量し、更に前記試液等を注入して発色反応を生起させ、発色程度が比較できる程度に透明な容器(例えば蓋付き試験管)と、前記試液等を検水や標準液に秤量注入するための分注器等の容器とからなっている。【0021】本発明のキットは、一つの収納箱内に、前記試液類、容器類を納め、携帯性に富む形態とすることが好ましく、また、試験管立てのような治具を追加して収納していることが利便性の面で一層好ましく、例えば田面水中のシアナミドの濃度を前記キットのみを用いて田面水を採取する現場において簡単に定量出来るという特徴がある。尚、シアナミド標準溶液のシアナミド濃度としては、発明者らの実験的検討の結果、15、30、100、300ppmの4種類を用意しておけば、いろいろな用途に対しても十分であることから、キット中には前記4種の標準液を備えていることが好ましい。【0022】以下、実施例に基づき、本発明について、更に詳細に説明する。【0023】【実施例】〔実施例1〕(判定範囲:0〜50ppmの場合の例)検水を一定量、蓋付き透明容器に採取した。濃度定量に用いるシアナミド標準溶液(15ppm、30ppm)も同様に透明容器に分取した。各透明容器を試験管立てに並べ、各容器にポンプ式分注瓶で1mlずつpH緩衝液(ホウ酸緩衝溶液;pH=10)、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液を添加した。その後、各容器に蓋をしてよく混合した。5分程度経過後、定量用シアナミド標準溶液と検水の溶液の発色程度を比較したところ、検水の溶液の色が定量用標準溶液(15ppm)より濃い赤紫色であり、しかし、定量用標準溶液(30ppm)より薄く黄色味を帯びていたので、検水中のシアナミド濃度は15〜30ppmであった。尚、前記濃度は、化学品検査協会のコイによる48時間急性毒性試験結果の無影響濃度(16mg/L)〜0%死亡最低濃度(29mg/L)に相当する。【0024】〔実施例2〕(判定範囲:100〜500ppmの場合の例)検水を一定量、蓋付き透明容器に採取した。濃度定量に用いるシアナミド標準溶液(100ppm、300ppm)も同様に透明容器に分取した。各透明容器を試験管立てに並べ、各容器にポンプ式分注瓶で1mlずつpH緩衝液(酸混合液−水酸化ナトリウム緩衝溶液;pH=12)、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液を添加した。その後、各容器に蓋をしてよく混合した。5分程度経過後、定量用シアナミド標準溶液と検水の溶液の発色程度を比較したところ、検水の溶液の色が定量用標準溶液(100ppm)より濃い赤紫色であり、しかし、定量用標準溶液(300ppm)より薄く黄色味を帯びていたので、検水中のシアナミド濃度は100〜300ppmであった。【0025】【発明の効果】本発明の方法によれば、検水中のシアナミド濃度を、現場で簡便に、かつ短時間で定量することができるので、例えば、石灰窒素散布後の田面水のシアナミド濃度を確認すること等に使用することができる。ことに、本発明のキットを用いれば、分析作業の専門家でなくても、シアナミド濃度を簡単に定量することができるので、産業上非常に有用である。 シアナミドを含有する検水と、複数の所定シアナミド濃度の標準液とを用意し、検水と各標準液のおのおのについて、pHを調整した後、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液を添加して発色させ、検水の発色程度と各標準液の発色程度とを比較することにより検水中のシアナミド量を定量することを特徴とするシアナミド簡易定量法。 検水が田面水であることを特徴とする請求項1記載のシアナミド簡易定量法。 複数の所定濃度のシアナミドを含有するシアナミド標準液と、pH緩衝液と、炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液と、前記標準液と検水とをおのおの秤量し発色の程度を比較するのに充分に透明な蓋付き容器と、pH緩衝液と炭酸アンモニウムを含有するニトロプルシド試液とを前記標準液と検水とに所定量注ぐための容器と、からなることを特徴とするシアナミド簡易分析用キット。