タイトル: | 特許公報(B2)_抗原提示細胞に対して腫瘍細胞を仕向けなおすことによる抗腫瘍性免疫の誘導 |
出願番号: | 1999216124 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12N 15/02,C12N 5/10,A61K 35/12,A61K 35/14,A61P 35/00,C07K 16/32 |
モシカート,ラルフ リンドファー、ホルスト JP 4670061 特許公報(B2) 20110128 1999216124 19990730 抗原提示細胞に対して腫瘍細胞を仕向けなおすことによる抗腫瘍性免疫の誘導 ヘルムホルツ・ツェントルム・ミュンヘン・ドイチェス・フォーシュンクスツェントルム・フュア・ゲズントハイト・ウント・ウンベルト・ゲーエムベーハー 599022683 早坂 巧 100104639 モシカート,ラルフ リンドファー、ホルスト DE 19835633:1 19980806 20110413 C12N 15/02 20060101AFI20110324BHJP C12N 5/10 20060101ALI20110324BHJP A61K 35/12 20060101ALI20110324BHJP A61K 35/14 20060101ALI20110324BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110324BHJP C07K 16/32 20060101ALN20110324BHJP JPC12N15/00 BC12N5/00 102A61K35/12A61K35/14 ZA61P35/00C07K16/32 C12N 15/00-15/90 PubMed BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平10−155483(JP,A) Nature (1993) vol.362, no.6422, p.755-758 Cancer Res. (1997) vol.57, no.12, p.2346-2349 J. Immunol. (1997) vol.158, no.2, p.872-879 8 2000060552 20000229 6 20060722 池上 文緒 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、腫瘍の抑制に関し、より詳しくは、抗腫瘍性免疫を誘導する細胞及びこれを用いた抗腫瘍剤に関する。【0002】【従来の技術】近年の化学療法及び放射線療法の進歩にも拘わらず、ヒトの多くの悪性疾患の予後は、依然として極めて好ましくない。しばしば、これらの疾患は、完全には治療できない。これは、通常の治療の後、しばしば残存の悪性細胞が患者内に留まり、後になって腫瘍の再発が起こるからである。この点、腫瘍を拒絶するよう患者自身の免疫系が誘導される免疫療法的アプローチが、非常に望まれている。腫瘍関連抗原が腫瘍細胞上に存在すること、及び、原理的には、免疫系がそれらを認識して悪性細胞を攻撃できることが知られている。しかしながら、腫瘍も、免疫応答から逃れることを可能にする幾つかの戦略を発達させている。これは例えば、腫瘍関連抗原の不十分な提示により及び/又は通常存在する腫瘍特異的T細胞の不十分な活性化によって可能である。抗原提示の増強は、従って、免疫療法的介入によって達成すべき、望ましい目標である。【0003】ドイツ特許出願19634159.0は、B細胞リンパ腫イムノグロブリンイディオタイプ、すなわち、この疾患における完全に腫瘍特異的である抗原を、専門的抗原提示細胞(APC)に仕向ける方法を記載している。この目的のために、APC表面分子に対する特異性を発現しているハイブリドーマをリンパ腫細胞と融合することにより、いわゆるトリオーマ(trioma)が作られる。このトリオーマは、APCに結合する両特異的(bispecific)なイムノグロブリンの形で、腫瘍イディオタイプを分泌する。このイディオタイプのインターナリゼーション(受容体依存性エンドサイトーシス:internalization)及びプロセシングに続き、イディオタイプ由来蛋白質がAPC表面上にのって免疫系に提示される。これは、T細胞のより効果的な活性化をもたらす。腫瘍細胞上の腫瘍抗原の不十分な提示とは対照的に、APC上における腫瘍抗原の専門的な提示によって、腫瘍特異的T細胞が産生できる。本発明者らは、一層効果的に抗腫瘍的な保護を誘導するためには、変性した細胞の注射が絶対に必要であることを示した。精製した両特異的なイムノグロブリンによる治療は、効果的な抗腫瘍性免疫を達成できなかった。これは、治療を受けた動物(ないし患者)におけるトリオーマ細胞の溶解の後に起こる、他の腫瘍関連抗原に対する追加免疫によるものであろう。しかしながら、この方法は、B細胞の悪性疾患にしか適用できないという欠点がある。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、抗腫瘍性免疫を誘導する新規な手段であって、B細胞腫瘍のみに限られることなく適用できるような新しい手段を提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明により、上記目的は、抗原提示細胞(APC)上の表面抗原に対する抗体を発現しているヒト又は動物起源の腫瘍細胞であって、親腫瘍由来のイムノグロブリンを有しない、すなわち腫瘍細胞それ自身の元の如何なるイムノグロブリンも含んでいないものを作り出すことによって達成された。腫瘍細胞が特異的イムノグロブリンを備えることは、抗原発現細胞上の表面抗原に対する抗体をコードするイムノグロブリン発現遺伝子の導入によってのみなされる。【0006】本発明によって得られる遺伝子工学的処理を施した腫瘍細胞を用いることにより、如何なる腫瘍疾患も治療できる。腫瘍疾患の例としては、上皮性腫瘍、例えば、癌、間葉腫、例えば肉腫、並びに造血腫瘍、例えば白血病及びリンパ腫等が挙げられる。リンパ球増殖性の疾患のうち、イムノグロブリンを産生しないT細胞系又はB細胞系のものでさえ、治療することができる。【0007】発現された抗APC抗体によって、本発明により変性された腫瘍細胞は、表面抗原としてのFc受容体、マンノース−5−受容体又はMHCクラスII抗原に優先的に結合する。【0008】単球、マクロファージ及びデンドライト(dendritic)細胞は特に抗原提示細胞として役立つ。【0009】本発明により提供される腫瘍細胞は、治療的有効量として、好ましくは許容し得る単体及び/又は補助薬と共に、所望により精製の後に、患者に投与される。治療的有効量の腫瘍細胞を含んでなる本発明により提供される薬剤組成物は、腫瘍患者に、例えば注射又は注入により、投与される。【0010】本発明は、抗腫瘍性免疫の誘導のためには、例えばB細胞リンパ腫において存在するようなイムノグロブリンイディオタイプは、必ずしも必要でないことを示している。このことは、APCに対して腫瘍抗原を仕向けなおすという原理は、イムノグロブリンを発現しない他の全ての腫瘍にも同様に拡張できることを意味している。これは重要な発見である。なぜなら、ヒトに最も頻発する腫瘍はB細胞由来のものではないからである。無傷の悪性細胞を丸ごとAPCsと物理的に接触させることで十分である。本発明者らは、腫瘍イムノグロブリンを失って膜上にAPCの表面分子に対する抗体のみを担持するトリオーマ変種を創り出した。原理的に、この変種は(腫瘍由来のイディオタイプを除き)親リンパ腫細胞の全抗原を有しており、そのため、細胞を丸ごとAPCに仕向けなおすと、全ての抗原が処理されて提示されることになる。実際、このトリオーマ変種による免疫化の後、致死量の野性株腫瘍の接種が、首尾よく拒絶された。【0011】もしこのアプローチが臨床状況において適用されるなら、通常の治療を受けている患者からの悪性細胞が体外移植され、抗体産生ハイブリドーマと融合され、そして再び患者内に導入される。代わりとして、抗APC抗体をコードするイムノグロブリン遺伝子であってこのハイブリドーマから単離されたものが、自家腫瘍細胞に再移入される。今や表面上に抗体を発現している、この遺伝子工学的に変性された腫瘍細胞は、放射線照射後の患者に再導入される。この仕方で、腫瘍細胞が丸ごと抗原提示細胞に向けられ、これはその結果、貪食及び腫瘍抗原の提示をもたらすことになる。【0012】細胞表面上の抗APC特異性の発現が、抗腫瘍性免疫の完全な発生のために必要であるということは、別の実験により直接に実証され、そこでは精製された無傷のトリオーマタンパク質と、リンパ腫イディオタイプを担持しているが抗APC特異性の喪失のためAPCに結合できないトリオーマ変種とよりなる混合物が、ワクチン接種のために使用された。トリオーマ変種及び精製された可溶性タンパク質のいずれも、単独ではごく僅かな抗腫瘍的保護を媒介できるだけである。しかしまた、この欠陥細胞と無傷タンパク質とを混合することによっても、無傷のトリオーマ細胞の抗腫瘍効果(すなわち、100%生存)は再構築できないことが実証された。この発見もまた、トリオーマ細胞と抗原提示細胞との直接の物理的接触の重要性を強調するものである。【0013】以下において、本発明は、実施例及び図面を参照して更に詳細に記述されよう。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に従う種々の態様が含まれる。更には、蓄積する経験に応じて、動物モデルより得られる結果をヒトに適用することも可能である。【0014】【実施例】1. BALB/cマウス由来のB細胞リンパ腫A20 (ATCC TIB-208) を抗Fc受容体ハイブリドーマ 2.4G2 (ATCC HB-197) と融合させる。この目的のために、8−アザグアニンの存在下に培養することによって該ハイブリドーマを HAT感受性にする。融合の相手である5×106個の細胞を、アセタミドヨード中で30分間インキュベートし、洗浄し、そして1.5×107個のHAT感受性の細胞と混合した。融合は、ポリエチレングリコール1500と2分間インキュベートすることにより行う。細胞をマイクロタイタープレートに播き、そして2,3日後にHAT培地中で選択する。限界希釈によりハイブリッド細胞を再クローンし、そしてリンパ腫イディオタイプを喪失した変種を選択する。それにも拘わらず、これらの細胞が依然として表面上に 2.4G2 特異性を有していることが、FACS解析により示される。【0015】2. BALB/cマウスに、3週間の間隔を空けて、2.4G2 特異性を表面に発現している各105個の細胞を腹腔内注射する。7日後、105個の野性型腫瘍細胞(A20)の腹腔内接種が行われる。この予備免疫により、長期間持続する抗腫瘍的保護が達成される(図のA群を参照)。免疫していない対照群(B群)においては、同じ数の腫瘍細胞が動物の100%に腫瘍増殖をもたらす。【図面の簡単な説明】【図1】 腫瘍接種後の動物の生存率を示すグラフ。 ヒト又は動物の変性腫瘍細胞であって,親腫瘍由来のイムノグロブリンを発現しないものである患者由来の腫瘍細胞を,抗原提示細胞(APC)上の表面抗原に対する抗体である抗APC抗体を発現しているハイブリドーマ細胞と融合させることを含むか,又は抗APC抗体をコードする遺伝子を,親腫瘍由来のイムノグロブリンを発現しないものである患者由来の該腫瘍細胞に導入することを含む方法によって調製されるものであり,且つ該抗APC抗体は膜に結合しているものである,変性腫瘍細胞。 親腫瘍由来のイムノグロブリンを発現しておらず,該抗APC抗体を膜上に担持するものである,請求項1の変性腫瘍細胞。 該腫瘍細胞が,上皮性腫瘍細胞,間葉腫細胞又は造血腫瘍細胞である,請求項1又は2の変性腫瘍細胞。 該造血腫瘍細胞が白血病細胞又はリンパ腫細胞であり,該上皮性腫瘍細胞が癌細胞であり,又は,間葉腫細胞が肉腫細である,請求項3の変性腫瘍細胞。 該抗APC抗体が表面抗原としてのFc受容体,マンノース−5−受容体又はMHCクラスII抗原に結合するものである,請求項1ないし4の何れかの変性腫瘍細胞。 少なくとも1の薬剤学的に許容し得る担体及び/又は補助薬と共に,請求項1ないし5の何れかの変性腫瘍細胞を治療的有効量含んでなる,薬剤。 請求項1ないし5の何れかの変性腫瘍細胞を含んでなる腫瘍治療剤。 腫瘍患者に該患者由来の変性腫瘍細胞を投与して,抗原提示細胞に対する抗APC抗体を発現している該変性腫瘍細胞を該抗原提示細胞に仕向けなおすことにより抗腫瘍性免疫を誘導するための,請求項1ないし5の何れかの変性腫瘍細胞を含んでなる薬剤。