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タイトル:特許公報(B2)_不飽和炭化水素残基置換アニリン類の製造方法
出願番号:1999209929
年次:2010
IPC分類:C07C 209/36,B01J 31/24,C07C 211/45,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

川本 博 中野 一美 今宮 勝之 JP 4551514 特許公報(B2) 20100716 1999209929 19990723 不飽和炭化水素残基置換アニリン類の製造方法 住友化学株式会社 000002093 高島 一 100080791 川本 博 中野 一美 今宮 勝之 20100929 C07C 209/36 20060101AFI20100909BHJP B01J 31/24 20060101ALI20100909BHJP C07C 211/45 20060101ALI20100909BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100909BHJP JPC07C209/36B01J31/24 XC07C211/45C07B61/00 300 C07C 209/32 C07C 211/43 CAplus(STN) 特開平10−036325(JP,A) 米国特許第03975444(US,A) 特開平08−198835(JP,A) 特開平04−275372(JP,A) 8 2001039930 20010213 12 20060502 太田 千香子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類からの不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法に関する。詳細には、疎水性有機溶媒と水との混合溶媒中、亜鉛または鉄を還元剤として、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類のニトロ基を選択的に還元することによる、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法に関する。また、本発明は還元後の液のpHを調整して目的生成物を分離することによる、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法に関する。該アニリン類は、耐熱性ポリイミドの末端封止剤などとして有用な化合物である。【0002】【従来の技術】ベンゼン環が不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類は、ハロゲン化銀写真感光材料、熱硬化性ポリイミド、および固相重合性非線形光学材料などの合成中間体、耐熱性ポリイミドの末端封止剤として有用であり、さらに、例えば、不飽和炭化水素残基がエチニル基であるアニリン類は、下式に示した、癌のような増殖性疾患の治療のためのプロドラッグ(WO96/30347号)の合成中間体として有用である。【0003】【化5】【0004】(式中、Meはメチルを示す)不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類は、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類のニトロ基を選択的に還元することにより得ることができる。このような還元の従来の方法として、ポリ硫化コバルト(例えばCoS3)や硫化ルテニウム(IV)などの特殊な触媒を用いた還元(Journal of Organic Chemistry, 44, 3671-3674 (1979))、還元剤として鉄または鉄塩を用いた還元(特開平10−36325号公報)、アルカリ条件下での亜鉛末を用いた還元(米国特許3,975,444)などの方法が挙げられる。【0005】還元触媒として特殊な触媒を用いた還元(Journal of Organic Chemistry, 44, 3671-3674 (1979))では、還元剤の調製が必要であり、コストアップに繋がる。還元剤として鉄または鉄塩を用いた還元(特開平10−36325号公報)では、還元反応により生成した酸化鉄はゲル状であるためセライトを用いなければ濾過することができず、さらに生成した酸化鉄は反応釜の内壁に析出し除去が困難となるため、工業規模で行うには適していない。アルカリ条件下での亜鉛末を用いた還元(米国特許3,975,444)では、不飽和炭化水素残基が分解を受け易く、また目的物を分離するために還元後の反応液を大量の水で希釈した後、エーテルで抽出する必要がある。さらに、亜鉛を含んだ廃水が多量となるため、廃水処理に手間がかかる。このように、安価で、還元剤の酸化物と目的生成物との分離が容易である、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法が望まれていた。【0006】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、安価で、還元剤の酸化物と目的生成物との分離が容易である、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類からの不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法を提供することである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、疎水性有機溶媒と水との混合溶媒中、亜鉛または鉄を還元剤として、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類のニトロ基を選択的に還元することにより、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が製造できることを見出し、さらに還元後の液のpHを調整することにより、容易に還元剤の酸化物と該アニリン類とを分離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。【0008】即ち、本発明は、(1)疎水性有機溶媒と水との混合溶媒中、亜鉛または鉄を還元剤として、式(I)【0009】【化6】【0010】(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基を示す)で表される、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類のニトロ基を選択的に還元することを特徴とする、式(II)【0011】【化7】【0012】(式中、R1は前記と同義である)で表される、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法、(2)R1が、式(III)【0013】【化8】【0014】(式中、R2は水素原子、−CR3R4OH(R3およびR4は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子もしくはアルキルを示すか、またはR3とR4とが隣接する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい)またはトリアルキルシリルを示す)で表される基である、上記(1)の製造方法、(3)R1が3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルである、上記(1)または(2)の製造方法、(4)不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類が、3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールである、上記(1)〜(3)のいずれかの製造方法、(5)疎水性有機溶媒がエステル系溶媒である、上記(1)〜(4)のいずれかの製造方法、(6)エステル系溶媒が酢酸エチルである、上記(5)の製造方法、(7)亜鉛を還元剤とする、上記(1)〜(6)のいずれかの製造方法、(8)不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類が、有機塩基、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよびヨウ化第一銅の存在下、式【0015】【化9】【0016】(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表されるハロゲノニトロベンゼンとR1H(式中、R1は前記と同義である)で表される不飽和炭化水素との縮合反応により得られ、かつ、当該ニトロベンゼン類の還元開始時における液のpHが中性付近である上記(1)の製造方法、(9)還元終了後、(a)反応液のpHを、還元剤の酸化物が水に溶解し、かつ不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解するpHに調整して分液し、(b)得られた水層のpHを、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が晶析するpHに調整することにより、該アニリン類を分離することを特徴とする、上記(1)の製造方法、および、(10)疎水性有機溶媒が酢酸エチルであり、不飽和炭化水素残基が3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルであり、還元剤の酸化物が水に溶解し、かつ不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解するpHが0.5〜3であり、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が晶析するpHが4.0〜4.5であることを特徴とする、上記(9)の製造方法に関する。【0017】ベンゼン環上にニトロ基と不飽和炭化水素残基とを有する化合物においては、そのニトロ基は、これまで親水性有機溶媒と水との混合溶媒中、アルカリ性条件下で選択的に還元されてきた。しかしながら、本発明者らは疎水性有機溶媒と水との混合溶媒中で上記還元を行うことにより、アルカリを添加することなく、ニトロ基の選択的還元が進行することを見出した。また、還元剤の酸化物がゲル状であるため、還元剤の酸化物と目的物との分離はこれまで困難であった。しかしながら、本発明者らは還元後の反応液のpHを還元剤の酸化物が水に溶解し(例えば、塩酸により、還元剤の酸化物を塩化物に変換して水に溶解し)、かつ不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解するように調整して分液し、次に得られた水層のpHを目的物が晶析するように調整することにより、容易に還元剤の酸化物と目的物との分離を行うことができることを見出した。【0018】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において、特に限定されない限り「ニトロベンゼン類」とは「不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類」のことを意味し、「アニリン類」とは「不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類」のことを意味する。また、本発明における炭化水素残基(例えばアルキル、アルケニル、アルキニルなど)において、語頭(例えばイソ、ネオなど)または符号(例えばsec−、tert−など)を付していない限り直鎖状であり、例えば単にプロピルとあれば直鎖状のプロピルを表す。【0019】本発明における「中性付近」とは、pHが4.0〜11.0、好ましくは6.0〜8.0であることを意味する。【0020】R1における「置換基を有していてもよい炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基」の「炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基」とは、少なくとも1つの不飽和結合を有する、炭素数が2〜11個、好ましくは2〜6個である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素残基のことであり、具体的にはビニル、アリル、プロペニル、2−メチルプロペニル、2,2−ジメチルプロペニル、2−エチルプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デケニルなどのアルケニル;エチニル、プロピニル、2−メチルプロピニル、2,2−ジメチルプロピニル、2−エチルプロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、3−メチルブチニル、3−メチルペンチニル、3−エチルペンチニル、4−エチルオクチニル、ノニニル、デシニルなどのアルキニル;およびプロパジエニル、ブタンジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニルなどのアルカジエニル、1−ブテン−3−イニルなどのアルケニニルのような不飽和結合を構造式中に2以上含有する不飽和炭化水素残基が挙げられ、好ましくは3−メチル−1−ブチニルが挙げられる。【0021】R1における「置換基を有していてもよい炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基」の「置換基」としては、ヒドロキシ、炭素数5〜7のシクロアルキル、トリアルキルシリルなどが挙げられる。該炭素数5〜7のシクロアルキルとしては、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが挙げられる。該トリアルキルシリルにおける「アルキル」とは、炭素数1〜16の直鎖状または分岐鎖状のアルキルであり、各アルキルは同一または異なっていてもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルなどが挙げられ、好ましくはメチルである。該「置換基」としては、好ましくはヒドロキシ、トリメチルシリルが挙げられる。「置換基を有していてもよい炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基」は、上記置換基で1または2以上置換されていてもよい。【0022】R3およびR4における「アルキル」とは、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルキルであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、へプチル、オクチルなどが挙げられ、好ましくはメチルである。【0023】R3とR4とが隣接する炭素原子と一緒になって形成してもよい環とは、上記R1における置換基のシクロアルキルと同義であり、つまり炭素数5〜7のシクロアルキルである。【0024】R2における「−CR3R4OH」としては、具体的にはヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、1−ヒドロキシ−1−エチルプロピル、1−ヒドロキシシクロぺンチル、1−ヒドロキシシクロヘキシル、1−ヒドロキシシクロオクチルなどが挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−1−メチルエチルである。【0025】R2における「トリアルキルシリル」とは、上記R1における置換基の「トリアルキルシリル」と同義である。【0026】本発明における不飽和炭化水素残基とは、上記「置換基を有してもよい炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基」であり、好ましくは式(III)【0027】【化10】【0028】(式中、R2は水素原子、−CR3R4OH(R3およびR4は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子もしくはアルキルを示すか、またはR3とR4とが隣接する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい)またはトリアルキルシリルを示す)で表される基であり、より好ましくはR1が−C≡C−CR3R4OH(式中、R3、R4は前記と同義である)で表される基であり、特に好ましくは3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルが挙げられる。【0029】本発明における「ニトロベンゼン類」および「アニリン類」における「不飽和炭化水素残基」の置換位置は、ニトロ基およびアミノ基に対してオルト位、メタ位およびパラ位のいずれでもよく、好ましくはメタ位、パラ位であり、より好ましくはメタ位である。【0030】本発明における「ニトロベンゼン類」の好ましい具体例としては、3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールが挙げられる。【0031】「ニトロベンゼン類」におけるニトロ基の選択的還元本発明における「ニトロベンゼン類」のニトロ基の選択的還元は、疎水性有機溶媒と水との混合溶媒中、亜鉛または鉄を還元剤とすることにより行われる。反応系への各物質の添加順序は特に限定はなく、たとえば還元剤の水懸濁液に、「ニトロベンゼン類」の疎水性有機溶媒溶液を窒素雰囲気下で攪拌しながら滴下することにより、ニトロ基を選択的に還元することが好ましい。本発明の方法は、アルカリ条件にすることなく反応を進行できる。このため、アルカリを消費せず、さらに生成物を分離する際に大量の水で希釈する必要がなく、水の使用量を低減することができる点で本発明の製造方法は好ましい。【0032】原料化合物である「ニトロベンゼン類」は公知化合物であり、例えば特開平10−36325号公報、および特開昭54−63035号公報で開示されている方法に準じて製造することができる。例えば、有機塩基、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよびヨウ化第一銅の存在下、式【0033】【化11】【0034】(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表されるハロゲノニトロベンゼンとR1H(式中、R1は前記と同義である)で表される不飽和炭化水素との縮合反応により、「ニトロベンゼン類」を得ることができる。上記反応試薬の使用量、種々の操作などについては、特開平10−36325号公報、および特開昭54−63035号公報の記載に準ずる。【0035】Xにおけるハロゲン原子としては、フッ素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、ハロゲン原子はニトロ基に対して、オルト位、メタ位およびパラ位のいずれに置換されていてもよく、好ましくはメタ位、パラ位であり、より好ましくはメタ位である。【0036】有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、トリメチルアミンなどが挙げられる。【0037】「ニトロベンゼン類」は単離することなく、本発明の還元反応に使用することもできる。例えば、反応終了後の液を濃縮して有機塩基(例えば、トリエチルアミンなど)の一部を除去し、濃縮残渣に酢酸エチルと水とを加えた後、さらに酸(例えば、酢酸など)を加えて液のpHを中性付近に調整後、分液し、有機層をそのまま次の工程に使用することができる。【0038】上記方法で製造した「ニトロベンゼン類」を還元反応に使用する場合の「還元開始時における液のpH」とは、ハロゲノニトロベンゼンとR1H(式中、R1は前記と同義である)との縮合反応後の反応液を濃縮して有機塩基の一部を除去し、濃縮残渣に酢酸エチルと水とを加え、さらにこの中に酸を加えた後の水層のpHのことである。還元開始時における液のpHは中性付近であるのが好ましく、該pHが4.0未満である場合には「ニトロベンゼン類」に置換している不飽和炭化水素残基が還元され易くなり、逆に11を超える場合には不飽和炭化水素残基が分解を受け易くなり、酸を加えた後の水層に「ニトロベンゼン類」が含まれ易く、収率が低下する。還元開始時における液のpHは、酸の添加量を調節することにより所望の値に調整することができる。【0039】本発明における還元剤としては、通常還元剤として使用する、亜鉛(亜鉛末など)および鉄(鉄粉、削り状鉄片、還元鉄、硫酸鉄、塩化鉄などの還元鉄など)が挙げられ、還元剤の酸化物が反応釜に析出しないという点から亜鉛が好ましい。還元剤の使用量は、「ニトロベンゼン類」1モルに対して3〜10倍モル量、好ましくは3〜4倍モル量である。【0040】本発明における還元溶媒は、疎水性有機溶媒と水との混合溶媒である。本発明における疎水性有機溶媒は、「ニトロベンゼン類」1モルに対して100〜1000ml、好ましくは200〜500ml用い、水は「ニトロベンゼン類」1モルに対して100〜1000ml、好ましくは300〜500ml用いる。【0041】本発明で使用する疎水性有機溶媒と水との容積比は、水1に対して疎水性有機溶媒が0.1〜10.0、好ましくは0.5〜1.0である。【0042】本発明における「疎水性有機溶媒」とは、水に全く溶解しないか、または水に対する溶解度が常温で約10重量%以下、好ましくは9重量%以下であり、かつ本発明における「ニトロベンゼン類」を溶解することのできる有機溶媒である。該疎水性有機溶媒としては、好ましくはエステル系溶媒が挙げられる。【0043】エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられ、酢酸エチルが好ましい。これらは1種または2種以上併用してもよい。【0044】本発明における還元温度は、10〜80℃、好ましくは40〜60℃であり、還元時間は1〜20時間である。【0045】「アニリン類」の分離目的生成物である「アニリン類」の反応液からの分離は、通常の分離方法でも行うことができ、好ましくは還元終了後、(a)反応液のpHを、還元剤の酸化物が水に溶解し、かつ不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解するpHに調整して分液し、(b)得られた水層のpHを、「アニリン類」が晶析するpHに調整する方法により行うことができる。該(a)工程における「不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解する」とは、水中にアニリン類が99%以上含まれている状態を意味する。【0046】該(a)工程は、反応液中に、還元剤の酸化物を水に溶解することができ、かつ「アニリン類」を水に実質的に溶解することができる酸性化合物(例えば、塩酸など)と抽出溶媒(例えば、トルエンなど)とを添加することにより、または抽出溶媒に反応液と該酸性化合物とを添加することにより行うことができる。また、該(b)工程は、得られた水層中に、「アニリン類」を晶析することのできる塩基性化合物(例えば、アンモニア水など)を添加することにより行うことができる。本発明の分離方法は、ゲル状であるために目的生成物と分離する際にセライトが必要となる還元剤の酸化物を、反応液のpHを調整して水に溶解させることにより容易に分離できるという点から、通常の分離方法より好ましい。【0047】還元剤の酸化物が水に溶解し、かつ「アニリン類」が水に実質的に溶解するpHは、原料と反応溶媒とに依存し、例えば疎水性有機溶媒が酢酸エチルであり、不飽和炭化水素残基が3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルである場合、好ましくは0.5〜3であり、短時間で分離できるという点からより好ましく2以下、特に好ましく1.0〜1.5である。この場合、pHが0.5未満であると目的物の一部が分解され、品質の低下を招く恐れがあり、pHが3を超えると還元剤の酸化物の一部が溶解せずに存在し、また目的物が疎水性有機溶媒中に残りやすくなり、収率の低下を生じる。【0048】「アニリン類」が晶析するpHは、原料と反応溶媒とに依存し、例えば疎水性有機溶媒が酢酸エチルであり、不飽和炭化水素残基が3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルである場合、好ましくは4.0〜4.5であり、より好ましくは4.1〜4.3である。この場合、pHが4.0未満であると目的物の一部が結晶化せずに母液中に残りやすくなり、pHが4.5を超えると還元剤の酸化物が析出する恐れがある。【0049】目的生成物の精製方法は、通常行われる精製方法であれば特に限定はなく、例えばイソプロピルアルコールなどの適当な溶媒中、分離した粗結晶を活性炭を用いて脱色した後、冷却晶析することにより高純度の目的生成物を得ることができる。【0050】本発明により得られる「アニリン類」は、ハロゲン化銀写真感光材料、熱硬化性ポリイミド、固相重合性非線形光学材料、癌のような増殖性疾患の治療のためのプロドラッグなどの合成中間体、耐熱性ポリイミドの末端封止剤として有用である。【0051】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0052】実施例1(1) 3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールの合成500mlの四つ口フラスコに、3−ブロモニトロベンゼン(50.50g、0.250mol)、トリエチルアミン(177.1g、1.750mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.12g、0.000171mol)、およびヨウ化第一銅(0.12g、0.000630mol)を加え、窒素雰囲気下、90℃まで加熱昇温し、この中に同温度で2−メチル−3−ブチン−2−オール(27.4g、0.326mol)を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに同温度で2時間熟成を行った。その後、トリエチルアミン(102.2g、1.010mol)を減圧下濃縮し、濃縮残渣へ水(100ml)および酢酸エチル(50ml)を加えた。更に20〜30℃で酢酸(28.4g、0.473mol)を加え、水層のpHを6.78として分液を行った。得られた水層を更に酢酸エチル(10ml)で抽出した。得られた有機層を合わせることにより、3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールの酢酸エチル溶液(115ml)を得た。【0053】(2) 3−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)アニリンの合成亜鉛末(49.5g、0.759mol)および水(100ml)を窒素雰囲気下、室温で攪拌し、この中に上記(1)で得られた3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールの酢酸エチル溶液(115ml)を滴下した。滴下開始後、反応熱により内温が40℃になった後は適宜冷却し、40〜60℃を保ちながら4時間かけて滴下を行った。滴下終了後60℃で2時間保温攪拌し、酢酸エチル(50ml)を加え、反応液を10℃に冷却した。液温10〜30℃で35%塩酸(155ml)を滴下してpHを1とし、亜鉛の酸化物を水に溶解した。この中にトルエン(50ml)を加えて分液を行い、得られた水層をろ過後、液温10〜20℃で28%アンモニア水(20ml)の滴下によって晶析を行った。液のpHを4.26とした後、結晶を濾別し、得られた結晶を水(100ml)で洗浄して3−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)アニリンの粗結晶を得た。【0054】この粗結晶を活性炭(1.0g)およびイソプロピルアルコール(75ml)とともに、窒素雰囲気下、75℃で30分間攪拌後、活性炭を熱時濾別した。冷却晶析を行い、5℃で結晶を濾別し、冷えたイソプロピルアルコール(35ml)で結晶を洗浄することにより、無色結晶として3−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)アニリン(30.39g、0.173mol、3−ブロモニトロベンゼンに対する収率:69.4mol%、液体クロマトグラフィーによる純度:99.9%)を得た。得られた結晶の1H−NMRデータを以下に示す。1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm:1.56(s,6H),4.01(brs,2H),4.53(brs,1H),6.52−6.63(m,1H),6.72−6.78(m,2H),7.01−7.08(m,1H)【0055】実施例2(1) 3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールの合成500mlの四つ口フラスコに、3−ブロモニトロベンゼン(50.50g、0.250mol)、トリエチルアミン(177.1g、1.750mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.12g、0.000171mol)、およびヨウ化第一銅(0.12g、0.000630mol)を加え、窒素雰囲気下、90℃まで加熱昇温し、この中に同温度で2−メチル−3−ブチン−2−オール(27.4g、0.326mol)を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに同温度で2時間熟成を行った。その後、トリエチルアミン(113.2g、1.118mol)を減圧下濃縮し、濃縮残渣へ水(100ml)および酢酸エチル(50ml)を加えた。更に20〜30℃で酢酸(21.0g、0.350mol)を加え、水層のpHを6.95として分液を行った。得られた水層を更に酢酸エチル(25ml)で抽出した。得られた有機層を合わせることにより、3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールの酢酸エチル溶液(130ml)を得た。【0056】(2) 3−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)アニリンの合成亜鉛末(49.5g、0.759mol)および水(100ml)を窒素雰囲気下、室温で攪拌し、この中に上記(1)で得られた3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールの酢酸エチル溶液(130ml)を滴下した。滴下開始後、反応熱により内温が40℃になった後は適宜冷却し、40〜60℃を保ちながら4時間かけて滴下を行った。滴下終了後、60℃で2時間保温攪拌し、反応液を30℃に冷却した。別のフラスコを用意し、トルエン(50ml)および水(50ml)を加えた。攪拌下、10℃まで冷却した。この中に反応液および35%塩酸(135ml)を10〜25℃でpH2〜6を保ちながら同時に滴下し、亜鉛の酸化物を水に溶解した。この中に、35%塩酸(20ml)を加えることにより液のpHを1に調整し、分液を行った。得られた水層をろ過後、液温10〜20℃で28%アンモニア水(20ml)の滴下によって晶析を行った。液のpHを4.12とした後、結晶を濾別し、得られた結晶を水(100ml)で洗浄して3−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)アニリンの粗結晶を得た。【0057】この粗結晶を活性炭(1.0g)およびイソプロピルアルコール(75ml)とともに、窒素雰囲気下、75℃で30分間攪拌後、活性炭を熱時濾別した。冷却晶析を行い、5℃で結晶を濾別し、冷えたイソプロピルアルコール(35ml)で結晶を洗浄することにより、無色結晶として3−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)アニリン(31.63g、0.1805mol、3−ブロモニトロベンゼンに対する収率:72.20mol%、液体クロマトグラフィーによる純度:99.9%)を得た。得られた結晶の1H−NMRデータは、実施例1と同様であった。【0058】【発明の効果】本発明により、安価で、還元剤の酸化物と目的生成物との分離が容易である、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類からの不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法を提供することできる。これにより、ハロゲン化銀写真感光材料、熱硬化性ポリイミド、固相重合性非線形光学材料、癌のような増殖性疾患の治療のためのプロドラッグなどの合成中間体、耐熱性ポリイミドの末端封止剤である、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類を提供することができる。また、本発明はアルカリを使用していないため、不飽和炭化水素残基が分解を受けず、また亜鉛を含んだ廃水量を従来と比較して低減することができ、廃水処理を従来と比較して容易にすることができる。 エステル溶媒と水との混合溶媒中、亜鉛を還元剤として用いて、式(I)(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜11の不飽和炭化水素残基を示す)で表される、不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類のニトロ基を選択的に還元することを特徴とする、式(II)(式中、R1は前記と同義である)で表される、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類の製造方法であって、当該ニトロベンゼン類の還元開始時における液のpHが6.0〜8.0である製造方法。 R1が、式(III)(式中、R2は水素原子、−CR3R4OH(R3およびR4は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素原子もしくはアルキルを示すか、またはR3とR4とが隣接する炭素原子と一緒になって環を形成してもよい)またはトリアルキルシリルを示す)で表される基である、請求項1記載の製造方法。 R1が3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルである、請求項1または2記載の製造方法。 不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類が、3−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−1−ブチン−3−オールである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。 エステル溶媒が酢酸エチルである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。 不飽和炭化水素残基で置換されているニトロベンゼン類が、有機塩基、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよびヨウ化第一銅の存在下、式(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表されるハロゲノニトロベンゼンとR1H(式中、R1は前記と同義である)で表される不飽和炭化水素との縮合反応により得られる、請求項1に記載の製造方法。 還元終了後、(a)反応液のpHを、還元剤の酸化物が水に溶解し、かつ不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解するpHに調整して分液し、(b)得られた水層のpHを、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が晶析するpHに調整することにより、該アニリン類を分離することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。 エステル溶媒が酢酸エチルであり、不飽和炭化水素残基が3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニルであり、還元剤の酸化物が水に溶解し、かつ不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が水に実質的に溶解するpHが0.5〜3であり、不飽和炭化水素残基で置換されているアニリン類が晶析するpHが4.0〜4.5であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。


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