タイトル: | 特許公報(B2)_根管充填用シーラー組成物 |
出願番号: | 1999201423 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 6/00,A61K 6/08 |
蒲原 敬 渡邉 信孝 安蒜 正雄 JP 4425374 特許公報(B2) 20091218 1999201423 19990715 根管充填用シーラー組成物 株式会社ジーシー 000181217 野間 忠之 100070105 蒲原 敬 渡邉 信孝 安蒜 正雄 20100303 A61K 6/00 20060101AFI20100210BHJP A61K 6/08 20060101ALI20100210BHJP JPA61K6/00 CA61K6/08 Z A61K6/00-6/10 特開2000−229806(JP,A) 特開平11−349426(JP,A) 特開昭53−036995(JP,A) 1 2001031519 20010206 7 20060623 辰己 雅夫 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、歯科治療の根管治療に於いてガッタパーチャポイントと共に用いて根管壁とガッタパーチャポイントとの隙間を封鎖するための根管充填用シーラー組成物に関するものである。【0002】【従来の技術】歯科治療に於いて歯髄疾患及び根尖歯周疾患の治療を行う際に、抜髄後の根管内に材質的に安定な物質を充填し、根管内の空隙を完全に封鎖し根管と歯周組織との間及び根管と口腔との間の感染経路を遮断して根尖部の創傷を保護する根管治療が広く行われている。この処置を行う際に現在最も多く用いられている方法は、抜髄後の根管内にガッタパ−チャ及び/又はトランスポリイソプレンと酸化亜鉛とを主成分とするガッタパーチャポイントと呼ばれる細い針状の根管充填材を充填しセメントなどで封鎖する方法である。【0003】このガッタパーチャポイントを用いた根管の充填は、複数本のガッタパーチャポイントを順次根管内に充填する側方加圧充填法と呼ばれる方法で一般的に行われている。この時、ガッタパーチャポイントを根管内に緻密に充填することが必要であるが、ガッタパーチャポイントは予め針状に成形されているため根管壁に対する密着性が不充分であり、根管充填用シーラーと呼ばれるペースト状材料をガッタパーチャポイントに塗布し根管壁とガッタパーチャポイントとの隙間を埋める方法が行われている。【0004】この根管充填用シーラーとして現在広く使用されているものは、酸化亜鉛とユージノールを主成分とした材料である。この酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーは、酸化亜鉛を主成分とする液又は粉末とユージノールを主成分とする液とを練和することにより硬化する。この酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーは室温でペースト状であるため、ガッタパーチャポイントへの塗布が容易であり、また比較的硬化時間が長いため充填操作を余裕を持って行えるという特徴を持っている。【0005】しかし、酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーは、根管壁とガッタパーチャポイントとの隙間を埋めることはできるが、根管壁及びガッタパーチャーポイントの双方に対する密着性に劣り、臨床に於ける根管の封鎖性が充分ではないという欠点がある。また、ユージノールは生体に対する為害作用があり安全性に問題がある。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術の欠点を解消するため、従来の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーと同等の操作性を有し、現在多用されている酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーよりもガッタパーチャポイントと根管壁との双方に対する密着性に優れ、しかもより安全性の高い根管充填用シーラ組成物を提供することを課題とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者等はガッタパーチャポイントと同系の材料で根管充填用シーラー組成物を作製することを目的として前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、ガッタパーチャポイントの主成分の一つであるガッタパーチャ及び/又はトランスポリイソプレンに、粘着性を付与し根管壁に対する密着性の向上を目的として特定分子量のポリブテンとエステルガムとを含有させると共に、従来の酸化亜鉛・ユージノール系材料と同等の塗布操作性を与える成分として特定分子量のイソパラフィンを含有させ、加えて硬さとX線不透過性とを与える目的で特定の無機充填材を加えて根管充填用シーラーを作製すると、ガッタパーチャポイントと根管壁とに対する密着性が良好で従来の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーと同等の操作性を持ち、更にユージノールを使用せずより安全性の高い根管充填材用シーラー組成物が得られることを究明して本発明を完成したのである。【0008】【発明の実施の形態】即ち、本発明は、A)ガッタパーチャ及び/又はトランスポリイソプレン 0.5〜10重量%B)数平均分子量600〜4000のポリブテン 0.1〜20重量%C)エステルガム 0.1〜20重量%D)数平均分子量200〜450のイソパラフィン 0.1〜30重量%E)酸化亜鉛,硫酸バリウム,酸化チタン,水酸化カルシウム,酸化ジルコニウムより選ばれた1種又は2種以上の無機充填材 20〜95重量%から成ることを特徴とする根管充填用シ−ラ−組成物である。【0009】A成分のガッタパーチャ及び/又はトランスポリイソプレンは、根管充填用シーラーとしての基本的な強度や成形性を与えると共に、同成分が配合されているガッタパーチャポイントとの密着性の向上に極めて有効に作用する。ガッタパーチャは天然の樹脂であって種々の化合物の混合物である。トランスポリイソプレンはこのガッタパーチャの主成分を成す樹脂であり、天然のガッタパーチャに代わるものとして合成により作製され使用されている樹脂である。このA成分は本発明に係る根管充填用シーラー組成物中に0.5〜10重量%必要である。0.5重量%未満では根管充填用シーラーに充分な強度を与えることができなくなると共にガッタパーチャポイントとの密着性が悪くなるため、根管内での封鎖性が低下する。また、10重量%を超えると根管充填用シーラー組成物の軟化温度が上がってしまい、操作性が劣る。【0010】B成分の数平均分子量600〜4000のポリブテンは、次に示すC成分のエステルガムと共に用いることにより根管充填用シーラー組成物に粘着性を与え根管壁に対する密着性を向上させる作用を有する。このポリブテンは、イソブチレンを主体とし若干の1−ブテンが共重合した液状ポリマーであり、数平均分子量が600〜4000のものが適当である。この数平均分子量が600未満であるとC成分と共存させた時の粘着性が低くなって根管壁に対する密着性が劣ると共に、ガッタパーチャポイントに塗布し根管内に充填する際に流動性が急速に失われる傾向がある。また数平均分子量が4000を超えると加熱軟化後の流動性が得難くなる。中でも、このB成分の数平均分子量が1000〜3000であると、C成分との作用による根管に対する密着性が良いので好ましい。またポリブテンは、0.1重量%未満であるとその効果は充分ではなく、20重量%を超えると根管充填用シーラーの強度が著しく低下してくる。中でもこのB成分が0.5〜10重量%であると、操作できる時間も適当であり根管壁に対する密着性も充分あり、しかも適度な強度が出るので好ましい。【0011】C成分のエステルガムは、前記のようにB成分と共に用いることにより根管充填用シーラー組成物に粘着性を与え、根管壁に対する密着性を向上させる効果がある。このC成分であるエステルガムは、ロジンをグリセリンでエステル化したものが一般的であるが、水素化ロジンをグリセリンでエステル化したものも使用することができる。このエステルガムは、根管充填用シーラー組成物中に0.1重量%未満であるとB成分と共存した時の根管壁に対する密着性が充分ではなく、20重量%を超えると過度に粘着性が生じ、根管内から除去しなければならない場合に除去が非常に困難となってくる。中でも、このC成分が0.5〜10重量%であると根管壁に対する密着性が適度であり好ましい。【0012】D成分の数平均分子量200〜450のイソパラフィンは、根管充填用シーラー組成物に従来の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーと同等の操作性を与える作用、即ち根管充填用シーラー組成物をガッタパーチャポイントが軟化し始める温度(約60℃)よりも低い温度(約45℃〜50℃)でガッタパーチャポイントに塗布可能なペースト状とする作用を有する。このD成分であるイソパラフィンは石油留分中より抽出することによって得られるもので、中でも本発明に係る根管充填用シーラー組成物に於いて使用する数平均分子量200〜450のイソパラフィンは通常のパラフィンと比較して室温付近での柔軟性や伸びに優れており、熱による膨張・収縮が小さいため好適に使用できる。数平均分子量が200未満であると根管充填用シーラーとしての強度が不足し、数平均分子量が450を超えるとイソパラフィンの軟化点が高くなり、低温での流動性が悪化しガッタパーチャポイントへの塗布が難しくなる。このイソパラフィンは根管充填用シーラー組成物中に0.1重量%〜30重量%配合されることが必要であり、0.1重量%未満であると添加した効果が充分得られず、30重量%を超えると根管充填用シーラーとしての強度を得ることが難しくなる。中でも、このD成分が1〜10重量%であるとガッタパーチャポイントに塗布する操作も行い易く好ましい。【0013】E成分の酸化亜鉛,硫酸バリウム,酸化チタン,水酸化カルシウム,酸化ジルコニウムより選ばれた1種又は2種以上の無機充填材は、根管充填用シーラーに硬さとX線不透過性とを与える効果を有し、その含有量は20〜95重量%が適当である。20重量%未満であると根管充填用シーラーとしての硬さが不充分であり、レントゲンでの確認もほとんどできなくなる。また、95重量%を超えると根管内に充填する際の流動性が極めて低下してしまい充填操作性が悪化する。このE成分は50〜85%であると硬さがありレントゲンによる確認も容易であるため好ましい。なお、本発明に係る根管充填用シーラー組成物には、その特性を失わない範囲で各種の無機及び/又は有機の着色剤や抗菌剤などを加えても良い。【0014】【実施例】次に本発明に係る根管充填用シーラー組成物について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではない。【0015】<実施例1>トランスポリイソプレン 5重量%ポリブテン(数平均分子量:2900) 5重量%エステルガム(ロジンのグリセリンエステル) 5重量%イソパラフィン(数平均分子量:350) 5重量%酸化亜鉛 50重量%硫酸バリウム 30重量%【0016】上記各成分を秤量し、加圧ニーダーにて110〜120℃の条件下で加熱練和して根管充填用シーラー組成物を作製した。作製した根管充填用シーラー組成物について以下の試験方法により、封鎖性,ガッタパーチャポイントとの密着性,流動性の試験を行った。結果は表1に纏めて示した。【0017】a)封鎖性抜歯後、10%ホルマリン溶液中に保存された標準的なヒト上顎側切歯30歯を試料とした。切端を削除し髄室開拡後のヒト上顎側切歯を、通常の根管拡大操作で根管形成を行った。50℃に加熱・軟化した根管充填用シーラー組成物をガッタパーチャポイント(製品名:ジーシーガッタパーチャポイント,株式会社ジーシー製)に塗布し、根管形成した根管に側方加圧充填法にて充填した。前記試料を37℃恒温器内で0.6%ロ−ダミン水溶液に7日浸漬後、根管からガッタパーチャポイントを撤去し根管内に進入した色素の長さを測定した。【0018】b)ガッタパーチャポイントとの密着性ガッタパーチャポイント(製品名:ジーシーガッタパーチャポイントNo.45,株式会社ジーシー製)に、50℃に加熱し軟化した根管充填用シーラー組成物を塗布して冷却した後、ガッタパーチャポイントの中程を180゜折り曲げ、周囲に付着している根管充填用シーラー組成物のガッタパーチャポイント表面からの剥離の様子を目視にて観察した。【0019】c)流動性作製した根管充填用シーラー組成物を日本歯科材料工業協同組合規格(団体規格 JDMAS 361)「歯科用根管充てん(填)シーラー」の「3.3 流動性」の試験方法を準用して50℃の条件下での流動性を測定した。この値が大きい程、組成物が流動し易いことを表す。【0020】実施例2トランスポリイソプレン 2.0重量%ポリブテン(数平均分子量:3700) 9.5重量%エステルガム(ロジンのグリセリンエステル) 2.5重量%イソパラフィン(数平均分子量:450) 2.0重量%酸化亜鉛 84.0重量%上記各成分を秤量し、実施例1と同様の方法で根管充填用シーラー組成物を作製し、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に纏めて示した。【0021】実施例3トランスポリイソプレン 10重量%ポリブテン(数平均分子量:630) 3重量%エステルガム(水添ロジンのグリセリンエステル) 4重量%イソパラフィン(数平均分子量:200) 9重量%酸化ジルコニウム 74重量%上記各成分を秤量し、実施例1と同様の方法で根管充填用シーラー組成物を作製し、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に纏めて示した。【0022】実施例4トランスポリイソプレン 8重量%ポリブテン(数平均分子量:1600) 1重量%エステルガム(ロジンのグリセリンエステル) 1重量%イソパラフィン(数平均分子量:350) 20重量%水酸化カルシウム 70重量%上記各成分を秤量し、実施例1と同様の方法で根管充填用シーラー組成物を作製し、実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に纏めて示した。【0023】比較例1市販の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーとして「商品名:キャナルス」(昭和薬品化工株式会社製)を用いた。封鎖性,ガッタパーチャポイントとの密着性試験,流動性試験の各試験は使用説明書に基づいて粉と液とを練和したものを用い、25℃で試験した以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に纏めて示した。【0024】【表1】【0025】表1から明らかなように、本発明に係る根管充填用シーラー組成物は、ガッタパーチャポイントと良好に密着し、色素の侵入も少ないことから根管壁との密着性も高いことが確認できた。また、流動性も従来の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーと同等であり実際の塗布性も良好であった。これに対し、比較例1の従来から使用されている酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーは、ガッタパーチャポイントとの密着性が悪く、封鎖性も不充分であった。【0026】【発明の効果】以上に詳述した如く、本発明に係る根管充填用シーラー組成物は、ガッタパ−チャポイントと根管壁との双方に対する密着性が高く、しかも従来の酸化亜鉛・ユージノール系根管充填用シーラーと同等の流動性があり優れた操作性を有し、構成にユージノールを使用しないため安全性が高い根管充填用シーラー組成物である。このように、従来の根管充填用シーラーでは不充分であった各種特性を格段に向上させることができる本発明に係る根管充填用シーラー組成物の歯科界に貢献する価値は非常に大きなものである。 A)ガッタパーチャ及び/又はトランスポリイソプレン 0.5〜10重量%B)数平均分子量600〜4000のポリブテン 0.1〜20重量%C)エステルガム 0.1〜20重量%D)数平均分子量200〜450のイソパラフィン 0.1〜30重量%E)酸化亜鉛,硫酸バリウム,酸化チタン,水酸化カルシウム,酸化ジルコニウムより選ばれた1種又は2種以上の無機充填材 20〜95重量%から成ることを特徴とする根管充填用シーラー組成物。