タイトル: | 特許公報(B2)_擬似卵運搬による害虫駆除法 |
出願番号: | 1999194870 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A01M 1/02,A01M 1/20,C12N 15/00 |
松浦 健二 JP 4151812 特許公報(B2) 20080711 1999194870 19990604 擬似卵運搬による害虫駆除法 関西ティー・エル・オー株式会社 899000046 小林 良平 100095670 松浦 健二 20080917 A01M 1/02 20060101AFI20080828BHJP A01M 1/20 20060101ALI20080828BHJP C12N 15/00 20060101ALN20080828BHJP JPA01M1/02 BA01M1/20 AC12N15/00 Z A01M 1/00-99/00 松浦健二、田中千尋,ヤマトシロアリと菌核菌Sclerotium sp.の共生関係,第43回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨,日本,1999年 4月16日,p.74, D106 5 2000342149 20001212 5 20060602 松本 隆彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はシロアリの巣内に活性化合物を効果的に導入する方法に関するものである。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】シロアリの駆除方法としては溶液型薬剤を侵入箇所に注入して殺虫する方法がある。しかし、この方法は一時的な効果しかなく、木材に十分浸透させるためには多量の薬剤を必要とした。さらに、被害部分だけ駆除を行うとシロアリは通路を変更して他の部分に被害を移すことになり、その駆除は一層困難を極める。頻繁に実施されているのは臭化メチルを用いた燻蒸法である。しかし臭化メチルはオゾン層破壊の原因物質であり、近年使用を規制しようとする動きが強まっている。シロアリと同様に社会生活を営むアリの駆除法としては毒物にアリの嗜好物を混入して餌として与え、巣に持ち帰らせて全集団を捕殺する方法がある。しかしシロアリは営巣している木材自体を摂食するため、毒餌剤を用いて巣の外部から巣の内部に薬剤を運搬させる方法は適用できない。【0003】【課題を解決するための手段】本発明者はシロアリの巣内に効率的に活性化合物を導入する方法について検討した結果、シロアリの卵認識及び卵運搬行動に着目し、卵を模した基材に卵から抽出した卵認識物質を塗布することによって巣内に効率的に運搬させる方法を見出し本発見に至った。シロアリの職蟻は女王が産んだ卵を運搬して山積みにし、卵の表面を舐めるなどして世話をする性質をもつ。なお職蟻はシロアリの卵に似る大きさと形状をもち、表面に卵認識物質を含有する擬似卵を卵として認識し、巣内にある自らの卵塊中に運搬する。この擬似卵に殺虫活性化合物や孵化阻害物質などの活性化合物を含有せしめて卵塊中に運搬させることにより、効率的にコロニーの生殖中枢を破壊することが可能である。また本発明者はヤマトシロアリの卵に擬態した菌核(sclerotia)を形成し、卵塊中に共生する新種のアセリア属菌核菌(Atheria sp.nov.)を発見した。本糸状菌はPDA(potato−dextrose agar)培地上で発育及び菌核形成をさせることが可能であり、培養によって得た菌核に活性化合物及び卵認識物質を含有せしめてシロアリに運搬させることも可能である。【0004】【発明の実施の形態】シロアリの卵以外の物体をシロアリに卵として認識させ、巣内に運搬させるためには、物体を物理的・化学的に卵に似せることが必要である。本発明においては直径0.3〜0.45mmの球形をした成形体又は菌核を基材とし、この表面にシロアリの卵認識物質を含有せしめたものを擬似卵として用いる。実際のシロアリの卵は長卵形であり、長卵形の擬似卵を用いてもよいが、成形するに当たっては球形の方が容易である。【0005】シロアリの卵認識物質を基材に含有せしめる方法としては、シロアリの巣から卵塊を採取し、エーテルを溶媒として卵の表面物質を抽出し、これを基材に含浸・塗布する。なおヤマトシロアリの卵から抽出した卵認識物質はイエシロアリに対しても同様の効果をもつ。この擬似卵をシロアリの蟻道内あるいは侵入箇所に注入し、職蟻に運搬させる。一度運搬が開始されると、職蟻が次々に運搬するため効率的に擬似卵を巣の中枢に導入できる。【0006】本発明に用いられる擬似卵を作製するに当たり、基材として好適な材料には様々なものがある。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、あるいは尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂のほかにも、シリカゲルなどの多孔質ゲル化剤、ガラス等が挙げられる。これらの素材を直径0.3〜0.45mmの球形に成形したものを擬似卵の基材とすることができる。またはシロアリ共生菌核菌を人工培養して得られる菌核(sclerotia)を基材として用いることもできる。好適な素材はこれらの例に限らないが、素材の比重が卵と著しく異なるものは運搬されない。【0007】本発明に用いられる擬似卵にはその運搬率を損ねない範囲で活性化合物を含有せしめることができる。例としてはピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメイト化合物、N−アリールジアゾール化合物、ヒドラゾン化合物、スルホンアミド化合物、天然殺虫成分化合物などの殺虫活性成分のみならず、孵化阻害物質、幼若ホルモン様物質等の昆虫発育制御物質などが挙げられる。擬似卵に活性化合物を含有せしめる方法としては樹脂等に練り込む、あるいは多孔質体に含浸・塗布する等の方法が挙げられる。【0008】【実施例】次に、本発明の擬似卵の製造例及び試験例を示すが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。【0009】製造例1(菌核を基材にした擬似卵):ヤマトシロアリの卵6.0重量%にジェチルエーテル94.0重量%を加え、一分間超音波洗浄した。これを濾過して卵を取り除き、卵表面物質の抽出溶液(1)を得た。PDA培地で培養して得たシロアリ共生菌核菌の菌核3.5重量%に卵抽出溶液(1)96.5重量%を加えた後、エーテル溶媒を揮発させて菌核の表面に卵認識物質を付着させる。【0010】製造例2(ガラスビーズを基材にした擬似卵):直径0.4mmのガラスビーズ(相互理化学硝子製作所(株)製)12.5重量%に製造例1に記載の卵抽出溶液(1)87.5重量%を加えた後、エーテル溶媒を揮発させてガラスビーズの表面に卵認識物質を付着させる。【0011】比較例(海砂を基材にした場合):30meshの海砂(和光純薬(株)製)7.0重量%に製造例1に記載の卵抽出溶液(1)93.0重量%を加えた後、エーテル溶媒を揮発させて海砂の表面に卵認識物質を付着させる。【0012】試験例:直径9cmのシャーレ上にシロアリの卵20個と製造例1によって得た擬似卵20個をランダムに撒き、これにシロアリの職蟻30個体を入れて15時間25℃の恒温室内で静置した。職蟻はシャーレ上に散在した卵を集めて卵塊を形成した。15時間後に卵塊を調べたところ、90%以上の擬似卵が卵塊中に運搬されていた。同様の試験法で製造例2及び比較例によって得た擬似卵の運搬率を調べたところ、製造例2の擬似卵は40%以上運搬されたが、比較例の擬似卵は全く運搬されなかった。また、室内飼育するシロアリのコロニーが形成した蟻道中に製造例1によって得た擬似卵50個を注入したところ、24時間後には擬似卵の80%以上が巣内の卵塊中に運搬された。【0013】【発明の効果】本発明により、害虫駆除の目的で人工物を効率的に害虫の巣内に運搬させることが可能になった。【0014】【配列表】 シロアリの卵の形状と大きさを模した基材にシロアリの卵認識物質を含有せしめて成る擬似卵をシロアリに与えて、卵運搬行動を利用して巣内に運搬させる方法。 請求項1に記載の方法において、上記擬似卵に活性化合物を含有せしめ、シロアリの駆除のために使用する方法。 シロアリ共生菌核菌が形成する菌核をシロアリに与えて、卵運搬行動を利用して巣内に運搬させる方法。 上記シロアリ共生菌核菌がヤマトシロアリ(Reticulitermessperatus Kolbe)の巣内に共生し、直径0.2〜0.6mmの菌核(sclerotia)を形成するアセリア(Atheria)属に属する菌核菌であることを特徴とする請求項3に記載の方法。 請求項3又は4に記載の方法において、上記菌核に活性化合物を含有せしめ、シロアリの駆除のために使用する方法。