タイトル: | 特許公報(B2)_ジメチルジスルフィドを主成分とする消臭組成物 |
出願番号: | 1999192969 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 321/14,C07C 303/42 |
ジヨルジユ・フレミ JP 4394201 特許公報(B2) 20091023 1999192969 19990707 ジメチルジスルフィドを主成分とする消臭組成物 アトフイナ・エス・アー 590005494 川口 義雄 100062007 伏見 直哉 100105393 田中 夏夫 100111741 ジヨルジユ・フレミ FR 9809864 19980731 20100106 C07C 321/14 20060101AFI20091210BHJP C07C 303/42 20060101ALI20091210BHJP JPC07C321/14C07C303/42 C07C 321/00 C07C 303/00 CA/REGISTRY(STN) 米国特許第05559271(US,A) 特開昭62−262727(JP,A) 特開昭58−140063(JP,A) 特開昭58−074657(JP,A) 9 2000053637 20000222 8 20060614 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は有機硫化物の分野、より詳細にはジメチルジスルフィドの分野に関する。【0002】【従来の技術】ジメチルジスルフィド(DMDS)は臭気の強い不純物の存在や、DMDSに固有のニンニクエーテル臭のために強い刺激臭をもつ。この強い臭気により、触媒の硫化等の用途や蒸気分解用添加剤としてこの生成物はさほど利用されていない。これらの用途で使用されている他の製品(例えば第3級アルキルポリスルフィド)に比較すると、DMDSは特に硫黄含量が高く(68%)、非コーキング分解生成物(CH4、H2S)である等の多数の利点がある。更に、これらの用途でDMDSは一般に第3級アルキルポリスルフィド等の他の製品よりも性能が優れている。しかし、これらの他の製品はDMDSよりも臭気レベルが著しく低いので取り扱い易い。【0003】DMDS合成法のうちで特に効率的で経済的な方法は反応式:【0004】【化2】に従う硫黄によるメチルメルカプタンの酸化である。【0005】硫黄によるメチルメルカプタンのこの酸化は、バッチ又は連続条件下で有機又は無機、均一又は不均一塩基性物質により触媒され、硫化水素とジメチルポリスルフィド(CH3SxCH3)(式中、硫黄数xは>2である)を発生する。この方法によりDMPS(硫黄数>2のジメチルポリスルフィド)生産を抑えながら高収率でDMDSを製造するために、参考資料としてその開示内容を本明細書の一部とするヨーロッパ特許第0,446,109号は中間脱ガス領域により分離された2個の反応領域とそれに後続する蒸留領域を含む製造方法を開示している。収率とDMDS選択性の点では良好な性能が得られるが、この方法はDMDSの合成中に使用又は生成されたメチルメルカプタンが最終生成物中に残るため、メチルメルカプタン量が多く(約4000ppm)、ジメチルスルフィドは非常に少量である(約300ppm)。これらの揮発性不純物の結果、DMDSの臭気は非常に不快な刺激臭となり、この強い臭気は使用者がこの生成物を取り扱う際に重大な問題とみなされている。【0006】有機ポリスルフィドの臭気を消すために、米国特許第5,559,271号は特にバニリンやエチルバニリン等の消臭剤を所定量添加することを提案している。その一般式はDMDSを含むが、この特許はむしろ例えばジ−t−ノニルペンタスルフィド等の重いポリスルフィドの処理を目的としている。この方法をDMDSに適用しても、その非常に不快な臭気を消すことはできない。【0007】【発明が解決しようとする課題】特にDMDSの場合には、使用するDMDSがメチルメルカプタンやジメチルスルフィド等の臭気の強い揮発性不純物を低濃度で含み、好ましくはメチルメルカプタン200重量ppm未満とジメチルスルフィド50重量ppm未満を含む場合のみに消臭剤を添加すると有効であることが今般判明した。最も有効な消臭剤は上記米国特許には記載されていないが、一般式:R1CO2R2 (I)(式中、R1は場合により不飽和の炭素原子数1〜4の直鎖又は分枝鎖炭化水素含有基を表し、R2は場合により不飽和の炭素原子数2〜8の直鎖、分枝鎖又は環状炭化水素含有基を表す)に対応するエステルから選択されるものであることも判明した。【0008】【課題を解決するための手段】従って、本発明の主題は重量換算でジメチルジスルフィド少なくとも95%、メチルメルカプタン(MM)500ppm未満、ジメチルスルフィド(DMS)100ppm未満及び少なくとも1種の消臭剤、好ましくは一般式(I)のエステル1%までを含むことを特徴とするDMDS系組成物である。【0009】【発明の実施の形態】本発明の関連では、低濃度のMMやDMS等の揮発性不純物を含むDMDSの製造方法として当業者に公知の任意方法を使用することができる。他方、高濃度のMMとDMSを含むDMDSの場合には、特に好ましい方法は常圧蒸留である。この方法はMMとDMSを同時に除去できるという利点があるが、これに対して通常の消臭方法は一般に塩基の存在下で塩基やアルケンオキシド等の除去剤とメルカプタン官能基の特定反応により残留メルカプタンを除去するものであり、DMDS中に存在するDMSには無効である。【0010】こうして常圧蒸留したDMDSはMM200ppm未満及びDMS50ppm未満であることが好ましく、このDMDSを使用すると、少なくとも1種の消臭剤を加えるだけで本発明の組成物を製造できる。【0011】DMDSを利用する主な利点の1つはその硫黄含量が高い(68%)ことであるので、組成物の消臭剤含量が高過ぎると、この硫黄含量が低下し、その主用途におけるこの生成物の利点が損なわれる。従って、消臭剤の最大含量は1%に設定するが、この含量は0.1〜0.5%が好ましく、約0.2%がより好ましい。【0012】一般式(I)のエステルの非限定的な例としては、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、酢酸ベンジル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、酪酸2−メチルブチル又は酪酸イソアミルが挙げられる。酢酸イソアミル、酪酸2−メチルブチル、酪酸イソアミル、酢酸ベンジル及びこれらの化合物の混合物が特に好ましい。エステル(I)は一般式:【0013】【化3】(式中、R3及びR4は同一又は異なり、各々場合により不飽和の炭素原子数1〜8の直鎖、分枝鎖又は環状炭化水素含有基を表す)に対応するオルトフタレートと併用してもしなくてもよい。化合物(II)の非限定的な例としてはジエチルオルトフタレートを特に挙げることができる。【0014】本発明の典型的組成物は、酢酸イソアミル0.1重量%、ジエチルオルトフタレート0.1重量%、常圧蒸留DMDS99.8重量%を含む。【0015】本発明の別の典型的組成物は、酢酸イソアミル0.05重量%、酪酸2−メチルブチル0.03重量%、酢酸ベンジル0.02重量%、ジエチルオルトフタレート0.1重量%、常圧蒸留DMDS99.8%を含む。【0016】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明を制限するものではない。【0017】【実施例】実施例1:ヨーロッパ特許第0,446,109号に開示の方法によるジメチルジスルフィドの合成a)装置:添付図1は使用するプラントのブロック図であり、2個の反応器(主反応器1と仕上げ反応器3)を併用している。主反応器は撹拌反応器であり、仕上げ反応器は固定床管状反応器である。これら2個の反応器の間に脱ガスシステムを配置し、このシステムは撹拌機を備えるジャケット付き容器2から構成し、硫化水素に随伴し得るメチルメルカプタンを除去前に再凝縮するための冷却塔を容器の上に配置する。このプラントは更に、脱ガス装置2の出口と仕上げ反応器3の入口の間にポンプを配置し、脱ガス装置で処理された液体生成物をこの反応器に供給できるように構成している。脱ガス塔4は反応器3から排出される液体に溶けているH2Sを完全に除去するように機能する。蒸留塔5はパイプ22を通して反応器1にリサイクルする目的で過剰のメチルメルカプタンの大部分を分離することができる。塔6は反応器3又は反応器1にリサイクルする目的で残留ジメチルポリスルフィド(DMPS)を分離することができる。【0018】b)手順:メチルメルカプタン(MM)を加圧下に流速960g/hでパイプ11を通して反応器1に導入する。液体硫黄を流速160g/h(MM/S=4モル)でパイプ10を通して反応器1に導入する。反応器1(反応容量:300ml)には乾燥Amberlyst A21樹脂20gを入れておく。操作圧力は相対5.5barに維持し、温度は40℃に維持する。反応器1の出口の反応混合物の重量組成は、過剰のメチルメルカプタンとH2Sを除き、DMDS85%、DMPS15%である。この反応混合物を次にパイプ14を通して脱ガス装置2に送り、処理する。処理後、H2Sを除去した混合物をパイプ17を通し、乾燥A21樹脂94gを入れた仕上げ反応器3に送る。反応器内の圧力は相対5.5barであり、温度は40℃である。反応器3の出口で、混合物の重量組成はH2Sと過剰のメチルメルカプタンを除き、DMDS98.5%、DMPS1.5%である。次にパイプ18を通して脱ガス装置4に混合物を導入し、メチルメルカプタンによるジメチルポリスルフィドの逆戻り中に反応器3で形成されたH2Sを除去し、DMDSを得る。【0019】脱ガス塔4の出口で、パイプ21を通して混合物を第1の蒸留塔5に導入し、過剰のメチルメルカプタンをほぼ完全に除去する。このメチルメルカプタンはパイプ22を通してリサイクルし、反応体と共に反応器1に導入することができる。塔5の出口でパイプ23を通して混合物を第2の蒸留塔6に送り、パイプ25を通して塔底からDMPSを除去し、場合により反応器3にリサイクルするか、又はパイプ26を通して場合により反応器1にリサイクルする。【0020】塔6の頂部からパイプ24を通して最終的に回収したDMDS(下記実施例に記載する嗅覚試験でA0と呼ぶ)の重量組成は、DMDS99.3%、DMPS3000ppm、MM4000ppm、DMS300ppmである。【0021】実施例2:ヨーロッパ特許第0,446,109号に開示の方法により製造したジメチルジスルフィドの精製塔6からパイプ24を通して排出されるDMDSを第3の蒸留塔7(添付図2参照)に導入し、メチルメルカプタンやジメチルスルフィド等の揮発性不純物を塔頂からパイプ27を通して除去する以外は実施例1に記載したと同一の合成手順に従う。塔底からパイプ28を通して回収したDMDSの重量組成はDMDS99.7%、DMPS3000ppm、MM<100ppm、DMS<50ppmである。【0022】この精製DMDS(以下、B0と呼ぶ)と実施例1で調製したDMDS試料A0で嗅覚試験を実施した。この試験に参加した8人全員がA0DMDSに比較してB0DMDSの臭気の著しい改善を認めたが、同じく全員がB0DMDSにまだニンニクエーテル臭が残っていると報告した。【0023】実施例3実施例2で調製したB0DMDS100gにバニリン(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド)2000重量ppmを加えた。25℃で1時間後にバニリンの完全な溶解が認められた。得られた試料をB1とした。【0024】実施例4実施例3で使用したバニリンの代わりにエチルバニリン(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド)2000ppmを使用した。25℃で1時間後にその溶解が認められた。得られた試料をB2とした。【0025】実施例5及び6は本発明の好適生成物により消臭したDMDS系組成物の調製に関する。【0026】実施例5酢酸イソアミル50重量%とジエチルオルトフタレート50重量%から構成される混合物2000ppmを実施例2で調製したB0DMDS100gに加えた。この混合物は液体であったので、25℃ですぐに溶けた。得られた試料をB3とした。【0027】実施例6実施例5で使用した混合物の代わりに、酢酸イソアミル25%、ジエチルオルトフタレート50%、酪酸2−メチルブチル15%、酢酸ベンジル10%の重量組成をもつ混合物2000ppmを使用した。【0028】この混合物は25℃でB0にすぐに溶けた。得られた試料ををB4とした。【0029】実施例2に記載した8人のパネルにより試料B0、B1、B2、B3及びB4で比較嗅覚試験を実施した。臭気に関する嗜好を0〜5の得点に割り当て、最も好ましくない臭気を0、最も好ましい臭気を5、中間レベルを1、2、3及び4として8人のパネリストに試料を採点してもらった。結果を下表に示す。【0030】【表1】全パネリストがB0よりも組成物B1、B2、B3及びB4の臭気のほうが好ましいと判断し、B4で得られた得点は可能な最大値(40)に最も近い。更に、パネリストは組成物B3及びB4の「果実」臭のほうが組成物B1及びB2の「バニラ−ニンニク」臭よりも好ましいと報告した。【0031】比較実施例7〜11は有意消臭効果を得るためにはDMDSから揮発性不純物の大半を除去する必要があることを実証するものである。【0032】実施例7B0DMDS100gの代わりに実施例1で調製した非常圧蒸留DMDSA0100gを使用した以外は実施例3を繰り返した(消臭剤:バニリン)。得られた試料をA1とした。【0033】8人のパネリストにA1とB0の臭気を比較してもらった処、全員が未精製DMDSとバニリンを主成分とする組成物A1よりもB0(その揮発性不純物を除去し、消臭剤を加えないDMDS)の臭気のほうが好ましいと報告した。【0034】実施例8バニリンの代わりにエチルバニリンを使用した以外は実施例7の手順に従った。8人のパネリストは得られた試料(A2)よりも試料B0の臭気のほうが好ましいと報告した。【0035】実施例9バニリンの代わりにメントールを使用した以外は実施例7の手順に従った。この場合も、得られた試料(A3)よりも試料B0の臭気のほうが好ましいと報告された。【0036】実施例10バニリンの代わりに実施例5に記載した消臭剤混合物を使用した以外は実施例7の手順に従った。得られた試料をA4とした。8人のパネリストはA4よりもB0の臭気のほうが好ましいと報告した。【0037】実施例11バニリンの代わりに実施例6に記載した消臭剤混合物を使用した以外は実施例7の手順に従った。得られた試料をA5とした。この場合も、試料A5よりも試料B0の臭気のほうが好ましいと報告された。【図面の簡単な説明】【図1】2個の反応器を併用するプラントのブロック図である。【図2】更に蒸留塔を含むプラントのブロック図である。【符号の説明】1,3 反応器2 脱ガスシステム4 脱ガス塔5,6,7 蒸留塔11,14,17,21〜27 パイプ ジメチルジスルフィド(DMDS)を主成分とする組成物であって、重量換算でDMDS少なくとも95%、メチルメルカプタン500ppm未満、ジメチルスルフィド100ppm未満及び、バニリン、エチルバニリン及び一般式: R1CO2R2 (I)(式中、R1は場合により不飽和の炭素原子数1〜4の直鎖又は分枝鎖炭化水素含有基を表し、R2は場合により不飽和の炭素原子数2〜8の直鎖、分枝鎖又は環状炭化水素含有基を表す)に対応するエステルから選択される少なくとも1種の消臭剤1%までを含むことを特徴とする前記組成物。 メチルメルカプタン200ppm未満とジメチルスルフィド50ppm未満を含む請求項1に記載の組成物。 消臭剤0.1〜0.5%、好ましくは約0.2%を含む請求項1又は2に記載の組成物。 消臭剤が一般式(I)のエステルから選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。 消臭剤が酢酸イソアミル、酪酸2−メチルブチル、酪酸イソアミル、酢酸ベンジル及びこれらの化合物の混合物から構成される群から選択される請求項4に記載の組成物。 式(I)のエステルを一般式:(式中、R3及びR4は同一又は異なり、各々場合により不飽和の炭素原子数1〜8の直鎖、分枝鎖又は環状炭化水素含有基を表す)に対応するオルトフタレートと併用する請求項4又は5に記載の組成物。 オルトフタレートがジエチルオルトフタレートである請求項6に記載の組成物。 酢酸イソアミル0.1%とジエチルオルトフタレート0.1%を含む請求項7に記載の組成物。 酢酸イソアミル0.05%、酪酸2−メチルブチル0.03%、酢酸ベンジル0.02%及びジエチルオルトフタレート0.1%を含む請求項7に記載の組成物。