タイトル: | 特許公報(B2)_糖組成物の単糖分析方法 |
出願番号: | 1999149720 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12Q1/533,G01N30/06,G01N30/26,G01N30/88,G01N31/00 |
安野 彰一 亀井 麻直 荒井 潤子 西藤 桂子 JP 3689842 特許公報(B2) 20050624 1999149720 19990528 糖組成物の単糖分析方法 株式会社J−オイルミルズ 302042678 萼 経夫 100068618 中村 壽夫 100093193 宮崎 嘉夫 100104145 舘石 光雄 100080908 加藤 勉 100104385 小野塚 薫 100109690 財団法人杉山産業化学研究所 390005119 萼 経夫 100068618 中村 壽夫 100093193 宮崎 嘉夫 100104145 安野 彰一 亀井 麻直 荒井 潤子 西藤 桂子 20050831 7 C12Q1/533 G01N30/06 G01N30/26 G01N30/88 G01N31/00 JP C12Q1/533 G01N30/06 G G01N30/26 A G01N30/88 J G01N30/88 N G01N31/00 V 7 C12Q 1/00-70 G01N 33/50ー98 C12N1/00-13/00 PubMed、MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(DIALOG) 5 2000333698 20001205 8 20020123 斎藤 真由美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、糖組成物を構成するシアル酸等の単糖の定量方法に関する。【0002】【従来の技術】糖タンパク質、糖脂質などの糖組成物は、人体の機能調節機構、特に免疫関連部分を構成する重要な物質であり、近年、エイズや癌の治療など医療の先端において研究が盛んになっている。既に、エイズウイルスの表面に存在する糖タンパク質の糖鎖が、宿主細胞表面のCD4分子と結合して感染すると考えられており、また、癌により糖組成物の糖部分が変化することが多数報告されている。そのなかでも特に、シアル酸を主とする糖組成物を構成する各種単糖の定量分析は、当該研究の基本であり、迅速、高感度化分析に向けて、これまで、種々の方法が提案されている。【0003】以下に種々の従来法とその利点及び欠点を示す。例えば、▲1▼糖組成物のメタノリシスとトリメチルシリル化により、揮発性糖誘導体化した後、ガスクロマトグラフィー(GLC)によるシアル酸、中性糖、アミノ酸の定量法:シアル酸、中性糖、アミノ酸の同時定量ができるが、多量の試料が必要であること(単糖で10nmol以上)、GLCでの分析が多検体処理に不向きであること、そして、アスパラギン残基に結合したN−アセチルグルコサミンを定量できない(Anal. Biochem. 119, 17-24(1982) )という欠点がある。【0004】▲2▼シアリダーゼもしくは酸で遊離したシアル酸を1,2-diamino-4,5-methylenedioxybenzene (DMB)誘導体化し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたシアル酸の定量法:非常に簡便で高感度であるが、シアル酸しか分析できず、しかも誘導体化物が不安定で12時間以内に分析する必要(“糖蛋白質糖鎖研究法(生物化学実験法23)”,学会出版センター,p.20(1989))があり限定的である。【0005】▲3▼アミノ酸分析によるアミノ糖の定量:簡便で高感度であるが、アミノ糖しか分析できない。▲4▼ピリジルアミノ標識化、4−アミノ安息香酸エチル誘導体化した後HPLCによる中性糖、アミノ糖の定量:高感度ではあるが、シアル酸の分析ができない。▲5▼1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(PMP)誘導体化した後HPLCによるシアル酸、中性糖、アミノ糖の定量:高感度ではあるが、シアル酸および中性糖とアミノ糖の同時定量ができず不便である。【0006】▲6▼糖のHPLCによる分離後シアノアセトアミド誘導体化によるシアル酸、中性糖、アミノ糖の定量:ポストカラムラベル法で簡便であるが、分析時間が長く、シアル酸および中性糖とアミノ糖の同時定量ができず不便である。▲7▼陰イオン交換クロマトグラフィーと電気化学検出器を用いたシアル酸、中性糖、アミノ糖の定量:標識の手間は省けるが、特別な装置が必要な上、シアル酸および中性糖とアミノ糖の同時定量ができず不便である(Methods in Enzymology, 230, 208-225(1994))。【0007】【発明が解決しようとする課題】このように、従来から知られている糖組成物の単糖分析方法はそれぞれ一長一短があり、必ずしも満足のいくものではない。その一方で、外科的侵襲を伴わずに疾患部位を診断することができる糖組成物の分析方法は、患者に対する負荷が少なく、最近益々繁用されるようになり、簡便で多検体を処理できる方法が望まれている。そして、癌などの病態変化を観測できる指標として注目を集めているシアル酸を始め、糖組成物の構成をなす各単糖を同時に、迅速且つ高感度で正確に定量できる方法の開発が焦眉の急となっている。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、糖組成物の単糖分析において、遊離したシアル酸をN−アシルマンノサミンに変換した後、酸加水分解することで、各単糖を同時に定量できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、糖組成物を同時に定量分析するに際し、(1)糖組成物からシアリダーゼもしくは酸によりシアル酸を遊離させ、(2)遊離したシアル酸をシアル酸アルドラーゼによりN−アシルマンノサミンに変換し、(3)N−アシルマンノサミンおよび糖残基を酸加水分解することを特徴とする糖組成物の単糖分析方法である。【0009】また、本発明は、N−アシルマンノサミンおよび糖残基を酸加水分解して、各単糖を定量する際に、加水分解において脱N−アシル化された単糖をN−アセチル化しておくこと、更には、再度N−アセチル化した単糖を4−アミノ安息香酸エチル(ABEE)標識化することを特徴とする。各単糖はHPLC、キャピラリー電気泳動、GLC等の方法により分析することができるが、多検体処理に適しているHPLCが特に望ましい。本発明において、HPLCによる各単糖の定量方法は、逆相カラムを用いており、溶離液にはホウ酸緩衝液を用いることが望ましい。【0010】【発明の実施の形態】本発明によれば、糖組成物の各単糖を同時に定量することができる。従来法では、中性糖やアミノ糖を加水分解する条件では、シアル酸は完全に破壊され検出することができなかった。そのため、シアル酸と中性糖とアミノ糖を定量する際に一つの試料に対して少なくとも2回以上の処理と分析をおこなう必要があった。本発明では、シアル酸を予め中性糖やアミノ糖を加水分解する条件で破壊されない化合物に変換することによって、シアル酸と中性糖とアミノ糖の定量を一度におこなうことができるので操作性に優れ、迅速に糖組成物を構成する各単糖を定量することができる。【0011】本発明において分析の対象である糖組成物としては、糖タンパク、糖脂質、オリゴ糖、多糖が挙げられる。本発明において使用する試薬としては、シアリダーゼ、シアル酸アルドラーゼ、酸がある。シアリダーゼの起源としては、Arthrobacter ureafaciens, Clostridium perfringens, Streptococcus sp., Vibrio cholerae, Salmonella typhimurium,ニューカッスル病ウイルスなどがあり、望ましくは、取り扱いが容易なArthrobacter ureafaciens由来のものがよい。シアル酸アルドラーゼの起源としては、大腸菌、Clostridium perfringens などがあり、望ましくは、取り扱いの容易な大腸菌由来のものがよい。酸にはトリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸などが使用でき、望ましくは、除去の容易さからトリフルオロ酢酸が好ましい。【0012】本発明は、実施にあたり糖組成物からのシアル酸の遊離と遊離されたシアル酸のN−アシルマンノサミンへの変換は、シアリダーゼもしくは酸とシアル酸アルドラーゼを糖組成物を含む反応容器に順次加えて行ってもよくまたこれらの試薬を同時に加えて行うこともできる。その後、酸を加えて、シアル酸の遊離した糖残基とN−アシルマンノサミンを加水分解し、得られた加水分解物をHPLC等で分析することにより構成の各単糖を定量することができる。単糖の定量分析にあたっては、前記加水分解によって脱N−アシル化された単糖をN−アセチル化して行ってもよく、また、遊離した各単糖をABEE標識化した後に定量分析してもよい。本発明における試料の上記各処理は、容器を変えることなく単一容器で処理することができる。【0013】【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明の主旨はもとよりこれに限定されるものではない。【0014】実施例1子牛血清由来フェツイン(シグマ社製)溶液10μl(5μg)をネジ口試験管(45mm×9.5mm I.D.)に加え減圧下で乾固した。これにシアル酸アルドラーゼ溶液5μl、シアリダーゼ溶液5μlを加え、37℃、17時間保温した。更に、8Mトリフルオロ酢酸水溶液10μlを加え(終濃度4M)、121℃、2時間保温した。空冷後、減圧乾固した後、充分に酸を除くために2−プロパノールを100μl添加して再度、減圧乾固した。これにピリジン/メタノール(5/95,容量比(v/v))40μlを加え、無水酢酸10μlを添加して、室温で30分放置してN−アセチル化をおこない、減圧乾固した。純水10μlとABEE標識化試薬(生化学工業製)40μlを加えて、80℃、1時間保温した。純水200μlとクロロホルム200μlを加えて、遠心後、上清をHPLC分析に供した。【0015】<HPLC分析条件>HPLC送液ポンプ、コントローラー、カラムオーブン、蛍光検出器には島津製作所製のものを使用した。カラムには逆相カラムであるホーネンパックC18(生化学工業)を用い、流速1ml/minで、カラム温度30℃にておこなった。移動相には0.2Mホウ酸カリウム緩衝液(pH8.9)/アセトニトリル(93/7,v/v)を使用した。検出は励起波長305nm,蛍光波長360nmでおこなった。【0016】実施例2子小牛血清由来フェツイン(シグマ社製)溶液をネジ口試験管(45mm×9.5mm I.D.)に10μl(5μg)加え、0.2Mトリフルオロ酢酸10μlを加えて攪拌し、80℃で1時間保温してシアル酸を遊離した。減圧下で酸を除去した後、シアル酸アルドラーゼ溶液10μlを加え、37℃、17時間保温した。更に、8Mトリフルオロ酢酸水溶液10μlを加え(終濃度4M)、121℃、2時間保温した。空冷後、減圧乾固した後、充分に酸を除くために2−プロパノールを100μl添加して再度減圧乾固した。これに、ピリジン/メタノール(5/95,v/v)40μl添加し、無水酢酸10μlを添加して、室温で30分放置し、N−アセチル化をおこない、減圧乾固した。純水10μlとABEE標識化試薬(生化学工業製)40μlを加えて、80℃、1時間保温した。純水200μlとクロロホルム200μlを加えて、遠心後、上清をHPLC分析に供した。HPLC分析は実施例1と同じ条件でおこなった。【0017】実施例3実施例2の子牛血清由来フェツインに代えて糖脂質であるII3NeuGc α-LacCer (和光純薬工業製)を用いた他は、実施例2と同様におこなって単糖を分析した。【0018】実施例4実施例2の子牛血清由来フェツインに代えて3′−シアリルラクトース(シグマ社製)を用いた他は、実施例2と同様にして単糖を分析した。【0019】比較例1子牛血清由来フェツイン(シグマ社製)60μgを1.4M塩酸メタノール100μl中で90℃、2時間保温した。酸を窒素気流下で除去し、そこに10%ピリジン−メタノール200μlと無水酢酸10μlを加え、室温で30分間放置した。減圧下で溶媒を除去し、トリメチルシリル化試薬(Tri−Sil:ピアス社)50μlを加えて、46℃、10分間保温した。硫酸存在下で溶媒を減圧除去し、n−ペンタンで抽出し、濃縮後、2% OV−17(Uniport HP(60/80)カラム(GLサイエンス社)を装着したガスクロマトグラフィー分析に供した(“タンパク質の化学・上(続生化学実験講座2)”,日本生化学会編,東京化学同人,p.215 〜p.218 (1987))。【0020】比較例2子牛血清由来フェツイン(シグマ社製)10μgを6N塩酸40μl中、100℃、6時間保温した後、酸を減圧下で除去した。得られた処理物を、AccQ標識化試薬(ウォータース製)を用いて、6−aminoquinolyl −N−hydroxysuccinimidyl carbamate 標識をおこない、付属のマニュアルに従ってHPLCで分析した。【0021】比較例3子牛血清由来フェツイン(シグマ社製)5μgを0.1Mトリフルオロ酢酸水溶液20μl中、80℃、1時間保温した後、DMB標識化キット(タカラ酒造製)を用いて1,2−ジアミノ−4,5−メチレンジオキシベンゼン(DMB)標識して、付属のマニュアルに従ってHPLCで分析した。【0022】上記各実施例および比較例で得られた分析結果を表1および表2に示す。【0023】【0024】表1に示したように、本発明方法を用いた場合(実施例1および2)、糖組成物のシアル酸、中性糖、アミノ糖の組成は一度の分析で得ることができる。一方、比較例1では、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)について正確な結果を得ることができない。また、比較例2ではアミノ糖のみしか定量できず、比較例3ではシアル酸のみの定量値しか得ることができない。つまり、従来の方法を用いると少なくとも2種類の方法を駆使しなければ正確な糖組成物のシアル酸、中性糖、アミノ糖の組成を得ることはできない。また、表2に示したように、本発明方法を用いて得られた結果(実施例3および4)は、糖脂質やオリゴ糖にも適用できることを示しているだけでなく、本発明が、非常に正確な結果を得ることができる方法であることも示している。 糖組成物を構成する各単糖を同時に定量分析するに際し、(1)糖組成物からシアリダーゼもしくは酸によりシアル酸を遊離させ、(2)遊離したシアル酸をシアル酸アルドラーゼによりN−アシルマンノサミンに変換し、(3)N−アシルマンノサミンおよび糖残基を酸加水分解することを特徴とする糖組成物の単糖分析方法。 糖組成物を構成する各単糖を同時に定量分析するに際し、(1)糖組成物からシアリダーゼもしくは酸によりシアル酸を遊離させ、(2)遊離したシアル酸をシアル酸アルドラーゼによりN−アシルマンノサミンに変換し、(3)N−アシルマンノサミンおよび糖残基を酸加水分解し、(4)前記加水分解において脱N−アシル化された単糖をN−アセチル化することを特徴とする糖組成物の単糖分析方法。 糖組成物を構成する各単糖を同時に定量分析するに際し、(1)糖組成物からシアリダーゼもしくは酸によりシアル酸を遊離し、(2)遊離したシアル酸をシアル酸アルドラーゼによりN−アシルマンノサミンに変換し、(3)N−アシルマンノサミンおよび糖残基を酸加水分解し、(4)前記加水分解において脱N−アシル化された単糖をN−アセチル化し、(5)前記で得られた単糖を4−アミノ安息香酸エチル(ABEE)標識化することを特徴とする糖組成物の単糖分析方法。 各単糖の定量分析方法が高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の糖組成物の単糖分析方法。 HPLCによる各単糖の分析が、逆相カラムを用い、溶離液にホウ酸緩衝液を用いる方法である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の糖組成物の単糖分析方法。