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タイトル:特許公報(B2)_グルコースデヒドロゲナーゼによるグルコースの定量方法およびグルコース定量用試薬
出願番号:1999114014
年次:2009
IPC分類:C12Q 1/54,C12Q 1/32,G01N 33/66


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菅 亮彦 山本 茂一 合田 保 JP 4217815 特許公報(B2) 20081121 1999114014 19990317 グルコースデヒドロゲナーゼによるグルコースの定量方法およびグルコース定量用試薬 株式会社カイノス 391031074 吉村 公一 100070183 菅 亮彦 山本 茂一 合田 保 20090204 C12Q 1/54 20060101AFI20090115BHJP C12Q 1/32 20060101ALI20090115BHJP G01N 33/66 20060101ALN20090115BHJP JPC12Q1/54C12Q1/32G01N33/66 A C12Q 1/00-1/70 BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlus/JMEDPlus(/JST7580(JDreamII) G-Search 特開昭57−163499(JP,A) 2 2000262299 20000926 7 20060228 三原 健治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、グルコースの定量方法、特に、臨床検査分野における例えば検尿などの試料中のグルコース濃度を、酵素グルコースデヒドロゲナーゼを用いて反応速度論に基づいて定量する方法、並びに、その方法の使用に適する測定用試薬に関する。より詳しくは、本発明は、グルコースを含有する試料にグルコースデヒドロゲナーゼを作用させる際、グルコースデヒドロゲナーゼの拮抗阻害剤としてホウ酸もしくはその塩を使用し、グルコースデヒドロゲナーゼと基質(グルコース)との親和力を小さくして見かけのKm値を大きくすることにより、試料中のグルコース濃度が高くとも、そのグルコースを正確に定量することができるグルコース濃度の測定方法に関する。【0002】【従来の技術】血清および尿などの体液中のグルコース濃度は各種の疾患または病態を反映していることから、ヒトの健康診断、特に成人病として発症率の高い糖尿病の鑑別診断においては、グルコース濃度の検査は、必須の検査項目となっている。ヒトの尿中のグルコース濃度の基準値は、およそ20ないし40mg/dLの範囲であり、測定値がその範囲に該当するとき、そのヒトは健常であると判断される。しかるに、重篤な糖尿病とか腎障害などを患っている患者にあっては、大量のグルコースが尿中に排泄されるため、尿中のグルコース濃度は約10g/dLの非常に高濃度にまで及ぶ。グルコース濃度の測定法としては、従来より化学法と酵素法が知られている。化学法としては、還元法(Somogyi−Nelson法)とか、酸化的縮合法(o−トルイジンホウ酸法)などが挙げられる。しかし、これらの方法は、還元物質の影響を受ける、またグルコースに対する特異性が低いなどの欠点があるため、一般に、化学法よりも酵素法がより優れていると判断されている。酵素法としては、従来、グルコースオキシダーゼ・ペルオキシダーゼ系を用いた測定法並びにヘキソキナーゼ・グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ系を用いた測定法が主に使用されている[Hans U.B.:Methods ofEnzymatic Analysis,vol.3,1196−1227(1974)など参照]。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、これら両測定法は、ともに、複数の酵素を使用するものであって、その反応系が複雑であり、簡便な測定法とは言い難い。その上、グルコースオキシダーゼ・ペルオキシダーゼ系を用いた測定法にあっては、過酸化水素の呈色系が測定液中の共存物質の影響を受けやすく、とりわけ溶存酸素の濃度が全反応を律速するものとなるとき、グルコース濃度の測定が困難になる。他方、ヘキソキナーゼ・グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ系を用いた測定法にあっては、反応終末端において残存する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと表わすこともある。)もしくは還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(以下、NADPHと表わすこともある。)の紫外部吸収を測定する方法であるため、試料中の種々の共存物質のうち、紫外部に吸収域をもつものの影響を受ける。その上、NADHもしくはNADPHの濃度については、光学測定器の測定可能な吸光度限界によって、その測定可能な濃度範囲が一定の範囲に制限されるため、この測定法によるグルコース濃度の測定可能な濃度範囲は、低い濃度レベルの狭い範囲に限られるという欠点がある。【0004】また、酵素グルコースデヒドロゲナーゼを用いたヒト血清中のグルコースの定量法も、有効な測定法のひとつとして提案されている。正常ヒト血清中のグルコース濃度は65〜105mg/dL(3.65.8mM)程度であるのに対して、グルコースデヒドロゲナーゼのグルコースに対するKm値は数mM程度と小さいものであるため、グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコース定量においては、終末点法が適当な測定法として従来採用されていた。しかしながら、ヒト尿中のグルコース濃度については、その基準値は20〜40mg/dL程度であるが、重篤な糖尿病もしくは腎障害などを患う患者にあっては、尿中のグルコース濃度が大変高い濃度に及ぶため、そのような患者の尿試料(つまり高濃度グルコース試料)を測定するときには、試料を希釈して、グルコース濃度を低下させる必要があった。しかし、この希釈操作は煩雑なものであり、しかも、希釈の精度および回数が誤差範囲として、最終的な測定値に与える影響も大きく、無視し得ないものである。【0005】本発明は、上述した従来事情を考慮してなされたものであって、その課題とするところは、とくに臨床領域におけるグルコースの定量において、測定可能な濃度範囲が広く、たとえ高濃度の尿検体であっても希釈せずに測定が可能であり、汎用する自動分析機への適用性に優れたグルコースの定量方法、並びに、その方法に好適に使用されるグルコース定量用試薬を提供することにある。本発明のその他の課題は、特許請求の範囲を含む明細書の記載並びに図面を参照することにより、理解される。【0006】【課題を解決するための手段】一般に、酵素の反応速度論に基づいて、その酵素の基質となる物質を定量する場合には、酵素の基質に対するKm値が測定系における基質濃度よりも充分により大きいことが必須の条件となる。しかるに、上述した、グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコースの定量法にあっては、グルコースデヒドロゲナーゼのグルコースに対するKm値が低すぎるため、そのKm値を適当な高い値に調節することが必要とされる。Km値を高い値に調節する手段として、当該酵素に対する拮抗阻害剤を反応系に添加する方法がある。この方法を採択すれば、見かけのKm値が定量可能な高い値にまで上昇し、グルコース濃度の測定範囲を高濃度域にまで広げることができ、よって、尿検体も希釈しないで測定することが可能になる。本発明者らは、上記の技術的課題を解決するべく鋭意研究した結果、グルコースデヒドロゲナーゼの拮抗阻害剤としてホウ酸もしくはその塩を採用すると、グルコース濃度の高い尿検体であっても、希釈しないでグルコース濃度を正確に測定することができ、有効なグルコース定量法を確立することができることを見出し、本発明を完成した。【0007】したがって、本発明は、より明確には、酵素グルコースデヒドロゲナーゼを用いて試料中のグルコースを定量する方法であって、グルコースを含有する試料に、グルコースデヒドロゲナーゼ阻害剤としてホウ酸もしくはその塩の存在下、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADと表わすこともある。)もしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(以下、NADPと表わすこともある。)とともにグルコースデヒドロゲナーゼを作用させ、その際生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)もしくは還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADPH)の量増加速度を測定することを特徴とする、グルコースの定量方法に関する。また、本発明は、上記の定量方法の使用に適する試薬、つまり、酵素グルコースデヒドロゲナーゼ、補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)もしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)およびグルコースデヒドロゲナーゼ阻害剤ホウ酸もしくはその塩を含有する溶液よりなる、グルコース定量用試薬にも関する。【0008】【発明の実施の形態】本発明に従う酵素グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコースの定量法は、グルコースを含有する試料にグルコースデヒドロゲナーゼを作用させると、同時に、その系に共存する補酵素のNADもしくはNADPが水素還元されてNADHもしくはNADPHが生じるが、そのときのNADH量(濃度)もしくはNADPH量(濃度)の増加速度を例えば紫外部における吸光度の時間変化値にて測定するというものである。そして、本発明の特徴的な事項は、グルコースデヒドロゲナーゼ阻害剤としてホウ酸もしくはその塩を用いて、グルコースデヒドロゲナーゼのグルコースに対する反応を拮抗阻害させることにより、グルコースデヒドロゲナーゼのグルコースに対する見かけのKm値をより大きな値に変え、高濃度のグルコースを含有する検体であっても、希釈を必要とせずに、グルコースの正確な定量を可能にした点にある。本発明の方法の実施にあたり、酵素グルコースデヒドロゲナーゼの濃度並びに阻害剤ホウ酸もしくはその塩の濃度は、各々、試料中に含まれる基質グルコースの濃度により決定される。すなわち、高濃度のグルコースを含む検体の定量において見かけのKm値を適当な基準にまで高めるべく、酵素および阻害剤の添加量はそれぞれ調節され、通常、NADHもしくはNADPHの紫外部吸収の測定に用いる吸光度計の実行感度(つまり、単位時間当たりの吸光度の変化値ΔAbs/min)に基づいて、最適な条件が設定される。一例を挙げると、グルコース1g/dLの標準液を用い、実行感度(ΔAbs/min)を得るには、グルコースデヒドロゲナーゼ0.8u/mL添加のときで、阻害剤ホウ酸の添加量は160mM程度に調節される。本発明の方法に使用されるNADもしくはNADPの添加量は、試料中のグルコース量(濃度)に相応して適宜変更される。例えば、グルコース1g/dLの標準液を検体として測定した場合において、NADは3mM以上含まれているのが好都合であることを本発明者は確認している。また、本発明に係る反応系および定量用試薬に使用する緩衝液としては、酵素による定量技術において通常使用されている緩衝液であれば、いずれも利用可能である。緩衝液には、周知の各種の安定剤、賦活剤などを同時に添加することも可能である。【0009】【実施例】以下、本発明の最良の実施形態と思われる実施例を説明することにより、本発明をより明確なものにする。【0010】本例は、実際の臨床検体(希釈しない尿)の代わりに、濃度既知のグルコース標準液各種を対象として酵素グルコースデヒドロゲナーゼをNADとともに作用させ、生じるNADHの濃度を紫外部における単位時間当たりの吸光度変化値(ΔAbs/min)で以って表わすことにより、グルコース濃度と酵素の反応速度との関係を調べたものである。両者の間に一次関数の関係が現われているとき、グルコース濃度の正確な測定が可能であると認められる。−標準試料グルコース濃度1〜10g/dLの標準液10種を作製した。これら標準液は、1g/dLより、1g/dLの等間隔で濃度が増加する10種の試料よりなる。最もグルコース濃度が高い標準液は、10g/dLの標準液である。−試薬次の組成より成る試薬1a、1bおよび1c(阻害剤試薬)と、試薬2aおよび2b(酵素試薬)をそれぞれ作製した。上記の各濃度に必要な量のホウ酸および塩化ナトリウムをそれぞれ、100mMトリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)緩衝液に溶解し、次いで希塩酸を添加して、最終pHが8.0になるように調製した。上記の各濃度に必要な量のホウ酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムをそれぞれ、100mMトリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)緩衝液に溶解し、次いで希塩酸を添加して、最終pHが8.0になるように調製した。試薬1c(比較):塩化ナトリウム 500mM上記の各濃度に必要な量の塩化ナトリウムを100mMトリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)緩衝液に溶解し、次いで希塩酸を添加して、最終pHが8.0になるように調製した。上記の各含有量に必要な量のグルコースデヒドロゲナーゼ、塩化ナトリウムおよびNADをそれぞれ、100mMトリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)緩衝液に溶解し、次いで希塩酸を添加して、最終pHが8.0になるように調製した。上記の各含有量に必要な量のグルコースデヒドロゲナーゼ、塩化ナトリウムおよびNADをそれぞれ、100mMトリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)緩衝液に溶解し、次いで希塩酸を添加して、最終pHが8.0になるように調製した。−測定試薬1aまたは1bと試薬2aとを自動分析装置H7150形(株式会社日立製作所製)に組み入れ、反応速度法に従いグルコースの定量を行なった。すなわち、グルコースの各標準液10μLに300μLの試薬1aまたは1bを添加し、37℃で5分間加温した後、さらに100μLの試薬2aを添加し、紫外部(340nm)における単位時間当たりの吸光度変化値(ΔAbs/min)を測定した。また、比較のため、試薬1a、1bに代えて試薬1c、また試薬2aに代えて試薬2bを用いて、上記と同様の操作を行ない、グルコース濃度(g/dL)と紫外部(340nm)における単位時間(毎分)当たりの吸光度変化値(ΔAbs/min)との関係を調べた。【0011】−結果測定の結果を図1にまとめて示す。図1中、○印は、阻害剤としてホウ酸を使用した場合を表わし、△印は、阻害剤としてホウ酸ナトリウムを使用した場合を表わし、そして×印は、阻害剤を使用しない場合を表わす。図1よりわかるように、阻害剤を添加した反応系と添加しない反応系とを対比することにより、阻害剤としてホウ酸もしくはホウ酸ナトリウムを添加した反応系にあっては、グルコース濃度(g/dL)と単位時間当たりの吸光度変化値(ΔAbs/min)との間に、精度のよい一次関数の関係が認められる。従って、酵素グルコースデヒドロゲナーゼの拮抗阻害剤としてホウ酸もしくはホウ酸ナトリウムを用いる測定法により、1〜10g/dLのグルコース濃度が高い検体であっても、希釈せずに、感度良く、グルコースの正確な定量が可能であることが判明した。【0012】【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によれば、とくに臨床領域においてグルコースの定量を行なうとき、グルコースの測定可能な濃度範囲が広く、高い濃度域にまで及び、たとえ高濃度グルコース検体であっても、希釈せずに正確な定量が可能であるという効果が得られる。例えば重篤な糖尿病もしくは腎障害などを患う患者の尿検体をも、希釈しないで、グルコース濃度の正確な測定を為しうる。さらに、本発明の方法は、その実施にあたって特別な装置および設備が不要であり、汎用する自動分析機への適用性にも優れているという利点を有する。また、本発明のグルコース定量用試薬によれば、上記の本発明に係るグルコース定量方法に好適に使用することができるところの試薬組成物が提供される。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、試料中のグルコース濃度と該試料について340nmにて測定された単位時間当たりの吸光度変化値(ΔAbs/min)との関係を示すグラフである。 酵素グルコースデヒドロゲナーゼを用いて試料中のグルコースを定量する方法であって、グルコースを含有する試料に、グルコースデヒドロゲナーゼ阻害剤としてホウ酸もしくはその塩の存在下、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートとともにグルコースデヒドロゲナーゼを作用させ、その際生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートの量増加速度を測定することを特徴とする、グルコースの定量方法。 酵素グルコースデヒドロゲナーゼ、補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートおよびグルコースデヒドロゲナーゼ阻害剤ホウ酸もしくはその塩を含有する溶液よりなる、グルコース定量用試薬。


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