タイトル: | 特許公報(B2)_クリーム中の脂肪濃度の測定装置及び測定方法 |
出願番号: | 1999103661 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 21/27,G01N 21/35,G01N 33/06 |
元売 康幸 三好 洋輝 平岡 康伸 伊藤 健介 椎木 靖彦 JP 4263304 特許公報(B2) 20090220 1999103661 19990412 クリーム中の脂肪濃度の測定装置及び測定方法 雪印乳業株式会社 000006699 萩原 康司 100101557 金本 哲男 100096389 亀谷 美明 100095957 元売 康幸 三好 洋輝 平岡 康伸 伊藤 健介 椎木 靖彦 20090513 G01N 21/27 20060101AFI20090416BHJP G01N 21/35 20060101ALI20090416BHJP G01N 33/06 20060101ALI20090416BHJP JPG01N21/27 CG01N21/35 ZG01N33/06 G01N21/00-21/61 G01N33/00-33/46 JSTPlus(JDreamII) 特開昭55−104740(JP,A) 特開平07−270309(JP,A) 特開平03−291551(JP,A) 特開昭63−179239(JP,A) 特開平08−056565(JP,A) 特表平07−503535(JP,A) 2 2000292349 20001020 10 20060405 横尾 雅一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,クリーム中の脂肪濃度を測定する装置と方法に関する。【0002】【従来の技術】クリームは,約30〜50℃程度に予備加温された生乳を遠心分離機などの分離機にかけることによって,スキムミルクと分離して製造される。このように分離機によってクリームを製造する場合,分離機のクリーム出口の背圧を調節することにより脂肪濃度を制御している。しかしクリーム中の脂肪濃度は一定ではなく,産地や季節の相違等によって生乳中の脂肪濃度が変動するため,例えばタンクを切り替えた場合などのように生乳が変わった際には,クリーム出口の背圧も新たに調節し直すことが必要になる。【0003】そこで生乳が変わった場合は,分離機のクリーム出口付近においてクリームを新たにサンプリングして,オペレータの手作業分析によってクリーム中に含まれている脂肪濃度を測定し,その値に基づいて背圧をフィードバック調整することにより脂肪濃度を一定に制御している。しかしこの方法は,オペレータの手作業で行うので,脂肪濃度を測定する時間が20分程度もかかり,またオペレータの習熟度などによって誤差が生じ,迅速で正確な脂肪濃度制御を期しがたい。【0004】このような問題を解消するために,クリームが流れるラインにおいてクリーム中の脂肪濃度を迅速に測定して,クリーム出口の背圧をフィードバック調整する試みもなされている。その一つは,質量流量計をクリームライン中に設置して,総固形濃度を求める方法である。しかしこの方法では,分離機から出たクリームに含まれる気泡や総固形中に含まれる脂肪以外の糖やタンパク質が脂肪濃度の測定に大きな誤差を与えてしまう。【0005】また別の方法として,近赤外線の吸光度によってクリーム中の脂肪濃度を測定する方法が採用されている。しかし,近赤外線領域の光には倍音・結合音と呼ばれる複雑な吸収があり,クリーム中の脂肪に吸収される近赤外線は物質,色,距離,温度などといった種々の因子に影響されてしまう。そのため近赤外線をクリームに照射した場合,吸収がブロードとなって明確なピークが分かりにくく,脂肪濃度のみに起因する吸収を判別できない。例えば,脂肪濃度と相関の高い波長の近赤外線の吸光度を測定してクリーム中の脂肪濃度を求めようとしても,色,距離,温度等によって多くの補正を必要とする上,製造条件をはじめとする外乱要因がある場合には,精度の高い測定が困難になる。【0006】一方,中間赤外線領域の光には,クリーム中の脂肪が有する官能基の基準振動と呼ばれる吸収が存在する。このため中間赤外線領域の光吸収は,ピークの分離が近赤外線領域よりも容易であるため,定性と定量分析の両方に利用されている。例えば従来において本出願人は,中間赤外線の吸光度に基づいて乳酸酸度や糖質濃度を測定する方法を特許第2803016号や特開平8−56565号に開示している。また本出願人は,赤外線の吸光度によって液状食品などの濃度を測定する方法を特開平9−61345号に開示している。これらに開示された方法では,いずれも赤外線の反射光を測定する全反射減衰法(AttenuatedTotal Reflectance:以下「ATR法」という)により各種物質の濃度などを測定している。【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来のATR法による濃度測定はいずれも液体サンプルを赤外吸収用セル内に停止させて測定を行っていたため,クリーム中の脂肪濃度を測定する場合には,次のような問題を生じた。即ち,クリーム中に含まれる脂肪球の大きさにはばらつきがあり,その大きさによって吸光度(散乱)が不均一となる。このため,従来の方法のように赤外吸収用セルにクリームを停止させて測定を行った場合は,サンプリングされたクリーム中の脂肪球の大きさによって吸光度が影響され,正確な脂肪濃度を測定し難い。一方,予め脂肪球径の均質化処理を行うことも可能であるが,赤外吸収用セル内にクリームをサンプリングすると,脂肪の比重が小さいため脂肪球が浮上してしまうので,測定個所によって脂肪濃度が異なり,やはり正確な脂肪濃度が測定できなくなってしまう。【0008】従って本発明の目的は,クリーム中の脂肪濃度を迅速に精度良く求めることができる手段を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】 この目的を達成するために,請求項1にあっては,クリーム中に含まれる脂肪濃度の測定装置であって,クリームが流動可能な赤外吸収用セルと,前記赤外吸収用セル内を流動するクリームに,クリーム中の脂肪に吸収される1100〜1200cm−1の範囲の波数の第1の中間赤外線と,クリーム中の脂肪に吸収されないが,水や水蒸気の強い吸収帯である1500〜1800cm−1の波数の中間赤外線から離れている1200cm−1を超え,1500cm−1未満の波数の第2の中間赤外線とを照射する赤外線照射手段と,前記第1および第2の中間赤外線をクリームの表面で反射させる全反射減衰手段と,前記クリームの表面で反射した中間赤外線を分光測定するフーリエ変換型赤外分光光度計と,クリームの温度を測定する温度センサと,前記フーリエ変換型赤外分光光度計により分光測定した前記第1の中間赤外線の吸光度及び前記第2の中間赤外線の吸光度と前記温度センサにより測定したクリームの温度を説明変数とする重回帰式(1)により,クリーム中の脂肪濃度を求める演算制御手段を具備することを特徴としている。脂肪濃度(%)=A×(Afat+Aref)+B×Temp+C (1)Afat:第1の中間赤外線の吸光度,Aref:第2の中間赤外線の吸光度,Temp:クリーム温度,A,B:重回帰分析によって得られる偏回帰係数,C:定数【0010】 また請求項2にあっては,クリーム中に含まれる脂肪濃度の測定方法であって,流動するクリームに,クリーム中の脂肪に吸収される1100〜1200cm−1の範囲の波数の第1の中間赤外線と,クリーム中の脂肪に吸収されないが,水や水蒸気の強い吸収帯である1500〜1800cm−1の波数の中間赤外線から離れている1200cm−1を超え,1500cm−1未満の波数の第2の中間赤外線を照射する工程と,前記第1の中間赤外線と前記第2の中間赤外線をクリームの表面で反射させ,それぞれの吸光度を測定する工程と,前記吸光度を測定する工程により測定した前記第1の中間赤外線の吸光度及び前記第2の中間赤外線の吸光度とクリームの温度を説明変数とする重回帰式(1)により,クリーム中に含まれる脂肪濃度を求める工程を具備することを特徴としている。脂肪濃度(%)=A×(Afat+Aref)+B×Temp+C (1)Afat:第1の中間赤外線の吸光度,Aref:第2の中間赤外線の吸光度,Temp:クリーム温度,A,B:重回帰分析によって得られる偏回帰係数,C:定数【0011】即ち,先ず赤外吸収用セル内にクリームを流動させる。そして,赤外吸収用セル内に流動させたクリームに中間赤外線を照射して,全反射減衰手段によりクリームの表面で中間赤外線を反射させる。ここで,赤外吸収用セル内に流動させるクリームの温度は,30〜50゜Cの範囲とすることが好ましい。クリームの温度が30゜C未満では,クリームに含まれる脂肪中に固体状態のものが存在し,脂肪濃度を測定する際に誤差要因となる。一方,クリームの温度が50゜Cを超えると,クリーム中に存在しているたんぱく質の変成によってクリームの品質低下を招いてしまうという問題がある。【0012】クリームに照射される中間赤外線は,クリーム中の脂肪に吸収される波数の第1の中間赤外線と,クリーム中の脂肪に吸収されないが,外乱の影響は前記第1の中間赤外線と等しく受ける波数の第2の中間赤外線を含んでいる。ここで本発明者らの知見によれば,クリーム中に含まれる脂肪の主たる構造であるトリグリセリドが持つエステル結合によって1100〜1200cm−1の範囲の波数の中間赤外線が吸収され,特に1159cm−1近傍の波数の中間赤外線の吸光度は,クリーム中の脂肪濃度と高い線形の相関を持つことが分かった。また,1159cm−1近傍の波数の中間赤外線は,水の強い吸収帯である1500〜1700cm−1の波数の中間赤外線や水蒸気の強い吸収帯である1500〜1800cm−1の波数の中間赤外線からも離れているため,測定に際し,水や水蒸気の影響を受けにくく好都合である。そこで,前記第1の中間赤外線としては,1159cm−1近傍の波数の中間赤外線を用いる。一方,前記第2の中間赤外線には,クリーム中の脂肪に吸収されず,水や水蒸気の影響を受けにくい例えば1300cm−1の波数の中間赤外線を用いることができる。【0013】全反射減衰手段(以下「ATR手段」という)は,赤外吸収用セル内を流動するクリームの表面で中間赤外線を反射させるので,その反射光を得ることができる。そして,このATR手段によって得た反射光(クリームの表面で反射した前記第1の中間赤外線と第2の中間赤外線を含む反射光)において,フーリエ変換型赤外分光光度計(Fourier Transform Inrared Spectrometry:以下「FTIR手段」という)により分光測定し,クリーム中の脂肪による第1の中間赤外線の吸光度と第2の中間赤外線の吸光度をそれぞれ測定する。ここでFTIR手段は,フーリエ変換を用いて赤外線の光度を測定する干渉型赤外光度計である。このFTIR手段により第1の中間赤外線と第2の中間赤外線を分光測定し,それぞれの吸光度を測定する。【0014】また温度センサによってクリームの温度を測定する。こうして測定されたクリームの温度と,前述のようにFTIR手段で測定した第1の中間赤外線の吸光度と第2の中間赤外線の吸光度を説明変数とし,次に示す重回帰式(1)により,クリーム中の脂肪濃度を求める。Fat = A×(Afat+Aref)+B×Temp+C …(1)【0015】ここで,Fat:脂肪濃度(%),Afat:第1の中間赤外線の吸光度,Aref:第2の中間赤外線の吸光度,Temp:クリーム温度,A,B:重回帰分析によって得られる偏回帰係数,C:定数である。偏回帰係数A,Bや定数Cは,使用する機器や測定条件によって異なり,重回帰分析によって定められる。また,これら偏回帰係数A,Bや定数Cを定める際には,同じクリームについて,例えばレーゼゴットリーブ法により真の脂肪濃度を測定し,その実測値(真値)を用いて重回帰分析を行う。なおレーゼゴットリーブ法とは,マジョニア脂肪抽出管と各種溶媒を使って脂肪を抽出し脂肪濃度を定量する方法である。【0016】また一般に,中間赤外線の吸光度は試料の温度変化の影響を受けるとされている。例えばクリームの温度が1゜C変化した場合,1159cm−1近傍の波数の中間赤外線の吸光度は,約0.0002程度変化することが見込まれ,これを脂肪濃度に換算すると約0.03%程度に相当する。分離機によって製造されるクリームの温度は約45゜Cであるが,±0.5゜C程度の変動が見込まれる。そこで,前述の重回帰式(1)に示したように,クリームの温度も説明変数とし,温度の影響を補正することにより,クリーム中の脂肪濃度をより正確に求めることが可能となる。【0017】【発明の実施の形態】以下,本発明の好ましい実施の形態を図面を用いて説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかるクリーム中の脂肪濃度の測定装置10の概略構成を示すブロック図である。【0018】装置本体1に設けられた赤外吸収用セル2には,クリームの供給ライン3と排出ライン4が接続されており,供給ライン3から赤外吸収用セル2に供給されたクリームが,赤外吸収用セル2内を流動した後,排出ライン4に排出されるようになっている。供給ライン3には温度センサ5が装着されており,赤外吸収用セル2に供給されるクリームの温度Tempを,この温度センサ5によって測定することができる。【0019】また装置本体1は,ATR手段6とFTIR手段7を備えている。ATR手段6は,赤外吸収用セル2に隣接して設けられており,図示しない赤外線照射手段より照射された中間赤外線を,赤外吸収用セル2内を流動するクリームの表面で反射させることができる。なお図示しない赤外線照射手段は,クリーム中の脂肪に吸収される波数の第1の中間赤外線と,クリーム中の脂肪に吸収されないが,外乱の影響は前記第1の中間赤外線と等しく受ける波数の第2の中間赤外線を照射することが可能である。第1の中間赤外線には,1159cm−1近傍の波数の中間赤外線が用いられる。第2の中間赤外線には,例えば1300cm−1の波数の中間赤外線が用いられる。【0020】また,ATR手段6によって赤外吸収用セル2内を流動するクリームの表面で反射した中間赤外線が,FTIR手段7に導入され,FTIR手段7は分光測定を行い,第1の中間赤外線の吸光度Afatと第2の中間赤外線の吸光度Arefをそれぞれ測定するようになっている。またFTIR手段7によって測定された第1の中間赤外線の吸光度Afatと第2の中間赤外線の吸光度Arefは,温度センサ5によって測定されたクリームの温度Tempと共に,演算制御手段8に入力されるようになっている。【0021】演算制御手段8は,FTIR手段7から入力された第1の中間赤外線の吸光度Afat及び第2の中間赤外線の吸光度Arefと,温度センサ5から入力されたクリームの温度Tempを説明変数とし,次に示す重回帰式(1)により,クリーム中の脂肪濃度Fatを求めるようになっている。Fat = A×(Afat+Aref)+B×Temp+C …(1)【0022】ここで,A,Bは重回帰分析によって得られる偏回帰係数,Cは定数である。偏回帰係数A,Bや定数Cは,使用する機器や測定条件によって異なり,重回帰分析によって定められる。また,これら偏回帰係数A,Bや定数Cを定める際には,同じクリームについて例えばレーゼゴットリーブ法により真の脂肪濃度を測定し,その実測値(真値)を用いて重回帰分析を行う。【0023】また演算制御手段8は,こうして求めたクリーム中の脂肪濃度Fatに基づいて,例えば遠心分離機などの図示しない分離機のクリーム出口の背圧を調節することにより,分離機で製造されるクリームの脂肪濃度をフィードバック制御するようになっている。【0024】さて,この測定装置10において,赤外吸収用セル2内にクリームを流動させながら,赤外吸収用セル2内のクリームに中間赤外線を照射し,ATR手段6によりクリームの表面で中間赤外線を反射させる。そして,クリーム表面での反射光について,FTIR手段7により分光測定し,第1の中間赤外線の吸光度Afatと第2の中間赤外線の吸光度Arefをそれぞれ測定する。【0025】また温度センサ5により,クリームの温度Tempを測定する。こうして測定された第1の中間赤外線の吸光度Afat,第2の中間赤外線の吸光度Aref,クリームの温度Tempが演算制御手段8に入力され,演算制御手段8は,これらAfat,Aref,Tempを説明変数として,先に示した重回帰式(1)により,クリーム中の脂肪濃度Fatを求める。また演算制御手段8は,こうして求められるクリーム中の脂肪濃度Fatに基づいて,例えば遠心分離機などの図示しない分離機のクリーム出口の背圧を調節し,分離機で製造されるクリームの脂肪濃度をフィードバック制御する。【0026】この実施の形態の測定装置10によれば,中間赤外線を用いた反射法による測定を行うので,近赤外線を用いた透過法による測定に比べて,気泡の影響や脂肪球径のばらつきの影響,脂肪球による光散乱の影響などの少ない脂肪濃度の測定が可能となる。このため,クリーム中に気泡を含有していても,均質化などの前処理をせずに迅速かつ高精度に脂肪濃度を測定することが可能である。しかも,赤外吸収用セル2内にクリームを流動させて測定しているので,反射光が平均化されて脂肪球の大きさのばらつきによる影響を排除でき,また,赤外吸収用セル2内での脂肪球の浮上といった問題も生じない。このため,クリーム中の脂肪濃度を迅速に精度良く求めることができるようになる。【0027】また反射法を利用したことにより,赤外吸収用セル2の大きさを自由に設定でき,例えば赤外吸収用セル2の容積を広く取ることにより,洗浄時において十分な流量の薬剤を循環させることもでき,定置洗浄が可能な測定装置10を実現できる。また,赤外吸収用セル2を分解できるように構成すれば,分解することによって赤外吸収用セル2内を擦り洗いすることもできる。【0028】従って,この実施の形態の測定装置10によれば,このようにクリーム中の脂肪濃度を迅速かつ高精度に求めることができ,その求めた脂肪濃度に基づいて分離機のクリーム出口の背圧を調節することにより,クリームの脂肪濃度を正確にフィードバック制御することができるようになる。このため,産地や季節の相違等によって生乳中の脂肪濃度が変動しても,目標とする脂肪濃度のクリームを安定して製造することができるようになる。【0029】【実施例】先ず,脂肪濃度を50%から20%の範囲で調製したクリームにおいて,中間赤外線の吸光度とクリーム中に含まれる脂肪の濃度の関係を調べた。クリーム中の脂肪濃度は,レーゼゴットリーブ法による測定により確認した。その結果,図2に示すように,1159cm−1近傍の波数の中間赤外線の吸光度は脂肪濃度と線形の相関があることが分かった。【0030】次に,実施の形態において説明した測定装置(本発明の測定装置)を実際に用いて,遠心分離機で製造されたクリームを殺菌後,充填ラインへ送る配管途中において脂肪濃度を測定した。なお,ATR手段としてデュラサンプラ(S.T.ジャパン社製)を使用し,FTIR手段としてFT−720フーリエ変換型中赤外分光光度計(堀場製作所社製)を使用した。ATR手段において,耐久性の良さから反射表面をダイヤモンドとし,精度の良さから反射回数を9回とした。また,ATR手段の反射面を赤外吸収用セルの内側面の一部とし,ATR手段の反射面に沿ってクリームが流動するように構成した。測定条件は,クリーム温度が45℃,FTIR手段のスキャン回数が16回,分解能が4cm−1,測光範囲が4000〜400cm−1の波数である。【0031】先ず検量線(重回帰式)を定めるために,脂肪濃度の異なる複数のクリーム(サンプル1〜8)について,本発明の測定装置で吸光度をそれぞれ測定し,一方でレーゼゴットリーブ法で脂肪濃度を各クリーム(サンプル1〜8)について測定した。本発明の測定装置で測定した第1の中間赤外線の吸光度Afat,第2の中間赤外線の吸光度Aref,クリームの温度Tempを説明変数とし,レーゼゴットリーブ法で測定した脂肪濃度(真値)を用いて,先に示した重回帰式(1)により,重回帰分析を行った。このようにして定めた重回帰式を用い,オンラインで連続的に求めたクリームの脂肪濃度(センサ脂肪濃度)と,レーゼゴットリーブ法により測定した脂肪濃度(レーゼゴットリーブ法脂肪濃度)との経時的な関係を図3と表1に示す。【0032】【表1】【0033】本発明の測定装置によって求めた脂肪濃度(センサ脂肪濃度)と,レーゼゴットリーブ法により測定した脂肪濃度(レーゼゴットリーブ法脂肪濃度)は,誤差が±0.2%以内で良く一致しており,本発明の装置及び方法によってクリーム中の脂肪濃度を高精度で測定できることが確認できた。その結果,生乳を遠心分離機にかけて脱脂乳と分離してクリームを製造する場合に,本発明の測定装置によって求めた脂肪濃度を遠心分離機にフィードバックしてクリーム出口の背圧弁を自動調節することで,迅速に高精度で目標とする脂肪濃度のクリームが得られた。【0034】【発明の効果】請求項1,2の発明によれば,気泡の影響や脂肪球径のばらつきの影響,脂肪球による光散乱の影響などの少ない高精度な脂肪濃度の測定が可能となる。このため,クリーム中に気泡を含有していても,均質化などの前処理をせずに迅速かつ高精度に脂肪濃度を測定することが可能である。しかも,脂肪球の大きさのばらつきによる影響を排除でき,また赤外吸収用セル内での脂肪球の浮上といった問題も生じない。このため,クリーム中の脂肪濃度を迅速に精度良く求めることができるようになる。また反射法を利用しているので,赤外吸収用セルの大きさを自由に設定でき,定置洗浄が可能な測定装置を実現できる。このようにクリーム中の脂肪濃度を迅速かつ高精度に求めることができ,その求めた脂肪濃度に基づいて分離機のクリーム出口の背圧を調節することにより,クリームの脂肪濃度を正確にフィードバック制御でき,目標とする脂肪濃度のクリームを安定して製造できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施の形態にかかるクリーム中の脂肪濃度の測定装置の概略構成を示すブロック図である。【図2】1159cm−1近傍の波数の中間赤外線の吸光度と脂肪濃度の相関関係を示すグラフである。【図3】本発明の測定装置によって求めたクリームの脂肪濃度(センサ脂肪濃度)と,レーゼゴットリーブ法により測定した脂肪濃度(レーゼゴットリーブ法脂肪濃度)との経時的な関係を示すグラフである。【符号の説明】1 装置本体2 赤外吸収用セル3 クリームの供給ライン4 クリームの排出ライン5 温度センサ6 ATR手段7 FTIR手段8 演算制御手段10 クリーム中の脂肪濃度の測定装置 クリーム中に含まれる脂肪濃度の測定装置であって, クリームが流動可能な赤外吸収用セルと, 前記赤外吸収用セル内を流動するクリームに,クリーム中の脂肪に吸収される1100〜1200cm−1の範囲の波数の第1の中間赤外線と,クリーム中の脂肪に吸収されないが,水や水蒸気の強い吸収帯である1500〜1800cm−1の波数の中間赤外線から離れている1200cm−1を超え,1500cm−1未満の波数の第2の中間赤外線とを照射する赤外線照射手段と, 前記第1および第2の中間赤外線をクリームの表面で反射させる全反射減衰手段と, 前記クリームの表面で反射した中間赤外線を分光測定するフーリエ変換型赤外分光光度計と, クリームの温度を測定する温度センサと, 前記フーリエ変換型赤外分光光度計により分光測定した前記第1の中間赤外線の吸光度及び前記第2の中間赤外線の吸光度と前記温度センサにより測定したクリームの温度を説明変数とする重回帰式(1)により,クリーム中の脂肪濃度を求める演算制御手段を具備することを特徴とする,クリーム中の脂肪濃度の測定装置。脂肪濃度(%)=A×(Afat+Aref)+B×Temp+C (1)Afat:第1の中間赤外線の吸光度,Aref:第2の中間赤外線の吸光度,Temp:クリーム温度,A,B:重回帰分析によって得られる偏回帰係数,C:定数 クリーム中に含まれる脂肪濃度の測定方法であって, 流動するクリームに,クリーム中の脂肪に吸収される1100〜1200cm−1の範囲の波数の第1の中間赤外線と,クリーム中の脂肪に吸収されないが,水や水蒸気の強い吸収帯である1500〜1800cm−1の波数の中間赤外線から離れている1200cm−1を超え,1500cm−1未満の波数の第2の中間赤外線を照射する工程と, 前記第1の中間赤外線と前記第2の中間赤外線をクリームの表面で反射させ,それぞれの吸光度を測定する工程と, 前記吸光度を測定する工程により測定した前記第1の中間赤外線の吸光度及び前記第2の中間赤外線の吸光度とクリームの温度を説明変数とする重回帰式(1)により,クリーム中に含まれる脂肪濃度を求める工程を具備することを特徴とする,クリーム中の脂肪濃度の測定方法。脂肪濃度(%)=A×(Afat+Aref)+B×Temp+C (1)Afat:第1の中間赤外線の吸光度,Aref:第2の中間赤外線の吸光度,Temp:クリーム温度,A,B:重回帰分析によって得られる偏回帰係数,C:定数