タイトル: | 特許公報(B2)_ピルビン酸化合物とその製造方法 |
出願番号: | 1999093863 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 59/19,C07C 51/41,C07C 55/14,C07C 59/08,C07C 59/255,C07C 59/265,C07C 231/12,C07C 235/12,A23L 1/30 |
植田 浩之 砂原 三利 JP 4143212 特許公報(B2) 20080620 1999093863 19990331 ピルビン酸化合物とその製造方法 株式会社武蔵野化学研究所 390022301 八田 幹雄 100072349 野上 敦 100102912 奈良 泰男 100110995 齋藤 悦子 100111464 植田 浩之 砂原 三利 20080903 C07C 59/19 20060101AFI20080814BHJP C07C 51/41 20060101ALI20080814BHJP C07C 55/14 20060101ALI20080814BHJP C07C 59/08 20060101ALI20080814BHJP C07C 59/255 20060101ALI20080814BHJP C07C 59/265 20060101ALI20080814BHJP C07C 231/12 20060101ALI20080814BHJP C07C 235/12 20060101ALI20080814BHJP A23L 1/30 20060101ALI20080814BHJP JPC07C59/19C07C51/41C07C55/14C07C59/08C07C59/255C07C59/265C07C231/12C07C235/12A23L1/30 Z C07C 1/00-409/44 A23L 1/29-1/308 A61K 31/00-31/80 C12P 1/00-41/00 国際公開第99/002479(WO,A1) 国際公開第98/028263(WO,A1) 特開平10−001452(JP,A) 特開昭63−203646(JP,A) 10 2000290227 20001017 13 20051107 齋藤 恵 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ピルビン酸化合物と有機酸カルシウムとのいわゆる複塩を含有するピルビン酸化合物およびその製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ピルビン酸は、生体内物質代謝経路における重要中間体であって、細胞の嫌気的解糖系で生成される。更に嫌気的に乳酸脱水素酵素によりL−乳酸に変換され、または好気的に生成されたピルビン酸がクエン酸サイクルで酸化される。そしてこれらピルビン酸や乳酸の代謝に際してエネルギーを産出し、これが各種生体内エネルギーとして消費される。この様なピルビン酸の生理的機能に着目した研究から、ピルビン酸が筋細胞へのグルコースの輸送の増加に関わることが判明した。このため、ピルビン酸の摂取によりスポーツ時の持久力を高めることができると考えられている。更に、ピルビン酸塩が代謝の促進および脂肪の利用促進という2つのメカニズムによって、体重と体脂肪の減少を共に加速することも判明した。このような理由からピルビン酸単独で、または他の化合物を配合して、ダイエット製剤、ピルビン酸補充用製剤、手術時の移植溶液や還流溶液、腸内製剤、口腔内組成物、化粧料、更に医薬品原料の中間体等、医薬、食品、工業薬品等の用途へ利用され、またピルビン酸自体の酸性を利用して酸味料や滅菌などの用途への利用も増している。従って、近年ピルビン酸を使用する各種産業においてピルビン酸の需要が高まり、多くのピルビン酸が流通されている。【0003】しかしながら、ピルビン酸の融点は13.6℃であって、常温で液体あると共に構造上脱炭酸されやすい。このため流通過程および使用段階等の各種ピルビン酸取り扱い者において、ピルビン酸の取り扱いが非常に困難であった。すなわち、ピルビン酸が常温で液体であるためにビン類等の硬化容器に収納する必要があった。しかもピルビン酸が分解により脱炭酸しやすいために、ピルビン酸の流通にはマイナス40℃の保冷庫内に保存して脱炭酸を防止する必要があった。この様な保存をしない場合には、ピルビン酸の分解により生じた二酸化炭素が容器内に充満し容器内圧が上昇する結果、開封の際に容器蓋部を吹き飛ばす場合があるのである。これにより内容物たるピルビン酸が破損すると共に取扱者が危害を受けるおそれもある。このためピルビン酸取扱者は、十分な注意を払うのであるが、保冷庫等の特別の装置を必要とする点に代わりはない。【0004】このため常温で分解により二酸化炭素を発生する、すなわちガス発生物質であるピルビン酸を簡便に取り扱う技術が求められる。例えば、特公昭44−30583号公報には、酒石酸やクエン酸等の吸湿性が高く炭酸アルカリとの反応に伴う炭酸ガスの損失を防止するために、ガス発生基質である有機酸を乳酸カルシウムを被膜剤として使用する被覆方法が開示されている。しかし、この方法では被覆時に加熱を要するために、加熱によって脱炭酸するピルビン酸には応用することができない。【0005】また、特公昭44−16358号公報には、乳酸に乳酸カルシウムまたは炭酸カルシウム等の無機塩を加えた後に撹拌加熱溶解して粉末状の乳酸を得る方法が開示され、特公平2−19814号公報には、乳酸鉄と乳酸とを混合し粉末の乳酸酸性乳酸鉄を得る方法が開示されている。しかしながら、これらのいずれの方法においても加熱を要するために、加熱により脱炭酸されるピルビン酸に応用することができない。【0006】一方、ピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸カリウム、ピルビン酸カルシウムなどのピルビン酸塩類は、ピルビン酸を粉末状で扱えるものであるため取り扱いが簡便である。しかしながら、これらはいずれも塩を形成しているためにピルビン酸の酸として特性を損なうことになる。【0007】更に、特公昭45−36160号公報には、常態で液体である乳酸を固体状にすべく、乳酸に各種有機酸のカルシウム塩を適当量添加して均質混和する方法が開示されている。しかしながらこの方法において有機酸のカルシウム塩としてピルビン酸カルシウムを使用すれば、ピルビン酸がカルシウム塩として得られることになり、上記と同様にピルビン酸の酸としての特性を失うことになる。【0008】かかる観点から、常温で液体であるピルビン酸を簡便に取り扱いうことができために固体状であり、かつピルビン酸の酸としての性質を失わず、しかも常温で常温で高度な安定性を有するピルビン酸の開発が望まれている。【0009】【課題を解決するための手段】上記課題は、下記(1)〜(10)により達成される。【0010】(1) 式(I)で示されるピルビン酸化合物。【0011】【化7】【0012】(2) 式(I)において、Rが【0013】【化8】【0014】であり、m=2、1≦n≦3、0≦q≦5である上記(1)記載のピルビン酸化合物。【0015】(3) 式(I)において、Rが【0016】【化9】【0017】であり、m=2/3、1.7≦n≦2.7、0≦q≦4である上記(1)記載のピルビン酸化合物。【0018】(4) 式(I)において、Rが【0019】【化10】【0020】であり、m=1、0.75≦n≦2、0≦q≦4である上記(1)記載のピルビン酸化合物。【0021】(5) 式(I)において、Rが【0022】【化11】【0023】であり、m=1、n=3、q=0である上記(1)記載のピルビン酸化合物。【0024】(6) 式(I)において、Rが【0025】【化12】【0026】であり、m=2、1.5≦n≦1.8、0≦q≦1.4である上記(1)記載のピルビン酸化合物。【0027】(7) 上記(1)〜(6)記載の2種以上のピルビン酸化合物を含有することを特徴とするピルビン酸組成物。【0028】(8) 炭素数3〜9の有機酸カルシウムにピルビン酸を混練することを特徴とするピルビン酸化合物の製造方法。【0029】(9) 上記(1)〜(6)記載のピルビン酸化合物または上記(7)記載のピルビン酸化合物を含有するピルビン酸補充用製剤。【0030】(10) m=2、1≦n≦3であり、かつn+q≦5であることを特徴とする上記(2)記載のピルビン酸化合物。【0031】【発明の実施の形態】本発明のピルビン酸化合物は、上記一般式(I)で示されるいわゆる複塩である。ここに複塩とは、一般に2種以上の塩が結合した形式で表わすことができる化合物のうち、それぞれの成分イオンがそのまま存在するものである。常温で固体状のピルビン酸を開発すべく各種有機酸塩について研究したところ、有機酸カルシウムとピルビン酸とを混合および撹拌すると、上記一般式(I)で示される化合物が固体状で生成され、しかも該ピルビン酸化合物は常温における安定性に優れることを見出した。本発明のピルビン酸化合物における安定性は、複塩を構成する有機酸カルシウムによって相違するものの、複塩に含まれる有機酸カルシウムとピルビン酸とのモル比および、ピルビン酸モル数と結晶水モル数とが特定範囲の場合に特に優れる。【0032】この安定性の理由は明確ではないが、ピルビン酸はその構造中にカルボキシル基を含有しエノール型またはケト型の形態で存在する。ピルビン酸が有機酸カルシウムと結合することによって安定性に優れるケト型が維持され、脱炭酸などによる該ピルビン酸の分解が抑制され、該ピルビン酸化合物内におけるピルビン酸の安定性が向上すると考えられる。更に、ピルビン酸は、融点が13.6℃であり室温において固体や液体に変化するが、有機酸カルシウムおよび結晶水とが特定割合で配合されることによって物理的な安定性が維持され、その分解が抑制されると考えられる。これにより、ピルビン酸の分解性が高いために特殊な保存容器を必要とした従来と比較し、ピルビン酸取り扱い者への安全性も確保でき、利用者も簡便にピルビン酸を使用することができる。【0033】 また、本発明のピルビン酸化合物は、ピルビン酸の酸としての特性をそのまま維持することができる。その一方、複塩中の有機酸カルシウムを各種に変更することでピルビン酸の摂取と共に他の有機酸カルシウムを摂取することもできる。従って、複塩とすることでピルビン酸化合物を内服した場合には、ピルビン酸の風味をまろやかにすることもできる。この様なことは、本発明のピルビン酸化合物によって初めて達成されることである。以下、本発明を詳細に説明する。【0034】(1)ピルビン酸化合物本発明のピルビン酸化合物は、上記一般式(I)で示される。式中Rは、炭素数3〜9の有機酸のカルボキシル基残基を示し、水酸基等の他の置換基を有していてもよく、更にアミド等を含有していてもよい。【0035】[R]mCaとしては、ヒドロキシ酸のカルシウム塩として、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウム、グリコール酸カルシウム、クエン酸カルシウム、イソクエン酸カルシウムおよびリンゴ酸カルシウムが、飽和脂肪酸モノカルボン酸のカルシウム塩としては、プロピオン酸カルシウム、飽和脂肪酸ジカルボン酸のカルシウム塩としては、マロン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、グルタル酸カルシウム、アジピン酸カルシウム、アミノ酸のカルシウム塩としては、アスパラギン酸カルシウム、酪酸カルシウム、イソ酪酸カルシウム、吉草酸カルシウムおよびピバル酸カルシウムが、不飽和脂肪酸のジカルボン酸のカルシウム塩としては、フマル酸カルシウムが、ウロン酸のカルシウム塩としては、グルコン酸カルシウムおよびアスコルビン酸カルシウムが、アミドを含有する有機酸のカルシウム塩としては、パントテン酸カルシウムが、アミノ基を含有する有機酸のカルシウム塩としては、グルタミン酸カルシウムが、二価の有機酸のカルシウム塩としては、フタル酸カルシウム、イソフタル酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、ケイ皮酸カルシウム、マロン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、グルタル酸カルシウム、アジピン酸カルシウム、ピメリン酸カルシウム、スベリン酸カルシウムおよびアゼライン酸カルシウム等が例示できる。本発明では、使用目的に応じて適宜有機酸カルシウム塩を選択しうるが、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、アジピン酸カルシウム、パントテン酸カルシウムであることが好ましく、より好ましくは乳酸カルシウムである。これらの有機酸カルシウム塩を構成する有機酸は、生体内物質でもあり、健康食品などとして内服しても安全性が高く、また化粧品等に応用する場合にも経皮投与による安全性に優れるからである。【0036】本発明においてカルシウム塩としたのは、取り扱いが簡便であると共に、内服した場合にも生体に必要とされるカルシウム分の補充が可能となるからである。原料たる有機酸カルシウム塩は、無水物であっても水和物であってもよい。例えば、乳酸カルシウムの5水和塩はやや風化しやすい無色の結晶であり、100℃で無水塩となる。従って、あらかじめ加熱により無水物した乳酸カルシウムを使用することも水和物を使用することもできるが、無水物のピルビン酸化合物を得ようとすれば、原料たる有機酸カルシウムは無水物であることが好ましい。ピルビン酸化合物を得た後に加熱して無水物とすることもできるが、加熱によりピルビン酸が分解するおそれがあるからである。【0037】式中、mは有機酸のカルボキシル基の数により特定され、0<m≦3が好ましく、より好ましくは2/3≦m≦2である。例えば、一価の酸である乳酸カルシウムは、Ca(C3H5O3)2で示されmは2となり、二価の酸である酒石酸の場合は1となり、三価の酸であるクエン酸の場合は2/3となる。【0038】式中nは、上記有機酸のカルシウム塩と複塩を形成しうるピルビン酸のモル数を示し、複塩を形成する有機酸のカルシウム塩によってカルシウム1モルに対し、0を越えて4以下の数値が好ましく、より好ましくは1〜4である。この範囲であれば、得られたピルビン酸化合物が固体であると共に、食用に供した場合にピルビン酸の酸性を保持しつつもまろやかな風味が得られるからである。また、本発明のピルビン酸化合物の常温における安定性は、含まれる有機酸塩の種類にもよるがピルビン酸の付加数に依存する。従って、得られたピルビン酸化合物の特性を考慮しながら適宜選択することが好ましい。具体的には、乳酸カルシウムとピルビン酸とからなる場合にはnは1〜3であることが好ましく、特には1〜2.5である。【0039】式中、qは0≦q≦6である。qは水和塩の付加数を示すが、qは本発明のピルビン酸化合物の使用目的により適宜選択することができる。水和量により安定性が相違し、各ピルビン酸化合物の特性に応じて選択することができる。具体的には、乳酸カルシウムとピルビン酸とからなる場合には、qは、n+q≦5であることが好ましく、より好ましくはqは0.5〜4である。実施例に示すように、この範囲で特に室温における安定性に優れるからである。【0040】 本発明のピルビン酸化合物は上記一般式(I)で示され、常温で固体であることを特徴とする。製造過程や結晶水の含有率にもよるが、固体とは板状、粒状、粉末状等を意味する。しかも、固体でありながら、ピルビン酸の酸性物質としての特性をそのまま維持することができる点に特徴があるのである。本来、液状ピルビン酸は強酸であるために原液のまま経口摂取することは困難であり、有効に利用できるためには相当量に希釈する必要があったのであるが、本発明のピルビン酸化合物は有機酸カルシウムとの複塩として存在するために、ピルビン酸の味覚をまろやかにすることができる。【0041】本発明のピルビン酸組成物は、有機酸カルシウムの異なる上記一般式(I)で表される2種以上のピルビン酸化合物を更に組み合わせたものである。例えば、有機酸カルシウム塩として乳酸カルシウムの他に、アスコルビン酸カルシウムやパントテン酸カルシウムを使用すれば、ビタミンとしてのアスコルビン酸やパントテン酸カルシウムを補充することができる。また、有機酸カルシウム塩として乳酸カルシウムの他に酒石酸カルシウムやクエン酸カルシウムを使用すれば、酸味料として使用することもできる。【0042】ピルビン酸組成物としては、上記各種有機酸カルシウムからなるピルビン酸化合物を適宜配合し得るが、それぞれの有する薬理効果や経口での常用量等を考慮すれば、アスコルビン酸カルシウムを使用したピルビン酸化合物をアスコルビン酸含有量0.3〜12モル、有機酸カルシウムとしてパントテン酸カルシウムを使用したピルビン酸化合物をパントテン酸カルシウム含有量0.05〜1モルのモル比で配合した組成物が例示できる。【0043】(2)ピルビン酸化合物の製造方法本発明のピルビン酸化合物は、有機酸カルシウム塩とピルビン酸とを混練することにより簡便に調製することができる。すなわち、上記一般式(I)を構成しうる配合量の有機酸カルシウム塩とピルビン酸とを室温で混練すると混練物は均一なペレット状となり、混練を継続すると固化し、固体のピルビン酸化合物が得られるのである。従来から液体状の有機酸を複塩として固体で得る方法は存在したが、特に乳酸カルシウムを使用する場合には混練に際して加熱を必要としていた。このため、常温で液体であるピルビン酸を固体状で得ようとしても加熱による分解を防止することができず、ピルビン酸の固体状物は得られていなかった。しかしながら、本発明によれば有機酸カルシウム塩やピルビン酸を水溶液などとして供給することなく、製造原料をそのまま配合し、しかも室温で混練することにより、固体状のピルビン酸を得ることができたのである。この様なピルビン酸を乳酸カルシウムの複塩、すなわち固体化する技術は従来全く存在しなかったものである。【0044】本発明のピルビン酸化合物の製造方法において、有機酸カルシウム塩は、上記のごとく無水物でも水和物のいずれでも使用することができる。有機酸カルシウムとピルビン酸の使用量は、有機酸のカルシウム塩に含まれるカルシウム1モルに対して、ピルビン酸を0を越え4モルの範囲、より好ましくは1〜4の範囲でで混合すればよい。【0045】本発明においては、特に有機酸カルシウムを水溶液として供給する必要はなく、有機酸カルシウムに液体ピルビン酸を配合すればよい。この点、実に簡便にピルビン酸化合物が調製できるのである。ピルビン酸の配合は、有機酸カルシウムに一度に使用全量のピルビン酸を配合してもよく、混練しながら有機酸カルシウムにピルビン酸を徐々に加えてもよい。【0046】混練は、双腕型捏和機、インターナルミキサー、ポニーミキサー、ロールミキサー等の各種の回分式捏和・混練機、またはマラー、コニーダー、パグミル、ギヤコンバンダー、ボテーター型捏和機、セルフクリーニング捏和機などの各種の連続式捏和・混練機を使用することができる。【0047】混練は常温で実施でき加熱は不要である。従って、加熱により分解しやすいピルビン酸の処理方法として特に優れているのである。加熱せずに混練によってのみ有機酸を固形化した例はなく、むしろ、本発明では反応熱によるピルビン酸の分解を防止するために反応容器を冷却してもよい。使用する有機酸カルシウムの種類や配合するピルビン酸のモル比によって適宜選択可能であるが、一般に冷媒温度20〜40℃、より好ましくは、20〜30℃で混練することが好ましい。【0048】混練により、有機酸カルシウムの粒子がピルビン酸で包み込まれ、均質な可塑性物質やペースト状物質が形成され、更に混練を継続すると材質が変化して固体となる。混練時間は、混練物の状態を肉眼で観察しつつその終点を決定することができる。使用する有機酸カルシウムの種類およびピルビンの配合量により異なるが、一般に混練時間は、10〜30分で十分に固化する。【0049】本発明では、得られたピルビン酸化合物をそのままで、または粉砕等して粉末状にして使用することができる。【0050】本発明のピルビン酸組成物は、異なる有機酸カルシウム塩にピルビン酸を配合し、混練して調製することもできるが、特定の有機酸カルシウムとピルビン酸とから複塩を得、2種以上のこれら複塩を混合することによっても調製することができる。【0051】本発明のピルビン酸組成物には、更に着色料、酸化防止剤、漂白剤、甘味料、酸味料、糊料、強化剤、保存料、殺菌料、酸化防止剤などの一般に食品、医薬品、医薬部外品に使用できる他の添加物を配合することができる。【0052】(3)用途 本発明のピルビン酸化合物やピルビン酸組成物は、従来ピルビン酸を使用する各種の用途に使用することができる。【0053】特に、本発明のピルビン酸化合物は常温で固体であることを特徴とする。従って、これを粉砕し粉末として使用することができる。本発明のピルビン酸化合物の粉末を単剤で使用し、または2種以上のピルビン酸化合物の粉末を混合し、または粉末状の本発明のピルビン酸組成物に更に適当な添加物を添加して製剤等とすることができる。例えば、ピルビン酸補充製剤、酸味料、調味料、医薬品、健康食品、栄養補充食品等の経口用途に使用する場合には、目的に応じて更に製剤とすることができる。このような製剤の剤型としては、粉末剤のほか、打錠剤、丸剤、顆粒剤があり、さらにフィルムコーティングし、または糖衣錠などとすることもできる。これにより保冷を不要とし、常温で液体のピルビン酸を固体で取り扱うことができ、流通および保存などの取り扱いが簡便となると共に取扱者の安全性も確保される。【0054】本発明のピルビン酸化合物やピルビン酸組成物は、ピルビン酸の薬理効果や物理的特性を考慮して、ピルビン酸補充製剤、ダイエット製剤、健康食品、洗口剤、トローチ、チューインガム等を含む口腔用組成物、医薬品に単剤でまたは必要な他の成分を配合して使用することができる。更に、従前と同様に例えば化粧料、ピルビン酸の酸性を利用して養殖魚の寄生虫駆除剤等の外用品として使用することができる。【0055】【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。【0056】(実施例1)ピルビン酸17.13gを乳酸カルシウム0.7水和物30.02gに加え、室温で均一に混練したところペレット状となり、さらに混練を継続すると次第に粘性が増加し、最終的に白色の固体となった。このものを粉砕し、粉末状ピルビン酸化合物を得た。【0057】得られた生成物のピルビン酸含有量、乳酸カルシウム含有量、カルシウム含有量、水分含有量を測定した。なお、カルシウムの定量は、EDTAキレート滴定法、ピルビン酸および乳酸カルシウムなどの有機酸カルシウムは、HPLC法(測定装置:島津高速液体クロマトグラフLC−9A)により測定した。また、結晶水などの水分量は、カールフィッシャー法により行った。得られた結果を表1に、推定構造式を以下に示す。【0058】【化13】(実施例2)ピルビン酸18.43gをクエン酸カルシウム4水和物15.06gに加え、室温で均一に混練したところ、ペレット状となり、さらに混練を継続すると次第に粘性が増加し、最終的に白色の固体となった。このものを粉砕し、粉末状ピルビン酸を得た。【0059】実施例1と同様にして得られた生成物のピルビン酸含有量、クエン酸カルシウム含有量、カルシウム含有量、水分含有量を測定した。得られた結果を表1に、推定構造式を以下に示す。【0060】【化14】【0061】(実施例3)ピルビン酸10.23gを酒石酸カルシウム4水和物15.05gに加え、室温で均一に混練したところ、ペレット状となり、さらに混練を継続すると次第に粘性が増加し、最終的に白色の固体となった。このものを粉砕し、粉末状ピルビン酸を得た。【0062】実施例1と同様にして実施例1と同様にして得られた生成物のピルビン酸含有量、酒石酸カルシウム含有量、カルシウム含有量、水分含有量を測定した。得られた結果を表1に、推定構造式を以下に示す。【0063】【化15】【0064】(実施例4)ピルビン酸13.29gアジピン酸カルシウム10.02gに加え、室温で均一に混練したところ、ペレット状となり、さらに混練を継続すると次第に粘性が増加し、最終的に白色の固体となった。このものを粉砕し、粉末状ピルビン酸を得た。【0065】実施例1と同様にして得られた生成物のピルビン酸含有量、アジピン酸カルシウム含有量、カルシウム含有量、水分含有量を測定した。得られた結果を表1に、推定構造式を以下に示す。【0066】【化16】【0067】(実施例5)ピルビン酸5.06gをパントテン酸カルシウム15.01gに加え、室温で均一に混練したところ、ペレット状となり、さらに混練を継続すると次第に粘性が増加し、最終的に白色の固体となった。このものを粉砕し、粉末状ピルビン酸を得た。【0068】実施例1と同様にして得られた生成物のピルビン酸含有量、パントテン酸カルシウム含有量、カルシウム含有量、水分含有量を測定した。得られた結果を表1に、推定構造式を以下に示す。【0069】【化17】【0070】(実施例6)ニーダーに乳酸カルシウム無水物301.60gを仕込み、攪拌下、ピルビン酸241.06gを徐々に加えて室温で混練した。次第に粘性が増加し、最終的に固化し、粉砕をへて粉末状ピルビン酸を得た。【0071】実施例1と同様にして得られた生成物のピルビン酸含有量、乳酸カルシウム含有量、カルシウム含有量、水分含有量を測定した。得られた結果を表1に、推定構造式を以下に示す。【0072】【化18】【0073】【表1】【0074】(実施例7)実施例1においてピルビン酸と乳酸カルシウムの配合量を代えて表2に示す推定構造のピルビン酸化合物を得た。このピルビン酸化合物を15〜30℃でアルミ製の袋に密閉保存しピルビン酸化合物の安定性を経時的に評価した。安定性はピルビン酸化合物中のピルビン酸の残存量で評価した。結果を表2に示す。ピルビン酸は通常30日以内に使用せざるを得ないのであるが、本発明のピルビン酸化合物は60日以降においても、液状ピルビン酸と比較して優れた安定性を有することが判明した。【0075】【表2】【0076】【発明の効果】(1)本発明は、固体状のピルビン酸化合物である。このため従来硬化容器に収納し、保冷庫が必要であったピルビン酸を常温で簡便に取り扱うことができるのである。しかも本発明のピルビン酸化合物は常温で安定性が高く、長期保存しても液状ピルビン酸よりも分解が少なかった。【0077】 (2)本発明のピルビン酸化合物は、固体状のピルビン酸としてのピルビン酸塩等と異なり、ピルビン酸の酸としての特性をそのまま保持することができるのである。このため本発明のピルビン酸化合物を使用して製剤とすれば、さわやかな酸味を味わうことができるのである。【0078】(3)本発明のピルビン酸化合物は、本来液状のピルビン酸が有する強酸による刺激性を有機酸塩との複塩とすることで緩和することができる。従って、容易に内服することが可能となったのである。【0079】(4)本発明のピルビン酸化合物の製造方法は、室温でピルビン酸と有機酸塩とを反応させることで調製できるものである。従来は、有機酸と有機酸塩との複塩の調製には加熱を要することが一般的であり、ピルビン酸のように加熱により分解しやすい有機酸を複塩とすることは困難であった。しかしながら本発明の製造法によれば、室温で反応させるのみで調製することができるのである。これゆえに本発明により初めて本発明のピルビン酸化合物が調製できるようになったのである。 式(I)で示されるピルビン酸化合物。 式(I)において、Rがであり、m=2、1≦n≦3、0≦q≦5である請求項1記載のピルビン酸化合物。 式(I)において、Rがであり、m=2/3、1.7≦n≦2.7、0≦q≦4である請求項1記載のピルビン酸化合物。 式(I)において、Rがであり、m=1、0.75≦n≦2、0≦q≦4である請求項1記載のピルビン酸化合物。 式(I)において、Rがであり、m=1、n=3、q=0である請求項1記載のピルビン酸化合物。 式(I)において、Rがであり、m=2、1.5≦n≦1.8、0≦q≦1.4である請求項1記載のピルビン酸化合物。 請求項1〜6記載の2種以上のピルビン酸化合物を含有することを特徴とするピルビン酸組成物。 炭素数3〜9の有機酸カルシウムとピルビン酸との配合物を混練することを特徴とするピルビン酸化合物の製造方法。 請求項1〜6記載のピルビン酸化合物または請求項7記載のピルビン酸組成物を含有する、経口摂取により体内へのピルビン酸の補充が可能なピルビン酸補充用製剤。 m=2、1≦n≦3であり、かつn+q≦5であることを特徴とする請求項2記載のピルビン酸化合物。