| タイトル: | 特許公報(B2)_精液の検出方法 |
| 出願番号: | 1999092060 |
| 年次: | 2009 |
| IPC分類: | G01N 33/53,G01N 33/50 |
岩本 晃明 吉池 美紀 佐藤 至 JP 4233169 特許公報(B2) 20081219 1999092060 19990331 精液の検出方法 学校法人 聖マリアンナ医科大学 596165589 神奈川県 000192903 志村 光春 100103160 岩本 晃明 吉池 美紀 佐藤 至 20090304 G01N 33/53 20060101AFI20090212BHJP G01N 33/50 20060101ALN20090212BHJP JPG01N33/53 DG01N33/50 J G01N 33/48-98 The Prostate,1990年,Vol.17,,p31-40 4 2000283982 20001013 9 20060119 山村 祥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、主に法医学的な用途において有用な検出方法に関する技術分野の発明である。より具体的には、本発明は、事件現場等に残留している精液を、その斑痕の存在までを特定することにより、主に性犯罪捜査の確度を向上させることが可能な、精液の検出方法に関する発明である。【0002】【従来の技術】強姦罪等の性犯罪は、概ね親告罪であり、刑事手続を開始する要件として、被害者の告訴が必要である。しかしながら、一旦、告訴が行われた場合には、性犯罪を成立させるための立証が的確に行なわれる必要があることはいうまでもない。【0003】事件現場や、被害者の身体や衣服等において、被疑者の精液が検出されることは、強姦罪等の性犯罪が成立する上で、非常に有力な物的証拠になることは、明らかである。【0004】現在、この精液の存在の確認手段としては、例えば、▲1▼精子の存在の確認、▲2▼精子以外の精漿成分が存在することを証明するために、前立腺特異抗原(PSA)や、前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)を検出する免疫学的方法等が用いられている。【0005】しかしながら、これらの方法においても、性犯罪を的確に立証するという観点からすると、不十分な面があることは否めない。すなわち、▲1▼精子の存在を確認することを試みる場合、例えば、被疑者が、精子濃度が極めて低い乏精子症の場合や、精子の全く無い無精子症であった場合は、精子として検出することが不可能である。また、被疑者が、精管結繋(いわゆるパイプカット)後であった場合には、精液中に精子が含まれていないことになる。そして、証拠物件に付着した精液が既に乾燥した斑痕になっている場合には、この斑痕からは、精子を検出することができないことも多い。【0006】また、▲2▼精漿成分を同定する場合には、精漿に特異的で、かつ、確実に検出可能な物質を指標とすることが望ましいが、この点において、前述したPSA及びPAP共に、問題がある。すなわち、これらの両指標共、特に、前立腺癌や前立腺肥大症においては、その血液濃度が著しく高くなることが知られており(既に、この性質を利用して、PSAやPAPは、臨床的に腫瘍マーカーとして用いられている)、必ずしも、精漿特異的な成分であるとは言いがたく、被検物におけるPSAやPAPの存在が証明されたからといって、それが直接的に精液の存在を示すものと断定することは難しい。なお、男性健常人の血清中においても、常に、5ng/ml 程度のPSAが認められ、特に、現在用いられているモノクローナル抗体を用いた高感度のスクリーニング法では、このような微量のPSAも検出されてしまい、PSAが検出されることをもって、精液が存在することの指標とすることは困難である。また、PAPは、広く生物界に存在する酵素であるだけではなく、温度やpHの変化に対して非常に不安定であり、容易に失活してしまうため、精液斑痕や膣内溶液中の精液の存在を証明するには不向きな面は、否めなかった。【0007】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決すべき課題は、事件現場等に残留している精液を、その斑痕の存在や膣内溶液中の精液の存在までを特定し、主に性犯罪捜査の確度を向上させることが可能な、精液の検出方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】 本発明者は、この課題の解決に向けて、鋭意検討を重ねた。その結果、精漿中に存在するタンパク質の一種である、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を、精液検出のための手段とすることにより、精液中における、このセミノジェリンと共に、このセミノジェリンが、主にセリンプロテアーゼにより分解されてできる精子運動抑制因子(SPMI)をも検出することが可能であり、また、驚くべきことに、このセミノジェリンないしSPMIを精液の検出指標とした場合には、従来は、検出が困難であった、犯行時から長時間経過して存在する精液斑痕や、膣内溶液中に存在する精液までもが、容易に、感度よく検出ができることを見出して、本発明を完成した。【0009】 すなわち、本発明は、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を用いて、被検物におけるセミノジェリン及び/又は精子運動抑制因子を検出することにより、その被検物における精液を検出する、精液の検出方法を提供する発明(以下、本発明検出方法という)である。【0010】【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明検出方法は、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を用いることを前提とする、精液の検出方法である。【0011】A.セミノジェリンに対する抗体について:セミノジェリン(Semenogelin) は、もともと、精液を凝固させる蛋白として、1987年に、LiIja らによって、精漿中に発見され(LiIja H.,Oldbring J.,Rannevik G and Laurell C.B.,J.Clin.Invest.80:281-285,1987)、PSAの特異基質としての研究が進む中、1992年、その遺伝子が単離され、セミノジェリンI,IIの遺伝子の全塩基配列が明らかになった(Ulvsback M.,Lazure C.,LiIja H.,Spurr N.K.,Rao V.V.,Loffler C.,Hansmann I. and Lundwall A.,J.Biol,Chem.267:18080-18084,1992)。セミノジェリンをコードする遺伝子は、ヒト20番染色体の長腕上に存在し、セミノジェリンIをコードする遺伝子の塩基数は、4164bpで、同アミノ酸数は、462aaであり、セミノジェリンIIをコードする遺伝子の塩基数は、8224bpで、同アミノ酸数は、582aaである。【0012】一方、1981年、Gagnonが、精漿中に、精子運動抑制因子(SPMI)の存在を見出し、1988年、岩本と共同で、SPMIの精漿中からの精製分離に成功した(Iwamoto T. and Gagnon C.J.Androl. 9:377-383,1988)。SPMIには、52kDa の前駆体が存在することが知られていたが、その後の研究から、1996年に、Robertによって、前記のSPMIの前駆体が、セミノジェリンであることが明らかにされた(Martin R. and Gagnon C.,Biol.Reprod.55:813-821,1996 )。上述のように、セミノジェリンは、精嚢から特異的に分泌される蛋白で、精液が射出される際に、前立腺液等と混合され、主に、PSAの作用により、速やかに分解を受けるため、精液中には、様々な分解過程におけるセミノジェリンが存在する。そして、その最終産物が、SPMIであり、抗セミノジェリン抗体と反応し得る、最小単位の蛋白である。【0013】本発明において、免疫原として用いるセミノジェリンは、天然に存在するものであってもよいし、遺伝子工学的手段を駆使して製造される組換えタンパク質であってもよいが、ヒトセミノジェリンの入手の容易性を考慮すると、後者の組換えタンパク質を選択することが好ましい。【0014】組換えセミノジェリンの製造は、上述の既知のセミノジェリンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、常法を用いて行うことができる。すなわち、例えば、ヒトの精嚢のmRNAを鋳型としたcDNAライブラリーを調製し、さらにこのcDNAライブラリーを鋳型として、上記の既知のセミノジェリンをコードする遺伝子の塩基配列に基づいたオリゴヌクレオチドプライマーを用いた、PCR法等の遺伝子増幅法により、セミノジェリンをコードする遺伝子を特異的に増幅させることができる。【0015】次いで、このセミノジェリンをコードする遺伝子を、適切な遺伝子発現ベクターに組み込み、この遺伝子発現ベクターに応じた宿主を形質転換し、この形質転換体においてセミノジェリンを発現させることにより、所望する組換えセミノジェリンを得ることができる。【0016】 上述のようなセミノジェリンを免疫原として、本発明検出方法において用いられる抗体を製造することができる。セミノジェリンに対する抗体は、本発明検出方法においては、その検出指標が、セミノジェリンのみならず、これが分解された精子運動抑制因子(以下、SPMIともいう)でもあることから、セミノジェリンに由来するタンパク質であれば、万遍なく反応性が認められる、ポリクローナル抗体である。【0017】 また、セミノジェリンに対するポリクローナル抗体は、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体である。セミノジェリンIIは、セミノジェリンIに比べると分子量が大きく、これを免疫原とすることで、より多彩な抗原決定基を有するポリクローナル抗体を得ることが可能である。【0018】 さらに、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を製造するための免疫原は、ヒトセミノジェリンの全部又は一部(本発明においては、セミノジェリンの全部は勿論のこと、その一部も、免疫原としての「セミノジェリン」の範疇に含まれる)を用いることができる。【0019】 セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体は、通常公知の方法に従い、製造することができる。【0020】 セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を製造するために、上述のようにして得られる免疫原で免疫される動物は、特に限定されるものではなく、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等を広く用いることが可能である。【0021】免疫は一般的方法により、例えば上記免疫抗原を免疫の対象とする動物に静脈内、皮内、皮下、腹腔内等で投与することにより行うことができる。より、具体的には、上記免疫抗原を、所望により通常のアジュバントと併用して、免疫の対象とする動物に、2週間程度毎に、上記手法により数回投与し、免疫を行うことができる。【0022】 このようにして、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を得る前提となる免疫血清を得ることができる。【0030】 また、このようにして得られる、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体は、更に塩析,ゲル濾過法,アフィニティクロマトグラフィー等の通常の手段により精製することができる。【0031】 このようにして得られるセミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体は、セミノジェリン及び精子運動抑制因子(SPMI)等の、その酵素分解物に対する反応性が認められる抗体である。【0032】 また、上記のセミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を、必要に応じて標識物質で標識して、後述する本発明検出方法において用いることができる。かかる標識物質は、その標識物質単独で又はその標識物質と他の物質とを反応させることにより、検出可能なシグナルをもたらす標識物質であり、具体的には、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ,アルカリホスファターゼ,β−D−ガラクトシダーゼ,グルコースオキシダーゼ,グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ,アルコール脱水素酵素,リンゴ酸脱水素酵素,ペニシリナーゼ,カタラーゼ,アポグルコースオキシダーゼ,ウレアーゼ,ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート,フィコビリタンパク,希土類金属キレート,ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、125I,14C,3H等の放射性同位体、ビオチン,アビジン若しくはジゴケシゲニン等の化学物質、又は化学発光物質等を挙げることができる。【0033】 これらの標識物質による、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体の標識方法は、選択すべき標識物質の種類に応じて、既に公知となっている標識方法を適宜用いることができる。【0034】 また、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体(標識されたものを含む)を、必要に応じて、不溶性担体に固定化して用いることができる。かかる不溶性担体としては、抗体の不溶性担体として既に用いられている各種の不溶性担体を用いることができる。具体的には、例えば、マイクロプレートに代表されるプレート、試験管、チューブ、ビーズ、ボール、フィルター、メンブレン、あるいはセルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体、あるいは多孔性シリカ系担体等のアフィニティークロマトグラフィーにおいて用いられる不溶性担体等が挙げられる。【0035】 これらの不溶性担体における、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体の固定化方法は、各種の不溶性担体において既に確立している抗体の固定化方法を、選択すべき不溶性担体の種類に応じて、適宜選択することができる。【0036】B.本発明検出方法の態様について: 本発明検出方法は、上述したように、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体と、被検物におけるセミノジェリン及び/又は精子運動抑制因子との抗原抗体反応を検出することにより、その被検物における精液を検出する、精液の検出方法である。【0037】このような抗原抗体反応を利用した、本発明検出方法の態様としては、例えばエンザイムイムノアッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、フローサイトメトリーによる解析、ウエスタンブロット法等を挙げることができるが、精液の検出は、多くの犯罪証拠資料の中から、個人識別に適した資料を、スクリーニングして確保し得る態様であることが好ましい。このような観点から、本発明検出方法の態様として、最も好ましい態様の一つとして、エンザイムイムノアッセイ法の一種である、「ドットエライザ法」を挙げることができる。【0038】ドットエライザ法は、精液を検出すべき対象、例えば、被害者の着衣等の特定部分を、適当な緩衝液やイオン交換水等で抽出し、この抽出物に、適切な分別処理を施した被検試料(例えば、抽出液の遠心上清等)を、PVDFやニトロセルロース膜等の薄膜に定着させ、これに対して、セミノジェリンに対する抗体を一次抗体として用いたエンザイムイムノアッセイを実施して、上記検出対象から、精液を検出する検出方法である。【0039】 前述したように、本発明検出方法は、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を用いることで、セミノジェリンのみならず、その酵素分解物である精子運動抑制因子をも指標にして、精液を検出し得ることと共に、外気に触れた後、長時間が経過して、もはや斑痕化した精液をも、容易に検出し得るので、犯罪捜査、特に性犯罪捜査において、極めて有用な精液の検出方法である。【0040】 なお、本発明においては、本発明検出方法を簡便に実施するための、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を含む、精液検出用キットも提供される(以下、本発明検出用キットという)。【0041】 本発明検出用キットにおいては、セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体(検出するための適切な標識がなされたものを含む)を、必須要素として、その他、被検物の精液の検出のために供するための要素、例えば、抗原抽出用の緩衝液(防腐剤を含むことが好ましい)、試料定着要素(例えば、ニトロセルロースやPVDF等の試料定着用膜)、発色要素(例えば、発色酵素を結合した二次抗体と、これを発色させるための発色剤)等を、必要に応じて含有させることができる。【0042】【実施例】以下、本発明の実施例を記載するが、これにより、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。1.セミノジェリン(I及びII)のcDNAを含むcDNAライブラリーの構築ヒト精嚢組織をホモゲナイズし、グアニジンで蛋白変性後、塩化セシウム−超遠心法を用いて、総RNAを抽出した。抽出した総RNAを、オリゴテックス(dT)80(Qiagen社製)を用いて、ポリAmRNAに精製後、RAV−2トランスクリプターゼで逆転写反応を行い、cDNAライブラリーを得た。【0043】2.バキュロウイルスを用いた組換えヒトセミノジェリン(I及びII)蛋白発現系の確立既知のセミノジェリン(I及びII)のDNA配列を基に、N末端に6個のヒスチジン残基とシグナルペプチドを含む、セミノジェリン(I及びII)全長蛋白をコードするDNAを増幅できるようなプライマーを作製し、cDNAライブラリーを鋳型として、PCR反応を行った。PCR産物を、低融点アガロースで泳動後、目的のDNAバンドを切出し、精製した。このDNAを、常法に従って、pAcHLT−Aトランスファーベクター(PharMingen社製)に組み込み、セミノジェリンのcDNAの全長を含む組換えベクターと直鎖状AcNPVバキュロウイルスを、Sf9細胞にトランスフェクトし、相互組換えを起こし、セミノジェリン遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを作製した。プラークアッセイで、ウイルスを純化し、セミノジェリンの全長蛋白を発現しているウイルスを、ウエスタンブロッティング法で選定した。【0044】3.組換えヒトセミノジェリンの精製蛋白発現条件を検討した結果、Sf9細胞に、mulutiplicity of infection 5で組換えウイルスを、インフェクションした後、48時間後に細胞を回収し、そこから蛋白を精製することとした。回収した細胞は、プロテアーゼ阻害剤の存在下で、超音波処理で抽出して、遠心し、上清中のセミノジェリン蛋白が、N末端に6個のヒスチジンを含むことを利用して、Ni−NTAアガロース(Qiagen社製)を用いて、アフィニティークロマトグラフィーで精製した。【0045】4.組換えヒトセミノジェリンの性状組換えヒトセミノジェリンは、可溶性の蛋白で、90%以上の純度で精製することができた。また、天然型のセミノジェリンを抗原として作製した抗体を用いたウエスタンブロット解析では、一本のシャープなバンドとして観察され、抗体と特異的に強く反応した。SPMIは、精子の運動をブロックすることから、その名が付けられたが、除膜精子を用いた生物学的活性の測定においては、組換えヒトセミノジェリンも、天然型のセミノジェリンと同様に、精子の運動をブロックし得る、強い生物学的活性を持っていた。【0046】5.組換えヒトセミノジェリンIIに対する抗体の作製精製したヒトセミノジェリンII(0.5mg)をアジュバンドと混合し、2週間おき、計4回、日本白色種ウサギに皮下投与し、免疫を行った。ウサギの血清を一部採り、ELISA法で、力価を測定したところ、5×104 倍と、十分な力価が認められたため、全採血を行い、その血清をプロテインAセファロース(Pharmacia Biotech 社製)を用いて、ウサギIgGとして精製した。【0047】6.組換えヒトセミノジェリン(I及びII)に対する抗体の反応性精製した抗体を、ウエスタンブロット法で検定したところ、組換え型セミノジェリン(I及びII)、天然型セミノジェリン(I及びII)及びSPMIの全てと、特異的に強く反応した。また、この抗体には、SPMIが、精子の運動をブロックする生物学的活性を抑制する中和活性も認められた。【0048】7.組換えヒトセミノジェリンIIに対する抗体を用いた、精液の検出▲1▼健常人男性ボランティアーが射出した精液を、衣服に4段階の大きさで染み込ませ(径1cm,0.75cm,0.5 cm,0.25cm)、4℃、22℃、37℃で、恒温槽内に放置し、経時的に付着部分を切取り、PBS(25mM,pH7.4)250μl に浸漬して、10分間激しく攪拌して抽出した。この抽出液を、4℃下、4000回転/分で5分間の遠心を行い、これにより得られた上清をサンプルとした。【0049】なお、上記の衣服の内、▲1▼何もしていない部分、▲2▼上記男性ボランティアーの唾液を一滴付着させた部分、▲3▼上記男性ボランティアーの血液を一滴付着させた部分において、上記と同じ操作を施し、これらを対照サンプルとして用いた。【0050】PVDFは、常法により、前処理を行い、これを、DNAのクオンティブロット用にあるブロッターにはめ込み、サンプル溶液をそそぎ込み、サンプル中の蛋白を全て膜に吸着させた。次いで、ゆっくりと吸引して、蛋白を均一に膜面に吸着させた。次いで、この膜を、ブロッキング溶液〔3%BSA−PBS(25mM),pH7.4〕に浸漬して、30分間、室温で反応させて、PVDF上にサンプル中の蛋白を固定した。【0051】次に、この蛋白を固定化させたPVDFを、T−PBS(Tween20を0.05%含有する、前記PBS)で3回、各々5分間洗浄し、余分な蛋白を洗い流した。【0052】次に、この洗浄済フィルターを、一次抗体として、上記の組換えヒトセミノジェリンIIに対する抗体を、上記PBSで1000倍希釈した溶液に、3時間浸漬し、次いで、二次抗体〔ヤギ免疫パーオキシデース標識抗ウサギIgG血清(Zymed 社製)1:2000〕を、1時間、室温で反応させ、前記T−PBSで、3回、各々10分間洗浄してから、ジアミノベンチジン溶液で発色させた。【0053】この結果、第1表に示すように、22℃で6カ月間放置した衣服に付着した精液は、全ての条件で検出可能であり、18カ月後においても、相当量の精液が付着しているなら、これを検出することが可能であることが判明した。【0054】【表1】【0055】▲2▼30代夫婦のボランティアー(前夜の性交射精を確認)の婦人から採取した、膣洗浄液を、37℃で24時間放置し、さらに、上記▲1▼と同様の遠心処理を施し、その上清を被検サンプルとした。また、異なる女性ボランティアー(前夜の性交がないことを確認)から得た膣洗浄液を、上記と同様に処理して得た遠心上清を、対照サンプルとして用いた。【0056】このようにして得られたサンプルを、各々10μl ずつ、PVDF上に塗布して乾燥させた。この乾燥させたフィルターを、一次抗体として用いる、上記の組換えヒトセミノジェリンに対する抗体を1000希釈したPBS(25mM,pH7.4)に、室温で3時間浸漬して、次いで、二次抗体〔ヤギ免疫パーオキシデース標識抗ウサギIgG血清(Zymed社製)1:2000〕を、1時間、室温で反応させ、T−PBS(Tween20を0.05%含有する、前記PBS)で、10分間、3回洗浄してから、ジアミノベンチジン溶液で発色させた。【0057】その結果、被検サンプルは、セミノジェリン抗体に陽性反応を示したが、対照サンプルは陰性であった。これにより、本発明検出方法は、膣内に残存する精液の検出においても、極めて有用であることが判明した。【0058】【発明の効果】本発明により、事件現場等に残留している精液を、その斑痕の存在や膣内溶液中の精液の存在までを特定することにより、主に性犯罪捜査の確度を向上させることが可能な、精液の検出方法が提供される。 セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を用いて、被検物におけるセミノジェリン及び/又は精子運動抑制因子を検出することにより、その被検物における精液を検出する、精液の検出方法。 精液が、斑痕として存在する精液である、請求項1記載の精液の検出方法。 精液が、膣内溶液中に存在する精液である、請求項1記載の精液の検出方法。 セミノジェリンIIに対するポリクローナル抗体を含有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の精液の検出方法を行うための、精液検出用キット。