タイトル: | 特許公報(B2)_脂環式ジオール及びその製造方法 |
出願番号: | 1999091986 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 41/06,C07C 43/196 |
杉原 裕介 小林 秀樹 津野 隆治 JP 4340817 特許公報(B2) 20090717 1999091986 19990331 脂環式ジオール及びその製造方法 荒川化学工業株式会社 000168414 杉原 裕介 小林 秀樹 津野 隆治 20091007 C07C 41/06 20060101AFI20090910BHJP C07C 43/196 20060101ALI20090910BHJP JPC07C41/06C07C43/196 C07C CA/REGISTRY(STN) 西独国特許出願公告第01251752(DE,B) 特開平04−338594(JP,A) 特開平05−155964(JP,A) 米国特許第02898316(US,A) 特開2003−055280(JP,A) BASTIAANSEN,P.M. et al,Chemical Consequences of Long-Range Orbital Interactions in Norbornane-Based 1,4-Diol Monosulfonate Esters,Journal of Organic Chemistry,1995年,Vol.60, No.13,p.4240-50 TROST,B.M. et al,Rotational selectivity in cyclobutene ring openings. Model studies directed toward a synthesis of verrucarin A,Journal of Organic Chemistry,1984年,Vol.49, No.3,p.458-68 実験化学講座20 有機合成II,1992年,第4版,p.69 1 2000281613 20001010 8 20060324 宮田 和彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は新規な脂環式ジオール及びにその製造方法に関する。本発明の脂環式ジオールは耐熱性、透明性、耐湿性に優れた光学材料(脂環式ポリエステル等)の原料として使用できる他、水酸基を例えば重合性のアクリル誘導体等で修飾することにより各種構造材料樹脂の原料にもなりうる。又、汎用樹脂や各種構造材料樹脂の耐熱性、透明性、耐熱性等の物性を付与するための添加剤としても有用である。【0002】【従来の技術】脂環式ジカルボン酸や脂環式ジオールなどの脂環構造を有するモノマーを原料として得られる脂環式ポリエステルは、透明性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などの物理的、化学的特性に優れていることが知られている。かかる脂環式ポリエステルは、その脂環骨格が本来持っている特性を生かして光ディスク、光カードの基板や液晶表示素子用基板等の各種光学材料として有用なポリマー素材となる。又、このようなポリマー素材には光学特性の他、機械的強度、耐衝撃性、耐吸湿性等も要求される。【0003】しかし、従来より知られている脂環構造を有するポリエステルは、良好な光学特性及び耐熱性を示すものの、水酸基又はカルボキシル基が隣接する炭素原子又は近接する炭素原子に結合しているモノマーを用いて合成されているため、かかるモノマーの脂環構造はポリエステル側鎖に導入されるのみであり、機械的強度、耐衝撃性の点で問題があった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、脂環骨格をポリエステル主鎖中に導入しうる原料モノマーを提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表される脂環式ジオールを新たに合成し、本発明を完成するに到った。【0006】すなわち本発明は、一般式(1):【0007】【化5】【0008】(式中、lは0又は1を示し、mは1を示し、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表わされる脂環式ジオール、および一般式(2):【0009】【化6】【0010】(式中、lは0又は1を示し、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される脂環式モノオレフィンアルコールのオレフィン部に一般式(5):【0011】【化7】【0012】(式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1を示す。)で表される化合物を反応させる前記一般式(1)で表わされる脂環式ジオールの製造方法に関する。【0013】【発明の実施と形態】本発明の一般式(1)で表される脂環式ジオールの出発原料として用いる一般式(2):【0014】【化8】【0015】(式中、lは0又は1を示し、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される脂環式モノオレフィンアルコールは、各種方法により製造することができる。例えば、ジエン化合物であるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと、アクリル酸エステルとのディールス・アルダー反応を行い、一般式(4):【0016】【化9】【0017】(式中、lは0又は1を示し、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される脂環式カルボン酸エステルを合成し、さらに得られた一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルのエステル部位を還元することにより得られる。【0018】一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルは種々のディールス・アルダー付加体の混合物(例えば、シクロペンタジエンとアクリル酸エステルの場合、両原料の1:1付加体の5−カルボキシアルキルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2:1付加体の8−カルボキシアルキルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、3:1付加体の11−カルボキシアルキルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン等の混合物)として得られるが、ジエン化合物とジエノファイル化合物の仕込みのモル量論比や反応条件を適当に選択することにより目的とする一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルへの反応転化率を向上できることが一般的に知られており、又目的とする一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルは、減圧蒸留によって反応生成物から容易に単離することができる。【0019】一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルのエステル部位の還元に用いる還元剤としては、一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルのオレフィン部位を還元せずに、エステル部位を選択的に還元するものであれば特に制限はなく使用できる。かかる還元剤としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等が用いることができる。還元剤の使用量は、一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステル1モル部に対して、通常、1モル部以上、好ましくは1.5モル部〜5モル部である。なお、反応溶媒は反応に不活性であれば特に制限は無く、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、n−又はiso−プロパノ−ル、n−、sec−、t−ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を用いることができる。反応温度及び反応時間は、一般式(4)で表される脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルの反応性及び反応液中の原料濃度、還元剤量に依存するが、通常、反応温度は−50〜50℃、反応時間は1〜10時間程度である。【0020】本発明の前記一般式(1)で表される脂環式ジオールは、前記一般式(2)で表される脂環式モノオレフィンアルコールのオレフィン部に一般式(3):【0021】【化10】【0022】(式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1を示す。)で表される化合物を反応させ、当該化合物の水酸基の一方のみを、一般式(2)で表される脂環式モノオレフィンアルコールのオレフィン部へ付加することにより製造する。【0023】前記一般式(3)で表される化合物の水酸基の一方のみを、一般式(2)で表される脂環式モノオレフィンアルコールのオレフィン部へ付加する反応方法としては、例えば、硫酸等の酸触媒による方法[ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)第7巻1617頁(1955年)]、光化学反応による方法[オーガニック・シンセシス(Org.Synth.)第7巻304頁(1990年)]、酢酸水銀を用いる方法[ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第48巻7頁(1951年)]、ヒドロホウ素化による方法[オーガニック・リアクション(Org.React.)第13巻1頁(1963年)]等が知られており、これら公知の方法をそのまま採用することできる。これらの方法のなかでも反応及び処理が容易で、反応試薬が工業的見地から有利な、硫酸等の酸触媒を用いる方法が好ましい。【0024】 以下、硫酸等の酸触媒を用いる方法について説明する。かかる方法は、具体的には、酸触媒下、一般式(2)で表される脂環式モノオレフィンアルコールに、一般式(3)で表される化合物を50〜110℃程度で2〜10時間作用させる。一般式(3)で表される化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。酸触媒としては、硫酸の他に、トリフルオロ酢酸、ギ酸等を使用できる。酸触媒の使用量は、一般式(2)で表わされる脂環式モノオレフィンアルコール1モル部に対して、通常0.01モル部以上、好ましくは0.05モル部〜6モル部である。又、前記一般式(3)で表される化合物は、通常、反応溶媒にもなるため、その使用量は、一般式(2)で表わされる脂環式モノオレフィンアルコールの濃度が、10〜30重量%程度となるように調整するのが好ましい。なお、この反応は、一般式(3)で表される化合物のみを反応溶媒とすることもできるが、必要に応じて反応に不活性な有機溶媒を混合しても良い。かかる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。前記反応は、反応速度、副生成物生成等の点から、上記溶媒を適宜に選択し、均一系の反応を行うのが好ましい。不均一系で反応を行うこともできるが、その場合には、反応系内を激しく攪拌懸濁し、反応を行う。この付加反応の終了後には、得られた前記一般式(1)で表わされる脂環式ジオールを酢酸エチル等の有機溶剤で抽出する。【0025】【発明の効果】本発明により新規な脂環式ジオールを提供できる。本発明の脂環式ジオールは、脂環骨格を介して水酸基が存在するため、当該脂環式ジオールを原料モノマーとすることにより、脂環骨格を主鎖中に導入した脂環式ポリエステルが得られる。【0026】【実施例】以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに何ら限定されるものではない。なお、脂環式ジオールの物性値、スペクトル等の測定には以下の方法を用いた。NMR:BRUKER ARX300(ブルカー社製)IR:FT−IR FTS−7(バイオ・ラッド社製)元素分析:エレメンタルアナライザー 2400CHN(パーキンエルマー社製)水酸基価:JIS K0070に基づいて測定した。【0027】製造例(i)脂環式モノオレフィンカルボン酸エステル(一般式(4)において、l=1、R2、R3、R4がそれぞれ水素原子、R5がメチル基のもの)の製造撹拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた500ミリリットルのセパラブルフラスコにアクリル酸メチル86.1g(1モル)とハイドロキノンモノメチルエーテル0.44g(2000ppm)を仕込み、フラスコ内を窒素で置換し、190℃に加熱攪拌した。次いでフラスコ内の温度を185〜190℃に保ちながらジシクロペンタジエン132g(1モル)を3時間かけて滴下し、さらに30分間加熱攪拌を続けた。反応終了後、この反応混合物を減圧蒸留し、118〜124℃/2mmHgの留分60.2gを得た。これを、1H−NMR、IR及び元素分析により同定し、脂環式モノオレフィンカルボン酸エステル(一般式(4)においてnが1、R2、R3、R4がそれぞれ水素原子、R5がメチル基、COORがエンド体/エキソ体=51/49)である事を確認した。【0028】(ii)脂環式モノオレフィンアルコールの(一般式(2)において、l=1、R2、R3、R4がそれぞれ水素原子のもの)の製造攪拌機、温度計、冷却管を備えた1リットルの3つ口丸底フラスコに窒素気流下でジエチルエーテル250mlを加え、水素化アルミニウムリチウムを13.1g(0.344モル)を懸濁させた後に、0℃まで冷却し、上記(i)で得られた脂環式モノオレフィンカルボン酸エステル50g(0.229モル)のジエチルエーテル溶液125mlを60分かけて滴下した。次いで、混合液を0℃に保ちながら、3時間攪拌した。反応終了後、水15ml、4モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液15ml、水45mlを加えた後に、ジエチルエーテル500mlで分液抽出を行い、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、得られた有機層を減圧除去し、41gの無色透明の液体を得た。これを1H−NMR、IR、元素分析及び水酸基価測定により同定し、目的の脂環式モノオレフィンアルコール(一般式(2)においてl=1、R2、R3、R4がそれぞれ水素原子であり、エンド/エキソ=67/33)であることを確認した。【0029】実施例1脂環式ジオール(一般式(1)において、l=1、m=1、R1がエチレン基、R2、R3、R4がそれぞれ水素原子のもの)の製造攪拌機、温度計、冷却管を備えた1リットルの3つ口丸底フラスコに製造例(ii)で得られた脂環式モノオレフィンアルコール20g(0.105モル)とエチレングリコール200g(3.22モル)を仕込んだ後に、フラスコ内の温度を30℃以下に保ちながら硫酸を0.515g(5.26ミリモル)を加えた。次いで、85℃まで加熱攪拌し、フラスコ内の温度を80〜85℃に保ちながら、5時間反応した。反応終了後、1モル/リットル水酸化ナトリウム溶液10.5mlで中和した後に、酢酸エチル900mlで分液抽出を行い、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、硫酸マグネシウムを濾別し、得られた有機層を減圧除去し、19.1gの淡黄色透明の粘性液体を得た。又、得られた液体の収率は71.9%であり、沸点は155〜160℃/0.1mmHgであった。又、これを1H−NMR、IR、元素分析及び水酸基価測定により同定し、脂環式ジオール(一般式(1)においてl=1、m=1、R1がエチレン基であり、R2、R3、R4がそれぞれ水素原子のもの)の異性体混合物であることを確認した。以下に得られた脂環式ジオールのNMRスペクトルデータ、IRスペクトルデータ、元素分析値及び水酸基価を示す。【0030】1H−NMR(CDCl3):3.77−3.22(7H、ヒドロキシメチル基のメチレンプロトン、ヒドロキシエトキシ基のメチレンプロトン及びヒドロキシエトキシ基と結合している炭素のメチンプロトン)、2.56−0.38(15H、上記以外の脂環骨格内のプロトン)(ppm)【0031】IR(NaCl):3388、2944、2893、1462、1348、1107、1049(cm−1)【0032】元素分析EA(C15H24O3)計算値:C,71.39、H,9.59実測値:C,70.92、H,9.75【0033】水酸基価計算値:444.7mgKOH/g実測値:445.3mgKOH/g 一般式(2):(式中、lは0又は1を示し、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される脂環式モノオレフィンアルコールのオレフィン部に一般式(3):(式中、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1を示す。)で表される化合物を反応させる、一般式(1):(式中、lは0又は1を示し、mは1を示し、R1は炭素数2〜6のアルキレン基を示し、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表わされる脂環式ジオールの製造方法。