タイトル: | 特許公報(B2)_溶液中のヒトヘモグロビンの安定化方法および安定化溶液 |
出願番号: | 1999058270 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/72,G01N 33/48,G01N 33/50,G01N 33/53,G01N 33/531 |
土居 洋介 榎本 昌泰 JP 4261665 特許公報(B2) 20090220 1999058270 19990305 溶液中のヒトヘモグロビンの安定化方法および安定化溶液 アルフレッサファーマ株式会社 000231394 南條 博道 100104673 土居 洋介 榎本 昌泰 20090430 G01N 33/72 20060101AFI20090409BHJP G01N 33/48 20060101ALI20090409BHJP G01N 33/50 20060101ALI20090409BHJP G01N 33/53 20060101ALI20090409BHJP G01N 33/531 20060101ALI20090409BHJP JPG01N33/72 AG01N33/48 GG01N33/50 NG01N33/53 KG01N33/531 B G01N 33/72 G01N 33/48 G01N 33/50 G01N 33/53 G01N 33/531 特開平06−281654(JP,A) 特開平08−003062(JP,A) 特表昭61−501510(JP,A) 国際公開第99/006829(WO,A1) 10 2000258420 20000922 9 20060131 竹中 靖典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、溶液中におけるヒトヘモグロビンの安定化方法およびヒトヘモグロビン安定化溶液に関する。本発明の方法を用いることにより、被検試料あるいはヒトヘモグロビン標準溶液等の溶液中でのヒトヘモグロビンの変性・分解が抑制され、ヒトヘモグロビン濃度をより正確に測定することができる。【0002】【従来の技術】近年、大腸癌などの下部消化器の疾患を検査する方法として、消化器官からの出血に起因する便中の便潜血成分、特にヒトヘモグロビンの検出が広く行われている。このようなヒトヘモグロビンの検出方法としては、食品摂取や薬剤投与の制限を必要としない免疫学的検出法が普及し、手軽な検査法として定着している。【0003】上記免疫学的検出法としては、例えば、寒天平板内で抗ヒトヘモグロビン抗体と被検試料中のヒトヘモグロビンとの沈降線を利用する一次元免疫拡散法、抗ヒトヘモグロビン抗体を感作した動物血球を用いる逆受身血球凝集法、抗ヒトヘモグロビン抗体を感作したラテックス粒子を用いるラテックス凝集法、酵素や放射性元素で標識した抗ヒトヘモグロビン抗体を用いる酵素免疫法や放射性免疫法、抗ヒトヘモグロビン抗体を感作した金コロイド粒子を用いる金コロイド凝集法等があげられる。【0004】上記検出法においては、被検物質であるヒトヘモグロビンは通常、溶液状態で検査に供される。例えば、便潜血検査では、便を生理食塩水や緩衝液中に溶解し、その溶液をヒトヘモグロビン測定用の被検試料として用いている。【0005】しかし、被検液中のヒトヘモグロビンは、温度上昇および時間経過に伴い、変性・分解を生じることが知られている。ヒトヘモグロビンの変性・分解は抗原決定基の失活につながり、従来からの免疫学的検出方法では検出感度が著しく低下する。特にヒトヘモグロビンが低濃度である場合には、変性・分解により検出感度以下となり、診断的判断を誤ることになる。同様に、ヒトヘモグロビンの変性が、検査性能の確認や定量を行うために利用する陽性コントロ−ル液やヒトヘモグロビン標準溶液中で生じ、正確な測定の障害となっている。【0006】ところで、便潜血検査の実情は、被験者自身が自宅などで採便し、これを便溶解液に溶かし、郵送又は被験者が病院へ持参するため、検査機関における検査までに溶液状態で数日間要することが多い。また、検査機関で採便する場合においても、他項目の検査も実施しているため、検査までに多くの時間を要する場合もある。このような検査の状況下では、前述のようにヒトヘモグロビンの変性・分解が生じ好ましくない。【0007】このようなヒトヘモグロビンの変性・分解を防止する目的で、便潜血検出用の便溶解液に、牛血清アルブミン(BSA)やチメロサ−ル、アジ゛化ナトリウム等の一般的抗菌剤を添加する方法が知られている。【0008】このほかにも、動物血清を添加する方法(特開平4-145366号公報)、糖類を添加する方法(特開昭63-243756号公報)、アジ゛化ナトリウム、アルブミンおよび乳酸を添加する方法(特開平6-281654号公報)、溶菌酵素を添加する方法(特開平5-69466号公報)、プロテア−ゼ阻害物質を添加する方法(特開平3-279859号公報)、pHをコントロ−ルする方法(特開平5-281226号公報)、鉄プロトポルフィリンを添加する方法(特開平5-281227号公報)、ヘモグロビンに特定の含窒素化合物の添加でヘム部からの鉄の遊離を防止し、ヘモグロビンの分解を抑制する方法(特開昭60-35270号公報)、非ペニシリン系抗生物質を添加する方法(特開平7-72154号公報)、キレ−ト試薬を添加する方法(特開平5-99923号公報並びに特開平2-221859号公報)、水溶性遷移金属錯体を添加する方法(特開平7-229902号公報)、鉄プロトポルフィリンを添加する方法(特開平5-281277号公報)、フッ化ナトリウムを添加する方法(特開平7-191026号公報)、動物ヘモグロビンを添加する方法(特開平2-296149号公報)、ヘモグロビン以外の鉄タンパクとフェリシアンイオンとを添加する方法(特開平8-262020号公報)、家兎アルブミン、グリシン、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩のいずれかを添加する方法(特開平9-061431号公報)、正常なヒト便中に含まれ、血液成分の抗原性を低下させる活性を持ち、ポアサイズ5μmを持つメンブレンフィルタ−で濾過した場合にろ液に含まれる成分に対する阻害剤を添加する方法(特開平9-119931号公報)、アジ化ナトリウムとアラビアゴムおよび、またはトラガントゴムと、さらにタンパク質を添加する方法(特開平9-224942号公報)、ハプトグロビンを添加する方法(特開平10-132824号公報)が知られている。【0009】しかし、これらの公知のヒトヘモグロビン安定化技術では、便を含む被検液中のヒトヘモグロビンの変性・分解を十分に抑制できるとは言えず、更なる安定化のための新たな技術が切望されている。【0010】更に、便を含まないヒトヘモグロビン標準溶液等として利用する目的で、ヒトヘモグロビン標品、あるいは赤血球より調製したヒトヘモグロビンを、上記公知技術の溶液に溶解しても、ヒトヘモグロビンは本質的に非常に不安定な物質であり、変性を生じ易い。【0011】また、ヘモグロビン溶液中に安定化剤として添加される物質は、特に便潜血検査では、便を懸濁保存する便溶解液が、採便容器中で長期間室温で流通する可能性が高いため、それ自身物質的に安定で均質なものが望ましい。【0012】このように、種々の方法が提案されているものの、溶液中でのヒトヘモグロビンについて、便を含む場合および含まない場合いずれの場合にも、より効果的な安定化方法の開発が望まれている。【0013】【発明が解決しようとする課題】このような実情に鑑み、本発明者らはヒトヘモグロビンの溶液中での変性・分解を抑制する改良された安定化法を見い出すべく鋭意研究した。すなわち、本発明の目的は、新規なヒトヘモグロビンの安定化方法を提供することである。さらに具体的には、便を含む被検試料中のヒトヘモグロビンの安定性を増すことによって、より正確なヘモグロビンの測定値を得ることを目的とする。また、便を溶解し、被検試料とする場合に、便の溶液中に含まれるヒトヘモグロビンを安定化するための便溶解液を提供することを目的とする。本発明は、さらにヒトヘモグロビンを安定化した優れたヒトヘモグロビン標準溶液等を提供することを目的とする。【0014】【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究した結果、ヒトヘモグロビン含有溶液中に、亜硫酸又はその塩、二亜硫酸又はその塩、ヨウ素イオン、ピルビン酸又はその塩、オキサル酢酸又はその塩から選ばれる1種または2種以上の物質を共存させることにより、ヒトヘモグロビンを安定化出来ることを見い出し、本発明を完成するに至った。【0015】すなわち、本発明は、ヒトヘモグロビン含有溶液中において、亜硫酸又はその塩、二亜硫酸又はその塩、ヨウ素イオン、ピルビン酸又はその塩、オキサル酢酸又はその塩から選ばれる1種または2種以上の物質とヒトヘモグロビンとを共存させることを特徴とする、ヒトヘモグロビンの安定化方法に関する。【0016】好ましい実施態様では、上記物質に加えて、さらに、緩衝剤、アルブミン及びアジ化ナトリウムを共存させる。また、好ましい実施態様では、上記物質にホウ酸またはその塩を共存させるか、ホウ酸またはその塩と、緩衝剤、アルブミン及びアジ化ナトリウムを共存させる。より好ましい実施態様では、ヒトヘモグロビン含有溶液のpHが5.5〜8.0である。【0017】また、本発明は、亜硫酸又はその塩、二亜硫酸又はその塩、ヨウ素イオン(又はその塩)、ピルビン酸又はその塩、オキサル酢酸又はその塩から選ばれる1種または2種以上の物質を含有することを特徴とする、ヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液に関する。【0018】好ましい実施態様では、上記物質に加えて、さらに、緩衝剤、アルブミン及びアジ化ナトリウムを共存させる。また、好ましい実施態様では、上記物質にホウ酸またはその塩を共存させるか、ホウ酸またはその塩と、緩衝剤、アルブミン及びアジ化ナトリウムを共存させる。より好ましい実施態様では、ヒトヘモグロビン含有溶液のpHが5.5〜8.0である。【0019】さらに好ましい実施態様では、ヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液が、便潜血検査における便溶解液である。【0020】また、本発明は、上記ヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液を含有する、ヒトヘモグロビン測定用採便容器に関する。【0021】本発明によれば、溶液中でのヒトヘモグロビン安定化を図ることが出来る。それにより、便を含む被検試料中のヒトヘモグロビンの安定性を増すことによって、より正確な測定値を得ることが出来る。又、ヒトヘモグロビンの定量や測定精度の確保に必要なヒトヘモグロビン標準溶液およびヒトヘモグロビンコントロ−ル液を長期間に使用可能な安定なものとして提供することが出来る。【0022】【発明の実施の形態】本発明で安定化するヒトヘモグロビンとしては、便中に含まれるヒトヘモグロビン、赤血球より調製したヒトヘモグロビン、ヒトヘモグロビン標品およびコントロ−ルとして市販されているヒトヘモグロビンの何れもが対象となり得る。【0023】溶液中でヒトヘモグロビンを安定化させるのに用いる亜硫酸又はその塩、二亜硫酸又はその塩、ヨウ素イオン、ピルビン酸又はその塩、オキサル酢酸又はその塩は市販品を用いることができる。【0024】亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。二亜硫酸塩としては、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム等が挙げられる。【0025】ヨウ素イオンというときは、水溶液中でヨウ素イオンを解離することができる物質を含む。従って、ヨウ素イオンとしては、通常、溶液中でヨウ素イオンを生成する塩が使用できる。例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。【0026】また、ピルビン酸塩としては、ピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸カリウム等が挙げられる。オキサル酢酸塩としては、オキサル酢酸ナトリウム、オキサル酢酸カリウム等が挙げられる。【0027】ヒトヘモグロビンを安定化させるために用いる亜硫酸又はその塩の濃度は、亜硫酸ナトリウムとして、好ましくは0.0001〜0.5%(重量%、以下同じ)、より好ましくは0.001〜0.1%である。二亜硫酸又はその塩の濃度は、二亜硫酸ナトリウムとして好ましくは0.0001〜0.5%、より好ましくは0.001〜0.1%である。【0028】ヨウ素イオンの濃度は、ヨウ化ナトリウムの濃度として、好ましくは0.0002〜0.5%、より好ましくは0.002〜0.2%である。ピルビン酸又はその塩の濃度は、ピルビン酸ナトリウムとして好ましくは0.0002〜2.0%、より好ましくは0.01〜0.5%である。オキサル酢酸又はその塩の濃度は、オキサル酢酸として、好ましくは0.0002〜0.5%、より好ましくは0.005〜0.1%である。【0029】更に、ヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液のpHは、好ましくはpH4.5〜9.0、より好ましくは5.5〜8.0の範囲である。pHが4.5より低い場合、あるいは9.0より高い場合は、ヒトヘモグロビンの安定性を損なう虞がある。【0030】pHの維持のためには、適当な緩衝剤、例えば、リン酸緩衝液、グッド緩衝液などが利用できる。グッド緩衝液としては、グリシン、グリシルグリシン、トリス−塩酸、MES(2-(N-モノホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(N-2-ヒドロキシエチル-ピペラジン-N'-エタンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸))、DIPSO(3-(N'N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン)酸、Tricine(トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)等が好適に用いられる。【0031】また、ヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液中には、アジ化ナトリウム、アルブミン、アルブミンを含む血清、あるいはホウ酸が含有されていることが望ましい。アジ化ナトリウムの濃度は、好ましくは0.01-2.0%、より好ましくは0.05-0.5%である。アルブミンとしては、牛、馬、豚、羊、兎、ヒト、ラット等のアルブミンが使用でき、又、アルブミンを含有する血清の添加も可能である。アルブミンの濃度は、好ましくは、0.0005-2.0%、より好ましくは0.01-0.5%である。ホウ酸の濃度としては、好ましくは0.02-2.0%、より好ましくは0.1-0.5%である。【0032】本発明のヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液中には、上記の成分の他に、塩化ナトリウム等の無機塩類、糖類、アミノ酸類、キレ−ト剤等が含有されてもよい。塩化ナトリウムは生理的食塩濃度付近が好ましい。さらに、ヒトヘモグロビンの検出を抗原抗体反応で行う場合には、その反応をコントロ−ルする目的で、ポリエチレングリコ−ルやデキストラン等の物質が含有されてもよい。【0033】なお、ヒトヘモグロビン含有物というときは、ヒトヘモグロビン自体を含むものとする。【0034】本発明のヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液は、便潜血検査において、好適に用いられる。特に、検査までに数日を有する場合に、便溶解液として用いることにより、ヒトヘモグロビンを安定に保持できるので、臨床検査における貢献が大である。【0035】また、本発明のヒトヘモグロビン測定用採便容器は、上記本発明のヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液を含む。容器は、好適には、ガラス製、プラスチック製である。採便容器には、採便器具(例えば突き刺しスティック状のもの)等を付属することができ、採便者が、一定量の糞便を溶液に溶解できるようにされていてもよい。【0036】ヒトヘモグロビンの測定方法としては、特に限定されないが、抗ヒトヘモグロビン抗体を用いた免疫学的検出方法が好ましい。免疫学的検出方法としては、例えば、金コロイド凝集比色法がある。金コロイド凝集比色法は、金コロイド標識抗ヒトヘモグロビン抗体がヒトヘモグロビンを介して凝集する際に生じる色差(色調変化)を光学的に測定して、ヒトヘモグロビンを検出する方法で、この方法を原理とした免疫便潜血検査用金コロイド試薬には「ヘモプレ−トオ−トII」(株式会社アズウェル製)等がある。【0037】【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0038】(実施例1)(1)ヒトヘモグロビンの調製ヒト赤血球を蒸留水で希釈して赤血球を破壊し、ヒトヘモグロビン濃度1mg/mlの溶液となるように生理食塩水で希釈し、−40℃で凍結保存した。【0039】(2)測定用試料作製最終濃度として、30mM MES(pH6.3)、0.9%塩化ナトリウム、0.1%牛血清アルブミン、0.1%アジ化ナトリウム、表1の濃度の試験物質、400ng/mlの上記(1)で調製したヒトヘモグロビン、及び、1mg/mlの便濃度を有するように調製した試料を、試験用試料とした。対照試料は、表1の試験物質無添加である。これらを測定用試料とした。【0040】(3)ヒトヘモグロビンの測定ヒトヘモグロビンの測定は、金コロイド凝集比色法で行った。【0041】EIA用マイクロプレ−トに測定用試料25μlを分注し、検体希釈液(ヘモプレ−トオ−トII 検体希釈液;株式会社アズウェル製)50μl、金コロイド試薬液「ヘモプレ−トオ−トII金コロイド試薬」(株式会社アズウェル製)100μlを添加後、15秒間マイクロミキサ−(三光純薬(株))で撹拌し、撹拌開始後約1分後と7分後の吸光度(主波長540nm、副波長700nm)をマイクロプレ−トリ−ダ−(和光純薬(株))を用いて測定し、その吸光度差を求めた。本測定では、ヒトヘモグロビン濃度の増加に依存して、吸光度差は増加する。【0042】測定用試料調製当日と、37℃および25℃で数日間保存した後に、各測定用試料について吸光度差を測定した。37℃および25℃保存後の吸光度差と測定用試料調製当日の吸光度差との比を、ヒトヘモグロビン残存率(%)とした。その結果を表1に示す。【0043】【表1】【0044】表1より、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、ピルビン酸ナトリウム、オキサル酢酸、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムを含有する溶液中のヒトヘモグロビンの残存率は、37℃で保存した場合、及び25℃で保存した場合のいずれの場合も、これらの試験物質を含まない対照試料でのヒトヘモグロビン残存率に比較して、残存率が高かった。特に、25℃保存では、約2倍の保存安定性がある(60%まで低下する期間が対照で約2日に対し、各添加物質では4〜5日になる)と判断でき、ヒトヘモグロビンの安定化効果が認められた。【0045】(実施例2)(1)ヒトヘモグロビンの調製実施例1と同様に調製し、保存した。【0046】(2)測定用試料作製最終濃度として、30mM MES(pH6.3)、0.9%塩化ナトリウム、0.2%牛血清アルブミン、0.2%アジ化ナトリウムと1.8%ポリエチレングリコール20,000とを含み、150ng/mlの上記(1)で調製したヒトヘモグロビン、及び、1mg/mlの便濃度を有するように調製した試料を対照試料とした。さらに、対照試料に、最終濃度として0.2%ホウ酸を加えた試料を比較試料とした。そして、この比較試料に、最終濃度が表2の濃度となるように試験物質を添加した試料を試験用試料とした。これらをまとめて測定用試料とした。【0047】(3)ヒトヘモグロビンの測定実施例1と同様に測定を行った。測定用試料調製当日と、37℃および25℃で数日間保存した後に、各測定用試料について吸光度差を測定した。37℃および25℃保存後の吸光度差と測定用試料調製当日の吸光度差との比を、ヒトヘモグロビン残存率(%)とした。結果を表2に示す。【0048】【表2】【0049】比較試料は、ホウ酸を含む点で対照試料とは異なり、ホウ酸の添加だけでも良好な結果を示したが、さらに試験試料を添加した場合は、よりヒトヘモグロビンの安定性が増加した。すなわち、表2より、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、ピルビン酸ナトリウム、オキサル酢酸、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムを含有する溶液中のヒトヘモグロビンの残存率は、25℃で保存した場合、これらの試験物質を含まない対照試料では、一日も持たずに85%以下になるのに対し、はるかに保存性が高く(85%まで低下する期間が4〜5日になる)、また、ホウ酸を含む比較試料でのヒトヘモグロビン残存率と比較しても、約2倍の保存安定性がある(85%まで低下する期間が比較試料で2日であるのに対し、各添加物質では4〜5日になる)と判断でき、ヒトヘモグロビンの顕著な安定化効果が認められた。【0050】【発明の効果】本発明の溶液中におけるヒトヘモグロビンの安定化法によれば、亜硫酸又はその塩、二亜硫酸又はその塩、ヨウ素イオン(又はその塩)、ピルビン酸又はその塩、オキサル酢酸又はその塩から選ばれる1種または2種以上の物質を共存させる事により、ヒトヘモグロビンの変性・分解を抑制することができる。又、緩衝剤、アルブミン、アジ化ナトリウムに加え、ホウ酸を添加した処方との組み合わせにより、更にヒトヘモグロビンの変性・分解を抑制することができる。本発明により、便潜血検査において被検試料液中のヒトヘモグロビンの保存期間を約2倍に延長することが可能となり、検査機関で検出されるまでヘモグロビンをより安定な状態で保存できる。さらに、ヒトヘモグロビンを含む標準溶液等の保存安定性を改善することが出来、測定値の精度管理をより正確に行うことができる。 免疫学的検出方法に用いるヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液中において、ピルビン酸又はその塩、オキサロ酢酸又はその塩から選ばれる1種または2種以上の物質とヒトヘモグロビンとを共存させることを特徴とする、ヒトヘモグロビンの変性・分解を抑制する方法。 さらに、緩衝剤、アルブミン及びアジ化ナトリウムを共存させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 さらに、ホウ酸またはその塩を共存させることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 前記免疫学的検出方法に用いるヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液のpHが5.5〜8.0であることを特徴とする請求項1ないし3いずれかの項に記載の方法。 免疫学的検出方法に用いるヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液であって、ピルビン酸又はその塩、オキサロ酢酸又はその塩から選ばれる1種または2種以上の物質を含有することを特徴とする溶液。 さらに、緩衝剤とアルブミンとアジ化ナトリウムとを含有することを特徴とする、請求項5に記載のヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液。 さらに、ホウ酸またはその塩を含有することを特徴とする、請求項5または6に記載のヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液。 溶液のpHが5.5〜8.0であることを特徴とする、請求項5ないし7いずれかの項に記載のヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液。 ヒトヘモグロビン含有物を溶解するための溶液が、便潜血検査における便溶解液である、請求項5ないし8いずれかの項に記載の溶液。 請求項5ないし9いずれかの項に記載の溶液を含有する、ヒトヘモグロビン測定用採便容器。