タイトル: | 特許公報(B2)_新規なエステル分解酵素 |
出願番号: | 1999053823 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12N 9/20,C12R 1/01 |
山田 靖宙 仁平 卓也 JP 4198261 特許公報(B2) 20081010 1999053823 19990302 新規なエステル分解酵素 長瀬産業株式会社 000214272 南條 博道 100104673 山田 靖宙 仁平 卓也 20081217 C12N 15/09 20060101AFI20081127BHJP C12N 1/15 20060101ALI20081127BHJP C12N 1/19 20060101ALI20081127BHJP C12N 1/21 20060101ALI20081127BHJP C12N 5/10 20060101ALI20081127BHJP C12N 9/20 20060101ALI20081127BHJP C12R 1/01 20060101ALN20081127BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12N9/20C12N15/00 AC12R1:01 C12N 9/20 C12N 15/55 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq CA/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Mol. Microbiol.,1995年,Vol.15, No.5,p.803-818 Biochim. Biophys. Acta,1994年,Vol.1219,p.601-606 Biochem. J.,1989年,Vol.263,p.913-919 Biotechnol. Lett.,1998年,Vol.20, No.11,p.1027-1029 6 FERM P-17224 2000245472 20000912 12 20051207 吉田 知美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なエステル分解酵素、その遺伝子並びにその生産方法に関する。【0002】【従来の技術】エステル分解酵素は、種々の微生物に広く分布する酵素であり、エステル結合を分解する。中でも、リパーゼはトリグリセリドをモノ−及びジ−グリセリドと脂肪酸とに分解するだけでなく、非水溶媒系でエステル交換反応、エステル化反応等を触媒する。非水溶媒系におけるこのような反応は有機合成には非常に有用であることから、エステル分解酵素(特にリパーゼ)が種々の工業生産プロセスに用いられるようになってきており(Andreeら、J. Appl. Biochem. 2: 218-219 (1980)及びBlokingら、Trends Biotechnol. 9: 360-363 (1991))、パーム油のエステル交換反応によるカカオ代用脂の製造に利用されている。【0003】他方で、エステル分解酵素(リパーゼ)の基質特異性を利用して、油脂あるいは種々の薬剤を改変し、新たな付加価値を持たせる研究も進展しつつある。例えば、脂質は人体内では、2−モノグリセリドの状態で吸収されることから、トリグリセリドの2位に一定の機能を有する置換基を導入できれば、パーム油等の油脂を機能性食品に変換することができる。【0004】しかし、一般に、エステル分解酵素(リパーゼ)はエステル結合近傍の官能基により著しく影響を受け、官能基が嵩高い場合には、加水分解されにくいという問題がある。【0005】そこで、近傍に嵩高い官能基を有するエステルに対しても特異性の高いエステル分解酵素(リパーゼ)が求められている。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、近傍に嵩高い官能基を有するエステルに対しても特異性の高いエステル分解(リパーゼ)活性を有する酵素を提供することを目的とし、その酵素の遺伝子を単離して、大量生産可能とすることを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】この目的は、以下の性質を有する酵素を提供することにより達成される。すなわち、本発明は、オレイルベンゾエート及びp−ニトロフェニルベンゾエートを加水分解する酵素であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する、エステル分解酵素に関する。この配列を有する酵素と同一の酵素はホモロジー検索では見つからず、新規である。【0008】また、本発明は、配列番号1に記載のアミノ配列において、1又は2以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列を有する酵素よりも高いオレイルベンゾエート加水分解活性及びp−ニトロフェニルベンゾエート加水分解活性を有する、エステル分解酵素に関する。【0009】さらに、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するエステル分解酵素をコードする遺伝子に関する。【0010】好ましい実施態様では、前記エステル分解酵素をコードする遺伝子が配列番号1に記載のDNA配列を有している。【0011】また、本発明は配列番号1の配列において、1又は2以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有し、かつ、配列番号1の酵素よりも高いオレイルベンゾエート加水分解活性及びp−ニトロフェニルベンゾエート加水分解活性を有するエステル分解酵素をコードする遺伝子にも関する。【0012】さらに、本発明は、上記エステル分解酵素をコードする遺伝子を有する、エステル分解酵素の発現ベクター、そのベクターで形質転換された細胞、及びその形質転換細胞を培養する工程を含む、オレイルベンゾエート及びp−ニトロフェニルベンゾエートを加水分解するエステル分解酵素の製造方法に関する。【0013】本発明の、特定のアミノ酸配列あるいはその類似配列を有する酵素は、エステル結合近傍で嵩高い官能基を有する化合物の合成、新機能付与等の用途に用いられる。【0014】【発明の実施の形態】本発明のエステル分解酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列及びその類似配列を有しているが、このような酵素は、実施例で詳しく記載するが、まず、嵩高い基質であるオレイルベンゾエート(以下、OBという。)を唯一の炭素源として生育する微生物を選択し、ついで、p−ニトロフェニルベンゾエート(以下、pNPBという)を分解し得る微生物をスクリーニングし、得られた微生物が生産する酵素を精製してアミノ酸配列を決定するか、あるいは、得られた微生物から、この酵素をコードする遺伝子を選択し、アミノ酸配列を決定することにより得られる。遺伝子組換え技術が一般的な技術となった現在では、後者の方法が、通常用いられる。【0015】OB及びpNPBのエステル分解酵素は、入手可能な寄託機関に保存されている菌株あるいは土壌サンプルから、スクリーニングすることにより得られる。例えば、OBを唯一の炭素源とするスクリーニング培地で集積培養し、生育した株をさらに同じ培地で培養して生育を確認する。培養後、OBをβ−サイクロデキストリンで乳化させた寒天培地に塗布し、クリアゾーン形成能を有する株を選択する。ついで、pNPBの分解活性を測定して、目的の酵素を有する微生物が選択できる。【0016】目的の酵素の遺伝子は、例えば、ショットガンクローニングで選択できる。選択した微生物を培養し、ゲノムを常法により抽出し、適切な制限酵素で切断し、適切なプラスミド、例えば、pBR322、pUC110、pUC18、pUC19等に組み込だ発現ベクターを適切な宿主(例えば、E.coli、酵母、バシラス等)に導入(例えば、形質転換、エレクトロポレーション等)し、選択マーカー(例えば、アンピシリン、カナマイシン等)を含み、かつ、OBを唯一の炭素源とする寒天培地でのクリアゾーン形成能をスクリーニングすることにより、OB分解活性を有する形質転換株が得られる。【0017】得られた形質転換株に所望の酵素活性があることを確認し、プラスミドを抽出して、組み込まれた遺伝子を回収し、塩基配列を決定することにより、アミノ酸配列が決定される。この遺伝子を有するベクター(プラスミド)を培養することにより、目的の酵素が大量に生産される。【0018】なお、いったんアミノ酸配列もしくは塩基配列が同定されたら、その塩基配列に1又は2以上の塩基の置換、欠失、及び付加により、容易に蛋白質を改変し、改変前の酵素と比較して活性の高い酵素を得ることができるが、これも本発明の範囲内にある。【0019】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。【0020】目的の酵素を生産する微生物としては、Acinetobacter属に属する微生物が挙げられ、例えば、本発明者等が単離した、Acinetobacter calcoaceticus subsp. antiratus KM109株(工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、寄託番号がFERM P−17224である:以下、単にKM109株という。)が挙げられる。以下、まず、目的の酵素を生産する株をスクリーニングする方法について記載し、ついで、この株からの遺伝子の単離と同定について記載する。【0021】(OBとpNPBとを加水分解する酵素を生産する微生物のスクリーニング)A:基質の合成本発明に用いた酵素の基質OBとpNPBは、以下の方法で合成した。【0022】(OBの合成)オレイルアルコール43.5g(Mw.268.48、0.162mol)、トリエチルアミン16.4g(Mw. 101.19、0.162mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.59g(Mw.122.17、0.0048mol)および溶媒としてヘキサン300mlに氷点下、よく攪拌しながら塩化ベンゾイル25.0g(Mw.140.57、0.178mol)を滴下した。滴下終了から2時間経過した後、徐々に室温に戻し、一晩反応させた。反応終了後、シリカゲル300gを用いたクロマトグラフィーにより、ヘキサン8Lで溶出して精製した。生成物の純度はTLC上で展開後(ヘキサン:酢酸エチル=9.1)、UV吸収(San Gabriel、CA91778 U.S.A.、UVG-54)、KMnO4発色で確認し、生成物は1H-NMR(HITACHI R-24B)、IR(HORIBA FT-210-IR)で、その構造を確認した。【0023】(pNPBの合成)p−ニトロフェノール4.7g(Mw.139.11、0.0338mol)、ピリジン5.0ml(0.0618mol)、4‐ジメチルアミノピリジン0.21g(Mw.140.57、0.00149 mol)および溶媒としてヘキサン150 ml、ベンゼン50 mlに氷点下、よく攪拌しながら塩化ベンゾイル5.0 g(Mw.140.57、0.0356mol)を滴下した。滴下終了から2時間経過した後、徐々に室温に戻し、一晩反応させた。反応終了後、TLC 上で展開後(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)、UV吸収で生成物の確認し、生成物は1H-NMR(HITACHI R-24B)、IR(HORIBA FT-210-IR)で、その構造を確認した。【0024】B.pNPB加水分解活性の測定pNPBの加水分解活性の測定は、以下のように行った。50mM リン酸カリウム(KPB、pH6.5)、2.5mM pNPB、5%アセトニトリル、酵素を含む3mlの反応液を、予め、37℃に加温しておき、これにドライアセトニトリルに溶解したpNPB(50mM)150μ1を加えることによって反応を開始した。エタノールを3ml加えて反応を停止し、生成したp−ニトロフェノール量を、400nmにおける吸光度(ε400nm=11、670)から求めた。1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する酵素量を1ユニットと定義した。【0025】C.スクリーニング大阪府下より得られた土壌・水サンプルを、0.5%(NH4)2SO4、0.1%KH2PO4、0.05% MgSO4、0.5%NaCl、及び1.0%OBを含む3mlの液体培地(pH7.2)に植菌し、30℃、48時間集積培養を行った。培地が白濁したものは、その1%を2度、同じ培地に植え継いだ後、上記培地に、0.2% β‐サイクロデキストリン(日本食品加工株式会社)を加え、よく攪拌してOBを乳化させ、1.5%の寒天を添加した固型培地で生育させ、30℃、7日間培養した。培養2日目での生育状態と、7日目でのOBを分解することによって生じるクリアゾーンの形成能を見た。【0026】明瞭なクリアゾーンを形成した菌株を選択し、500ml容坂口フラスコを用いてOB 0.5%を含むLB培地(50ml)で30℃、120s.p.m, 46時間培養し、遠心分離(5,500×g、10分、4℃)により、菌体と培養上清を得た。菌体は、1mM MgCl2を含むKPB(50mM、pH6.5)に懸濁後、30秒×2回超音波(海上電機(株)、4280型振動子)で破砕した。これを、再度遠心分離(12、000×g、20分、4℃)して破砕菌体を取り除き、細胞抽出液を得た。pNPBを基質として、この細胞抽出液と培養上清液の加水分解活性の測定を行った。【0027】このスクリーニングにおいて、pNPBに高い活性を示した株を選択し、さらに、pNPA、pNPBおよびOBを基質としてスクリーニングした。なお、pNPAは、p−ニトロフェニルアセテートであり、東京化成工業(株)から購入し、pNPBと準じた方法で、活性を測定した。【0028】この中から、KM109株を単離したが、この株が生産する酵素は、pNPB活性がpNPA活性よりも3倍以上も高く、嵩高い基質に対して作用すことができると考えられたからである。そこで、まず、この株を同定し、ついで、この株を用いてエステル分解酵素遺伝子を単離した。【0029】(KM109株の同定)KM109株の菌学的性質を以下に示す。【0030】A. 形 態(1)細胞の形 球桿菌(2)細胞の大きさ 0.9-1.6×1.5-2.5μm(3)運動性の有無 −(4)胞子の有無 −(5)グラム染色 −(6)抗酸性染色 −【0031】B.各培地における生育状態(1)標準寒天平板培養 薄茶色、光沢あり、スム−ズ、正円(2)標準寒天斜面培養 薄茶色、光沢あり、スムーズ(3)標準液体培養 上層部がやや濃く、液面に薄い被膜(4)標準ゼラチン穿刺培養 穿刺線に沿って弱い発育、液化は見られず(5)リトマスミルク 変化なし【0032】C.生理学的性質(1)硝酸塩の還元性 −(2)脱窒反応 −(3)メチルレッド試験 −(4)アセチルメチルカルビノールの生成 −(5)インドールの生成 −(6)硫化水素の生成 −(7)澱粉の加水分解 −(8)クエン酸の利用 +(9)無機窒素源の利用 硝酸塩: + アンモニウム塩:+(10)色素の生成 −(11)ウレアーゼ活性 −(12)オキシターゼ活性 −(13)カタラーゼ活性 +(14)生育の範囲pH 4.0 −、 4.5 +、 7.0 +、9.5 +、 10.0 −温度 37℃ +、 41℃ +W、 45℃ −(15)酸素に対する態度 好気性(16)ジオキシアセトンの生成 −(17)馬尿酸の分解 +(18)アミノ酸の分解 リジン −、 アルギニン −、オルニチン −(19)フェニルアラニンの脱アミノ −(20)温度抵抗性(85℃、10分) −(21)塩化ナトリウムの耐性 2.0% +、 5.0% −、7.0% −、 10% −(22)サブロウ寒天培地の生育 +(23)0.001%リゾチーム培地の生育 +(24)チロシンの分解 −(25)クエン酸・アンモニウム寒天 −でのアルカリ産生(26)カゼインの分解性 −(27)ゼラチンの分解性 −(28)嫌気性培地における発育性 −(29)マッコンキ一培地生育性 +(30)レシチナ一ゼ反応 −(31)VP培地におけるアルカリ産生能 −(32)糖類の利用と生酸性L−アラビノース +D−キシロース +D−グルコース +D−マンノース +D−フラクトース −D−ガラクトース +麦芽糖 −しょ糖 −乳糖 +トレハロース −D−ソルビット −D−マンニット −イノシット −グリセリン −デンプン −メリビオース +サリシン −エタノール +(33)SS寒天での生育 −(34)KCN培地での生育 +(35)ONPC −(36)DNase −【0033】以上の菌学的性質から、単離した株はアシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus subsp. antiratus)と同定された。【0034】(本発明の酵素遺伝子の単離と塩基配列の決定)得られたKM109株をLB培地で培養し、Rao等の方法(Raoら、Method Enzymol. 153, 166-198(1987))に従ってゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAを制限酵素EcoRIで切断し、EcoRIで切断したベクターpUC19(宝酒造株式会社から購入)に連結後、E.coli DH5αを形質転換し、アンピシリン、X-gal、IPTGを含むLB培地上のカラーセレクションにより白色コロニー(形質転換体)を選択した。【0035】まず、得られた白色コロニーのトリブチリン(tributyrin)分解活性をスクリーニングした。上記で選択した白色コロニーをトリブチリン培地に移し、37℃で1〜2日培養後、4℃で約一週間保存した。このうち、クリアゾーンを形成したものを再びトリブチリン培地に移し、確実にクリアゾーンを形成する56コロニーを取得した。【0036】次に、基質としてpNPBを用い、pNPB分解活性を有する形質転換株をスクリーニングした。まず、上記56コロニーをLB+1%ノイゲン寒天培地に植菌し、37℃で一晩培養後、4℃で一日保存した。次に、1M KPBバッファー(pH7.5)150μl、及び50mM pNPB(アセトニトリル溶液)150μlをソフトアガー(0.7%アガー、3ml)に加え、よく攪拌した後、上記保存プレートに重層した。37℃で一日培養して、菌体周辺の培地が黄変し、クリアゾーンを形成した株をpNPB加水分解活性株として選択した。6コロニー(KE1、KE3、KE10、KE31、KE32、KE33)が選択された。【0037】これらのコロニーが保持するプラスミドを抽出し、制限酵素切断パターンで比較した結果、6コロニーのうち、KE1,KE10,KE32,KE33の4コロニーは同一の断片(1.2kbp)を持つことが判明し、KE32株由来のプラスミドをpKE32と命名した。KE3が保持するプラスミド(pKE3)上の断片(1.6kbp)は、pKE32上の挿入断片とほぼ重複するが、さらに約400bpのEcoRI断片を余分に持つていた。そこで、3種のKE3、KE31及びKE32のpNPB活性を確認した。【0038】(pNPB加水分解活性の確認)KE3、KE31、KE32及びコントロールとしてpUC19について、pNPB分解活性を吸光度測定によって確認した。まず、アンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地3mlに形質転換株を植菌し、37℃、16時間、120s.p.m.で培養した。この培養液3mlをアンピシリン50μg/mlとOB 5%とを含むLB液体培地250mlに、接種し、37℃、47時間、170s.p.m.で培養した。遠心により集菌し、菌体1g当たり10mlの50mM KPBバッファ−(pH6.5)に懸濁し、超音波破砕(30秒×4、4℃)によって酵素液を調製した。【0039】pNPB分解反応は、酵素液10μl、KPBバッファ−(pH6.5)465μlを加えた試験管に、50mM pNPB 25μlを添加し、37℃、10分間行った。反応を、エタノール500μlを加えて停止し、400nmでの吸光度測定結果から活性を算出した。KE3では7.68×10-1units/ml、KE31では2.45×10-2units/ml、KE32では1.24units/ml、pUC19では1.39×10-2units/mlであった。【0040】KE3のOB加水分解能を、液体クロマトグラフィーによって測定した。加水分解反応は、酵素液5mlに対しOB 100μlを添加し、50mlバイアル中で37℃、170s.p.m. 18時間行った。反応液1mlに酢酸エチル2mlを加えて反応を停止した。酢酸エチル層を抽出し、エバポレーション後アセトニトリル200μlに溶解し、このうち10μlをHPLCにかけた。オレイルアルコールにより検量線を作製し、生成したオレイルアルコールの量で活性を測定した。カラムは、CAPCELPAK C18SG120(資生堂)を用い、溶媒として95%アセトニトリル(0.5%TFA)を用いて、波長210nmで測定したところ、オレイルアルコールの保持時間は12分であった。HPLCの結果より酵素活性を算出したところ、KE3では、8.70 nmoles/h(18時間反応液1mlあたり)であった。【0041】クローンKE3、KE31、KE32の活性比較より、KE32が最大のpNPB分解活性を持つことが判明したが、pKE3上の断片がより広い領域をカバーしていると推定されたため、pKE3、pKE32両者の塩基配列を決定した。構造遺伝子の配列及び推定アミノ酸配列は、配列番号1に記載の通りである。【0042】このアミノ酸配列と同一の配列は、ホモロジー検索の結果、発見されず、この配列を有する酵素は新規であることが確認された。【0043】【発明の効果】本発明により、嵩高い基質を加水分解するのに有用な酵素、その構造遺伝子が」提供される。これにより、医薬品の中間原料に必要な光学活性な物質の製造等に有用であると考えられる酵素が大量に供給され得る。【0044】【配列表】 オレイルベンゾエート及びp−ニトロフェニルベンゾエートを加水分解する酵素であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるエステル分解酵素、あるいは、配列番号1に記載のアミノ配列において、1又は2以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有し、かつ、オレイルベンゾエート加水分解活性及びp−ニトロフェニルベンゾエート加水分解活性を有するエステル分解酵素。 請求項1に記載のエステル分解酵素をコードする遺伝子。 前記エステル分解酵素をコードする遺伝子が配列番号1に記載のDNA配列からなる、請求項2に記載の遺伝子。 請求項2または3に記載の遺伝子を有する、エステル分解酵素の発現ベクター。 請求項4に記載の発現ベクターを有する形質転換細胞。 請求項5に記載の形質転換細胞を培養する工程を含む、オレイルベンゾエート及びp−ニトロフェニルベンゾエートを加水分解するエステル分解酵素の製造方法。