生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_生体材料
出願番号:1999045779
年次:2010
IPC分類:A61L 27/00,A61K 9/52,A61K 38/00,A61K 47/34,C08G 63/06,C08L 67/04,C08L 89/00


特許情報キャッシュ

高岡 邦夫 斎藤 直人 岡田 隆雄 JP 4548623 特許公報(B2) 20100716 1999045779 19990224 生体材料 多木化学株式会社 000203656 高岡 邦夫 597112195 高岡 邦夫 斎藤 直人 岡田 隆雄 20100922 A61L 27/00 20060101AFI20100902BHJP A61K 9/52 20060101ALI20100902BHJP A61K 38/00 20060101ALI20100902BHJP A61K 47/34 20060101ALI20100902BHJP C08G 63/06 20060101ALI20100902BHJP C08L 67/04 20060101ALI20100902BHJP C08L 89/00 20060101ALI20100902BHJP JPA61L27/00 FA61K9/52A61K37/02A61K47/34C08G63/06C08L67/04C08L89/00 A61L 27/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平01−163135(JP,A) 特開平02−078629(JP,A) 特開平02−203861(JP,A) 特開平03−045265(JP,A) 国際公開第98/034596(WO,A1) 特表平07−507548(JP,A) Macromolecular Symposia,1997年,Vol.118,p625−630 Journal of Polymer Science. Part A. Polymer Chemistry,1998年,Vol.36,No.8,p1301−1307 6 2000237297 20000905 9 20050929 特許法第30条第1項適用 平成10年8月25日 社団法人日本整形外科学会発行の「日本整形外科学会雑誌 第72巻 第8号 S1595ページ」に発表 小森 潔 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は生体材料に関し、生体内分解性に優れた共重合体組成物を基剤として使用し、生体内に於いて一定の期間、生理活性を有するポリペプタイド等を連続的に溶出させるなどの徐放性及び分解性に優れた生体材料に関する。【0002】【従来の技術】生体中に微量に存在し作用するホルモンであるポリペプタイドが従来より知られているが、このようなポリペプタイドは、生体からの抽出のような微小量の単離ではなく、近年の培養技術の進歩により大量生産が可能となったことにより、生体への各種適用の場面で重要な位置を占めるようになっている。しかし、ポリペプタイドは生体内での安定性が低いことから、その効果を発現させるために投与量と投与回数が多くなり、副作用の発生と患者への肉体的、精神的負担が大きくなっている。このような背景から、所定期間に所定量の薬物を生体内部に放出する機能材料が望まれ幾多の研究がなされている。【0003】例えば、生体内に於いて分解性を有するポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリε-カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸を基本骨格とした脂肪族ポリエステル、あるいはこれらとp-ジオキサノン、トリメチレンカーボネートとの組み合わせによる共重合体等のポリマーが知られている。【0004】しかし、これらの疎水性ポリマーと、比較的親水性の高いポリペプタイドとの親和性は小さく、ポリマーマトリックス表面からポリペプタイドの初期溶出が大きいという問題がある。また、ポリペプタイドの溶出がポリマー中に浸透する水との間で律速となり、ポリマーマトリックスとは無関係にポリペプタイドが溶出していくことから、必要とされる放出時間とポリマーの生体内での分解時間とが比例せず、徐放性生体材料としては適さない。また、オリゴマー程度の低分子量ポリマーであっても、分解による消失が 1カ月を超えることから、周囲の組織に対する影響を生ずるため適用が難しいことも問題となっている。更に、脂肪族ポリエステルは、末端基がカルボキシル基となっているため、塩基性のポリペプタイドの場合には、この末端基とポリペプタイドとがイオン結合等によって配位し、ポリペプタイドが所定時間に放出しないという問題がある。【0005】このような疎水性ポリマーに代えて、親水性を有するコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブリン、ヒアルロン酸、アルギン酸等を使用する検討もされている。しかし、これらの材料は天然素材であるため、その組成、分子量、保水性等が一定せず、また精製処理の過程で、抗原性等を有する物質の除去が完全に行われず免疫学的問題があり、ポリマーマトリックスからのポリペプタイドの放出時間が短い等の問題もある。【0006】従って、前述のような問題を解決し、基剤中に不純物を含まず、また副作用がなく周囲の細胞に対する影響も少ない材料として、疎水性と親水性の両性質を有するポリマーであるポリ乳酸あるいは乳酸−グリコール酸共重合体とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニックとの共重合体が注目され各種の検討がされている。【0007】このような技術として、例えば特開昭58-191714号公報には、水中または動物体内の環境下に於いて、水を吸収しヒドロゲルを形成することができる最小平均分子量5,000のグラフトブロックポリマーを、製薬、獣医薬組成物として使用する方法が開示されている。この技術では、分子量6,000あるいは20,000のポリエチレングリコールとD,L-ラクチド又はグリコリドを重合させて得られるポリマーが、4〜24時間で吸水しヒドロゲルとなるとしている。しかし、このように親水性セグメントの大きいポリマーでは、ポリマーが膨潤して形状が崩壊するため、薬物の放出とポリマーの分解との調節が困難である。【0008】本発明者らは、先の技術として特開平2-203861号公報でポリ乳酸あるいは乳酸−グリコール酸共重合体とポリエチレングリコールとの反応物を骨形成促進因子の支持体として使用する生体材料を開示した。しかし、この材料は低温では水に分散し、昇温すると析出してクロロホルム等の溶媒にも溶解する親水性と疎水性の両性質を有するポリマーであるが、形状がペースト状あるいはワックス状であるため、取り扱い難いという難点があった。更に、特開平3-45265号公報では、(1)乳酸−グリコール酸共重合体と、(2)乳酸−グリコール酸共重合体とポリエチレングリコールとの反応物とをブレンドすることによって材料の接着性を改良したが、薬物の放出とポリマーの分解性に於いて2種類のポリマー個有の性質が強く現れ、未だ満足できるものとはなっていない。【0009】更に、Ronneberger,B.らは乳酸−グリコール酸共重合体と分子量1,000〜10,000のポリエチレングリコールのトリブロック共重合体を生体材料として使用することを開示している(J.Biomed.Mater.Res.,30,31(1996))。しかし、このポリマーは塩化メチレンによりフィルム化され、その取り扱いは良好であるが、重量平均分子量を数平均分子量で除した数値である分子量分布が1.80〜2.86を示し、この様な分子量分布が1.8を超える分布の広いポリマーでは、脂肪族ポリエステルの影響を強く発現することから、薬物の放出とポリマーの分解とのバランスが悪く、徐放性生体材料としては適さないものである。【0010】この様に、ポリペプタイド等の薬物を生体材料に含有させる方法に関し現在まで数多くの研究がなされ、それに基づいた提案があるものの、薬物の溶出速度、材料の分解性、安全性、更には実用性等の面で適した生体材料は未だ見い出されていないのが現状である。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは前述の問題点を解決すべく、生体内分解性であり、疎水性、親水性の両性質を有し、特に生理活性を有するポリペプタイドの徐放性の付与に優れた性質を有し、更には生体内では異物反応がなく、周囲の組織に影響のない生体材料を開発すべく鋭意研究を重ねた。【0012】【課題を解決するための手段】その結果、乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールとを主成分として反応させた共重合体が、これにポリペプタイド等を担持させて使用すると、前述の問題点を解決する優れた生体材料となることを見い出し、係る知見に基づき本発明を完成させたものである。【0013】即ち、本発明は乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールとを主成分として反応させた共重合体からなる生体材料に関する。【0014】【発明の実施の形態】本発明の生体材料は、乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールとを主成分として反応させた共重合体を使用する。このような共重合体は、1以上の水酸基を有するポリエチレングリコールを触媒の存在下で、D,L-ラクチド、p-ジオキサノンと反応させることにより容易に製造される。得られる共重合体は、乳酸、ジオキサノンユニットとエチレンオキサイドユニットを有するブロック共重合体となる。【0015】この場合に、使用するポリエチレングリコールは、その数平均分子量が概ね600〜20,000の範囲のものを使用する。この分子量が600以下であるとエチレンオキサイドユニット含量の大きい領域で製造した場合に、得られる共重合体が流動性を有するものとなり、逆にエチレンオキサイドユニット含量が低い領域では、所望する分解速度を有する生体材料が得られない。また、分子量が20,000を超えると、生体への悪影響が生じることから望ましくない。【0016】また、この場合に使用する触媒としては、2-エチルヘキサン酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、塩化第1スズ、塩化第2スズ、ジエチル亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、チタニウムテトライソプロポキシド、トリブチルスズメトキシド、酸化ジブチルスズ、アルミニウムイソプロポキシド等である。【0017】別の共重合反応として、先ずラクチドとp-ジオキサノンを開環重合により共重合させた後、あるいは乳酸とp-ジオキサノンを減圧下で直接脱水重縮合し共重合体を製造した後に、ポリエチレングリコールとエステル化用触媒を添加して反応を行ってもよい。この場合のエステル化用触媒としては、リン酸、ベンゼンスルホン酸、酸型イオン交換樹脂等が使用できる。また開環重合は、原料を溶融状態下で重合させればよいが、モノマーあるいはポリマーを溶解する溶媒中で行うこともできる。更に、使用する乳酸は、D体、L体あるいはDL体のいずれであってもよく、また各々の混合物であってもよい。【0018】共重合体中の乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールの割合は80重量%以上であることが必要であり、この範囲において他の成分材料を共重合体に付加させてもよい。例えば、この共重合体を製造する際に、他のヒドロキシカルボン酸であるトリメチレンカーボネート、多官能性ポリオールであるエチレングリコール、グリセリン、シュークロース、ポリプロピレングリコール等を原料に加えて反応を行えば良いが、その量は共重合体全体の20重量%未満であることが必要である。【0019】共重合体の乳酸及び/又はグリコール酸(A)とp-ジオキサノン(B)とポリエチレングリコール(C)の割合は、A:B:Cモル比で各々26〜60:4〜25:25〜70の範囲であることが必要である。この場合に、乳酸及び/又はグリコール酸(A)とp-ジオキサノン(B)に対するポリエチレングリコール(C)のモル比の割合が25を下廻ると、乳酸及び/又はグリコール酸(A)とp-ジオキサノン(B)との比をどのように変更しても、得られる共重合体の分解速度は著しく低くなる。また、このモル比が70を上廻ると、得られる共重合体は水溶性の性質が強くなり、生体材料の目的に適合しないものとなる。また、乳酸及び/又はグリコール酸(A)とp-ジオキサノン(B)のモル比は26〜60:4〜25の範囲であるが、このモル比の範囲から逸脱すると、生体材料の分解速度が低くなるばかりでなく、脆いヒドロゲルを形成し生体材料として適さないものとなる。【0020】共重合反応によって得られた共重合体は、これを精製等の処理に供するが、この精製処理は、共重合体をアセトン、クロロホルム等に溶解した後、エーテル、石油エーテル等を共重合体量に対して6〜10容量倍加えて析出させる方法、あるいは5℃程度の水10倍容量に分散させた後、これを加熱して析出させる方法等が採用される。この精製処理によって、共重合体中の不純物である低分子量のポリマーやホモポリマーを除去することができ、またポリエチレングリコールは、精製に使用する上記の溶媒あるいは水層に溶解するために、未反応のポリエチレングリコールを除去できる。【0021】このようにして得られる共重合体の数平均分子量は、2,300〜47,000の範囲であり、且つ重量平均分子量を数平均分子量で除した数値である分子量分布は1.04〜1.50の範囲である。また、この共重合体は、生体材料として疎水性、親水性の両性質を有し、特にポリペプタイド等の生理活性物質を含有させた場合、生体内で安定した放出を維持する。【0022】このような生理活性物質であるポリペプタイドは、水溶性であっても水に対して難溶性であっても使用できる。ポリペプタイドの種類としては、神経成長因子、上皮成長因子、神経成長因子、線維牙細胞由来成長因子、血小板由来成長因子、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、インターロイキン1,2,3、インターフェロンα,β,γ、軟骨由来因子、軟骨由来成長因子、骨由来成長因子、骨形成促進因子、骨盤成長因子、トランスフォーミング成長因子、インシュリン、プロスタグランジン等が例示できる。またこの他に、LH-RH拮抗物質、ソマトスタチン及びその誘導体、成長ホルモン、プロラクチン、副骨皮質刺激ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、その塩及びその誘導体、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、バソプレシンとその誘導体、オキシトシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト繊毛性ゴナドトロピン、エンケファリンとその誘導体、エンドルフイン、キョートルフイン、タフトシン、サイモポイエチンII、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺液性因子、血中胸腺因子及びその誘導体及びその他の胸腺因子、腫瘍壊死因子、コロニー誘発因子、モチリン、ニュウロテンシン、セルレイン、ウロキナーゼ、アスパラギナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP、血液凝固因子の第VIII因子、第IX因子、塩化リゾチーム、ポリミキシンB、コリスチン、グラミシジン、バシトラシン等が挙げられる。更に、抗炎症剤、抗生物質、制癌剤、免疫抑制剤等との併用、多孔質化されたヒドロキシアパタイト、バイオグラス、セラビタール、トリカルシウムホスフェート、テトラカルシウムホスフェート、カルシウムアルミネート等に含浸、混合させ複合化効果を発現させることも可能である。【0023】これら列挙したポリペプタイドの内、本発明の生体材料に最も適するポリペプタイドは骨形成促進因子である。この骨形成促進因子は、一般にBMP(Bonemorphogenetic protein)と称され、このBMPは未分化の間葉系細胞に細胞外から作用し、その遺伝形質を軟骨細胞や骨芽細胞へと分化させ軟骨誘導、骨誘導する物質であり、現在BMP1〜13までが確認されている物質である。本発明で用いるBMPは、遺伝子組み換えあるいはDunn骨肉腫から分離、精製して得られたもの(Takaoka,K.,Biomedical Research,2(5)466-471(1981))の何れでもよく、特にその製法には限定されない。【0024】本発明の生体材料の調製方法は、一般的に共重合体に薬物を包含させる方法によって行えばよい。例えば、先ず、共重合体を蒸発し易い溶媒に溶解あるいは分散させた後、これにポリペプタイドを均一に分散させ、次いで使用した溶媒を除去する。用いる溶媒の種類は、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、エタノール等が好ましく、その溶媒は生体材料の使用目的に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。また別の方法として、ポリペプタイドの水溶液中に共重合体を加え、共重合体の膨潤によりポリペプタイドを吸着させた後、凍結乾燥してもよい。あるいは、ポリペプタイドを混合した共重合体と水との乳化液を調製し、この乳化液から溶媒を除去してマイクロカプセルを調製することもできる。更に、共重合体を加温して流動化させたものに、ポリペプタイドを混合して調製することも可能である。また、共重合体は低分子量のものを使用することによって流動性を発現させ、これにポリペプタイドを混合して流動性の性質を維持した状態で使用することもできる。更に、本発明で使用する共重合体は、必要に応じてオートクレーブ、γ線、エチレンオキサイド等を使用して滅菌処理を行ってもよい。【0025】【実施例】以下に本発明の実施例を掲げ説明を行なうが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、%は特に断らない限り全て重量%を示す。【0026】[実施例1]DL-ラクチド20g、p-ジオキサノン9.3g、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール(キシダ化学(株)製試薬)10.4gを容積50mlの反応管に入れ、8%オクタン酸スズのジエチルエーテル溶液を52μl添加し、これを-48℃で凍結した。凍結後、1mmHgで1時間減圧して密封し、145℃で 7時間の反応後、更に160℃で9時間反応させた。反応生成物をアセトン100mlに加温溶解し、これにジエチルエーテル550mlを加えて半透明の沈殿を得た。次いでこれを-45℃で30分間冷却し、分離した共重合体を70℃で減圧乾燥した。【0027】減圧乾燥後に共重合体の35gが得られ、これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した結果、数平均分子量は9,900、重量平均分子量は11,900、分子量分布は1.2であった。また、1H-NMRにより乳酸、ジオキサノン、ポリエチレングリコールの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は43:13:44であった。更に、示差走査熱量計(DSC)での測定によるガラス転移温度は-7.9℃であった。【0028】この共重合体50mgをアセトン500μlに冷却下で溶解し、遺伝子組換えにより得られたrhBMP-2の10μgを混合した後、これを25℃で8時間減圧乾燥し、ペレット状の本発明の生体材料を調製した。この生体材料を、マウス(5週)の背部筋膜下に移植した。3週間後に移植片を摘出し、軟質X線像及び組織像を観察し、またCa含有量を測定し、骨組織の状態を調べた結果、繊維状の骨梁が見られ、骨の形成が確認された。【0029】[比較例1]実施例1で使用した共重合体製造時の原料であるp-ジオキサノンに代えて、DL-ラクチドを使用してラクチド含量が増加した成分割合でポリエチレングリコールの存在下で反応を行った。同様に反応、精製を行い得られた共重合体は37gであった。これをGPCによって分子量を測定した結果、数平均分子量は8,700、重量平均分子量は10,600、分子量分布は1.2であった。また、1H-NMRにより乳酸、ポリエチレングリコールの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は57:43であった。更に、DSCでの測定によるガラス転移温度は10℃であった。【0030】この共重合体について、実施例1と同様にrhBMP-2を10μg混合し、これをマウス(5週)の背部筋膜下に移植した。3週間後に移植片を摘出し、軟質X線像及び組織像を観察し、またCa含有量を測定し、骨組織の状態を調べた結果、骨の形成は移植片周辺のみであり、中心には共重合体材料が残存していた。また、この材料を使用せずに骨形成促進因子のみで同様に試験を行ったが、この場合には全く骨形成は認められなかった。【0031】[実施例2]L-ラクチド29.4g、グリコリド15.9g、p-ジオキサノン17.5g、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール(キシダ化学(株)製試薬)24.6gを使用し、実施例1と同様に反応を行い、更に同様に精製処理を行い共重合体65.6gを得た。この共重合体の分子量をGPCを使用して測定した結果、数平均分子量は9,100、重量平均分子量は10,000、分子量分布は1.1であった。また、1H-NMRにより乳酸、グリコール酸、ジオキサノン、エチレンオキサイドの各ユニットの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は24:19:8:49であった。更にDSCによるガラス転移温度の測定結果は-10℃であった。【0032】この共重合体150mgをアセトン2mlで冷却下に溶解し、遺伝子組換えにより得られたrhBMP-2の60μgを混合した後、これを室温で24時間減圧乾燥し、ペレット状の本発明の生体材料を調製した。この生体材料を、マウス(5週)の背部筋膜下に移植した。3週間後に移植片を摘出し、軟質X線像及び組織像を観察し、またCa含有量を測定し、骨組織の状態を調べた結果、実施例1と同様の骨形成が確認された。【0033】[実施例3]DL-ラクチド14.4g、p-ジオキサノン5.1g、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール16.5gを使用し、実施例1と同様に反応を行い共重合体26gを得た。この共重合体の分子量をGPCを使用して測定した結果、数平均分子量は8,000、重量平均分子量は8,600、分子量分布は1.1であった。また、1H-NMRにより乳酸、ジオキサノン、エチレンオキサイドの各ユニットの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は28:6:66であった。更に、DSCによるガラス転移温度の測定結果は-6℃であり、融点は34℃であった。この共重合体50mgとrhBMP-2の25μgを混合し、実施例1と同様にペレットを作成し、これを同様にマウス背部筋膜下に移植した。3週間後に移植部の骨形成の状態を調べた結果、良好な骨形成が確認された。【0034】[実施例4]DL-ラクチド26g、p-ジオキサノン7.4g、数平均分子量1,000のポリエチレングリコール7.5gを使用し、実施例1と同様に反応を行い共重合体32g得た。この共重合体の分子量をGPCを使用して測定した結果、数平均分子量は3,900、重量平均分子量は4,300、分子量分布は1.1であった。また、1H-NMRにより乳酸、ジオキサノン、エチレンオキサイドの各ユニットの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は59:11:30であった。更に、DSCによるガラス転移温度の測定結果は-9℃であった。この重合体50mgとrhBMP-2の25μgを混合し、実施例1と同様にペレットを作成し、これを同様にマウス背部筋膜下に移植した。3週間後に移植部の骨形成の状態を調べた結果、良好な骨形成が確認された。【0035】[実施例5]L-ラクチド25.7g、p-ジオキサノン6.1g、数平均分子量20,000のポリエチレングリコール11.3g、トリメチレンカーボネート8.5gを使用し、実施例1と同様に164℃で15時間の反応を行い、次いでこれを精製し共重合体29gを得た。この共重合体の分子量をGPCを使用して測定した結果、数平均分子量は33,000、重量平均分子量は45,000、分子量分布は1.4であった。また、1H-NMRにより乳酸、ジオキサノン、エチレンオキサイド、トリメチレンカーボネートの各ユニットの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は39:5:47:9であった。更に、DSCによる融点の測定結果は41℃であった。rhBMP-2の10μgに水100μlを混合した後、これに上記共重合体の50mgを添加しrhBMP-2を吸着させた後、30時間凍結乾燥を行いペレットの生体材料を調製した。この生体材料をマウス(5週)の背部筋膜下に移植し、3週間後に移植片を摘出し、軟質X線像及び組織像を観察し、またCa含有量を測定し、骨組織の状態を調べた結果、実施例1と同様の骨形成が確認された。【0036】[実施例6]DL-ラクチド28g、p-ジオキサノン4.5g、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール12.7gを容積50mlの反応管に入れた。これに8%オクタン酸スズのジエチルエーテル溶液を52μl添加し、-48℃で凍結した。凍結後1mmHgで1時間減圧し密封し、140℃で8時間の反応を行い、更に155℃で11時間の反応を行った。反応生成物を90℃の水1Lに分散させ、これから沈殿を分取する方法を3度繰り返し精製を行った。精製物の凍結乾燥後に、共重合体34gが得られた。得られた共重合体の分子量をGPCを使用して測定した結果、数平均分子量は9,600、重量平均分子量は10,500、分子量分布は1.1であった。また、1H-NMRにより乳酸、ジオキサノン、エチレンオキサイドの各ユニットの各々のモル比を求めた結果、各成分のモル比は45:4:51であった。更に、DSCによるガラス転移温度の測定結果は-10.4℃であった。この共重合体10mgを、G−コロニー刺激因子の100μgを含有した1ml水溶液に添加し、G−コロニー刺激因子を吸着させた後、凍結乾燥を行い本発明の生体材料を得た。この生体材料の2mgをラット背部皮下に移植し、18日後のラットの白血球数を調べた結果、本発明生体材料を使用しない場合の対照と比較し、ラットの白血球数は多いことが確認できた。【0037】【発明の効果】本発明の生体材料は、水が浸透すると共に均一に膨潤するため、これに含有させたポリペプタイドが溶解し、その溶液の拡散が定常的となる。そして、水が浸透した状態を保持するため、生体に対する親和性が高く、また含水状態で脆くなるというヒドロゲルの性質とは異なり、生体での体温で弾力性と接着性を発現し、生体組織の圧迫に対しても形状が崩れ難いという性質を有する。この性質が生体材料に含有したポリペプタイドの放出速度への影響を少なくするという効果を発現する。【0038】また、本発明の生体材料を構成する共重合体は、ポリペプタイドの溶出後も残存するという材料とは異なり、生体内で加水分解を受け疎水性のセグメント部分の分子量が減少し易いため、ポリペプタイドの溶出後は速やかに消失するという性質を有することから、本発明の生体材料は、広範囲な用途での適合性に優れている。 乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールとを主成分として反応させた共重合体からなる生体材料。 共重合体中の乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールの割合が80重量%以上である請求項1記載の生体材料。 共重合体の数平均分子量が2,300〜47,000の範囲であり、且つ重量平均分子量を数平均分子量で除した数値である分子量分布が1.04〜1.50の範囲である請求項1又は2記載の生体材料。 乳酸及び/又はグリコール酸(A)とp-ジオキサノン(B)とポリエチレングリコール(C)の割合がA:B:Cモル比で26〜60:4〜25:25〜70の範囲である請求項1、2又は3記載の生体材料。 乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサノンとポリエチレングリコールとを主成分として反応させた共重合体にポリペプタイドを含有させてなる請求項1、2、3又は4記載の生体材料。 ポリペプタイドが骨形成促進因子である請求項5記載の生体材料。


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