タイトル: | 特許公報(B2)_銀/ハロゲン化銀参照電極、その製造方法およびイオン選択性電極 |
出願番号: | 1999024143 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 27/30,G01N 27/403 |
寺嶋 正明 伊藤 敏古 瀬志本 修 JP 3808227 特許公報(B2) 20060526 1999024143 19990201 銀/ハロゲン化銀参照電極、その製造方法およびイオン選択性電極 富士写真フイルム株式会社 000005201 柳川 泰男 100074675 寺嶋 正明 伊藤 敏古 瀬志本 修 20060809 G01N 27/30 20060101AFI20060720BHJP G01N 27/403 20060101ALI20060720BHJP JPG01N27/30 311ZG01N27/30 371Z G01N 27/30 G01N 27/403 特開昭56−211648(JP,A) 特開昭56−006148(JP,A) 特開昭56−033537(JP,A) 特開昭58−102146(JP,A) 特開平08−233774(JP,A) 特開平08−327582(JP,A) 特開平10−239273(JP,A) 6 2000221155 20000811 15 20040824 柏木 一浩 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、試料中の特定のイオン活量を測定するための、銀/ハロゲン化銀参照電極、その製造方法、およびその銀/ハロゲン化銀参照電極からなるイオン選択性電極に関する。【0002】【従来の技術】生物液体試料(血液、尿、唾液、髄液等)や液体(水道水、河川水、下水、産業排水等)の液滴量を用い、その中に含まれる特定のイオン活量(イオン濃度)を定量分析するイオン活量測定方法およびその測定器具が実用化されている(特公平5−28341号公報)。その方法は、互いに電気的に分離された一対の銀/塩化銀電極の最上部にイオン選択性膜を備えたシート状イオン選択性電極のそれぞれのイオン選択性膜表面に、被検液および参照液を滴下し、次いでブリッジにより両液体を互いに電気的に導通させた状態において、各イオン選択性電極間の電位差を測定することにより、被検液中の特定のイオン活量を測定する方法である。上記の測定器具については、特開昭56−6148号公報、特開昭58−211648号公報等に記載がある。【0003】イオン選択性電極の多くは、内部参照電極として上記のように銀/塩化銀電極を利用している。銀/塩化銀電極は、非導電性支持体、非導電性支持体上に銀を被覆してなる銀層および該銀層を重金属塩等の酸化剤で酸化して形成する塩化銀層とからなる。イオン選択性電極を用いてイオン活量を測定するには、一対のイオン選択性電極間の電位差を測定する必要がある。このため、イオン選択性電極の導電部位(銀/塩化銀電極においては銀層)の端部に電気接続用領域が設けられる。【0004】特開昭56−33537号公報には、銀/塩化銀電極において、銀層の一部に被覆したクロム層、ニッケル層、あるいはクロムとニッケルとの合金層によって銀層との直接電気的接触を改善している。即ち、プローブを塩化銀層を通過させて銀層と接触させると、銀層が酸化反応の際に望ましくない反応(例えば、銀の腐食等)を受けるために良好な電気的接触が得られなかった。そこで、銀層の一部に導電性の高い、例えばクロム層を設け、クロム層を有しない銀層のみを酸化して塩化銀層を作製し、プローブをクロム層から銀層に接触させることによって良好な電気的接触を達成することができる。ここで、銀層を酸化する酸化剤としては、重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)、過マンガン酸カリウム(KMnO4)、フェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)、クロロクロム酸カリウム(KCrO3Cl)、酸化バナジウムアンモニウム(NH4VO3)もしくは硝酸セリウムアンモニウム((NH4)2Ce(NO3)6)が用いられている。また、特開昭58−102146号公報には、重クロム酸カリウムおよび塩酸からなる処理剤を用いて銀層を酸化する方法が開示されている。【0005】酸化剤としては、重クロム酸カリウムもしくは過マンガン酸カリウムが主流である。【0006】しかし、上記の酸化剤を用いて作製した銀/塩化銀参照電極上に塩素イオン選択性膜を備えてなる塩素イオン選択性電極では、一定電位が発生せず、応答速度も遅くなるという問題点を有する。これは、塩化銀層中にクロム元素がクロム酸イオンとしてある程度混入するためと考えられる。また、以下の問題も生じる。クロム酸イオンが混入した結果、生成する重クロム酸銀(Ag2Cr2O7)の溶解度は、塩化銀に比較して約100倍と大きいため、この重クロム酸銀が溶解し、塩素イオン選択性膜中に溶出する。ここで、被検液として臭素イオンを含む液体試料を使用した場合には、上記の銀イオンは、塩素イオンとよりも臭素イオンと強く結合するために、塩素イオン選択性膜中で臭化銀が生成する。電極は、この臭化銀に由来する臭素イオンを塩素イオンとして認識してしまうため、測定された塩素イオン活量の値と実際の塩素イオン活量の値との間に誤差を生じる。臭素イオンが、ヨウ素イオンであっても同様である。さらに、臭素イオン等の妨害イオンが電極の性能に及ぼす影響は、時間と共に大きくなる。但し、重クロム酸カリウム以外の酸化剤を使用した場合に、塩化銀層中に生成した重金属を含む酸素酸の銀塩の溶解度が、塩化銀よりも小さければ、銀イオンの溶出は起こらない。また、重金属を含む酸素酸の銀塩の溶解度が塩化銀よりも大きく、銀イオンがイオン選択性膜中に溶出したとしても、被検液中に臭素イオン等の妨害イオンが存在しなければ、電極の性能を低下させる影響を及ぼすことはない。【0007】過マンガン酸カリウムを酸化剤として使用した場合にも、上記と同様に電位が安定しないという欠点を有する。これは、塩化銀層中に過マンガン酸銀(AgMnO4)が生成し、一定の電位の発生に悪影響を与えると考えられる。しかし、重クロム酸カリウムの場合と異なり、上記のようにイオン選択性膜へ銀イオンが溶出し、その結果、妨害イオンの影響を受けることは少ないと考えられる。【0008】また、前記の酸化剤は、何れも毒性を示すため、その取り扱い、使用後の廃液処理等にも問題点を有する。【0009】そこで、重クロム酸カリウムや過マンガン酸カリウム等の重金属の酸素酸塩を酸化剤として使用したときに起こる、塩化銀への重金属元素の混入を避けるため、重金属元素の酸素酸塩以外で、かつ人体や環境に無害の酸化剤を使用する銀のハロゲン化方法を開発する必要がある。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ハロゲン化銀中に、銀/ハロゲン化銀参照電極の作製において使用される酸化剤に由来する重金属元素の混入が抑制された銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法、およびその方法で得られた銀/ハロゲン化銀参照電極を提供することにある。また、その銀/ハロゲン化銀参照電極からなるイオン選択性電極をも提供し、試料中の特定のイオンの活量の正確な定量を目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者の研究により、非導電性支持体、銀層およびハロゲン化銀層をこの順に有する銀/ハロゲン化銀参照電極であって、ハロゲン化銀層がハロゲン化物の存在下に、キレート化された三価の鉄塩によって銀層の表面を酸化することによって該表面上に形成された層であることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極が上記の課題を解決できることが判明した。【0012】銀/ハロゲン化銀参照電極の好ましい態様において、ハロゲン化銀層は、塩化銀層である。【0013】また、非導電性支持体上に銀層を形成し、次いでハロゲン化物の存在下に、キレート剤によりキレート化された三価の鉄塩によって銀層の表面を酸化して該表面上にハロゲン化銀層を生成させることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法も前記の課題を解決できることが判明した。【0014】銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法の好ましい態様は、以下の通りである。(1)キレート剤が、アミノカルボン酸化合物であることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法。(2)酸化が、pH2乃至6の範囲で行われることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法。【0015】さらに、非導電性支持体上に、銀層およびハロゲン化銀層からなる電極層が二個、互いに電気的に絶縁した状態で形成され、それぞれの電極層の上に電解質層およびイオン選択性膜が形成され、さらに一方の電極上のイオン選択性膜の上に被検液付与用開口部を有する水不透過性の非導電性部材が、そして他方の電極上のイオン選択性膜の上に参照液付与用開口部を有する水不透過性の非導電性部材が配置され、被検液および参照液を互いに電気的に導通させる架橋部材によって、それぞれの開口部が互いに電気的に接続されてなるイオン選択性電極であって、ハロゲン化銀層がハロゲン化物の存在下に、キレート化された三価の鉄塩によって銀層の表面を酸化することによって該表面上に形成されることを特徴とするイオン選択性電極も前記の課題を解決できることが判明した。【0016】【発明の実施の形態】図1に本発明の代表的なイオン選択性電極の模式図を示す。非導電性支持体(11)上に、銀層(22)およびハロゲン化銀層(33)からなる電極層が二個、互いに電気的に絶縁した状態で形成されている。これが、銀/ハロゲン化銀参照電極となる。それぞれの電極層の上には、電解質層(44)(塩素イオン選択性電極の場合を除く)およびイオン選択性膜(55)がこの順に設置されている。さらに、一方の電極層のイオン選択性膜の上には、被検液付与用開口部(61)を有する水不透過性の非導電性部材(マスク)(77)が配置され、他方の電極層のイオン選択性膜の上には、参照液付与用開口部(62)を有する水不透過性の非導電性部材(マスク)(77)が配置されている。被検液および参照液を互いに電気的に導通させる架橋部材(88)がそれぞれの開口部を横切るように固定され、このことによって、それぞれの開口部が互いに電気的に接続される。【0017】イオン選択性電極を用いて、被検液のイオン活量を測定するには、イオン選択性電極間の電位差を測定する必要がある。まず、イオン選択性膜表面の被検液付与用開口部と参照液付与用開口部とに、それぞれ被検液および参照液を滴下する。被検液としては、液体試料であれば何れのものであってもよい。生物液体試料(血液、尿、唾液、髄液等)や液体試料(水道水、河川水、下水、産業排水等)を用いることもできる。参照液としては、後述する実施例で示す標準液Mを用いることが好ましい。次いで、架橋部材により両溶液を互いに電気的に導通させた状態において、イオン選択性電極間の電位差を測定する。このため、イオン選択性電極の導電部位の両端部に電気接続用領域を設ける。銀/ハロゲン化銀参照電極においては、導電部位は銀層であり、銀層の両端部に電気接続用領域が設けられる。【0018】被検液中の定量すべきイオン活量は、被検液側に生じた電位(E(被検液))と参照液に生じた電位(E(参照液))との差によって与えられ、下記式(I):で表される。ここで、Nは、ネルンスト(Nernst)の定数であり、25℃におけるNは、59.2mVである。zは、イオン価数である。【0019】非導電性支持体としては、ガラス、紙、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートもしくはセルロースエステルを用いることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。【0020】非導電性支持体の厚さは、50μm〜1mmの範囲にあることが好ましく、80〜400μmの範囲にあることが特に好ましい。【0021】非導電性支持体上への銀の被覆処理は、浸漬被覆、ロール被覆、ブラッシュ被覆等により行うことが好ましい。銀層の厚さは、0.5〜1μmの範囲にあることが好ましく、0.6〜0.8μmの範囲にあることがさらに好ましい。【0022】非導電性支持体上に被覆した銀層の両端部は、イオン選択性電極の電気接続用領域になるため、ハロゲン化されないように油溶性ポリマーで被覆しておく。油溶性ポリマーは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンを主成分とするポリマー組成物であることが好ましい。ポリマーは、ホモポリマーあるいはコポリマーの何れであってもよい。コポリマーは、塩化ビニリデンを少なくとも全体の50モル%、好ましくは80モル%を含み、これと共重合しうるモノマーからなる。このようなモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンもしくはビニルエーテルであることが好ましい。また、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマーは、両モノマーの含有率の広い範囲に渡って用いることができるが、概して塩化ビニリデンの含有率が約5〜50モル%の範囲にあることが好ましい。ポリマーの分子量は、約2千〜約20万の範囲にあり、約3千〜約10万の範囲にあることが好ましい。【0023】銀層のハロゲン化は、キレート化された三価の鉄塩およびハロゲン化物を有する反応槽に、銀を被覆した非導電性支持体を浸漬して行うことが望ましい。反応槽中の鉄塩の濃度は、100〜500mMの範囲にあることが好ましく、150〜250mMの範囲にあることがさらに好ましい。浸積後、水洗を行い乾燥する。これらのハロゲン化、水洗および乾燥の一連の工程は、反応槽、水洗槽および乾燥ゾーンを有する連続自動処理機を用いて行ってもよい。【0024】キレート剤としては、アミノカルボン酸化合物を用いることが好ましい。アミノカルボン酸化合物としては、プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(THHA)、エチレンジアミンジスクシネート(EDDS)もしくはN,N−ジカルボキシメチルグルタメート・4Na(GLDA・4Na)を用いることが好ましい。プロパンジアミン四酢酸(PDTA)もしくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いることが特に好ましい。アミノカルボン酸化合物でキレート化された三価の鉄塩ではないが、フェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)、フェロシアン化カリウム(K2Fe(CN)6)を用いることもできる。【0025】よって、キレート化した三価の鉄塩は、PDTAでキレート化した三価の鉄塩(PDTA・Fe3+)もしくはEDTAでキレート化した三価の鉄塩(EDTA・Fe3+)であることが好ましく、PDTA・Fe3+であることが特に好ましい。【0026】キレート化した三価の鉄塩は、酸化剤として使用された後、二価の鉄塩となるが、空気、窒素等の気体の吹き付け、あるいは過酸化水素によって、容易に元の三価の鉄塩に変換することができる。過酸化水素以外の酸化剤を用いることもできるが、酸化剤の残存等の影響を生じないものが好ましい。キレート化した三価の鉄塩は、何回でも繰り返し使用することができる。【0027】ハロゲン化物としては、ハロゲンイオンを発生するものであれば何れも用いることができ、ハロゲン化銀の種類に応じて選択することができる。ハロゲン化銀が塩化銀である場合、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。塩化ナトリウムの濃度は、50〜150mMの範囲にあることが好ましい。【0028】ハロゲン化は、pH2〜6の範囲で行われることが好ましい。一方、重クロム酸カリウムを酸化剤として使用する場合には、pHを1.1〜2.1の範囲に厳密にコントロールする必要があり、反応のpH依存性が大きい。反応槽中には、キレート化した三価の鉄塩およびハロゲン化物の他にpH調整剤を含む。pH調整剤としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等を用いることができる。緩衝液は、1〜10mg/m2の濃度範囲で用いられることが好ましい。【0029】ハロゲン化銀層は、塩化銀層であることが好ましい。ハロゲン化銀層の厚さは、銀層の厚さの約1/3〜1/2の範囲にあることが好ましい。【0030】電解質層は、銀層とハロゲン化銀層からなる電極層上に、以下の塩の水溶液を必要に応じ連続塗布機を用いて塗布することによって形成される。塩は、ハロゲン化銀の組成に依存して、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびその混合物からなる群より選ばれるカチオンと、ハロゲンイオンとからなることが好ましい。即ち、ハロゲン化銀と同一のハロゲンイオンおよび検出することを目的とするイオンを含んでいることが好ましい。例えば、塩化銀を有するナトリウムイオン選択性電極では、塩化ナトリウムの水溶液を塗布することが好ましい。塩化銀を有するカリウムイオン選択性電極では、塩化ナトリウムであってもよいが、塩化カリウムの水溶液を塗布することがさらに好ましい。塩化銀を有する塩素イオン選択性電極では、電解質層を設ける必要がない。電解質層の厚さは、1〜10g/m2の範囲にあることが好ましい。【0031】イオン選択性膜は、固体膜と液膜とに大別される。固体膜には、ガラス膜、単結晶膜、難溶性沈殿膜等が、液膜には、液状イオン交換体膜、ニュートラルキャリア膜等がある。難溶性沈殿膜は、沈殿を加圧成型した膜、あるいはシリコーンゴム等のマトリックスを加えてペレット状に成型した膜である。液膜は、イオン交換体やニュートラルキャリアの非水溶液そのものであるか、あるいはそれをポリ塩化ビニル等のポリマー膜に含浸保持させたものである。イオン選択性膜は、測定すべきイオンに対応したイオン選択性物質を電解質層上にロール被覆によって形成されることが好ましい。イオン選択性膜の厚さは、5〜50μmの範囲にあることが好ましい。【0032】水不透過性の非導電性部材(マスク)は、被検液付与用開口部と参照液付与用開口部とを有する部材であり、イオン選択性膜と接合される。マスク上には、被検液および参照液を互いに電気的に導通させる架橋部材が接合固定される。接合は、接着剤(感圧接着剤、感熱接着剤等)、熱融着、あるいは物理的係合材により行われることが好ましい。【0033】被検液と参照液とを互いに電気的に導通させる架橋部材としては、ポリエチレンテレフタレート加撚糸、メンブレンフィルタ、濾紙、特開昭55−20499号公報に記載の両面に疎水性有機ポリマー層をラミネートした濾紙等からなる糸ブリッジを好ましく使用することができる。【0034】被検液付与用開口部と参照液付与用開口部の大きさは、何れも2〜5μmの範囲にあることが好ましい。滴下する標準液および被検液の量は、何れも5〜15μLの範囲にあることが好ましい。【0035】本発明のイオン選択性電極を用いるイオン活量の測定は、例えば塩素イオン活量が、50〜175ミリ当量/Lの範囲の液体試料について実施するのが好ましい。カリウムイオン活量およびナトリウムイオン活量については、それぞれ1〜14ミリ当量/Lの範囲、75〜250ミリ当量/Lの範囲の液体試料について実施することが好ましい。【0036】【実施例】[実施例1](1)銀層を有するフィルムの作製幅が45mm、長さが約150mの長尺状のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、銀を0.8μmの厚みになるように蒸着した。フィルム上に蒸着されてなる銀層の中央部分を電気的に絶縁して、二つに分離した銀層を有するフィルムとした。このものを幅方向に24mmの幅で切断した。【0037】(2)銀層を有するフィルムの両端子部の被覆上記(1)で得られた銀層を有するフィルムの両端部分に5mm幅の油溶性ポリマー(フロンマスクMA−1(古藤産業(株)製))を塗布して乾燥した。【0038】(3)銀/塩化銀参照電極の作製上記(2)の油溶性ポリマーで被覆された銀層を有するフィルムを、プロパンジアミン四酢酸(PDTA)でキレート化した鉄塩(III)(200mM)、酢酸(50mM)、酢酸ナトリウム(50mM)および塩化ナトリウム(100mM)を含むpH4.6の水溶液(500mL)有する反応槽に浸積し、室温(約25℃)で180秒間反応を行った。次いで、水洗し、50℃で乾燥を行い、銀/塩化銀参照電極(I)とした。【0039】(4)イオン選択性電極の作製上記(3)で得られた銀/塩化銀参照電極(I)上に、塩化ナトリウム水溶液を塗布し電解質層を形成した。次いで、電解質層上に、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロリドおよびポリビニルブチラールのエタノール溶液を塗布し、塩素イオン選択性膜を形成した。さらに、被検液付与用開口部と参照液付与用開口部とを有する両面テープを、一方の塩素イオン選択性膜上に被検液付与用開口部が位置し、他方の塩素イオン選択性膜上に参照液付与用開口部が位置するように接着した。そして、開口部間を横切るように糸ブリッジを固定し、塩素イオン選択性電極(1)とした。同様にして、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液をそれぞれ塗布して、カリウムイオン選択性電極(2)、ナトリウムイオン選択性電極(3)を作製した(図1)。【0040】[実施例2](A)塩素イオン選択性電極(1)を用いる電位の測定被検液(標準液L)および参照液(標準液M)を、それぞれ、実施例1で得られた塩素イオン選択性電極(2)の被検液付与用開口部、参照液付与用開口部に同時点着し、60秒後に電位計(901型機、オリオン社製)により電位を測定した。各標準液の組成については、下記第1表に示す。但し、PVPK−15は、ポリビニルピロリドンを表す。【0041】標準液MおよびHをそれぞれ被検液とした場合についても、同様にして60秒後の電位を測定した。これらの結果を図2に示す。横軸を、被検液中の塩素イオン活量に対する参照液中の塩素イオン活量の比の対数(Log[被検液中の塩素イオン活量/参照液中の塩素イオン活量])とし、縦軸を電位とすると、図2の−黒塗り四角−は、Log[被検液中の塩素イオン活量/参照液中の塩素イオン活量]値が大きくなる方向に、順にLog[標準液L中の塩素イオン活量/標準液M中の塩素イオン活量]における電位、Log[標準液M中の塩素イオン活量/標準液M中の塩素イオン活量]における電位、およびLog[標準液H中の塩素イオン活量/標準液M中の塩素イオン活量]における電位である。Log[被検液中の塩素イオン活量/参照液中の塩素イオン活量]値をX、電位をYとすると、これらの関係は、下記式(II):(II)Y=−47.414×(X)+95.145で表される。【0042】図2より、被検液中の塩素イオン活量に対する参照液中の塩素イオン活量の比の対数と電位との関係は、良好な直線関係を示したことから、塩素イオン選択性電極(1)は、ネルンスト(Nernst)の理論に従った電位の応答をしていることが分かった。【0043】被検液(標準液L)および参照液(標準液M)を、前記記載の塩素イオン選択性電極(1)のそれぞれの開口部に同時点着した後、6秒おきに電位を測定した。測定は、3回づつ行った(後述する図4以降では、測定を4回行った場合もある)。また、標準液MおよびHをそれぞれ被検液とした場合についても同様にして電位の測定を行った。これらの電位測定の結果を図3に示す。但し、−□−、−△−および−○−は、それぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。【0044】図3より、何れの被検液おいても、電位の応答速度が速く、電位が収束していることが分かった。【0045】(B)カリウムイオン選択性電極(2)を用いる電位の測定実施例1で得られたカリウムイオン選択性電極(2)を用いる以外は、上記(A)と同様にして被検液として標準液L、MおよびHをそれぞれ用い、電位の測定を行った。電位測定の結果を図4に示す。但し、−×−、−黒塗り丸−および−□−は、それぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。【0046】(C)ナトリウムイオン選択性電極(3)を用いる電位の測定実施例1で得られたナトリウムイオン選択性電極(3)を用いる以外は、前記(A)と同様にして被検液として標準液L、MおよびHをそれぞれ用い、電位の測定を行った。電位測定の結果を図5に示す。但し、−×−、−黒塗り丸−および−□−は、それぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。【0047】図4および5より、カリウムイオン選択性電極(2)およびナトリウムイオン選択性電極(3)を用いた場合にも、塩素イオン選択性電極(1)と同様に、一定の電位の発生が認められた。特に、標準液Lを用いた場合には、経過時間に伴う電位の変化が小さいことが分かった。また、何れの電極においても、塩素イオン選択性電極(1)と同様に、被検液のイオン活量に対する参照液のイオン活量の比の対数とその電位との関係は、ネルンスト(Nernst)の理論に従うことが別途確認された(データ非表示)。【0048】[比較例1]酸化剤として重クロム酸カリウムを用いる以外は実施例1と同様にして、銀/塩化銀参照電極(II)を得た。但し、反応は、25℃で90秒間行った。続いて3種類のイオン選択性電極(塩素イオン選択性電極(4)、カリウムイオン選択性電極(5)およびナトリウムイオン選択性電極(6))を作製した。【0049】塩素イオン選択性電極(1)を、塩素イオン選択性電極(4)、カリウムイオン選択性電極(5)およびナトリウムイオン選択性電極(6)のそれぞれに変える以外は実施例2と同様にした。結果をそれぞれ図6、7および8に示す。但し、図6における−□−、−△−および−○−は、それぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表し、図7および8における−×−、−黒塗り丸−および−□−は、それぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。【0050】図6、7および8より、重クロム酸カリウムを酸化剤として用いて得られた銀/塩化銀参照電極(II)からなるイオン選択性電極は、キレートされた鉄塩を用いて得られた対応する銀/塩化銀参照電極(I)からなるイオン選択性電極に比べて、電極の応答性や収束性が低下することが分かった。特に、カリウムイオン選択性電極においては、電位の収束性に欠けた。このことは、重クロム酸カリウムによる銀層の酸化によって生成した塩化銀中に、クロム元素が重クロム酸イオンとして取り込まれた結果、生成した重クロム酸銀が電極の性能に影響を及ぼしたと考えられる。実際に取り込まれた量については、後述する実施例3に示す。【0051】[比較例2]酸化剤として過マンガン酸カリウムを用いる以外は実施例1と同様にして、銀/塩化銀参照電極(III)を得、続いて塩素イオン選択性電極(7)を作製した。【0052】実施例2の塩素イオン選択性電極(1)を、上記の塩素イオン選択性電極(7)に変える以外は、実施例2と同様にした。結果を図9に示す。但し、−□−、−△−および−○−は、それぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。【0053】図9より、塩素イオン選択性電極(7)は、塩素イオン選択性電極(1)に比べて、電位の応答性や収束性が低いことが分かった。【0054】これは、塩化銀中にマンガン元素が過マンガン酸イオンとして混入した結果、生成した過マンガン酸銀が電極の性能に影響を与えたものと考えられる。実際の混入の割合については、後述する実施例3に示す。尚、塩素イオン選択性電極(4)、カリウムイオン選択性電極(5)、ナトリウムイオン選択性電極(6)および塩素イオン選択性電極(7)についても、被検液のイオン活量に対する参照液のイオン活量の比の対数とその電位との関係は、ネルンスト(Nernst)の理論に従うことを別途確認した(データ非表示)。【0055】[実施例3]実施例1、比較例1および比較例2でそれぞれ得られた銀/塩化銀参照電極(I)、(II)、(III)について、蛍光X線測定機(SEA2001、セイコー電子工業(株)製)によって、含有元素の元素分析を行った。結果を第2表に示す。数字は、蛍光X線の強度(cps)を示す。【0056】上記第2表より、銀/塩化銀参照電極の作製において、酸化剤としてキレートした三価の鉄塩を用いた場合には、鉄元素の塩化銀中への混入がかなりの低濃度で起こることが分かった。しかし、図3、4および5に示すように、この混入が電極の性能に与える影響はほとんどないことが認められた。そのため、酸化剤としてキレートした三価の鉄塩を用いて作製された銀/塩化銀参照電極(I)からなるイオン選択性電極は、重クロム酸カリウムや過マンガン酸カリウムを用いた場合に比べて、電位の応答性や収束性に優れることが明らかとなった。【0057】[実施例4]塩化ナトリウム(100mM)、炭酸水素ナトリウム(30mM)、リン酸第二水素カリウム(4mM)、PVPK−15(3容量%)およびグリセリン(2容量%)を含む水溶液(参照液とする)に、臭素イオンの濃度がそれぞれ0、2、4、6および8mMとなるように臭化ナトリウムを添加し、臭素イオンの濃度が互いに異なる各溶液を調製した。これらを被検液とした。次いで、上記の被検液(臭素イオン濃度:0mM)および参照液を、実施例2の塩素イオン選択性電極(1)のそれぞれの開口部に同時点着した後、60秒後、1週間後、2週間後および4週間後のそれぞれの塩素イオン活量を測定した。また、臭素イオン濃度がそれぞれ2、4、6および8mMである各被検液についても、同様に上記の経過時間での塩素イオン活量を測定した。結果を図10に示す。ここで、−黒塗りひし形−、−黒塗り四角−、−×−および−△−は、それぞれ塩素イオン活量の測定を60秒後、1週間後、2週間後および4週間後に行った結果である。【0058】[比較例3]塩素イオン選択性電極(4)(重クロム酸カリウムを用いて作製した塩素イオン選択性電極)を用いる以外は、実施例4と同様にして塩素イオン活量を測定した。結果を図11に示す。【0059】図11に示すように、時間の経過に伴って塩素イオン活量が増えたのは、以下の理由によるものと考えられる。塩素イオン選択性電極(4)を構成する銀/塩化銀参照電極中には、前記第2表に示した通り、クロム原子が重クロム酸イオンとして取り込まれており、この重クロム酸イオンは、塩化銀中で重クロム酸銀を生成している。重クロム酸銀は溶解度が高いため、溶解した結果、銀イオンが塩素イオン選択性膜中へ移行し、参照液由来の臭素イオンは、銀イオンと強く結合する。その結果、銀/塩化銀参照電極がこの臭素イオンまでをも塩素イオンとして認識していまい、応答してしまったものと考えられる。従って、時間が経過すると、塩素イオン選択性膜中のこの臭素イオンの濃度が高くなり、塩素イオン活量として測定される値の誤差が大きくなることが判明した。図10および11に示すように、塩素イオン選択性電極(4)では、時間経過に伴い塩素イオン活量の測定値が臭素イオンの影響をより大きく受けるのに対して、塩素イオン選択性電極(1)では、この影響をほとんど受けないことが分かった。【0060】【発明の効果】本発明の酸化剤としてキレートした三価の鉄塩を用いる銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法では、ハロゲン化銀中への鉄元素の混入をほぼ回避することができる。よって、この銀/ハロゲン化銀参照電極にイオン選択性膜を付したイオン選択性電極を使用することによって、試料中の特定のイオンの活量を正確に定量することができる。従来は、生物液体試料等を検体としたときには、試料中に含まれる妨害イオンの影響によって特定のイオン活量の正確な定量が困難であったが、本発明はこの問題を解決するものである。また、鉄は、他の重金属に比べ、人体および環境への有害性が低い上に、キレートされた三価の鉄塩は、酸化剤として使用した後、容易に三価の鉄塩へと再生することができ、コストの面でも優れている。【図面の簡単な説明】【図1】代表的なイオン選択性電極の断面模式図である。【図2】実施例2の塩素イオン選択性電極(1)を用いたときの、標準液Lのイオン活量に対する参照液のイオン活量の比の対数(Log[被検液中の塩素イオン活量/参照液中の塩素イオン活量])と電位との関係を示すグラフである。【図3】実施例2の塩素イオン選択性電極(1)の性能を示すグラフである。【図4】実施例2のカリウムイオン選択性電極(2)の性能を示すグラフである。【図5】実施例2のナトリウムイオン選択性電極(3)の性能を示すグラフである。【図6】比較例1の塩素イオン選択性電極(4)の性能を示すグラフである。【図7】比較例1のカリウムイオン選択性電極(5)の性能を示すグラフである。【図8】比較例1のナトリウムイオン選択性電極(6)の性能を示すグラフである。【図9】比較例2の塩素イオン選択性電極(7)の性能を示すグラフである。【図10】実施例4の臭素イオンが電極性能に与える影響を示すグラフである。【図11】比較例2の臭素イオンが電極性能に与える影響を示すグラフである。【符号の説明】11 非導電性支持体22 銀層33 ハロゲン化銀層44 電解質層55 イオン選択性膜61 被検液付与用開口部62 参照液付与用開口部77 水不透過性の非導電性部材(マスク)88 被検液と参照液とを互いに電気的に導通させる架橋部材 非導電性支持体、銀層およびハロゲン化銀層をこの順に有する銀/ハロゲン化銀参照電極であって、ハロゲン化銀層がハロゲン化物の存在下に、キレート化された三価の鉄塩によって銀層の表面を酸化することによって該表面上に形成された層であることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極。 ハロゲン化銀層が、塩化銀層であることを特徴とする請求項1に記載の銀/ハロゲン化銀参照電極。 非導電性支持体上に銀層を形成し、次いでハロゲン化物の存在下に、キレート剤によりキレート化された三価の鉄塩によって銀層の表面を酸化して該表面上にハロゲン化銀層を生成させることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法。 キレート剤が、アミノカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項3に記載の銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法。 酸化が、pH2乃至6の範囲で行われることを特徴とする請求項3に記載の銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法。 非導電性支持体上に、銀層およびハロゲン化銀層からなる電極層が二個、互いに電気的に絶縁した状態で形成され、それぞれの電極層の上に電解質層およびイオン選択性膜が形成され、さらに一方の電極上のイオン選択性膜の上に被検液付与用開口部を有する水不透過性の非導電性部材が、そして他方の電極上のイオン選択性膜の上に参照液付与用開口部を有する水不透過性の非導電性部材が配置され、被検液および参照液を互いに電気的に導通させる架橋部材によって、それぞれの開口部が互いに電気的に接続されてなるイオン選択性電極であって、ハロゲン化銀層がハロゲン化物の存在下に、キレート化された三価の鉄塩によって銀層の表面を酸化することによって該表面上に形成されることを特徴とするイオン選択性電極。